16 / 240
1部 ヤギと奇跡の器
第14話 ノアの地図(アシュレイ視点)
しおりを挟む
「これは……なにをされているんですか?」
よくみると地図の横に、書き写したのであろう地図の写生と、びっしり文字の詰まったメモが散乱していた。
「あ、あの、最近お務めが順調になって、日中はルイスの家事を手伝っても手持ち無沙汰になるので……」
「地図を眺めるのがお好きなんですか?」
まったく理解ができないが、しかし地図の書き取り方に特徴があった。
「いいえ、ここに来るときに生まれて初めて王都を見たのですが、とても衝撃を受けました。それでこの王都はなぜこんなに人がいるのだろうと調べ始めて……」
「調べ始めて?」
「なぜこの王都に人が集まってもこんなに豊かでいられるのかということを調べていたら、なぜこの土地に集まるようになったかということも気になってしまい……。覚えていられないくらい様々な理由があったのでこうやってメモを取り始めたのです」
辺境の貴族なのだろうか。貴族であれば王都に来たことがないというのは不自然だが、庸人であれば家族内でも蔑まれていた可能性はある。
俺はその内容に驚き無意識のうちに椅子を引いていた。
「少し拝見させていただいても?」
「は、はい。あ、え? 僕のメモですか?」
椅子に座ったが、庸人用で極端に小さかった。
説明を仰ぐため奥にあった椅子を持ち上げて生贄の前に差し出す。生贄は意図を汲んで黙って座った。
内容は多岐に及んでいた。歴史から始まり、様々な国の政治、地理的な条件、経済や文化に渡る様々な視点からこの王都を分析している。無いのは軍事的な側面だけだろう。
「軍事的な側面から分析がなされていないようですが、そういった図書がないからでしょうか?」
「あ、あ、あの……」
さっきまでの流暢な会話からとは思えないほど、生贄は吃ってしまい、俯きがちになった。
自分の口調や態度を省みて、言葉遣いを変えた。
「別に責めているわけではない、興味があるのだ。少し教えてくれないか?」
生贄は耳まで真っ赤にしながら俯き、ポツリ、ポツリと喋り出した。
「軍事的、経済的背景において……このベルクマイヤ王国は他の規格にはそぐわない独自の進化を遂げております……」
「それで」
「この国は4方他の国に囲まれた独立国家です……しかしこの国は魔人という単一種族の純血国家でもあります……」
かつては自分も庸人であったが、生贄本人の存在を無視をした論法になぜだか心がざわつく。確かにこの国は2種類の人種で構成されているが、政治の表舞台に庸人が立つことはない。
「四方他の国に魔法や魔法科学を超える動力源と科学が生まれなければ……この国を軍事で侵攻することは難しいと考えて……不要かと思い調べてもおりませんでした……」
言いづらそうにしていた理由がわかった。しかし疑問も浮かび上がる。
「軍事では?」
「ふふふっ……アシュレイとノアが仲良くなってる……」
背後からルイスの声がする。振り向くとルイスが嬉しそうに笑っていたので、邪魔をするなとも言えず黙り込んでしまう。
「アシュレイそんな顔しないで、昼ごはんだよ。アシュレイは午後もいられるの?」
「あ、ああ」
「じゃあ続きは午後にしよう! ノアもそんな残念そうな顔しないで!」
ルイスが声をかけた方を見やると、生贄はまた耳まで真っ赤にして俯いていた。
よくみると地図の横に、書き写したのであろう地図の写生と、びっしり文字の詰まったメモが散乱していた。
「あ、あの、最近お務めが順調になって、日中はルイスの家事を手伝っても手持ち無沙汰になるので……」
「地図を眺めるのがお好きなんですか?」
まったく理解ができないが、しかし地図の書き取り方に特徴があった。
「いいえ、ここに来るときに生まれて初めて王都を見たのですが、とても衝撃を受けました。それでこの王都はなぜこんなに人がいるのだろうと調べ始めて……」
「調べ始めて?」
「なぜこの王都に人が集まってもこんなに豊かでいられるのかということを調べていたら、なぜこの土地に集まるようになったかということも気になってしまい……。覚えていられないくらい様々な理由があったのでこうやってメモを取り始めたのです」
辺境の貴族なのだろうか。貴族であれば王都に来たことがないというのは不自然だが、庸人であれば家族内でも蔑まれていた可能性はある。
俺はその内容に驚き無意識のうちに椅子を引いていた。
「少し拝見させていただいても?」
「は、はい。あ、え? 僕のメモですか?」
椅子に座ったが、庸人用で極端に小さかった。
説明を仰ぐため奥にあった椅子を持ち上げて生贄の前に差し出す。生贄は意図を汲んで黙って座った。
内容は多岐に及んでいた。歴史から始まり、様々な国の政治、地理的な条件、経済や文化に渡る様々な視点からこの王都を分析している。無いのは軍事的な側面だけだろう。
「軍事的な側面から分析がなされていないようですが、そういった図書がないからでしょうか?」
「あ、あ、あの……」
さっきまでの流暢な会話からとは思えないほど、生贄は吃ってしまい、俯きがちになった。
自分の口調や態度を省みて、言葉遣いを変えた。
「別に責めているわけではない、興味があるのだ。少し教えてくれないか?」
生贄は耳まで真っ赤にしながら俯き、ポツリ、ポツリと喋り出した。
「軍事的、経済的背景において……このベルクマイヤ王国は他の規格にはそぐわない独自の進化を遂げております……」
「それで」
「この国は4方他の国に囲まれた独立国家です……しかしこの国は魔人という単一種族の純血国家でもあります……」
かつては自分も庸人であったが、生贄本人の存在を無視をした論法になぜだか心がざわつく。確かにこの国は2種類の人種で構成されているが、政治の表舞台に庸人が立つことはない。
「四方他の国に魔法や魔法科学を超える動力源と科学が生まれなければ……この国を軍事で侵攻することは難しいと考えて……不要かと思い調べてもおりませんでした……」
言いづらそうにしていた理由がわかった。しかし疑問も浮かび上がる。
「軍事では?」
「ふふふっ……アシュレイとノアが仲良くなってる……」
背後からルイスの声がする。振り向くとルイスが嬉しそうに笑っていたので、邪魔をするなとも言えず黙り込んでしまう。
「アシュレイそんな顔しないで、昼ごはんだよ。アシュレイは午後もいられるの?」
「あ、ああ」
「じゃあ続きは午後にしよう! ノアもそんな残念そうな顔しないで!」
ルイスが声をかけた方を見やると、生贄はまた耳まで真っ赤にして俯いていた。
0
お気に入りに追加
495
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
愛され末っ子
西条ネア
BL
本サイトでの感想欄は感想のみでお願いします。全ての感想に返答します。
リクエストはTwitter(@NeaSaijou)にて受付中です。また、小説のストーリーに関するアンケートもTwitterにて行います。
(お知らせは本編で行います。)
********
上園琉架(うえぞの るか)四男 理斗の双子の弟 虚弱 前髪は後々左に流し始めます。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い赤みたいなのアースアイ 後々髪の毛を肩口くらいまで伸ばしてゆるく結びます。アレルギー多め。その他の設定は各話で出てきます!
上園理斗(うえぞの りと)三男 琉架の双子の兄 琉架が心配 琉架第一&大好き 前髪は後々右に流します。髪の毛の色はご想像にお任せします。深い緑みたいなアースアイ 髪型はずっと短いままです。 琉架の元気もお母さんのお腹の中で取っちゃった、、、
上園静矢 (うえぞの せいや)長男 普通にサラッとイケメン。なんでもできちゃうマン。でも弟(特に琉架)絡むと残念。弟達溺愛。深い青色の瞳。髪の毛の色はご想像にお任せします。
上園竜葵(うえぞの りゅうき)次男 ツンデレみたいな、考えと行動が一致しないマン。でも弟達大好きで奮闘して玉砕する。弟達傷つけられたら、、、 深い青色の瞳。兄貴(静矢)と一個差 ケンカ強い でも勉強できる。料理は壊滅的
上園理玖斗(うえぞの りくと)父 息子達大好き 藍羅(あいら・妻)も愛してる 家族傷つけるやつ許さんマジ 琉架の身体が弱すぎて心配 深い緑の瞳。普通にイケメン
上園藍羅(うえぞの あいら) 母 子供達、夫大好き 母は強し、の具現化版 美人さん 息子達(特に琉架)傷つけるやつ許さんマジ。
てか普通に上園家の皆さんは顔面偏差値馬鹿高いです。
(特に琉架)の部分は家族の中で順列ができているわけではなく、特に琉架になる場面が多いという意味です。
琉架の従者
遼(はる)琉架の10歳上
理斗の従者
蘭(らん)理斗の10歳上
その他の従者は後々出します。
虚弱体質な末っ子・琉架が家族からの寵愛、溺愛を受ける物語です。
前半、BL要素少なめです。
この作品は作者の前作と違い毎日更新(予定)です。
できないな、と悟ったらこの文は消します。
※琉架はある一定の時期から体の成長(精神も若干)がなくなる設定です。詳しくはその時に補足します。
皆様にとって最高の作品になりますように。
※作者の近況状況欄は要チェックです!
西条ネア
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる