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第1話 魔法使いの朝
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朝、目覚めると必ず玲音は俺の顔を見ている。目が合うと嬉しそうにキスをする。毎朝俺はこれで、玲音は俺が目覚めることが嬉しいのだと感じる。怠惰に過ごしていた頃はこんなに朝が嬉しいものだとは露とも知らず暮らしていた。
法縄を解いた今、一緒に寝る必要はないし、母から存分に魔力を貰ってる玲音は俺にキスをせがむ必要もない。ただただ2人の愛情表現として一緒に寝て、朝は一緒に目覚める、それが毎日のルーティンになっていた。
朝から重くエロいキスをした後に玲音が嬉しそうに言う。
「今日学校の帰り、円華の家行くんだろ?」
玲音がとても嬉しそうだ。俺は髪を撫でて、そうだな、と返事をする。
「そういや円華ちゃんって蘭燈女子だっけ? 帰り一緒に迎えに行ってあげようか?」
「なんで冬馬が円華の学校知ってるんだよ」
「いや、円華ちゃんの着てた制服、ここらじゃ有名なお嬢様学校だぞ?」
「陰キャのくせにそういうところは抜け目ないんだな」
その目に少し怒りが宿る。乱暴にベッドを出ようとした玲音の腕を掴んで引き寄せた。そのまま覆いかぶさって、今度は俺からキス(エロいの)をする。リビングから空気の読めない母が、朝ごはんだと叫んでいる。
唇を離した隙に玲音が俺を見つめたまま、今行くー! と返事をする。そう言われた手前、俺はそうかそうかと起き上がろうとしたが、玲音が俺の胸ぐらを掴む。
「もっかい!」
えぇ……じゃあなんで今返事したんだよ……。今行かないとかーちゃん乱入してくるぞ……。
「今日帰ってきたらな」
そう言って俺は胸ぐら掴まれた手を解いて起き上がった。
「なんでだよー! もうぜってー起きねーからな!」
そこに母が乱入してくる。
「くだらないこと言ってないで2人とも早くご飯食べなさい!」
玲音は母に弱い。しおらしく、はい、と返事する様がかわいくて、ベッドから出てきた玲音に軽くキスをする。
「今日楽しみだな」
玲音は何かを言おうとしたが、うん、と頷いたまま俯いた。耳まで真っ赤だ。
ふふふ……。
ちょっと前までの玲音は、はしゃぎすぎた犬のようで手がつけられなかったし、下手したら噛み殺されそうだったのに、今はうまく操縦できてる気がする。そしてクッソかわいい。
愛ってすごいね。愛って偉大だよね。
感慨深くリビングに向かう途中玲音が後ろから叫ぶ。
「かーちゃん、冬馬のエロ本まだ見つからないの?」
「その話を二度とするなと言っただろうがっ!」
「朝からキャンキャンうるさいわよ! ごはんを食べなさい!」
一際でかい母の怒鳴り声に2人とも無言で着席し、震えながら朝ごはんを食べ始める。
「玲音。冬馬が女の子好きかもって不安になるくらいなら、今すぐ別れなさい! 毎朝毎朝キャンキャン喚いて!」
玲音はしゅんとする。
「ごめんなさい……もうエロ本のことは言いません……」
まったく、そう言って母も着席して朝ごはんを食べ始める。玲音がなんだかかわいそうなので、背中をさすろうと手を伸ばしたらまた母が立ち上がった。
「冬馬も! 玲音を甘やかさないの! だいたいあんたがちゃんとしないから玲音が不安がるんでしょう?!」
「は、はい……すみませんでした……」
母に謝りながら、じゃあどうすりゃいいんだよ、心の中で思った。
「かーちゃん、今日学校の帰りに冬馬と円華の家行ってくる」
玲音のその言葉に母は掌を返すかのように笑顔になる。
「あらあらー、あ! じゃあちょっと菓子折り持って行きなさい」
そう言って立ち上がり財布を見るが、そのまま頭を抱えた。
「お金下ろしてきてなかったわ……こんなときに限って……」
「法具持っていった方が喜ぶんじゃない?」
俺の提案に母の顔がパッと明るくなる。
「そうね! 久遠さんのお宅は法具は買ってるんだものね! 東洋の漆黒悪鬼様様ね!」
俺は無言で震えていたが、今度は玲音が俺の背中をさすってくれた。この時母は怒鳴らなかった。
魔法使いの日常は地味だ。でもこの日常が愛おしい。母も玲音もやんやしながらも、愛に溢れている。
そして俺は玲音が好きだ。俺は俺なりに玲音を大切にしているつもりだ。ただ一つどうしても超えなければならない壁があって、俺はそれをいつものように後回しにしている自覚はあった。
法縄を解いた今、一緒に寝る必要はないし、母から存分に魔力を貰ってる玲音は俺にキスをせがむ必要もない。ただただ2人の愛情表現として一緒に寝て、朝は一緒に目覚める、それが毎日のルーティンになっていた。
朝から重くエロいキスをした後に玲音が嬉しそうに言う。
「今日学校の帰り、円華の家行くんだろ?」
玲音がとても嬉しそうだ。俺は髪を撫でて、そうだな、と返事をする。
「そういや円華ちゃんって蘭燈女子だっけ? 帰り一緒に迎えに行ってあげようか?」
「なんで冬馬が円華の学校知ってるんだよ」
「いや、円華ちゃんの着てた制服、ここらじゃ有名なお嬢様学校だぞ?」
「陰キャのくせにそういうところは抜け目ないんだな」
その目に少し怒りが宿る。乱暴にベッドを出ようとした玲音の腕を掴んで引き寄せた。そのまま覆いかぶさって、今度は俺からキス(エロいの)をする。リビングから空気の読めない母が、朝ごはんだと叫んでいる。
唇を離した隙に玲音が俺を見つめたまま、今行くー! と返事をする。そう言われた手前、俺はそうかそうかと起き上がろうとしたが、玲音が俺の胸ぐらを掴む。
「もっかい!」
えぇ……じゃあなんで今返事したんだよ……。今行かないとかーちゃん乱入してくるぞ……。
「今日帰ってきたらな」
そう言って俺は胸ぐら掴まれた手を解いて起き上がった。
「なんでだよー! もうぜってー起きねーからな!」
そこに母が乱入してくる。
「くだらないこと言ってないで2人とも早くご飯食べなさい!」
玲音は母に弱い。しおらしく、はい、と返事する様がかわいくて、ベッドから出てきた玲音に軽くキスをする。
「今日楽しみだな」
玲音は何かを言おうとしたが、うん、と頷いたまま俯いた。耳まで真っ赤だ。
ふふふ……。
ちょっと前までの玲音は、はしゃぎすぎた犬のようで手がつけられなかったし、下手したら噛み殺されそうだったのに、今はうまく操縦できてる気がする。そしてクッソかわいい。
愛ってすごいね。愛って偉大だよね。
感慨深くリビングに向かう途中玲音が後ろから叫ぶ。
「かーちゃん、冬馬のエロ本まだ見つからないの?」
「その話を二度とするなと言っただろうがっ!」
「朝からキャンキャンうるさいわよ! ごはんを食べなさい!」
一際でかい母の怒鳴り声に2人とも無言で着席し、震えながら朝ごはんを食べ始める。
「玲音。冬馬が女の子好きかもって不安になるくらいなら、今すぐ別れなさい! 毎朝毎朝キャンキャン喚いて!」
玲音はしゅんとする。
「ごめんなさい……もうエロ本のことは言いません……」
まったく、そう言って母も着席して朝ごはんを食べ始める。玲音がなんだかかわいそうなので、背中をさすろうと手を伸ばしたらまた母が立ち上がった。
「冬馬も! 玲音を甘やかさないの! だいたいあんたがちゃんとしないから玲音が不安がるんでしょう?!」
「は、はい……すみませんでした……」
母に謝りながら、じゃあどうすりゃいいんだよ、心の中で思った。
「かーちゃん、今日学校の帰りに冬馬と円華の家行ってくる」
玲音のその言葉に母は掌を返すかのように笑顔になる。
「あらあらー、あ! じゃあちょっと菓子折り持って行きなさい」
そう言って立ち上がり財布を見るが、そのまま頭を抱えた。
「お金下ろしてきてなかったわ……こんなときに限って……」
「法具持っていった方が喜ぶんじゃない?」
俺の提案に母の顔がパッと明るくなる。
「そうね! 久遠さんのお宅は法具は買ってるんだものね! 東洋の漆黒悪鬼様様ね!」
俺は無言で震えていたが、今度は玲音が俺の背中をさすってくれた。この時母は怒鳴らなかった。
魔法使いの日常は地味だ。でもこの日常が愛おしい。母も玲音もやんやしながらも、愛に溢れている。
そして俺は玲音が好きだ。俺は俺なりに玲音を大切にしているつもりだ。ただ一つどうしても超えなければならない壁があって、俺はそれをいつものように後回しにしている自覚はあった。
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