システムエンジニアがとんでもない開発をはじめました。

まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある？

幸せな朝チュンとさらなる恐怖

長谷さんを抱いて眠る幸せな朝。1週間前の朝チュンとは雲泥の差である。しかしそんな朝を引き裂くように家のチャイムが鳴る。

長谷さんはあっさり俺の腕の中から抜け出し殺風景な部屋に着替えに行った。俺は少し寂しさを覚え体を起こす。

玄関先で荷物受け取りの手続きをした長谷さんは、小さめのダンボールを抱え、嬉しそうに戻ってきた。なんの執着もなさそうな殺風景な部屋に住んでいるのに、長谷さんを喜ばせるものは何なのだろうと、少し興味を持った。

「長谷さん嬉しそうですね、何が届いたんですか？」
 
「尿道開発キットだよ」

ん……？

尿道……開発……？

忌まわしい響きに戦慄する。

「先日もうかがいしましたが、長谷さんは尿道開発をなさりたいのでしょうか？」

驚き慄いた俺は、必要以上に謙ってしまう。

「すおーが持って帰ったから」

質問の答えになっていないし、その件は今週水曜を目処にレポート提出するって言ってんだろーー！！

「重ねて申し上げますが、前立腺を刺激する方法は他にもございまして、その……僭越ながら私との行為に慣れるためにも後ろの開発道具の方が賢明かと……」

「そこはすおー専用でしょ？ 他のもの入れたくない」

くっ……！ どんなご褒美ですか……！ そんないじらしいことを言って！！ クソっ！ 今の録音して毎日それ聴いて抜けるレベル！ こんな状況で何を言ってるかわからないだろうが、俺も何を言ってるのかわからない。

「すおーと会えない時だってあるんだし」

あーー！ かわいい！ 世界中の人に聞かせてやりたい！ 長谷さん何言ってんのかさっぱりわからないけど！

「なるべく、毎日通いますので……」

後生だから……そこをなんとか……。

「俺も一応管理職なんだから、周防にそんな無理させるわけにはいかないでしょ？」

急に長谷さんが仕事モードになってビビる。急に厳しい！

別に長谷さんがどうしてもやりたいというのであれば、俺に止める権利なんてないわけだし、そもそも長谷さんのその飽くなき探究心を止められるなんて思ってないし、ただそんなもの使うぐらいだったら俺を呼んでほしいって、ちょっと寂しいな、悲しいなって思ってるだけなのに、なんで俺が怒られたみたいになってるんですか！！ おかしくないですか！？ この流れ！？

「俺の家、契約更新もうすぐなんで会社の近くに越してきます、そうしたら毎日通っても問題ないですよね？」

やや挑戦的な口調になってしまった。

「じゃあ、隣の部屋に住めば？ 丁度持て余してたし、会社からも近いし」

隣の部屋……？ あの何も……ない部屋……？
これを聞いた時に悪寒が走った。感じたことのある恐怖。

その商品いつ発注したんだ……？
引っ越してくるよう仕向けるために商品発注したのはわかった……しかしこの悪寒はそんなものじゃないと本能が言っている……。
あれ……？ 隣の殺風景な部屋……？

「周防の部屋は広さどのくらい？ 相見積とるから業者来ても大丈夫な候補日、いくつか指定してくれないかな？」

冷静に考えれば、なんの執着もなさそうな長谷さんはなんでこんな無意味に広い部屋に住んでるんだ……？

「業者手配とか今後の家賃とか、そういうことは周防は考えなくてもいいからね、そのくらいの甲斐性あるから」

っていうか、この家新築の匂いしますけど……いつからここに住んでるんですか？ 長谷さんは……いつから計算してたんですか……？

テキパキと俺の外堀を固めている長谷さんに、何一つ質問できないまま、ボーゼンとした。

長谷さんはどんだけ俺のことが好きなんだ……？

「すおー？」

長谷さんが甘ったれた声で俺を呼ぶ。

「すおーと一緒に暮らせるの楽しみ」

尿道開発キットの箱をヒラヒラさせながら俺に満面の笑みを向ける長谷さん。

尿道開発の使い方、間違ってるから！！！！


＜まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある？編ーEND＞