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まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある?
決死の出社とチラつく罪悪感
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いざとなったら転職でもなんでもすればいいが、今、会社に行かなくなるのは長谷さんに負担をかけることになる。もう取り返しがつかないんだから、これ以下にならないように最善を尽くす。
その気概だけで月曜出社した。
出社早々、沼田Mから呼び出された。こうなってくると沼田さんとの会話すら気晴らしになる。まじめ系クズサイコー!
呼び出されてみたらなんてことはない、研修期間が終わったので福利厚生の手続きやら何やらが必要とのことだった。
これ、先週だったらもっと喜べたのにね、とついダークサイドに引き込まれそうだったが、俺は踏ん張った。
「で、研修期間が終わったからレビューと承認審査は頼むよ。ほら、先週作ってたシステム設計書」
沼田さんのその言葉で、俺は一気にダークサイドに落ちる。あれは多分周防が発表したほうがいいからとかなんとか、沼田さんは話していたが、全く聞こえなかった。変な汗が吹き出して息苦しい。額の汗を手で拭った時沼田さんが流石に心配してくれた。俺は、大丈夫です、という言葉を最後にトイレに逃げ込んだ。
トイレの洗面台で顔を洗う。顔のパーツ無くなるんじゃないかってくらい、長時間顔を洗っていた。鏡には自分とは思えない青白い顔が浮かび上がっている。その鏡の端にチラッと長谷さんの後ろ姿が映った気がした。
咄嗟に鏡に向き合い、怯えた自分の顔を見たら、なんだか無性に笑えてきた。あんなブラック企業で働いてても大丈夫だったのに、俺って意外に弱いんだな。そう思った瞬間心が少し軽くなった。
今回のレビューは先週沼田さんに確認してもらっているので、今回は長谷さんと2人きりでのレビューだった。
今回の案件は小規模なので会議室ではなく長谷さんの席でレビューしてください、と備考欄に記載して今日の夕方にカレンダー登録する。
2人きりになりたくない、そういった他意はなかった。
瞬時にカレンダーの変更アラートが飛んできたから慌てて中身を確認すると、会議室が予約されていた。
指定された時刻、会議室には先客がいて、長谷さんと3人で話していた。会議室のガラス越しに長谷さんと目があうと、会議は早々に切り上げられた。俺は3人と入れ替えに会議室に入る。
「ごめん、こっちの都合で会議室にして」
いえいえ、と答えながら俺はモニタに資料を映し出す準備をした。
さっき顔を洗ったせいか、自分でもこんなに落ち着いていられることにびっくりしながら、資料の説明を一通り終える。
「相変わらずよくまとまってるね」
あんなに怯えていたのがバカらしくなるくらい長谷さんは、長谷さんだった。違うのは胸の痛みを抱えている俺の方だ。ありがとうございますと言おうとした時に長谷さんが言った。
「資料は問題ないけどひとつ、この実装スケジュール、今週後半の沼田の案件は大丈夫?」
沼田さんの案件? そう思い、顔を上げて長谷さんと目が合う。
「沼田から聞いてない?」
問い詰められているわけではないが、長谷さんの顔があの朝と同じように思えて、顔をそらして答える。
「はい……聞いていないので、後で沼田さんに確認しておきます」
俺のおかしな挙動で変な間ができてしまった。
「周防……」
いつも、何事に対しても簡潔かつ的確に話す長谷さんが、言い淀んでいる。長谷さんは今、何を思っているんだろうと思うと気が狂いそうだった……。
「俺は今日まだ会議続くから、沼田に話を聞いて難しそうだったら後で俺に報告して」
本当にそれが長谷さんの言いたいことなのか確かめることはできない。
「はい、ありがとうございます。失礼します」
俺は会議室から逃げ出した。
その気概だけで月曜出社した。
出社早々、沼田Mから呼び出された。こうなってくると沼田さんとの会話すら気晴らしになる。まじめ系クズサイコー!
呼び出されてみたらなんてことはない、研修期間が終わったので福利厚生の手続きやら何やらが必要とのことだった。
これ、先週だったらもっと喜べたのにね、とついダークサイドに引き込まれそうだったが、俺は踏ん張った。
「で、研修期間が終わったからレビューと承認審査は頼むよ。ほら、先週作ってたシステム設計書」
沼田さんのその言葉で、俺は一気にダークサイドに落ちる。あれは多分周防が発表したほうがいいからとかなんとか、沼田さんは話していたが、全く聞こえなかった。変な汗が吹き出して息苦しい。額の汗を手で拭った時沼田さんが流石に心配してくれた。俺は、大丈夫です、という言葉を最後にトイレに逃げ込んだ。
トイレの洗面台で顔を洗う。顔のパーツ無くなるんじゃないかってくらい、長時間顔を洗っていた。鏡には自分とは思えない青白い顔が浮かび上がっている。その鏡の端にチラッと長谷さんの後ろ姿が映った気がした。
咄嗟に鏡に向き合い、怯えた自分の顔を見たら、なんだか無性に笑えてきた。あんなブラック企業で働いてても大丈夫だったのに、俺って意外に弱いんだな。そう思った瞬間心が少し軽くなった。
今回のレビューは先週沼田さんに確認してもらっているので、今回は長谷さんと2人きりでのレビューだった。
今回の案件は小規模なので会議室ではなく長谷さんの席でレビューしてください、と備考欄に記載して今日の夕方にカレンダー登録する。
2人きりになりたくない、そういった他意はなかった。
瞬時にカレンダーの変更アラートが飛んできたから慌てて中身を確認すると、会議室が予約されていた。
指定された時刻、会議室には先客がいて、長谷さんと3人で話していた。会議室のガラス越しに長谷さんと目があうと、会議は早々に切り上げられた。俺は3人と入れ替えに会議室に入る。
「ごめん、こっちの都合で会議室にして」
いえいえ、と答えながら俺はモニタに資料を映し出す準備をした。
さっき顔を洗ったせいか、自分でもこんなに落ち着いていられることにびっくりしながら、資料の説明を一通り終える。
「相変わらずよくまとまってるね」
あんなに怯えていたのがバカらしくなるくらい長谷さんは、長谷さんだった。違うのは胸の痛みを抱えている俺の方だ。ありがとうございますと言おうとした時に長谷さんが言った。
「資料は問題ないけどひとつ、この実装スケジュール、今週後半の沼田の案件は大丈夫?」
沼田さんの案件? そう思い、顔を上げて長谷さんと目が合う。
「沼田から聞いてない?」
問い詰められているわけではないが、長谷さんの顔があの朝と同じように思えて、顔をそらして答える。
「はい……聞いていないので、後で沼田さんに確認しておきます」
俺のおかしな挙動で変な間ができてしまった。
「周防……」
いつも、何事に対しても簡潔かつ的確に話す長谷さんが、言い淀んでいる。長谷さんは今、何を思っているんだろうと思うと気が狂いそうだった……。
「俺は今日まだ会議続くから、沼田に話を聞いて難しそうだったら後で俺に報告して」
本当にそれが長谷さんの言いたいことなのか確かめることはできない。
「はい、ありがとうございます。失礼します」
俺は会議室から逃げ出した。
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