システムエンジニアがとんでもない開発をはじめました。

まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある？

天国と地獄

昨日まで天国だった職場。たった1日でこんなにまで世界は変わるものなのか。
職場では長谷さんを直視できなかった。長谷さんとの接触は普段から少ない、それだけが救いだった。

今日は金曜日だから、この1日を乗り切れば、ただただその思いだけで過ごした。
定時ダッシュで帰り、スーツを脱ぎ捨てベッドに潜り込んだ。胸が痛くて昨日のこと、そして今日の朝のことを思い返す余裕などなかった。

土日は土日で地獄だった。
何度も何度もあの日のことを思い返し、やり直せるのなら、と想像する。しかし結局は、タクシーに乗らずに自宅に帰ること以外正解はなかった。なぜならば、俺の下心が事態を混迷させ、俺の下心そのものを、長谷さんに否定されたのだから。

人生でこんなに長く重い土日を初めて経験した。でも、この暗闇を抜け出してもあの日には戻れない。
そう思い至る頃には日曜の夕方だった。

いい加減お腹も空いたし、コンビニまで行くか、と立ち上がって思い出す。
カバンの中の忌まわしいキット、そして長谷さんのワイシャツだ。
キットは袋を二重にして頑丈にくるみ、ワイシャツは紙袋に入れて、家を出た。

クリーニング屋にワイシャツを預ける時に、ふと、長谷さんは今頃何してるんだろうと思った。

明日から俺と顔を合わせなくてはならいことを憂いて、俺と同じような暗闇にいることを想像すると、吐きそうだった。
クリーニングに出すがそれは長谷さんに返すためではない。そう自分に言い聞かせ、キットの袋をコンビニのゴミ箱に捨てた。

帰り道夕焼けを見たら、今まで思い出すまいと閉じ込めていた記憶から、「すおー」という甘い声が漏れ出してきて、少し泣いた。