システムエンジニアがとんでもない開発をはじめました。

まちがった尿道開発で世界線変わったんだけど質問ある？

幼児返りと暴れる邪心の混沌

このカオスな状況を3行で説明するのは非常に難しい。とにかく、ついさっきまで酒を流し込んでいたのにも関わらず、喉が渇いて言葉が出ない。事態が飲み込めないのだ。

「すおー、ちょっと手伝ってよぉー」

俺は周防すおう、社会人4年目にして3ヶ月前大手企業に転職したSE。今、俺に手伝いを要請しているのは、転職先の上司、長谷GMはせゼネラルマネージャーである。

俺が押し黙っているのはパワハラによるものではない。どベンチャー(ブラック)経験者はパワハラなんかで黙らない。
ベンチャーソルジャーはどんな仕打ちにも耐え、どんな問題にも立ち向かってきた。しかしそんな俺でさえ狼狽し、手をこまねいている。

混乱の要因はまずひとつ、
ここは会社ではなく長谷さんの家のベッドの上であること。

もうひとつはその長谷さんが、俺と同じ方向を向く形で、真っ裸で！ 俺の腕の中で！ 座っていることである。

「すおー、おねがいですおー」

韻踏んでんじゃねえよ！ 草も生えねぇ！
クソみたいなライムもスルーできずに硬直していると、今の面白かってたでしょ？ とでも言いたげな顔で長谷さんが振り向いてじっと見つめてくる。酒も入っているからかいつもより血色がよく、目が潤んでいる。

……かわいい。

思わずゴクリと喉を鳴らす。純粋なる邪心が胸と下半身を膨らませるが、それを押し沈めて声を絞り出す。

「手伝うって……何を……」

俺は長谷さんの前に転がっている、見たこともない器具を見て息を飲む。

「こうやって支えてて、動かさないでね」

そう言うと、長谷さんは行くアテのなかった俺の両腕を掴んで自身の息子にあてがい、ローションをかけようとボトルを掴む。

「えーと、こうやってー」

ああっ！ もうローションの大半がシーツの上じゃねーか！ 幼児返りか！ キャラ全然違うだろ！！ 語尾も！

そう、長谷さんは全然こんな人ではないのだ。

裸の長谷さんを後ろから抱きかかえ、一見ロマンチックに見える絵面と、俺の心情が、激しく一致しなさすぎて、むしろ笑えてくる。
長谷さんが意味不明な器具にもローションをかけようと1人格闘する最中、俺は幼児返りしてしまった彼と、この不可解な状況をどうにか収束すべく、ここまでのあらましを思い返す。