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第10話 男の経験 ※
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サニアは背中に覆い被さり、俺の太腿から尻を撫で回す。気持ち悪さが駆け上がり、目の前が一段と暗くなった。
「レジー、私も同意のない交尾をしたくない。もし同意してくれるのならば、履物をずらして、ベッドの上に四つん這いになるんだ」
サニアが体を起こし、俺に選択を迫った時、一瞬ダーニャを連れて逃げ出そうと思った。しかし道義的な理由よりも認めたくないことがあった。それは俺が皇紀リベリオに掴みかかった理由。
皇帝に抱かれたいと思っている自分自身の欲望。
納得しているつもりだった。どんなに奉仕しても皇帝は俺に指一本触れなかった。皇帝の選んだ妃はとても可憐な男性だった。
しかし納得できていなかったから、リベリオの言葉に逆上し掴みかかってしまったのだ。望み焦がれた陛下の寵愛を、どうでもいいと一蹴するその態度に、逆上してしまった。リベリオは俺と違い真に国のことを考えていたのに。
俺はゆっくりとベッドに膝をつき、履物をずらした。
「ああ、少し震えているね。皇帝からの寵愛は一度もなかったのか?」
リベリオに掴みかかった時、示し合わせたように陛下が部屋に入ってこられた。そして仰った。「リベリオを襲う気だったのか」と。絶望と安堵が入り混じる不思議な体験だった。最後まで寵愛の対象ではなかったのだ。それが露呈しなかった安堵と、露呈しない絶望で、心が2つに割れ、しばらく動けなかった。
「大丈夫。エルフも雄と交尾をする。エルフは誉高き雄ほど人気がある。なぜだかわかるかい?」
サニアは尻の割れ目に沿って指を這わせ、窄まりに柔らかく触れた。
「征服欲が満たされるからだよ。人族だって同じさ。1度皇帝に寵愛を願い出たらよかったのに。嬉々としてここを犯してくれただろうよ」
粘性のある何かが滴り落ちてきた。僅かに振り返ればサニアが唾液を垂らしている。嫌悪感が胸を締めつける。しかし、男に貞操などない。そう言い聞かせ痛む胸を服ごと握りしめた。
「ああ……ほら、欲しがっているよ。なんて可愛いんだ」
唐突に指が差し込まれ、その感覚に上半身まで揺らしてしまう。
「ああ、ああ。でも自分では弄っていたのかな? ずっと、こうして欲しかったんだね」
羞恥で顔に熱が募り、目頭に集約されていく。それが溢れないよう固く目を瞑った。ミオもダーニャも生活のためにしていることなのだ。凋落貴族の犯罪者が、くだらない矜持で逃げ出してはならない。
サニアの指が腹側の何かに当たって、条件反射的に体を仰け反らせる。そして腕を折り、窓側を向いてベッドに顔を埋めた。窓枠に綺麗に月が収まって見えた。
皆が求める強い男は、男に抱かれることを望み、そして未だに心から愛した者と一つになれると信じている。こんな事態になってもまだ、少女のように夢見ているのだ。それが情けなくて仕方がなかった。
なにも見たくない、そう願い目を閉じかけた時、窓にすっぽり収まった月が欠けた。
「サニア、同意はしていないようだぞ」
窓の外から声がしたと思ったら、サニアは指を引き抜きそのままベッドから落ちた。その理由はすぐにわかった。首がやけに長く、頭に鹿のような紅いツノが2本生えた異形の種族が、窓の外に浮かんでいるのだ。
かろうじて顔だけは人に近く、その表情は憂いをたたえていた。
「迷惑だったかな? もし、助けが必要だったら、一緒に行こう」
碧い肌が月明かりにヌラヌラと反射する。その神々しい姿と、優しい声に誘われ、差し出された大きな手を握った。立ち上がる時、履物をずり上げ、振り返る。サニアは股を開き腰を抜かしていた。その奥にある防具を持っていきたかったが、それよりも連れて行きたい人がいた。俺が振り返るとともに手を引かれ、窓の外に投げ出される。
眼下の玄関先にダーニャが走り出してきた。
「ダーニャ!」
「ああ、あれも連れていっていいか?」
形容し難い怪物は、スイと玄関先まで降下してダーニャを抱き上げる。俺を右手に、ダーニャを左手に抱え、夜の星空に急上昇した。
「レジー、私も同意のない交尾をしたくない。もし同意してくれるのならば、履物をずらして、ベッドの上に四つん這いになるんだ」
サニアが体を起こし、俺に選択を迫った時、一瞬ダーニャを連れて逃げ出そうと思った。しかし道義的な理由よりも認めたくないことがあった。それは俺が皇紀リベリオに掴みかかった理由。
皇帝に抱かれたいと思っている自分自身の欲望。
納得しているつもりだった。どんなに奉仕しても皇帝は俺に指一本触れなかった。皇帝の選んだ妃はとても可憐な男性だった。
しかし納得できていなかったから、リベリオの言葉に逆上し掴みかかってしまったのだ。望み焦がれた陛下の寵愛を、どうでもいいと一蹴するその態度に、逆上してしまった。リベリオは俺と違い真に国のことを考えていたのに。
俺はゆっくりとベッドに膝をつき、履物をずらした。
「ああ、少し震えているね。皇帝からの寵愛は一度もなかったのか?」
リベリオに掴みかかった時、示し合わせたように陛下が部屋に入ってこられた。そして仰った。「リベリオを襲う気だったのか」と。絶望と安堵が入り混じる不思議な体験だった。最後まで寵愛の対象ではなかったのだ。それが露呈しなかった安堵と、露呈しない絶望で、心が2つに割れ、しばらく動けなかった。
「大丈夫。エルフも雄と交尾をする。エルフは誉高き雄ほど人気がある。なぜだかわかるかい?」
サニアは尻の割れ目に沿って指を這わせ、窄まりに柔らかく触れた。
「征服欲が満たされるからだよ。人族だって同じさ。1度皇帝に寵愛を願い出たらよかったのに。嬉々としてここを犯してくれただろうよ」
粘性のある何かが滴り落ちてきた。僅かに振り返ればサニアが唾液を垂らしている。嫌悪感が胸を締めつける。しかし、男に貞操などない。そう言い聞かせ痛む胸を服ごと握りしめた。
「ああ……ほら、欲しがっているよ。なんて可愛いんだ」
唐突に指が差し込まれ、その感覚に上半身まで揺らしてしまう。
「ああ、ああ。でも自分では弄っていたのかな? ずっと、こうして欲しかったんだね」
羞恥で顔に熱が募り、目頭に集約されていく。それが溢れないよう固く目を瞑った。ミオもダーニャも生活のためにしていることなのだ。凋落貴族の犯罪者が、くだらない矜持で逃げ出してはならない。
サニアの指が腹側の何かに当たって、条件反射的に体を仰け反らせる。そして腕を折り、窓側を向いてベッドに顔を埋めた。窓枠に綺麗に月が収まって見えた。
皆が求める強い男は、男に抱かれることを望み、そして未だに心から愛した者と一つになれると信じている。こんな事態になってもまだ、少女のように夢見ているのだ。それが情けなくて仕方がなかった。
なにも見たくない、そう願い目を閉じかけた時、窓にすっぽり収まった月が欠けた。
「サニア、同意はしていないようだぞ」
窓の外から声がしたと思ったら、サニアは指を引き抜きそのままベッドから落ちた。その理由はすぐにわかった。首がやけに長く、頭に鹿のような紅いツノが2本生えた異形の種族が、窓の外に浮かんでいるのだ。
かろうじて顔だけは人に近く、その表情は憂いをたたえていた。
「迷惑だったかな? もし、助けが必要だったら、一緒に行こう」
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「ダーニャ!」
「ああ、あれも連れていっていいか?」
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