17 / 82
に『落下少女が夢に見たのは宙(そら)に浮かぶ月』
8 ホッとココア
しおりを挟む
サキは携帯電話を閉じ、小さな長いため息を吐いた。
「もう怒ってないから帰ってこいって……」
「よかったな」
複雑な気持ちに目を伏せるサキの前に、差し出された白いマグカップ。思わず見上げると、ハルは空いてる片方の手のひらをスッと出した。サキから携帯電話と制服を受け取るとマグカップを渡した。が、サキは口にすることなくマグカップを両手で包んだままジッと中を見つめている。
「変なものは入れていない」
「え?」
「嫌なら飲まなくても構わない」
渡したマグカップをヒョイと持ち上げた。
「あぁ! 飲みます飲みます!」
頭上まで高く上げられたマグカップを取り返そうと、サキは背伸びをして、なんとか掴むと、ハルはサキの目線まで下げて渡した。
「……いただきます」
マグカップに口を近づけると、甘いにおいがした。ホットココアだ。口の中に広がる柔らかな甘み。
時々ピリッと舌を刺激するものがあった。
「何が入ってるんですか?」
「お湯、粉末ココア、蜂蜜、生姜、シナモン、唐辛子……」
本当は味なんてどうでもよかったのかもしれない。
「おいしい……おいしいです……すごくっ」
なによりも落ち着くその温かさに、また涙が出そうになって、我慢しようとするサキは鼻をすすった。
「座って飲みなさい」
二人は向かい合って座った。
ハルは小脇に抱えた制服をテーブルの上へ置くと、重ねた制服の間に隠すように挟んでいたアレを引っ張り出した。
「ングッ!」
ソレを見たサキは動揺して、ココアが気管に入りそうになりむせた。咳払いをするサキは慌てて立ち上がり、ハルの下へ駆け寄るとハルの手元からソレを奪い取った。
「なんで!?」
「俺が洗ったから」
「やっぱりわかってたんですか!?」
「ああ」
眉間にシワを寄せるサキは驚いて開いた唇を噛みしめ、ハルを睨みつけた。
「先に着替えた方がよさそうだ」
制服を差し出すとサキはご立腹な様子で受けとった。
寝室へ向かうサキの揺れるTシャツの裾から、チラリと覗かせる小さなお尻を横目に、置いたままのタオルを引き寄せる。
中から取り出した保冷剤はぬるくなっていた。
「もう怒ってないから帰ってこいって……」
「よかったな」
複雑な気持ちに目を伏せるサキの前に、差し出された白いマグカップ。思わず見上げると、ハルは空いてる片方の手のひらをスッと出した。サキから携帯電話と制服を受け取るとマグカップを渡した。が、サキは口にすることなくマグカップを両手で包んだままジッと中を見つめている。
「変なものは入れていない」
「え?」
「嫌なら飲まなくても構わない」
渡したマグカップをヒョイと持ち上げた。
「あぁ! 飲みます飲みます!」
頭上まで高く上げられたマグカップを取り返そうと、サキは背伸びをして、なんとか掴むと、ハルはサキの目線まで下げて渡した。
「……いただきます」
マグカップに口を近づけると、甘いにおいがした。ホットココアだ。口の中に広がる柔らかな甘み。
時々ピリッと舌を刺激するものがあった。
「何が入ってるんですか?」
「お湯、粉末ココア、蜂蜜、生姜、シナモン、唐辛子……」
本当は味なんてどうでもよかったのかもしれない。
「おいしい……おいしいです……すごくっ」
なによりも落ち着くその温かさに、また涙が出そうになって、我慢しようとするサキは鼻をすすった。
「座って飲みなさい」
二人は向かい合って座った。
ハルは小脇に抱えた制服をテーブルの上へ置くと、重ねた制服の間に隠すように挟んでいたアレを引っ張り出した。
「ングッ!」
ソレを見たサキは動揺して、ココアが気管に入りそうになりむせた。咳払いをするサキは慌てて立ち上がり、ハルの下へ駆け寄るとハルの手元からソレを奪い取った。
「なんで!?」
「俺が洗ったから」
「やっぱりわかってたんですか!?」
「ああ」
眉間にシワを寄せるサキは驚いて開いた唇を噛みしめ、ハルを睨みつけた。
「先に着替えた方がよさそうだ」
制服を差し出すとサキはご立腹な様子で受けとった。
寝室へ向かうサキの揺れるTシャツの裾から、チラリと覗かせる小さなお尻を横目に、置いたままのタオルを引き寄せる。
中から取り出した保冷剤はぬるくなっていた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
思い出を売った女
志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。
それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。
浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。
浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。
全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。
ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。
あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。
R15は保険です
他サイトでも公開しています
表紙は写真ACより引用しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる