上 下
237 / 252
ラグナロク編

237話 エミュレーションサーバー構築

しおりを挟む
拙者は気絶し倒れるシノブ殿を抱き止める。
凄く華奢で今にも消えて無くなりそうに透けている体だ。

白色の【氷結耐性マント】に【ビキニ(黒)】だけと言う背徳的な装備布陣。
しかも良く見ると透けた体から水着の内側の布が透けて見える。

・・・・なんだか裸を見るよりもエロかも知れない。

いかんいかん。
・・・今は戦闘中だ!

サーバー内に隔離された我々は現在精神体プログラムの様な物だろう。
シノブ殿の大半が破壊神ヨグトスに融合されてしまった。

このまま破壊神ヨグトスを倒してしまっても大丈夫なんだろうか?
シノブ殿の精神が本体に戻れた時に、失われた彼女の80パーセントは元に戻らないのだろうか・・・?。

彼女の落した【破壊刀イレース】を拾い装備する。
いつ見ても禍々しい刀だ。

武器攻撃力自体は高くなさそうなのに、この世界の情報自体を斬り裂き消滅させる妖刀か。
自分に刺さったら、拙者も消滅してしまうのだろうか・・・

自宅に警察が来ていて部屋を見られているとすれば、このまま廃人になった方が良いかも知れない。

『あれれ、シノブじゃない。サクラか。』

「レイ殿、お主の力を借りるぞ!咲耶!!シノブ殿を!」

「分かった!」

攻撃後ミカエル殿とスイッチして後退した咲耶殿にシノブ殿を預ける。
破壊神ヨグトスは【聖剣エクスカリバー】を失い、再生出来ない事に戸惑っている所にミカエル殿とDOSドス殿の連続攻撃を受ける。

ハーデス殿の話では現実世界で根源への情報攻撃を行い、それを牽制する事で大半の能力リソースを割いている分弱体化しているらしい。

拙者は【破壊刀イレース】を右手に、左手には【しん童子切安綱どうじぎりやすつな】を装備する。
ミカエル殿の剣技【プレモディアルライト】とハーデス殿の極大攻撃魔法アルティメルスペル【コーラルヘイレス】とDOSドス殿の【イグナイトストライク】が重なる様に同時発動する。

再充填時間リキャストタイムが24時間の無属性最大の剣技と魔法と銃撃が一点に重なり、破壊神ヨグトスの左手を吹き飛ばし装備している【天之尾羽張あめのおはばり】諸共弾き飛ばす。

腕が消滅すると同時に弾き飛ばされた【天之尾羽張あめのおはばり】も消滅する。

今しかない!
【縮地】を使い一気に距離を詰める。

破壊神ヨグトスの胸部に剣技【十文字刹那じゅうもんじせつなきわみ】を深く、より深く刻み付ける様に意識して刀を振るう。

しかし瞬間的に破壊神ヨグトスの右腕が【しん童子切安綱どうじぎりやすつな】の刃を直接掴み出血しながら受け止める。

「うんなろぉぉぉぉぉ!」

しかし、刀を掴んだ右腕ごと力づくで【破壊刀イレース】を振るい跳ね飛ばす。
切断された右腕が一瞬黒く輝き【しん童子切安綱どうじぎりやすつな】が砕け散る。

「こっの野郎・・・」

この後に及んで武器破壊をしやがった。
・・・ガクンと突然体の力が一気に抜ける。

「うおぉ!!?」

これが妖刀のSP消費か・・・想像以上だ。
片腕を飛ばすだけで総SPの三分の一程度持って行かれた。

態勢を崩し思わず距離を取り膝を付く、すぐさま【乱れ桜吹雪みだれさくらふぶき】をストレージから取り出し装備する。
その瞬間に周囲を取り巻く星々が勢い良く天高く舞い上がって行く。

何だ!?
何が起きている?

「うう、何が起きているの?」

「シノブ、目を覚ましましたか?」

どうやらシノブ殿が目を覚ました様だ。
咲耶殿に支えられながら、ゆっくりと立ち上がる。

あんの野郎・・・シノブ殿の体にベタベタとしやがって・・・
安堵の中で緩み切ったあの顔がムカツク。

「フン、どうやら成功した様だな。」

ハーデス殿が満足そうに周囲の光景を眺める。

そして破壊神ヨグトスも両腕が再生しきらない状態で「今すぐ止めろ!」と大声で叫ぶ。

「一体何が起きているんだ?」

ミカエル殿がハーデス殿に問い質すと、ハーデス殿は満足げに話し始めた。

「分割払いで社内のサーバーを1台分購入して、このフロア以外の情報を買い取ったのだ。」

「・・・・つまり、どういう事でござるか?」

意味が分からない。
社内のサーバーを買うとは?

そうこうしている間に、周囲を覆っていた無数の光が全て上昇し消える。
周囲は完全な暗闇に包まれて、周囲を照らす光は拙者達自身の身体だけとなる。

「AIとしてのNPC情報とゲーム情報を我の買ったサーバーに移し、SMOの新しいエミュレーションサーバーを造ったのだ。そして偽神ヨグトスの侵入出来ない様に回線を遮断したのだ。」

つまり、SMOゲームサービス終了と同時にゲームデータをコピーして造られた情報そのものを別サーバーに転送して、そのサーバーだけをネットワークから遮断したと。
そんな事が可能なのか?

ハーデスの会社の凄腕システムエンジニアが総力を尽くして 次元上昇アセンションを阻止したと言う事か。

つーかそのエミュ鯖っていくらするんだ?
「SMOのゲームデータ」と「版権」と数億年分の情報を保有している「ChatGPT」の如く進化した「NPCのAIの情報」と「社内サーバーの一部」だろ?

版権だけでも普通に考えて軽く数億円を越えるんじゃないか?
ハーデスは一生ただ働きさせられるんじゃないだろうか・・・。

「き・・・貴様等・・・我が悲願を・・ゆるさん。ゆるさんぞ!!貴様等の全てを八つ裂きにしてくれる!」

両腕を失い再生機能も停止し、シノブ殿の顔で怒りの表情を浮かべる。

「はーはっはっは!!弱体化が進んでいる様だな!泣け!喚け!そして・・・死ね!」

ハーデス殿がいつもに増してノリノリだ。
どうやら現実世界での攻防が彼のテンションをおかしくしているのかも知れない。
半ばヤケクソにも見えなくもない。

・・・逆に脳がウィルス的な物に汚染されたりしてないか心配になる。

両腕を失った破壊神ヨグトスは巨大な影の様な物体を地面から吸い上げる様に吸収し、巨大な真の姿を現す。

その姿は暗黒神ザナファの様に、8本腕に蜘蛛の下半身を足して頭部には両腕の無いシノブ殿が融合した不気味な姿だった。

「天使軍の協力で偽神ぎしんは大半の能力を制限されて、もう再生機能も使えないだろう。終わらせるぞ、この悪夢ナイトメアを!」

ハーデスの合図で破壊神ヨグトスに対峙する形で陣形を取る。

拙者はシノブ殿に【破壊刀イレース】を手渡す。
拙者はアイテムストレージから【鐵斫くろがねきり】を取り出し装備する。

これが本当の最終決戦でござる!
この戦いを終わらせて皆と現実世界へ必ず戻ってみせる!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

ブラック企業「勇者パーティ」をクビになったら、魔王四天王が嫁になりました。~転職先はホワイト企業な魔王軍〜

歩く、歩く。
ファンタジー
※第12回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。応援ありがとうございました!  勇者に裏切られ、剣士ディックは魔王軍に捕まった。  勇者パーティで劣悪な環境にて酷使された挙句、勇者の保身のために切り捨てられたのだ。  そんな彼の前に現れたのは、亡き母に瓜二つの魔王四天王、炎を操るサキュバス、シラヌイだった。  ディックは母親から深い愛情を受けて育った男である。彼にとって母親は全てであり、一目見た時からシラヌイに母親の影を重ねていた。  シラヌイは愛情を知らないサキュバスである。落ちこぼれ淫魔だった彼女は、死に物狂いの努力によって四天王になったが、反動で自分を傷つける事でしか存在を示せなくなっていた。  スカウトを受け魔王軍に入ったディックは、シラヌイの副官として働く事に。  魔王軍は人間関係良好、福利厚生の整ったホワイトであり、ディックは暖かく迎えられた。  そんな中で彼に支えられ、少しずつ愛情を知るシラヌイ。やがて2人は種族を超えた恋人同士になる。  ただ、一つ問題があるとすれば……  サキュバスなのに、シラヌイは手を触れただけでも狼狽える、ウブな恋愛初心者である事だった。  連載状況 【第一部】いちゃいちゃラブコメ編 完結 【第二部】結ばれる恋人編 完結 【第三部】二人の休息編 完結 【第四部】愛のエルフと力のドラゴン編 完結 【第五部】魔女の監獄編 完結 【第六部】最終章 完結

好き勝手スローライフしていただけなのに伝説の英雄になってしまった件~異世界転移させられた先は世界最凶の魔境だった~

狐火いりす@商業作家
ファンタジー
 事故でショボ死した主人公──星宮なぎさは神によって異世界に転移させられる。  そこは、Sランク以上の魔物が当たり前のように闊歩する世界最凶の魔境だった。 「せっかく手に入れた第二の人生、楽しみつくさねぇともったいねぇだろ!」  神様の力によって【創造】スキルと最強フィジカルを手に入れたなぎさは、自由気ままなスローライフを始める。  露天風呂付きの家を建てたり、倒した魔物でおいしい料理を作ったり、美人な悪霊を仲間にしたり、ペットを飼ってみたり。  やりたいことをやって好き勝手に生きていく。  なぜか人類未踏破ダンジョンを攻略しちゃったり、ペットが神獣と幻獣だったり、邪竜から目をつけられたりするけど、細かいことは気にしない。  人類最強の主人公がただひたすら好き放題生きていたら伝説になってしまった、そんなほのぼのギャグコメディ。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

処理中です...