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ラグナロク編

230話 LINK

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破壊神ヨグトスが【影分身】を使い5体の分身体を生み出し、一瞬で全員の背後を取る。

そして全員の影に剣を突き立てると、特殊技能スキル【影縛り】が発動し全員が一斉に身動きが取れなくなる。
・・・成功率100パーセント!?

【影分身】の最大出現数も無視。
【影縛り】の成功率もゲーム設定を逸脱している。

破壊神ヨグトスはこの世界の全てを管理・改変出来るんだ。

破壊神ヨグトス装備が全て消え学生服姿へと戻る。
そして私の方にゆっくりと歩み寄って来る。

シャルとセーニアとデイアとクリス君の身体が消滅し、エネルギー体へと変換され周囲を取り巻く星々の中へと組み込まれて行った。

『さて、当初の予定通りシノブを頂きます。安心して下さい、他の皆さんは現実世界に戻しましょう。その方が揺らぎが大きいですからね。』

破壊神ヨグトスが回復魔法を使い私の欠損した左腕を修復する。
そして座り込んでいる私に、とても柔らかな笑顔で手を差し伸べる。

ここでお別れだ。
でも皆が無事で帰れるならそれで良い。

痛かったり辛かったり悲しかったり色々あったけど、現実では体験出来ない経験は凄く楽しかった。

私が全てを諦めたのが分かったのか、拘束していた影縛りが解ける。

私は破壊神ヨグトスの手を取ろうと右腕を伸ばす。
お互いの手が触れそうな距離になった瞬間に、フィールド全体に向けて声が響いた。

『ふん。ようやく見つけたぞ!!座標を固定するのに少し時間が掛かったが・・・我は天才だからな。待たせたな!』

良く知った声が響き、皆が驚く。

私は思わず周囲を確認する。
【索敵】にも反応は無い。

「この声はハーデスか!?」

「ログアウトして元の世界に戻ったんじゃ?」

確かに暗黒神ハーデスハーちゃんの声だ。

一体どこから話しかけているんだろうか?
それにこれは世界放送ワールドチャットなんじゃないか?

この世界のどこかに居るのか?

『・・・・・』

破壊神ヨグトスは何かを察した様で私の手を握ろうとするが、見えない壁の様なモノに阻まれ一定距離で腕が燃え溶ける様に消滅した。

しかし、消滅した腕はすぐに修復する。
破壊神ヨグトスは上空を睨み私から距離を取った。

『我は暗黒神ハーデス!冥府を統べる王だ!偽りの神を名乗る者を裁きを与えに来た!』

巨大な複数の黒い雷が破壊神ヨグトスに降り注ぐ。
轟音と衝撃が周囲を揺るがす。

その瞬間に破壊神ヨグトスの分身体が消滅し、全員の【影縛り】の呪縛が解かれた。

『・・・忌々しい。』

破壊神ヨグトスは全身にダメージを受け、ボロボロに崩れた身体へと変貌していた。

ガシャン! ガシャン!
  ガシャン!  ガシャン!

宇宙の様なフロアにガラスが割れる様な音が次々と鳴り響く。
何が起きているのか理解出来ず皆は周囲を警戒する。

私は再度【索敵】を使い周囲に暗黒神ハーデスハーちゃんを探すが反応はやはり無い。
・・・少なくともこのフロアには存在しない。

ガシャン! ガシャン!
  ガシャン!  ガシャン!

「ハーデス殿!何処に居るでござるか!?」

「今の黒い雷は!?」

ガシャン! ガシャン!
  ガシャン!  ガシャン!

サクラと咲耶が叫ぶも返事は無い。
そしてガラスの割れる音は何度も続いている。

ガシャン! ガシャン!
  ガシャン!  ガシャン!

『会話ログを拾っている暇が無い!聞け!現在天界の神々6名と天使22名を巻き込んで、この世界の情報改竄クラックしている!シノブと繋がっている極僅かな糸を遮断出来ない様だからな!取り敢えず下手に動くな!そして喋るな!!』

「この世界はサーバー内に有るのか!?神々ってプログラマーとかSEとかなのか?」

「並列次元がどうのはウソなのか?」

ガシャン! ガシャン!
  ガシャン!  ガシャン!

ミカさんとDOSどっちゃん暗黒神ハーデスハーちゃんに質問するが返答は無い。
その間にもガラスの割れる様な音が何度も鳴り響く。

神々や天使はSE達で、情報改竄クラックって現在進行形で情報を弄っている状態なのか?
要約すると会社でSMO制作スタッフを巻き込んで情報改竄クラックしているって事か。

『ログを動かすな邪魔だ!現在弱体化と強化プログラムを転送している!戦闘準備をしておけ!』

破壊神ヨグトスの方を見ると、巨大な黒い雷が何度も何度も落ち続けている。
しかし彼女はダメージを喰らいながらも何をするでも無く上空を見上げた状態で静止している。

皆の身体が急に光を帯び始め傷が回復し、装備が内側から光を発する。
皆の装備している武器・防具が金色に輝き神々しい光の粒子を纏う。

これが強化プログラムなのか?
私の装備は一切反応が無い。

ガシャン! ガシャン! ガシャン!
 ガシャン!  ガシャン!  ガシャン!
ガシャン!  ガシャン!

先程よりもガラスの割れる音が大きく、そして激しく連続で鳴り響く。

『くそっ!駄目だ遮断される!人数と機材が足りないのか!?いいか!お前たちの装備強化とヨグトスの情報改竄能力を壊した!ヨグトスは此方のPCにウィルスを送って来やがった。ヤツも自己修復をする事を考えるから時間は無いぞ!偽りの神を倒して戻って来い!』

破壊神ヨグトスに降り注いでいた黒い雷は止まり、ガラスの割れる音も鳴らなくなる。



――――完全な静寂



そして辺りに静寂が訪れる。
暗黒神ハーデスハーちゃんの声はもう聞こえる事は無い。

この世界は現実の世界から繋がっている所に在って、暗黒神ハーデスハーちゃんを含めた制作スタッフが情報改竄して破壊神ヨグトスを倒せる状態にしてくれたのだろうか。

「皆!準備はいいか?シノブを守りつつ、弱体化した破壊神ヨグトスを討つ!」

「どれだけ弱体化したかは分からない。武器破壊に注意して一気に攻めるぞ!咲耶、私とシノブを守れ。サクラは前衛に回れ!」

「了解でござる!」

「了解だ!」

「・・・・私は、私も戦う!」

私は【破壊刀イレース】を抜き構える。

暗黒神ハーデスハーちゃんがチャンスを作ってくれた!
破壊神ヨグトスを倒せるかも知れないチャンスを!

『遅いよ、グダグダしちゃってさ。シノブって揺れ易過ぎ。芯を持ちなよ、もう子供卒業したら?前の状態でも僕なら倒せたね。』

「・・・うっさい!・・・・でも、頑張る!!」

自分の武器に説教をされた。
しかも生まれたばかりの子供に子供扱いされるとは。

・・・ってかやっぱりこの刀は私の心を完全に読んでいる様な気がする。

『そうそう、ネカマにイラ付いてる感じの時に似た波長。この感じが1番シノブが安定しているんだよ!』

どんな波長だよ全く・・・
しかし少しだけ心が落ち着いたのは確かだ。

暗黒神ハーデスハーちゃんの声を聞いて皆も落ち着いた表情だ。
この場所はまだ現実世界と繋がっているんだ。

彼は破壊神ヨグトスを弱体化させたと語った。
しかし自己修復するまでの時間稼ぎと言った感じのニュアンスだ。

私は少しだけ考え方を変える。
・・・これは制限時間付きのレイドクエストなんだ。

私達は改めて陣形を組み破壊神ヨグトスと対峙した。
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