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隣国戦争編

028話 戦場の中心でバグを叫んだネカマ

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-オスロウ国 森林平野-

咲耶の暴れていると思われる戦線の中心地には結構距離が有る。

敵味入り乱れ乱戦を繰り広げている。
現在戦場の最前線で戦っている兵士の累計数約4000人以上。

モブが邪魔で邪魔で・・・
広範囲魔法が使って一掃出来たら、さぞ気落ちが良さそうだ。

アルテナの街で巨大な槌を持った女性と赤髪の機械種アンドロイドは、労働組合ギルドで多数の依頼を成功させて英雄と言う評判だった。

そしてオスロウ国では一切消息が掴めなかった。
どうやったかは分からないがイベントを飛ばしてハイメス国へと入国したのだろうか?

咲耶とDOSどっちゃんは当然ゲームイベントを全て網羅している。

ゲームでは無かった裏技的なモノで洞窟を迂回してハイメス国へ行き、そのまま両国戦争ルートへとイベントを進めたと言う事か。

確かにオスロウ国と偽国王討伐イベントを戦争通じて同時に終わらせるのが、ストーリーモードを進める上で最短ルートかも知れない。

今は考えても仕方が無い。
まずは戦闘の中心に居る咲耶に接触しよう。

「サクラは峰打ちで兵士を殺さない様に気を付けてよ!せっかく無印なんだし!」

「しょ、承知したでござる。!」

この世界でサクラに犯罪者印どくろマークが付いたら、イベント進行に支障を来たす恐れが有る。

そもそもゲームのストーリーモードではPKとかPVPは出来ない為、プレイヤーに犯罪者印どくろマークが付く事は無かった。

最初から付いていたとしても表示されない設定だったはず。

この世界では犯罪者印どくろマークが付いただけで、NPCと思われる街の人々と話しすらし難くなる仕様だ。

現実世界でも連続殺人犯として知られた人物と出会ったら逃げ出すの人や通報する人が大半だろうから、当たり前の反応か。

そうこう考えていると、2キロメートル先の戦闘中心地で爆音と共に超巨大な雷の柱が落ちる。

あのエフェクトは【神ノ雷ディトニトル】。

【雷槌ミョルニル】の持つ特殊付加技能だ。
雷属性の広範囲攻撃でダメージも大きいが80パーセントの高確率で対象者を麻痺させる。
特に対人・機械・フィールドモンスター戦闘に特化した技能だ。

再充填時間リキャストタイムが多少掛かる為、そうそう連発は出来ないはず。

雷柱の中心地から敵味方関係無く半径約50メートルの範囲約200名以上の全員が電撃ダメージを受け倒れる。

運良く範囲外に居た両軍兵士は戸惑いを隠せないでいた。
当然その破壊力を目の当たりにした兵士の中には逃げ出す者も居た。

咲耶は戦争に参加している人々を完全にNPCと割り切っているのだろう・・・
無慈悲。

戦闘中心地に徐々に近付き大きな笑い声が聞こえて来た。

長身でスタイルの良い女性がボディラインが分かりやすい黒いタイトなパンツスーツの【OLスーツ】を着用している。

全身に電撃を纏っており、緑髪のショートボブが舞い踊るようにたなびく。
凛とした雰囲気に長い睫毛に涼し気な目元が美しい、その美貌を引き立たせる程に協調された凹凸おうとつの有るスタイル。

「爆雷の女神」と呼ばれているのが分かる気がする。
あの見た目と人智を超越した力を見せ付けられたら崇められるかも知れない。

「あーはっはっは!モブの皆様!イベント進行の礎となって下さい!」

あの見た目はやっぱり咲耶だ、間違いない。
しかし、良く知る見た目に似使わない若い男性の声が周囲に響く。

・・・んん?・・・んんん?

以前に同じ違和感を感じた事が有る。
咲耶はしなやかな声で上品な口調の女性だが、何故か男性特有の低めの声。

私はこの世界でサクラに初めて会った時と同じ衝撃を受ける。

この世界に転移した時に音声変更システムがOFF状態になっている様で自分で設定した声優の声では無く、デフォルト設定言わば地声となっていた。

・・・・まさか咲耶も中身が男性なのか!?
サクラと同じくネカマって事!?

衝撃の事実。
一応真実を確かめないと。

「咲耶!伊集院咲耶!!」

私が力の限り彼女の名前を叫ぶと、不意に彼女と目が合った。

「シ、シノブ!シノブなのですか!?」

彼女は私に気が付くや否や抱き着いてきた。

彼女の体に帯電した電撃で多少ビリビリと痺れたがほぼダメージは無い。
【OLスーツ】を着ていて見えないが華奢な造形の割にガッチリとした筋力が服の上からでも分かる。

見た目は以前と変わらない咲耶のままなのだが、声が男なので違和感が半端無い。
うん、間違いない咲耶は女性キャラクターだが中身は男性だ・・・

私は咲耶に抱き着かれながら頭が真っ白になっていた。

「良かった!生きていたんですね!私嬉しいです!」

咲耶は私を抱きしめながらジャイアントスイングの如く、ぐるぐると高速回転し喜びを体一杯で表現している様だった。

私は頭が真っ白な私は何も考えられなくなり、なすがままに振り回されていた。

「や・め・るでござる!」

サクラが鞘に入った刀で隙だらけの咲耶の頭部を叩く。

盛大な音と共に私の体は宙を舞い頬りだされ地面に激突する、無造作に地面に叩きつけられ10ポイントのダメージを受けた。

状況が飲み込めない周囲の両軍の兵士達も動きを止めて様子を伺っている。

「サクラなのか!サクラも生きていたのですか!それとその声はどうしたのですか?まるで男性の様な声に変貌している様ですが。」

「いやいや、それはこっちの台詞でござる。お主も男性の声ではないか!」

「ああ、これはなんかのバグでおかしくなってしまったみたいです。」

バグ・・・ゲームにおける、プログラムの不具合や誤りの事でデバッグが不十分なゲーム程発生する頻度が高い。

特にMMORPGはアップデートを続ける事で過去の情報更新との摩擦で発生する小さな誤差等で意外な所にバグが発生したりする。

声の件は以前サクラの言質を取っているので、システム的なバグかも知れないが地声なのは間違いない。

「嘘を付け!その声が地声で拙者と同じくお主はネカマなのであろうが!」

「サクラはネカマだったのですか?怪しいとは思っていたのですが・・・そうですかそうですか。」

いけしゃあしゃあと「バグ」と言い張る咲耶とネカマと自白したサクラとの不毛なやり取りが続いていた。

私自身地声だし、サクラもその事を認めていたから咲耶もあの声が地声なのだろう。

女性限定の「深紅の薔薇」の中に2人ネカマが居たとは衝撃的過ぎる。

「シノブは私の事を信じてくれますよね。」

「いや、ごめん無理。私もサクラも地声だしね。」

食い気味で即答してしまう。
残念だがこの件に関しては咲耶が嘘を付いている事は明白だ。

その後、咲耶は膝を付き小声で「ごめんなさい。」と謝っていた。

私達3人は微妙な空気に包まれていたが、周囲のモブ兵士達も何事か理解が追い付かない様で周囲が戸惑いで満ちていたのは言うまでも無い。
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