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武闘大会編

011話 ダンジョン攻略

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-アルテナ湖-

2時間近く森林地帯を走り大きな湖へと到着した。

「つーいたー!なかなか良いペースで到着したんじゃないかな?」

「ぜぇぜぇ・・・全力疾走とか高校生以来で・・・ぜぇ・・ござるよ。」

職業補正とゲーム内ステータス補正が有るとは言え体が超軽い。

天気も良いし気分爽快だ。
フィールドにモンスターが全く居ないのでサクサク進める。

サクラがグロッキー気味なので洞窟前でちょっと休憩をする。
サクラは地面に大の字で倒れ、巨大な胸を大きく上下させながら呼吸を整えていた。

アルテナの街から北東に有る森林地帯を進んだ最奥、巨大山岳地帯に有る湖の洞窟を抜けた先が次の目的地のオスロウ国となる。

ゲームでは山岳地帯に面している洞窟の地下に住む巨大なレッドドラゴンとレイドボス戦が発生する。
単独ソロプレイをしていたら最初の難関部分となる。

基本複数人での戦闘を想定した難易度設定になっているので、ドラゴンの体力がかなり高く攻撃パターンを覚えても倒すまでには時間が掛かる。

戦いを避けれるのであれば避けたい。
咲耶達が先に倒していたらドラゴン自体は居ないはずだけど・・・

レッドドラゴン討伐は回復が得意なヒーラー役の咲耶と、遠隔攻撃に特化しているスナイパーのDOSどっちゃんに方が有利なのだ。

私とサクラでは両方近接職で、レイドボスには私の得意な暗殺特殊技能アサシンスキルや毒・麻痺などの特殊技能スキルや状態異常魔法は一切通用しない。

敵の難易度設定がどうなっているかも不明。

サクラの方が攻撃力も特殊技能スキルによる瞬間火力も高いから優先攻撃順位ヘイトが向き易く、私が補助に回るとしても非常に戦い難い。

「ここまでモンスターが再発生リポップして無いって事はドラゴン倒されていたら居ないのかな?」

「どうでござろう?ゲームでは洞窟はダンジョンフィールド扱いでエリアが変わるし、基本ストーリーモードのレイドボスは該当プレイヤーパーティーがボスエリアに侵入すると発生するから、仮に咲耶達が倒していたとしても拙者らも戦わないといけない可能性が有るでござる。」

あー確かに有りうる。
どのみち戦闘は覚悟しておく必要が在りそうだ。

つい2日前にゲーム内で「深紅の薔薇」全員で戦った時は、ものの10分程度であっさり倒したんだけどなぁ・・・

戦士系上級職のミカさんとサクラが最前線でお互いの体力に気を配り、ミカさんが盾役タンクになり優先攻撃順位ヘイト管理をしながらサクラがミカさんに合わせる様に攻撃調整。

ヒーラーの咲耶が補助・回復に専念し破壊神ハーデスハーちゃんDOSどっちゃんが後方から強力な魔法スペルと長距離射撃で体力を削るという最高の連携だった。

うん?
良く考えたらボス戦では私は足元で攻撃を回避しながらチマチマダメージを与えているだけの役立たずだった。

職業柄、対人戦でしか活躍出来ないというかボス戦では華が無い。

「シノブ殿、そろそろ行くでござる!」

「あ、はい。足を引っ張らないように頑張ります。」

「何で急にテンション駄々下がりになってるでござるか!?」

ついさっきまで元気一杯だった私が急にテンションが下がっている状況をサクラが察して動揺していた。

憂鬱な気持ちを切り替えて、湖の洞窟へと入っていった。




-アルテナ湖 地下洞窟-

アルテナ国とオスロウ国を隔てる巨大山岳地帯の洞窟内はかなり広く巨大で、洞窟内の二酸化炭素や水分や岩壁からのミネラル的な物を吸収して自生発光する苔のような物質で覆われていて洞窟内にも関わらず多少薄暗い程度で視界を遮る暗さではなかった。

・・・と、サクラが細かいゲーム設定を教えてくれた。

「サクラ止まって・・・【索敵】に反応有り。この先3メートル、モンスターが10匹。」

ここで出現するモンスターは巨大な団子虫形状のモンスターと巨大な百足。
人間サイズの蜘蛛、不定形な粘液状モンスターに大型狼と多彩なラインナップだ。

洞窟入口部分は大型狼が巣を作り大量に群れを成している。
小動物や場合によっては人間を主食としているので狩に出やすいのだろう。

「あのー、私が戦ってもよろしいでしょうか?」

「どうしたでござるか?さっきから変でござる。」

「いえいえ、ボス戦を控えているサクラには体力を温存して頂いて、雑魚モンスターは私が露払いをさせて頂きまする。」

「なんか互いの労働条件が釣り合って無い様な気がするでござる。」

「任せて任せて。」

私は極上の笑顔で対応し、無理矢理押し切る。

さ~て、モンスターとの初エンカウントです。

大型狼は集団で狩をする生態で連携が上手い。
ゲームでも最低3匹で1セットのイメージが有る。

岩陰に隠れているが気配を察している様で、此方に少しずつにじり寄って来ている。
序盤の雑魚モンスターなので深く考えなくても此方から高速で斬り込み終了させよう。

特殊技能スキル【影分身】を使い3体の分身体を作る。
そして【縮地】を使い、大型狼の群れに突っ込む。

分身体全員の小太刀を使い通常攻撃の連撃で斬り伏せる。

大型狼の首元を狙い斬り込み首を落す位思いっきり攻撃を加えたが、大量の紫色の血液を吹き出し態勢を崩すがよろめきながら立ち上がる。

むむ、一撃で倒せないのか?かなり防御力が高く装甲が硬い。

通常攻撃では捌くのに時間が掛かる。
暗殺特殊技能アサシンスキル鎌異太刀かまいたち】に切り替え1体1撃で殲滅。

1度に4匹ずつ倒し、残り6匹の咬み付き攻撃を全て華麗に回避する。
噛まれたら痛いし狂犬病とか感染症みたいなの大丈夫かなぁ?
毒回復薬とかで治るのだろうか?

続いて4匹を処理し、残り2匹は刀と小太刀の【二刀流】で分身体3体で同時八連撃で倒した。

常時発動型特殊技能パッシブスキル【二刀流】は戦士職・盗賊職で獲得出来る特殊技能スキルで攻撃力が武器の能力分上昇する。

大型狼の死骸が灰色になり粒子の様に舞い上がり消滅し、小型の宝石に変化する。
換金アイテムのみで装備アイテムドロップは特に無い。

ゲーム設定の問題だろうか?
死骸はドロップアイテムに変化する。

別パターンとして食肉用アイテムになるモンスターは不思議な事に死骸が消滅しない。

まぁマンガ肉っぽいものがドロップしたら変だしね。
この辺りはゲーム設定と少し違うっぽい。

ドラゴン等は全身素材になるんじゃないかな。

「こいつらかなり硬いよ。ゲームでの最高難易度で2撃だったのが、戦った感じ倒すのに4~5撃位だから、もっと強化されている感じだよ。」

「厄介でござるな。シノブ殿の暗殺特殊技能アサシンスキルが有って良かったでござるよ。」

「でしょう!もっと褒めて!」

上機嫌になった私は一応後方警戒をサクラに任せ先行する。
特殊技能スキル【索敵】で回避可能な戦闘は避け体力温存を重視して進む。

洞窟内部はゲームと同じ作りになっており、敵モンスターも想定した配置と攻撃パターンだったので時間は掛ったが地下3階層のレッドドラゴンが控える大扉の前に到達した。

「ちょっと休憩させて・・・しんどい。」

SPが切れたらしく動く気力が無くなった。
アイテム回復も可能だがボス戦を控えているので節約する。

サクラの話ではアルテナの街の道具屋や雑貨屋には蘇生薬やSP回復薬は売っていなかったらしい。

低位の回復薬【ポーション】や【毒消し薬】は普通に売っていた様だ。

店員に聞くと「復活薬?そんな神具の様な薬は聞いた事が無い。」と返って来たらしい。
どうやらこの世界での復活薬は非常に希少なアイテムらしい。

ゴツゴツした洞窟の地面に仰向けに寝そべり背筋を伸ばす。

200匹近くのモンスターを倒しただろうか、大扉に到達するのに6~7時間近く掛かったと思う。
結局途中からサクラにも参戦してもらったが全体の90パーセントは私が倒した。

「お疲れ様でござる。シノブ殿、かっこよかったでござる!」

サクラの労いの言葉が嬉しい、自分が役に立てたのは良かった。

何故だろう・・・
ふと、過去の記憶が脳裏を過る。

中学生の時、バスケ部に所属していた。
3年間自分なりに頑張ってきたけれど結局1軍レギュラーにはなれなかった。

高校に入学してからは部活に入らず、即帰宅してSMO三昧な日々。
確かに楽しかったけれど、今思えば何かが違っていた。
人生で初めて他人の役に立てて、その事を褒められて嬉しいと感じる。

私は妙にリアルな充実感を堪能していた。
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