恋愛騎士物語アフター!

凪瀬夜霧

文字の大きさ
上 下
8 / 59
【クラウル×ゼロス】ゼロスの結婚狂想曲

おまけ1:暗府の見解

しおりを挟む
 クラウルの結婚式ということもあり、暗府から数人が会場準備にきてくれたのだが……。

「あの、暗府の先輩達? どうして皆そんな変装してるんですか?」

 会場設営の責任者でもあるランバートが戸惑いの声を上げるのも無理はない。暗府の面々はラウル以外、何故かスタッフらしく変装している。
 ネイサンは老執事風だ。グレーの混じる白髪に顎髭、メイクで皺も表現している。近くで見ないと分からないレベルだ。
 同じくリュークスは従者になっている。髪を撫でつけ折り目正しく。普段のチャラさはどこにもない。
 極めつけはカーティスだ。完璧なメイドを演じている。

 というか、この人達は上司の結婚式を祝いにきたんじゃないのか?

「ボスの結婚式だから、お手伝いしたいからこの格好なんだよん」
「ですね。先程お会いした時は随分緩んだ顔をしていましたし」
「あんな浮かれたボス、見た事ないよな」

 まぁ、言わんとしている事は分かった。ランバートもそれは感じたのだ。
 結婚式当日の準備の為、クラウルにはどうしても一足早く帰ってきてもらいたかったのだが、その間の彼はもの凄く緩んだ顔をしていた。余程旅行が楽しかったらしく、なかなか表情が戻らない。戻ったとしてもまだ幸せ一杯な感じだった。

「カーティス、リュークス、先に二人で二階のベッドメイキングをしてきなさい。滞りなくね」
「サイドボードにいい香油仕込んどきますよ」
「シーツも皺一つないようにしないと」

 なんて、下世話な事を言いながらルンルンと出て行くカーティスとリュークスを見守り、ランバートは苦笑した。

「それにしても、少し意外です」
「ん?」
「暗府の皆さんがゼロスを受け入れている事です。良かったんですか?」
「何がだい?」
「クラウル様に見合わないとか、そういうのなかったんですか?」

 ちなみにランバートの時はあった。全部を実力でねじ伏せたが。
 問われたネイサンはキョトッとした顔をして、次には大いに笑った。

「ないよ、そんなの」
「ネイサン先輩は特にクラウル様の信者のような感じもありますが」
「確かにボスの信者ではあるけれどね。それと恋人は別物。むしろゼロスは凄いと思うよ。あの人の隣に立とうという気持ちがあるんだから」

 その言葉だけで、何となく察する事が出来た。

「ボスは神様。ですか?」
「まぁ、近いかな。そこまで距離を置いていないけれど、やっぱりね」

 一般隊員と団長の間にある溝はだいぶ埋まってきているが、根本にはあるのだろう。それを感じるのは何となく、寂しい気がした。

「何より、あの人の夜の相手なんて絶対に無理だし」
「え?」
「ある意味拷問だからね。仕事に真面目すぎる人が手に入れた手練手管で貪られるんだよ? 快楽だって行き過ぎれば地獄。あの人のテクで開発されたら全身性感帯の万年発情期になりそうで怖いし」
「あ…………ははっ」

 ちょっとなりかけていると、ゼロス本人も気にしていた。やっぱりそういう事なのかと乾いた笑みが浮かぶ思いだ。

「ゼロスは偉いね。そういうのをちゃんと受け入れているし」
「まぁ……」
「何より、あの人にあんな浮かれた蕩け顔させるなんて、普通はできないものだよ」

 目を細め、少し寂しげに言うネイサンを見つめるランバートは複雑な思いだった。
 暗府は常に気を張っている。だから本来は気の抜けた顔などしていない。クラウルは最たるものだろう。
 そんな人の気持ちを穏やかに緩ませられる。それだけで愛情の深さが分かるものだ。

「最高の結婚式にしてあげましょう」
「ん? ふふっ、そうだね」

 楽しげに笑うネイサンもまた、ランバートと同じくどこかホッとした顔をするのだった。

END
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...