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【ユーリス編】本編余談

5話:罪と甘美な花の蜜

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 宿に戻って、俺はマコトの体を綺麗にした。タネヤドシの媚薬が肌に残っているだけで体は疼くはずだ。意識がないままのマコトの体を抱きながら、中も指で綺麗に洗った。綺麗に着せて、解毒薬を飲ませる。そして後ろにも解毒の薬を指に纏わせて塗り込んだ。媚薬に犯された体は指の一本程度簡単に飲み込んでいく。

「っ」

 強い匂いを放つのに、その気にはならない。奇妙な感覚に俺はただただ罪悪感に押し潰された。
 こんな事になるなら、側にいればよかった。ギルマスに預ければ大丈夫だなんて楽観的な考えなど持たなければよかった。国際問題になってもいいから、竜化して飛び越えてしまえばよかった。
 他国で竜人族が竜化するのはよほどの緊急事態か、危険域からの脱出以外は認められない。敵意があると取られ、国際問題になりかねない。ティアマットの子を連れて行ったのは危険域からの脱出扱いになる。だから問題なかったが。

「すまない」

 未だに体は熱を孕み、指先が触れるだけでヒクリと震える。おそらく盛られた媚薬は純正のタネヤドシの媚薬ではなく、混ぜ物がされていたんだろう。より深い快楽を得るためにそのような薬を作る商人もいる。そういう薬は解毒薬でも効果が現れるのが遅い。

「すまない、マコト」

 苦しかっただろう、怖かっただろう。部屋に煙が充満しただけでも怖かったはずだ。人族は炎だけでも死んでしまう。炎を弾く竜人族の分厚い装甲もなければ、天人族のような全精霊への加護もない。魔人族のようにいかなる場所でも深淵の闇に逃げ込む能力もない。人族は、全ての種族の中で一番弱い。
 人族も獣人族も子の数は多いのだが、その分生命の危機も多い。多少の炎でも死んでしまう、剣なども簡単にその体を貫く、数センチの水に顔を埋められるだけで死んでしまう。たかが二階から落ちただけでも死ぬ事があるんだ。あまりに弱い。
 マコトはそれを十分に理解している。だからこそ、怖かっただろう。男に体を弄ばれ、意図していないのに熱を持つ自身を感じて怖かっただろう。どれだけ叫んだのか。どれほど俺の名を呼んでくれたのか。俺はそれに、応えられなかった。
 柔らかな体に触れて項垂れて、俺はひたすらに謝っていた。

 マコトが目を覚ましたのは連れ帰ってきて一時間ほど後。未だ媚薬に朦朧としながらも、俺を見つけて安堵し、黒い瞳に沢山の涙を浮かべた。まるで俺の存在を確かめるように腕が伸び、首に絡みつくとそのまま抱きついてくる。俺は驚きながら、それを受け止めた。

「ユーリスさん…」
「すまない、遅くなって」
「ユーリスさん」

 謝罪の言葉しか出てこない俺に、マコトは嬉しそうに柔らかな音で名を呼んでくる。俺の鼻にマコトの甘い匂いが絡みついて、体が燃えるように熱くなっていく。そんな浅ましさに、俺は自身を叱責した。

「すまない、本当に。少し手間取って遅くなってしまった。あんな奴らに触れさせるなんて」

 謝らなければ。思って口にすれば、マコトは涙に頬を濡らしながらも首を横に振る。咎めの言葉がない事に安堵しつつも、俺は俺自身をなじっている。
 マコトの体は未だに熱い。潤んだ黒い瞳、薄く開く唇、上気した肌、触れる体の震え。何より薄れない匂いは発情しているのかと思えるほどに濃い。竜人族は発情期以外でも子を残せるし発情するが、その季節になると余計に酷い。好ましい相手の匂いが鼻先について、常に体を熱くする。マコトの匂いはそれと同種で、俺は頭の中がガンガンと揺れた。

「……きついのか?」

 問いかけて、マコトは震えたまま動きを止めた。逡巡するように唇を引き結びながら、瞳は熱を孕む。明らかに反応しているのが分かった。同時に、求めるように見つめる瞳も分かった。モジモジと股を擦り寄せるその先は、誰の目から見ても腫れて主張をしている。

「さっき解毒の薬を飲ませたが、まだ効いてこないか」

 出せば楽にはなるだろう。一度熱を孕んだ体はそう簡単に静まらない。熱を解放した方が楽になるのは理解できる。だが、助けられなかった俺が触れていいのか、これだけは迷った。
 だが、マコトの方が限界だったのだろう。ジワリと黒い瞳に涙の膜を作り、伸び上がるように頬に触れて唇に触れた。触れるだけの不器用なキスは、だが俺の理性を揺らす事に成功している。

「マコトっ」
「ふっ、うぅ……」

 僅かに、息継ぎのように離れた隙間に名を呼べば、熱に浮いた甘い声が漏れ出てくる。鼻に掛かる切ない声に、俺はオズオズと応じた。
 唇を軽く舐めれば、マコトは素直に俺を招き入れてくれた。たまらずに舌を差し込みそこかしこをくすぐり、舌の根も絡めていくと快楽になれない体は一気に熱くなっていく。音を立ててやればそれにも反応し、小さな唇から飲み込めなかった唾液がこぼれ落ちていく。その光景すらも淫靡で、俺の理性は音を立てていく。
 確かめるように体に触れた。柔らかな体は手に吸い付くように馴染む。胸を、腹を撫でてやれば腕の中の体は悶えた。その艶めかしい姿に俺も苦しくなる。初めてだ、こんなに興奮しているのは。彼と交わる事だけに意識がいき、それはダメだと引き留めている。
 俺はこっそりと魔法で自らの根元を戒めた。反応してしまうのは雄としてもう仕方がないと許すが、これをマコトにぶつける事だけはしない。熱を孕み腫れて主張するそこは適度に痛みを脳に伝え、俺の理性を引き戻してくれる。

「マコト、気持ちいいのか?」

 壊れそうなほど何度もマコトは頷いた。その表情には快楽はあっても拒絶は感じない。胸にしなだれ身を任せる姿には信頼を感じる。信じているんだ、俺の事を。だからこそ、俺は拒まれていない。
 ズキッと、胸に痛みがある。俺はこの信頼を裏切れない。例えば幼い子が兄を慕うように、親しい者に安心しきっている。俺が肉欲に溺れれば、産まれ始めた感情を突きつければ、関係は崩れてしまう。
 ならばやはり、俺は今だけこの体に触れよう。求められるままに導き、熱を吐き出させてあげよう。

「はぅ! ユーリスさん」

 硬く張り詰めた胸の突起を摘まみ、こねるように弄れば切なく高い声が上がる。縋るように何度も浅く口づけて、マコトを見つめている。見つめる瞳に、誘う様な様子を見る。欲している様な切なさが見える。

 まさかだ、色欲がそう見せているだけだ。

 思い、同時にきっと俺のを見れば、マコトは尻込みするだろうと思った。

「いいのか?」
「お願い……熱い」
「戦ったばかりで、抑えがきかないかもしれない。それに」
「あ……」

 からかう様に言って、俺は視線を自分の浅ましい欲望へと向ける。マコトの視線もそれを追って、一つ震える声を漏らした。
 どれだけ熱に浮かされても、徐々に覚めてきたのだと分かるマコトはその大きさにおののいた。完全に立ち上がった高ぶりは堂々と天を向いて反り返っている。人族の子供の腕ほどには長大で、大人の拳ほどには太い。これを受け入れるのは苦痛が伴う。ほぼフィストファックだ。泣き叫ぶ者だっている。
 俺はマコトの高ぶりを握り込み、軽く上下した。トロトロと既に溢しているそこは滑らかに動かせる。嬌声を上げたマコトはピンと体を強ばらせ、背を弓なりに反らせた。

「俺のも、握ってくれないか?」

 欲望が溢れる。この色気に飲まれる。マコトはおずおずと俺の高ぶりに手を伸ばし、上下に撫でる。それだけで俺の背には鋭い快楽と達せられない痛みが走った。

「くっ、あぁ、気持ちいいよ……」

 言えば少し嬉しそうな顔をする。それが実に愛らしかった。
 マコトのものを高めるように上下に扱き、先端を押し込むようにする。硬く張ったカリにも指をかけて刺激すれば、マコトは何度も嬌声を上げて体を捻り頭を振る。
 それでも不器用に俺のものに触れてくれるのだ。愛しく、そして可愛い。小さな手では俺のものは余るだろうが、それでも必死でしてくれるのは嬉しい。
 俺はマコトが熱を放ちやすいように動きを加速させていく。細い体は強張り息を詰め、そして一際高く声を上げると俺の手の中に溢れるほどの精を放った。

「あ……ごめんなさい」

 幾分冷静になった声が、俺に何故か謝罪する。あたふたとしている理由が分からない。謝るのは俺の方だ。こんな風にしてしまった俺が悪いんだ。

「どうして謝るんだ?」

 問うと切なく見上げ、俺の手に手を重ねてすり寄ってくる。切ないその表情が何を思っているのか、俺には難題だ。

「苦しいのは収まったか?」
「はい」
「それなら、後は寝よう」
「……え?」

 驚いた様な表情に、俺の方が驚いた。目を丸くして見つめれば、マコトはちょっと驚きながらも、なんだか怒っているようだった。

「あの、ユーリスさんは」
「俺はいいよ。適当に処理しておくから」

 流石に一度出さないと眠れない。戒めた根元が痛むし、脈を打って辛い。出来れば早く離れて、シャワーを浴びながら吐き出してしまいたかった。
 だがマコトは俺を睨み付けると足元に下がり、そして俺の滴を唇で舐めとるとキスをした。

「マコト!」

 驚きと焦りで俺は思わず大きな声を上げてしまう。怯えられる、そう思ったが返ってきたのは気丈な瞳だった。初めて見る強情な光に俺は彼を分かっていなかったことを知る。こんな顔もするのだ。マコトは意外と、頑固なのかもしれない。
 不慣れな拙い口淫は欲望を吐き出すには弱く、そのくせ欲望は煽る。小さなマコトの口の中に俺の長大なものが飲み込まれていくその淫靡な光景は俺の欲を過剰に煽る。舌を使ったり、キスをしたり、吸い付いたりしながら手で竿を刺激されれば自然と俺の息も上がっていく。ドクドクと加速する心音は、もう自分ではどうにもならない。

「うっ、げほっ」
「無理をしなくても」
「俺がしたいんです!」

 喉奥を突いて咽せたマコトに声をかけたら、睨み付けられた。そして再び俺のものを飲み込んでいく。

 俺も、限界だった。

 魔法でかけた戒めを解き、俺は自分で竿を握った。マコトは驚いた様に俺を見る。それに緩く笑い、俺はほんの少し自分を許した。何よりもう、限界だ。こんなに煽られて、どうして我慢出来る。

「あの!」
「いいから、唇でしてほしい」

 自身で握り扱くなんて間抜けな姿だが、なりふりは構わない。マコトは分かってくれて、俺の先端を唇で扱いて舐めてくれる。それだけで俺の体は上り詰めていく。たまらない。

「くっ、はぁ」

 自慰で……いや、過去のセックスでもこんなに興奮したことはない。背骨の辺りが重く痺れる。そんな射精感は覚えがない。焼き切れそうだ。

「マコト、出る……離れて」

 最後の理性を絞り出して俺は伝えた。唇を離して欲しい、そう言ったのにマコトはあろう事か俺の高ぶりを喉奥まで導き吸い上げた。
 狂おしいほどに熱く気持ちのいい吐精に、俺の腰は浮き上がりそうだった。それを必死に我慢する。この状態で腰を押し込むように振れば、マコトの喉を突いてしまう。なおも彼の口の中で吐き出しながら、俺は自分の感情に気づいた。

 俺は、マコトを愛している。過分な欲望も、そこには確かにあるのだと。
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