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14章:蜜月の夜
4話:翌日
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目が覚めた時、真っ先に腰が痛かった。それでも体はこざっぱりとしていたし、受け入れた部分は痛まない。隣で抱き込むようにファウストは眠っている。
後半、記憶はかなりない。というよりは、多分飛んでいたんだと思う。朧気ながら随分な事を口走っていた気がするが、記憶にないことにした。
この人の性欲というものは恐ろしい。やっぱりあの飢えたような目は危険信号だった。ただ、その危険度合いを見誤ったのだ。完全にアウトコースだ。
腰も痛いが、やっぱり擦られすぎた内壁が違和感だ。入り口だって広がってグズグズになっていなければいいが。流石にこの年で緩くなるのは勘弁してほしい。
と、文句を言いたい部分はあった。だがそれ以上に気持ちを埋めてくれるものが大きい。満たしているのは、とても熱くて幸せな気持ちだった。
「起きたのか?」
不意に声がする。後ろから肩口に乗った頭を、片手で撫でた。
「おはよう、ランバート」
「おはよう、ファウスト」
なんだか照れくさい挨拶をすると、同じ事を思ったのか背に感じる体が熱くなる。首を回して見てみると、やはり少し赤いようだ。
布団の中で体を動かし、正面からファウストを見る。随分すっきりした顔をしていたが、まだどこか物足りなさそうだ。
「まだ足りないのか?」
頬に触れてみると困った顔をされる。だがもう、押しつける事はなさそうだ。
「痛むだろ」
「そりゃもう」
これみよがしに言えば、申し訳なさに大きな体が縮こまる。一応、悪いとは思っているようだ。
笑ってしまう。知らない顔を沢山知る。切羽詰まった顔や、憎らしく睨む顔、欲情に濡れた瞳、噛みつく様な焦り。この全部が自分に向かっている。自分だけに。
ゾクリと内側が震える。嬉しいというほど無邪気で明るい気持ちではない。優越感と独占欲だ。
「どうした?」
髪を梳かれて問われる。曖昧に笑って、どうにか沈めた。持ち得なかった感情に、ランバート自身が振り回されている。最近の悩みだった。
「今日はこのまま、部屋にいるか」
「それって、気持ちが乗ったらいくらでもヤルってこと?」
「そうとも言うな」
ニヤリと笑うファウストを見ると、ダメとは言えないだろう。流石に体の調子を考えてだが、付き合わないわけじゃない。
「だがとりあえずは休め。俺も落ち着いた」
「あれだけ出せばな……」
出されたもので中がグズグズで、抜かれた途端に逆流して大変だった。ぼんやりと、『この人なら男でも孕ませるかも』なんてあり得ない事を思ったほどだ。
厚い胸に寄り添っていると、落ち着いてくる。甘い体臭が鼻孔をくすぐって、心地よい気分にしてくれる。
「ファウスト」
「ん?」
「今度からはどうしようもなくなる前に抱いてくれ」
流石に毎回これじゃ身が持たない。どれだけランバートが若くて体力があっても、この人は遙かに上をいく。せめて一度ですっきりするくらいのタイミングにしてもらわないと。
苦笑した人は耳元に囁きかけるように「善処する」と吹き込んだ。
後半、記憶はかなりない。というよりは、多分飛んでいたんだと思う。朧気ながら随分な事を口走っていた気がするが、記憶にないことにした。
この人の性欲というものは恐ろしい。やっぱりあの飢えたような目は危険信号だった。ただ、その危険度合いを見誤ったのだ。完全にアウトコースだ。
腰も痛いが、やっぱり擦られすぎた内壁が違和感だ。入り口だって広がってグズグズになっていなければいいが。流石にこの年で緩くなるのは勘弁してほしい。
と、文句を言いたい部分はあった。だがそれ以上に気持ちを埋めてくれるものが大きい。満たしているのは、とても熱くて幸せな気持ちだった。
「起きたのか?」
不意に声がする。後ろから肩口に乗った頭を、片手で撫でた。
「おはよう、ランバート」
「おはよう、ファウスト」
なんだか照れくさい挨拶をすると、同じ事を思ったのか背に感じる体が熱くなる。首を回して見てみると、やはり少し赤いようだ。
布団の中で体を動かし、正面からファウストを見る。随分すっきりした顔をしていたが、まだどこか物足りなさそうだ。
「まだ足りないのか?」
頬に触れてみると困った顔をされる。だがもう、押しつける事はなさそうだ。
「痛むだろ」
「そりゃもう」
これみよがしに言えば、申し訳なさに大きな体が縮こまる。一応、悪いとは思っているようだ。
笑ってしまう。知らない顔を沢山知る。切羽詰まった顔や、憎らしく睨む顔、欲情に濡れた瞳、噛みつく様な焦り。この全部が自分に向かっている。自分だけに。
ゾクリと内側が震える。嬉しいというほど無邪気で明るい気持ちではない。優越感と独占欲だ。
「どうした?」
髪を梳かれて問われる。曖昧に笑って、どうにか沈めた。持ち得なかった感情に、ランバート自身が振り回されている。最近の悩みだった。
「今日はこのまま、部屋にいるか」
「それって、気持ちが乗ったらいくらでもヤルってこと?」
「そうとも言うな」
ニヤリと笑うファウストを見ると、ダメとは言えないだろう。流石に体の調子を考えてだが、付き合わないわけじゃない。
「だがとりあえずは休め。俺も落ち着いた」
「あれだけ出せばな……」
出されたもので中がグズグズで、抜かれた途端に逆流して大変だった。ぼんやりと、『この人なら男でも孕ませるかも』なんてあり得ない事を思ったほどだ。
厚い胸に寄り添っていると、落ち着いてくる。甘い体臭が鼻孔をくすぐって、心地よい気分にしてくれる。
「ファウスト」
「ん?」
「今度からはどうしようもなくなる前に抱いてくれ」
流石に毎回これじゃ身が持たない。どれだけランバートが若くて体力があっても、この人は遙かに上をいく。せめて一度ですっきりするくらいのタイミングにしてもらわないと。
苦笑した人は耳元に囁きかけるように「善処する」と吹き込んだ。
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