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3章:How about tea?
4話:パーティー当日
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パーティー当日、会場の側に特設されている医務室は静かなものだった。始まって既に一時間は経つのに、人は来る気配がない。
まぁ、医務室なんてのは暇な方がいい。皆、怪我もなくやっている証拠だ。
エリオットはお茶を片手に見える庭先に視線を向ける。
その時、突然と扉がノックされて、エリオットは弾かれるように立ち上がった。
「はい」
声を掛けて扉を開けると、近衛府の者が一人の女性に手を貸しながら入ってきた。
見目のいい、十代後半の女性だ。長い金の髪を結って花のピンで止めた、大きな緑色の瞳の女性は目鼻立ちがよく、利発そうな雰囲気がある。ピンク色のドレスを纏ったその足下は、けっこう高いヒールの靴だ。
「足を挫いてしまったようで」
「そこに座らせてください。あと、この服に合うヒールのない靴を用意して」
女性を椅子に座らせると、すぐに部屋を出ていく近衛府の動きは流石にキビキビしている。見送って、エリオットは女性に近づいた。
どう言ったらいいか。隊員なら問答無用なのだけれど、相手は女性だ。下手に触れると怒らせてしまうかもしれない。
そんな事を思っていると、女性の方がニッコリと微笑みかけてくれた。
「すみません、少し見栄を張ってしまって、履き慣れない靴で来てしまいまして」
「あっ、いいえ。せっかくのパーティーですから、お気持ちは分かります」
意外と、普通に話せそうな人だ。エリオットは微笑んで、彼女の前に膝を折った。
「まずは、足を診せてもらいますね。靴を脱いで……触れても構いませんか?」
「えぇ、勿論」
女性はすぐに靴を脱いでくれる。エリオットはそのまま挫いただろう右足首を丁寧に診た。
「軽い捻挫で間違い無いと思います。足の指などは、動かせますか?」
「はい。力も入ります」
「それなら、包帯で固定してしばらく冷やしましょう。腫れて熱を持つようだと、痛みが増しますから」
手早く包帯を取り出し、動かないように足首を巻いていく。その上から氷水に浸したタオルを当てる。このまま少しの間安静にして、様子を見て馬車の用意をしてもらおう。
「失礼します。靴をお持ちしました」
先ほどの隊員が入ってきて、手に綺麗な靴を持ってくる。そして、傷まない左足を差し出した。
「サイズは、これで問題ないでしょうか?」
「えぇ、平気よ。有り難う」
履いてみて確かめた彼女はニッコリ笑ってお礼を言う。それに、隊員の方が照れたようだった。
「十五分から二十分ほど、様子を見たい。馬車の用意をそのくらいに合わせて欲しいんだけれど」
「かしこまりました」
隊員が再び消えて、室内はまた静かになる。
患部は腫れる様子もない。多分、大丈夫だとは思うのだが。
「一応、家に戻って急に腫れが悪化したり、ひどい痛みがあったり、三日ほど経っても痛みが引かないようなら病院に行ってください。骨や筋に異常がある場合もあります。あと、痛みが取れるまではあまり暖めないように。熱を持つと途端に痛む事がありますから」
「ご丁寧に、有り難うございます」
ニッコリと笑ってお礼を言う彼女は、続いて楽しそうに笑う。鈴を転がすような声に、エリオットは首を傾げた。
「あの、何か変な事を言いましたか?」
「あっ、ごめんなさい。違うんです。お城のお医者様はとても親切なんだなって、ちょっと嬉しくて。その後の心配までしてくださって。それに、想像以上にお若い方なのにも驚きました」
「え? あぁ……」
途端に顔が熱を持つ。少しお節介にしすぎただろうか。つい隊でのやり方が出てしまった。恥ずかしくなってくる。
「お医者様は、お城に務めて長いのですか?」
「あぁ、いえ。私は城の医師ではなく、本当は騎士団の医師なのです」
「騎士団の?」
途端、花のような笑顔が曇った。それを見ると少し後悔する。騎士団の事を、貴族はあまりよく思ってはいない。この感情が、騎士団の人員不足の一つの要因でもある。そんな事は、分かっていたのに。
けれど違った。彼女はとても気遣わしい顔をしたのだ。
「お辛い事も多いと聞きます。騎士団のお医者様なら、お辛い事も大変な事も多いでしょ?」
「えぇ、まぁ」
「大変なご苦労をされて国を守っている方々に、私たち貴族は酷い言葉を浴びせているわ。本当に、恩知らずでごめんなさい」
そう言った彼女が頭を下げるから、エリオットは驚いてあたふたした。騎士団に入って長いが、こんなことを言われたのは初めてだった。
「あの、顔を上げてください。私たちはそれを全うすると決めたのです。皆、揺らがない信念の元に職務に当たっているのですから、当然のことで。だから、申し訳無いなんてそんな」
どうしたらいいか。辺りを見て、ふと目にクッキーが飛び込む。お気に入りの店の物だ。
エリオットはそれを手に取ると、彼女の前に差し出した。
「お嫌いですか?」
「え? いえ、好きです」
「お一つどうぞ」
おずおずと手が伸びて、摘まんで食べた彼女の顔がみるみる幸せそうになる。元の華やかな表情だ。
「美味しいです。どこのお店のものですか?」
「西地区に、雑貨やアンティーク店の多く並ぶ通りがあるのはご存じですか?」
「えぇ」
「その並びにある、『La mer』という店です。小麦の味に、甘みが控え目で。種類も豊富なのですよ」
「今度、行ってみますわ」
楽しそうに言った彼女に笑いかけて、エリオットも同じように笑った。
そんな穏やかな時間を壊すように、乱暴に扉が開いた。そして一人の男がのそのそと入ってきて、エリオットを見て鼻で笑う。
「こんなところで女口説いてんのか? あぁ?」
明らかに酩酊している男は、エリオットと女性を見てニタニタ笑う。女性は明らかに嫌そうな顔をしている。が、この足では動けるはずもない。
彼女を背にかばいながら、エリオットは前に出た。
「ここは医務室です。何か、ご用ですか?」
「医務室? 医務室ってのは、女を落とし込む所なのかい?」
下卑た笑みを深くした男が、エリオットの肩に手をかける。大柄な男でエリオットよりも長身だ。意外と強い力で捕まれて、エリオットも驚いた。
「まぁ、丁度ベッドもあるみたいだしな。今からいい所ってなら、見学でもさせてもらおうか」
「……私に対する侮辱は聞き流せても、女性に対する下品な暴言は許せません。撤回し、すぐにここを立ち去りなさい」
肩に掛けられた手を払い、エリオットは毅然として言う。だが、睨み付けた男の行動はまったく紳士なものではなかった。
「何だと!」
怒鳴ったかと思えば躊躇いもなく拳が振り下ろされる。強かに殴られたエリオットはあまりの勢いと唐突さに防御の暇がなかった。口の中に僅かに血の味が広がる。
更に男は乱暴にエリオットを押し倒すと、蹴り飛ばす。流石に腕でガードしたが、飛ばされて背中を打ち付けた。
「お医者様!」
女性の悲鳴が聞こえて、エリオットはよろっと立ち上がる。素手の相手と油断したが、粗暴なのもいたものだ。
女性に向かっていく男との間に割って入ったエリオットは、もう一度睨み付けた。
「やめなさい!」
「うっせぇ!」
堅く拳が握られたのが分かった。エリオットもそれが振り下ろされるなら、応戦しなければと身構える。だが、その拳が振り下ろされる事はなかった。
男の肩に掛かった手がある。次の瞬間には、男は投げ飛ばされて床に転がっていた。クリーム色の髪が揺れる。
「オスカル?」
立っていたオスカルは、だが普段の彼とは違っている。柔らかな気配はなく、全身から刺すようなオーラを放っている。青い瞳に遊びはなくて、鋭くて怖い。表情からも笑みはなく、無表情のまま見下ろしていた。
これは、殺気?
「何を、したの? ねぇ、言ってごらんよ」
投げられただけで昏倒している男に、それは無茶な要求だ。オスカルは足で軽く男の頭を蹴る。徐々に怒りがこみ上げてきているのが、見ているだけで分かった。
気づいたら飛び出して、怒りのままに男を踏みつけそうなオスカルにしがみついていた。
「お願いです、もうやめてください。これ以上は過剰防衛です」
「……嫌」
「お願いですから!」
これ以上は怪我をさせてしまう。今も怪我をしたかもしれないけれど、これ以上は本当に。
何より、オスカルの経歴に傷がつくし、処罰なんて事になりかねない。相手は貴族だ。騒ぎ出すかもしれない。
溜息が一つ。次には、オスカルの体から力が抜けた。
「分かったよ。君のお願いじゃ、仕方ないね」
「あ……」
よかった。そう思ったら力が抜けた。途端に傷が痛む気がするが、それは言わないことにした。
大きな音でもしたのか、数人の隊員が駆けつけてくる。その中にランバートの姿もあった。
「大丈夫ですか、オスカル様」
「平気。そいつは拘置牢に入れといて」
隊員が二人きて、伸びている男を抱えて出て行く。その間にランバートが女性に声をかけて、彼女を立たせていた。
「あの、お医者様」
エリオットの側で立ち止まった彼女は、鞄の中から白いハンカチを出して手渡してくる。そして一つ、しっかりと礼をした。
「助けていただき、有り難うございます。どうか、お大事になさってください」
「有り難うございます」
ハンカチを手に、なんだか恥ずかしくなる。かっこ悪い姿を見せてしまった事を今更ながら恥じた。
「後を任せる、ルイーズ」
「かしこまりました」
近衛府副官のルイーズが丁寧に一礼して去って行く。誰もいなくなった医務室は途端に静かになった。
オスカルが扉を閉めて、あろうことか鍵をかけてしまう。驚いて声をかけたら、有無を言わさぬ視線が返ってきた。
「あの、鍵を閉めたら人がこれない」
「君の仕事はおしまいだから」
「え?」
「陛下から閉会の挨拶があった。もう人が帰って行くところだよ」
時計を見て、時間が過ぎているのに気づく。
オスカルがゆっくりと近づいてくる。その雰囲気は今までのような柔らかさがない。明らかに怒っている。
「あの」
「まずは傷を診るから、座って」
「自分で」
「座って」
声を荒げるわけではない。けれど、逆らう事もできない。気圧されて、ベッドに腰を下ろす。オスカルはその前に来て、顔を見て瞳をつり上げた。
「顔殴るなんて、最低。あーぁ、口の中も切ってる」
「あまり痛みませんから、平気です」
「少し色が違うよ。もう、最低だ」
言われてみれば、少し腫れているような気はする。でも、あまり痛みはしない。あまり見た目にこだわりがないから、気にはしていない。
でも、オスカルは違うと言いたげだ。唇に形のいい指が触れるのは、くすぐったい。
「あの、オスカル?」
「しっ、黙って」
近づいていた顔が、更に近づく。呆けていた唇に、柔らかな唇が重なった。何が起こっているのか理解が追いつかなくて、思考が停止する。触れるだけの唇は、その間に離れてしまった。
「オスカル、あの……」
「嫌?」
「嫌とか、そういうことじゃ」
「じゃあ、何?」
「あの……」
今のは、キスだと思っていいのか。途端に体が熱くなった。心臓が壊れそうになる。体の痛みも全部忘れるくらいだ。
「いい加減気づいてよね、エリオット。ちょっと鈍すぎない?」
「あの、何がっ! ……ふっ」
言いかけた唇をまた奪われる。今度はさっきとは違う。柔らかな舌が無防備な唇の中に潜り込んで、絡まってくる。
頭の芯がジンと痺れる。思考が停止する。何も考えられないまま、彼の触れる唇にだけ意識が向かった。
「君が好きだよ。君も、そうでしょ?」
「なん、で……?」
「気づかないと思ったの?」
クスクス笑う声がする。息が触れるような距離で。声はいつもと同じなのに、雰囲気は違う。生々しくて、鋭くて、飢えている。
「君が僕を見ている以上に、君を見ていたんだよ、僕は。ずっと、五年以上」
「五年以上って」
「君を見つけて声を掛けた時から、僕は君が好きだったよ。それからずっと、君を見てた。君にその気が無いのはすぐに分かったからさ、なんとかその気になってもらいたくて。でも君、全然アプローチしてくれないんだもん。このまま終わっちゃうのかなって、苦しかった」
困ったように青い目がすがめられる。頬に触れる手が温かくて、心地よかった。
「怒ったのはね、自分に。君を守りたかったのに、傷をつけられたから。ごめんね、痛いでしょ」
「貴方に守られるほど弱くはありません。私だって、日々訓練はしています」
「分かってるよ、元騎兵府副長さん」
自分でも忘れているような経歴を口にされて、エリオットはカッと熱くなる。それを見透かしたように、オスカルは笑った。
「それでも、守りたいよ。だって、好きな人に怪我なんてして欲しくないでしょ?」
それは、エリオットだって同じだ。それに、危険が多いのはオスカルの方だ。
「エリオット」
覗き込まれる瞳に吸い込まれそうになる。色んなものが溶けていく。三度触れた唇に、もう驚きはない。受け入れて、絡みつく舌が触れる度に背に小さな電流が走る。体が震えて、鼓動が早くなって、彼以外のすべてが見えなくなっていく。
「ねぇ、僕の恋人になってみない? それとも、怖い?」
怖いわけじゃない。動けなくなったのは、描けなかったから。そんな未来は来ないと、思い込んでいたから。
首を横に振って、彼の頬に手を当てる。そして今度はエリオットから、オスカルの唇に触れるだけのキスをした。
「私で、いいのですか?」
「他の人なんていらないよ」
甘く甘く笑ったオスカルの幸せそうな笑顔は、今まで見てきたどんなものよりも輝いていた。
まぁ、医務室なんてのは暇な方がいい。皆、怪我もなくやっている証拠だ。
エリオットはお茶を片手に見える庭先に視線を向ける。
その時、突然と扉がノックされて、エリオットは弾かれるように立ち上がった。
「はい」
声を掛けて扉を開けると、近衛府の者が一人の女性に手を貸しながら入ってきた。
見目のいい、十代後半の女性だ。長い金の髪を結って花のピンで止めた、大きな緑色の瞳の女性は目鼻立ちがよく、利発そうな雰囲気がある。ピンク色のドレスを纏ったその足下は、けっこう高いヒールの靴だ。
「足を挫いてしまったようで」
「そこに座らせてください。あと、この服に合うヒールのない靴を用意して」
女性を椅子に座らせると、すぐに部屋を出ていく近衛府の動きは流石にキビキビしている。見送って、エリオットは女性に近づいた。
どう言ったらいいか。隊員なら問答無用なのだけれど、相手は女性だ。下手に触れると怒らせてしまうかもしれない。
そんな事を思っていると、女性の方がニッコリと微笑みかけてくれた。
「すみません、少し見栄を張ってしまって、履き慣れない靴で来てしまいまして」
「あっ、いいえ。せっかくのパーティーですから、お気持ちは分かります」
意外と、普通に話せそうな人だ。エリオットは微笑んで、彼女の前に膝を折った。
「まずは、足を診せてもらいますね。靴を脱いで……触れても構いませんか?」
「えぇ、勿論」
女性はすぐに靴を脱いでくれる。エリオットはそのまま挫いただろう右足首を丁寧に診た。
「軽い捻挫で間違い無いと思います。足の指などは、動かせますか?」
「はい。力も入ります」
「それなら、包帯で固定してしばらく冷やしましょう。腫れて熱を持つようだと、痛みが増しますから」
手早く包帯を取り出し、動かないように足首を巻いていく。その上から氷水に浸したタオルを当てる。このまま少しの間安静にして、様子を見て馬車の用意をしてもらおう。
「失礼します。靴をお持ちしました」
先ほどの隊員が入ってきて、手に綺麗な靴を持ってくる。そして、傷まない左足を差し出した。
「サイズは、これで問題ないでしょうか?」
「えぇ、平気よ。有り難う」
履いてみて確かめた彼女はニッコリ笑ってお礼を言う。それに、隊員の方が照れたようだった。
「十五分から二十分ほど、様子を見たい。馬車の用意をそのくらいに合わせて欲しいんだけれど」
「かしこまりました」
隊員が再び消えて、室内はまた静かになる。
患部は腫れる様子もない。多分、大丈夫だとは思うのだが。
「一応、家に戻って急に腫れが悪化したり、ひどい痛みがあったり、三日ほど経っても痛みが引かないようなら病院に行ってください。骨や筋に異常がある場合もあります。あと、痛みが取れるまではあまり暖めないように。熱を持つと途端に痛む事がありますから」
「ご丁寧に、有り難うございます」
ニッコリと笑ってお礼を言う彼女は、続いて楽しそうに笑う。鈴を転がすような声に、エリオットは首を傾げた。
「あの、何か変な事を言いましたか?」
「あっ、ごめんなさい。違うんです。お城のお医者様はとても親切なんだなって、ちょっと嬉しくて。その後の心配までしてくださって。それに、想像以上にお若い方なのにも驚きました」
「え? あぁ……」
途端に顔が熱を持つ。少しお節介にしすぎただろうか。つい隊でのやり方が出てしまった。恥ずかしくなってくる。
「お医者様は、お城に務めて長いのですか?」
「あぁ、いえ。私は城の医師ではなく、本当は騎士団の医師なのです」
「騎士団の?」
途端、花のような笑顔が曇った。それを見ると少し後悔する。騎士団の事を、貴族はあまりよく思ってはいない。この感情が、騎士団の人員不足の一つの要因でもある。そんな事は、分かっていたのに。
けれど違った。彼女はとても気遣わしい顔をしたのだ。
「お辛い事も多いと聞きます。騎士団のお医者様なら、お辛い事も大変な事も多いでしょ?」
「えぇ、まぁ」
「大変なご苦労をされて国を守っている方々に、私たち貴族は酷い言葉を浴びせているわ。本当に、恩知らずでごめんなさい」
そう言った彼女が頭を下げるから、エリオットは驚いてあたふたした。騎士団に入って長いが、こんなことを言われたのは初めてだった。
「あの、顔を上げてください。私たちはそれを全うすると決めたのです。皆、揺らがない信念の元に職務に当たっているのですから、当然のことで。だから、申し訳無いなんてそんな」
どうしたらいいか。辺りを見て、ふと目にクッキーが飛び込む。お気に入りの店の物だ。
エリオットはそれを手に取ると、彼女の前に差し出した。
「お嫌いですか?」
「え? いえ、好きです」
「お一つどうぞ」
おずおずと手が伸びて、摘まんで食べた彼女の顔がみるみる幸せそうになる。元の華やかな表情だ。
「美味しいです。どこのお店のものですか?」
「西地区に、雑貨やアンティーク店の多く並ぶ通りがあるのはご存じですか?」
「えぇ」
「その並びにある、『La mer』という店です。小麦の味に、甘みが控え目で。種類も豊富なのですよ」
「今度、行ってみますわ」
楽しそうに言った彼女に笑いかけて、エリオットも同じように笑った。
そんな穏やかな時間を壊すように、乱暴に扉が開いた。そして一人の男がのそのそと入ってきて、エリオットを見て鼻で笑う。
「こんなところで女口説いてんのか? あぁ?」
明らかに酩酊している男は、エリオットと女性を見てニタニタ笑う。女性は明らかに嫌そうな顔をしている。が、この足では動けるはずもない。
彼女を背にかばいながら、エリオットは前に出た。
「ここは医務室です。何か、ご用ですか?」
「医務室? 医務室ってのは、女を落とし込む所なのかい?」
下卑た笑みを深くした男が、エリオットの肩に手をかける。大柄な男でエリオットよりも長身だ。意外と強い力で捕まれて、エリオットも驚いた。
「まぁ、丁度ベッドもあるみたいだしな。今からいい所ってなら、見学でもさせてもらおうか」
「……私に対する侮辱は聞き流せても、女性に対する下品な暴言は許せません。撤回し、すぐにここを立ち去りなさい」
肩に掛けられた手を払い、エリオットは毅然として言う。だが、睨み付けた男の行動はまったく紳士なものではなかった。
「何だと!」
怒鳴ったかと思えば躊躇いもなく拳が振り下ろされる。強かに殴られたエリオットはあまりの勢いと唐突さに防御の暇がなかった。口の中に僅かに血の味が広がる。
更に男は乱暴にエリオットを押し倒すと、蹴り飛ばす。流石に腕でガードしたが、飛ばされて背中を打ち付けた。
「お医者様!」
女性の悲鳴が聞こえて、エリオットはよろっと立ち上がる。素手の相手と油断したが、粗暴なのもいたものだ。
女性に向かっていく男との間に割って入ったエリオットは、もう一度睨み付けた。
「やめなさい!」
「うっせぇ!」
堅く拳が握られたのが分かった。エリオットもそれが振り下ろされるなら、応戦しなければと身構える。だが、その拳が振り下ろされる事はなかった。
男の肩に掛かった手がある。次の瞬間には、男は投げ飛ばされて床に転がっていた。クリーム色の髪が揺れる。
「オスカル?」
立っていたオスカルは、だが普段の彼とは違っている。柔らかな気配はなく、全身から刺すようなオーラを放っている。青い瞳に遊びはなくて、鋭くて怖い。表情からも笑みはなく、無表情のまま見下ろしていた。
これは、殺気?
「何を、したの? ねぇ、言ってごらんよ」
投げられただけで昏倒している男に、それは無茶な要求だ。オスカルは足で軽く男の頭を蹴る。徐々に怒りがこみ上げてきているのが、見ているだけで分かった。
気づいたら飛び出して、怒りのままに男を踏みつけそうなオスカルにしがみついていた。
「お願いです、もうやめてください。これ以上は過剰防衛です」
「……嫌」
「お願いですから!」
これ以上は怪我をさせてしまう。今も怪我をしたかもしれないけれど、これ以上は本当に。
何より、オスカルの経歴に傷がつくし、処罰なんて事になりかねない。相手は貴族だ。騒ぎ出すかもしれない。
溜息が一つ。次には、オスカルの体から力が抜けた。
「分かったよ。君のお願いじゃ、仕方ないね」
「あ……」
よかった。そう思ったら力が抜けた。途端に傷が痛む気がするが、それは言わないことにした。
大きな音でもしたのか、数人の隊員が駆けつけてくる。その中にランバートの姿もあった。
「大丈夫ですか、オスカル様」
「平気。そいつは拘置牢に入れといて」
隊員が二人きて、伸びている男を抱えて出て行く。その間にランバートが女性に声をかけて、彼女を立たせていた。
「あの、お医者様」
エリオットの側で立ち止まった彼女は、鞄の中から白いハンカチを出して手渡してくる。そして一つ、しっかりと礼をした。
「助けていただき、有り難うございます。どうか、お大事になさってください」
「有り難うございます」
ハンカチを手に、なんだか恥ずかしくなる。かっこ悪い姿を見せてしまった事を今更ながら恥じた。
「後を任せる、ルイーズ」
「かしこまりました」
近衛府副官のルイーズが丁寧に一礼して去って行く。誰もいなくなった医務室は途端に静かになった。
オスカルが扉を閉めて、あろうことか鍵をかけてしまう。驚いて声をかけたら、有無を言わさぬ視線が返ってきた。
「あの、鍵を閉めたら人がこれない」
「君の仕事はおしまいだから」
「え?」
「陛下から閉会の挨拶があった。もう人が帰って行くところだよ」
時計を見て、時間が過ぎているのに気づく。
オスカルがゆっくりと近づいてくる。その雰囲気は今までのような柔らかさがない。明らかに怒っている。
「あの」
「まずは傷を診るから、座って」
「自分で」
「座って」
声を荒げるわけではない。けれど、逆らう事もできない。気圧されて、ベッドに腰を下ろす。オスカルはその前に来て、顔を見て瞳をつり上げた。
「顔殴るなんて、最低。あーぁ、口の中も切ってる」
「あまり痛みませんから、平気です」
「少し色が違うよ。もう、最低だ」
言われてみれば、少し腫れているような気はする。でも、あまり痛みはしない。あまり見た目にこだわりがないから、気にはしていない。
でも、オスカルは違うと言いたげだ。唇に形のいい指が触れるのは、くすぐったい。
「あの、オスカル?」
「しっ、黙って」
近づいていた顔が、更に近づく。呆けていた唇に、柔らかな唇が重なった。何が起こっているのか理解が追いつかなくて、思考が停止する。触れるだけの唇は、その間に離れてしまった。
「オスカル、あの……」
「嫌?」
「嫌とか、そういうことじゃ」
「じゃあ、何?」
「あの……」
今のは、キスだと思っていいのか。途端に体が熱くなった。心臓が壊れそうになる。体の痛みも全部忘れるくらいだ。
「いい加減気づいてよね、エリオット。ちょっと鈍すぎない?」
「あの、何がっ! ……ふっ」
言いかけた唇をまた奪われる。今度はさっきとは違う。柔らかな舌が無防備な唇の中に潜り込んで、絡まってくる。
頭の芯がジンと痺れる。思考が停止する。何も考えられないまま、彼の触れる唇にだけ意識が向かった。
「君が好きだよ。君も、そうでしょ?」
「なん、で……?」
「気づかないと思ったの?」
クスクス笑う声がする。息が触れるような距離で。声はいつもと同じなのに、雰囲気は違う。生々しくて、鋭くて、飢えている。
「君が僕を見ている以上に、君を見ていたんだよ、僕は。ずっと、五年以上」
「五年以上って」
「君を見つけて声を掛けた時から、僕は君が好きだったよ。それからずっと、君を見てた。君にその気が無いのはすぐに分かったからさ、なんとかその気になってもらいたくて。でも君、全然アプローチしてくれないんだもん。このまま終わっちゃうのかなって、苦しかった」
困ったように青い目がすがめられる。頬に触れる手が温かくて、心地よかった。
「怒ったのはね、自分に。君を守りたかったのに、傷をつけられたから。ごめんね、痛いでしょ」
「貴方に守られるほど弱くはありません。私だって、日々訓練はしています」
「分かってるよ、元騎兵府副長さん」
自分でも忘れているような経歴を口にされて、エリオットはカッと熱くなる。それを見透かしたように、オスカルは笑った。
「それでも、守りたいよ。だって、好きな人に怪我なんてして欲しくないでしょ?」
それは、エリオットだって同じだ。それに、危険が多いのはオスカルの方だ。
「エリオット」
覗き込まれる瞳に吸い込まれそうになる。色んなものが溶けていく。三度触れた唇に、もう驚きはない。受け入れて、絡みつく舌が触れる度に背に小さな電流が走る。体が震えて、鼓動が早くなって、彼以外のすべてが見えなくなっていく。
「ねぇ、僕の恋人になってみない? それとも、怖い?」
怖いわけじゃない。動けなくなったのは、描けなかったから。そんな未来は来ないと、思い込んでいたから。
首を横に振って、彼の頬に手を当てる。そして今度はエリオットから、オスカルの唇に触れるだけのキスをした。
「私で、いいのですか?」
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BL
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