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19章:建国祭ラブステップ

14話:モテるのはお互い様です(クラウル×ゼロス)

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 パーティーが終わって、色んな視線を感じながらもクラウルと二人で彼の部屋に戻ってきた。
 隣にいるクラウルを改めて見ると、ばっちり新郎姿のままだ。

「どうした?」
「あぁ、いや……似合うなと思って」

 兄の結婚式しか出席経験がないが、兄とはまったく感じが違う。今のこれはコスプレなのだけれど、それでも少しドキドキするくらいには似合っている。長身で体格もいいから、とても様になっている。
 クラウルは自分の姿を改めて確認して、とても柔らかく笑った。

「お前に見せたくて着たんだ」
「え?」
「当然だろ? 仕事でもないのに余興であんなことをする理由は、それしかないだろ」

 当然と告げられる言葉を考えると、ちょっと心臓が五月蠅い。なんだか頬も熱く火照ってくるような気がした。
 というか、この人に壇上で、この格好のままキスされたのか……
 認識すると余計に恥ずかしくなって顔を見る事ができなくなった。

「どうした?」
「あ、いや…………」

 人前でキスとかどんな地獄だろうと思っていたのだが、実際はそんな事を思う余裕はなくて、一瞬で全部を持って行かれた。羞恥心も全部だ。

「人前でキスとか、もうしない……から」

 一応こちらの意志を伝えたゼロスに、クラウルは何故かもの凄く反論したそうな目をした。

「なんで睨むんだ!」
「お前があんなに後輩にモテるとは知らなかった。今後は表でもイチャイチャする」
「はぁ!! 絶っ対に嫌だ!」

 ムッとして反論するゼロスに対し、クラウルは思い切りドスの利いた目をする。間違いなく犯罪者に向ける目だと思うが、これにビビるようではこの人の恋人などやっていられない。睨み返すゼロスは一歩も引かなかった。

「どうして嫌なんだ」
「当たり前だろ、恥ずかしい」
「恥ずかしいものがあるか。お前は俺と付き合っているんだろ。一緒に食事したり、会話したり、たまに手を繋ぐくらい何が悪い」
「普段そんな事してないだろ。それに、俺は恋人っぽく人に見せつけるのは嫌いなんだ。そんな事しなくてもアンタと俺は恋人なんだろ。ドンと構えていればいい」

 竜虎の睨み合いのような重い空気で向かい合う二人は一歩も引かない。だが、こういう時に引かないのはゼロスの甘えでもある。あっちが折れてくれると確信しているから出来る事なんだ。
 しばらくゴゴゴゴゴゴゴゴッという音でも聞こえそうな睨み合いの後、クラウルは大きな溜息をついてガシガシと苛立たしく前髪をかいた。

「お前を他の奴に取られるとは思っていないし、お前が他に誰かを好きになるとも思っていない」
「それなら」
「それでも俺は、腹立たしくなるんだ。他の奴がお前に色目を使うのを想像すると、それだけでイラッとする。お前は俺のなんだってどれだけ主張しても足りないと思ってしまう」
「なっ、そんな……」

 無敵の暗府団長様が見せる嫉妬や狭量が嬉しいなんて、言えるはずもない。これにドキドキしている時点でゼロスに勝ち目なんてないのだ。

「大げさだし、周りの奴らが皆そんなんじゃない。というか俺は非モテだと」
「違っただろ。俺もお前がそう言うし、周囲の様子も仕事の範囲にあったから油断していた。まさかあんな……」
「俺だって今日の今日まで知らなかったよ」

 コンラッドやハリーがさりげなく予防線を張ってくれていた事にも気づかなかった。

 クラウルの手が伸びて、頬に触れる。ゼロスもそれに従って大人しく受け入れる姿勢をとった。触れた唇が柔らかくて、僅かに酒の匂いがした。

「頭の中が真っ白だった」
「しっかりしろ、暗府のボス」
「仕事ではこんな事はない。だが、お前が関わると俺はいつも余裕がない。狭量で、嫉妬深くて、焦ってしまう」

 背中に手が伸びて抱き寄せられる。それを、ゼロスも受け止めた。

「……俺だって、色々焦った」
「ん?」
「アンタを強引に捕まえた時、焦っていた。巡ってきた千載一遇のチャンスを逃がすものかと、必死だった。その後だって俺には余裕なんてなくて、いつもアンタの側にいられるようにと頑張って、それでも追いつけなくて。俺の方がいつも、必死なんだぞ」

 格の違いを思い知る。年齢の差を思い知る。くぐり抜けてきた死線の違いを思い知る。何をしてもこの人には追いつけない。それでも必死に手を伸ばすのは、伸ばすのをやめた途端に遠ざかってしまいそうだから。

「アンタだって、モテるだろ。仕事で女の人引っかけることだってあるし、騎士団の中でもかっこいいって言う人は多いし」
「だが、本気で手を伸ばしてきたのはお前だけだ」
「その幸運を、努力で捕まえ続けているんだよ」

 クラウルは密かにモテる。人の噂をよく聞く。「かっこいい」は当然で、「一度抱かれたい」というのも何度か聞いた事がある。「付き合ってる相手いるのかな」は、何気に刺さるものがある。
 それでも伸ばした手を取ってくれる人を、ゼロスは一生懸命捕まえている。

「……ゼロス」
「なんです」
「好きだ」
「知ってる」
「籍はいつ入れる?」
「…………え?」

 驚きすぎて反応が遅れた。クラウルを見ると、冗談を言っているようには思えなかった。

「冗談?」
「本気だ」
「あの……」
「お前を手元に置いておきたい。どうやら縛らないと、俺は安心しないらしい」

 こんな事を本気で言うのだ、どうしろという。
 確かに、準備だけは整っているんだ。お互いの家族に挨拶をして、結婚を考えている事も伝えて、了承も貰っている。プロポーズもされて、婚約指輪も貰って、やることやっていて……
 とても順調に、色々と準備が終わっていないか??

「嫌か?」
「嫌じゃ、ない」
「それなら!」
「でも心の準備はできていない!」

 このまま押し切るつもりだったのだろうクラウルが舌打ちした。

「心の準備はいつできる?」
「あ、と…………ランバートが結婚したくらい!」
「なにぃ!!」

 クラウルが思い切り唸った。正直、ゼロスはドキドキだ。そして追い詰められたわりにはいい逃げ口だ。

「ランバート達の方が先だろ? それに、あいつのを見れば少し気持ちも固まると思うし」

 彼らは今更焦るつもりはない。当人達は既に夫婦のようなもので、今は指輪のデザインを起こしてもらっている所らしい。これから作るのだ、二ヶ月は最低かかるだろう。それに実家が大きな家なので、そっちも準備がいる。これだけで最低三ヶ月はかせげる!

「……あいつら、いつ式だって言ってた?」
「春くらいを予定して動いているらしい」
「春! ゼロス……」
「譲らない」

 頑としてそこは譲らないと言い張れば、クラウルはグゥゥと詰まり、やがて溜息をついた。

「分かった」
「よし」
「その代わり、ちゃんと式は挙げるからな」
「…………その心の準備も」
「春までにできるだろ」
「……わかった」

 こちらはクラウルが譲る気がないらしい。そういう目だ。
 それに、よくよく考えれば今更な気がする。既に今日、大勢の目の前で新郎姿のクラウルにディープキスをされてしまったのだ。多分、パニクっている間に色々終わる。そんな予感がした。

 とりあえずお互いに妥協できる辺りで話がまとまった。仲直りとばかりにキスをするクラウルに任せ、ゼロスも気持ち良く受け入れる。熱い舌が口腔を撫でるくすぐったさが、徐々にぞくぞくするような気持ちよさに変わっていく。

「さっきの続き、しないか?」
「約束だしな」
「なんだ、嫌なのか?」
「……照れ隠しだよ。分かって言ってるだろ」

 頬が僅かに熱くなる。この人はそれとなく押し流す事も上手いくせに、確認を取りたがる。素直じゃないゼロスはいつも素直に「うん」とは言わないのに、このやり取りを求めてくるのだ。

 クラウルはゼロスを自分の膝の上に向かい合うように乗せてしまう。ジャケットを脱ぎ、タイを引き抜き、ドレスシャツのボタンを三つほど開けて。それだけで危険な色香が漂ってくる。

「この体勢なのか?」
「あぁ。これだとゼロスの全部が見えるし、触りやすい」
「好きだよな、本当に」

 ゼロスとしては恥ずかしい。正面からの正常位と変わらないと思うのだが、クラウルはこの体位を好んでいる。膝の上に座るからゼロスの方がクラウルを見下ろす形になってしまう。それがまた新鮮らしいのだ。

 慣れた手つきでゼロスのシャツのボタンを外すクラウルをジッと見ている。鼻歌でも歌いそうな表情が可愛い。こんな事でそんなに嬉しいのかと思うと、面白いやら愛しいやら。
 ボタンを全て外して肌が露わになる。そこに手を差し入れ、確かめるように手の平全部で触れてくる。そうして触れる肌に唇を寄せ、跡の残らない程度にキスをして。

「っ」
「どうした?」
「好きだよな、アンタ。そういうの」

 大切に、壊れ物のように最初は触れてくる。その手の感触も、唇のくすぐったさも、もどかしくも幸せに感じる。
 ゼロスの言葉に、クラウルは穏やかに笑い頷く。そしてチュッと、僅かに肌に吸い付いた。

「触れたいんだ、全てに。心地よいし、お前を感じる事ができる」
「恥ずかしい」
「だが、嫌いじゃないだろ? お前の顔はそう言っている」

 完全に見透かしている。これを悔しいと思うのはいけないだろうか。
 我が物顔で触れ、唇を寄せて。その柔らかく熱い舌が敏感な胸を刺激すると、途端に体にぞくぞくとした気持ちよさが走った。

「っ」
「本当に敏感だな、ここは。触らなくても十分立ってたぞ」
「嘘だ!」
「疑うか?」

 ニッと楽しげな笑みが見上げてくる。そして見せつけるように、少しぷっくりとした先端を含み、舌で押しつぶす。
 腰から痺れるのはもう癖になっているからだ。下肢が熱くなるのは、この先を期待しているからだ。分かっていても口にはしない。熱い息を吐いて、ゼロスはブルッと震える。
 片方を執拗に吸ったり舐めたり転がしたり。もう片方も指でずっと弄られて、あっという間に痛いくらいに色味が増し、感度が上がってくる。こうなると声が抑えられず、微かに漏れてしまう。
 掠れた声が自分のものだとなかなか認められなかった頃がある。気色悪いと思った事もある。だがそれでこの人が喜んでくれるなら、もういいのかと諦めがついている。
 気持ちいい刺激が強くなって、ゼロスは首に抱きついた。背に腕を置いて、強い刺激に力が入る。そうなれば密着が増して余計にこの人好みの展開になると分かっているのにだ。

 乳首ばかりを弄っていたはずが、気づけば片手が尻を揉んでいる。ズボンの隙間から手を差し入れて直接だ。

「エロ親父」
「流石に傷つくぞ、ゼロス」
「触り方がやらしい」
「ほぉ? では、遠慮無く脱がせる」

 案外年齢は気にしている。とうに三十を超えているクラウルは年寄り扱いを嫌っている。こういう時にその話をすると、間違いなく後でしかえしされるのだ。勿論、エロ方向で。

 紐を解かれ、ズボンを下ろされ尻がひやりとする。そこを撫で回す手つきがやっぱり親父っぽいと思うが、際どい部分に指があると意識してしまう。自然、後孔にキュッと力が入った。

「いい締め付けだ」
「男の硬い尻触って興奮するのか」
「確かめればいいだろ?」

 尻を撫でていた手が不意にゼロスの手を取って前に触れさせる。途端、「うわぁ…………」と声にならない声が出た。
 既に臨戦態勢で、熱く形もはっきりとしている。ぬるりと先端が滑る。
 こんな、筋肉のついた男の硬い体でこんなに興奮しているのかと思うと恥ずかしく嬉しい。クラウルの濡れた黒い瞳が、ギラギラと男の色気を撒いている。

「まずは慣らすからな」
「……お願いします」

 最近はあまり日をおかずに抱き合っているから、完全に硬くなることはない。受け入れも、初めての頃に比べてかなり楽でスムーズだ。
 とはいえ慣しも濡らしもしない部分では受け入れられない。
 慣れた手つきで香油を絡めて指がつぷりと後孔へと埋まっていった。

「ふ……ぅ……」
「受け入れ方も上手くなったな」
「そりゃ、これだけやっていればっ!」
「柔らかくなったしな」

 内側からクニクニと押され、入口だけが広げられる。向かい合った座位ではあまり深くまで指が届かない。
 クラウルの動きを助けるのと、抱きつきたい気持ちもあってゼロスはギュッとクラウルを抱きしめる。肩に頭を預け、たまらない息を吹きかけた。

「っ!」
「?」

 瞬間、クラウルの体がビクッと震えた。感じた事のない反応にゼロスは不思議に思ってクラウルを見る。すると彼は「まずい」という顔で目線をそらした。
 確かこの反応の寸前は、息を吐いた。肩に頭を置いて…………

 ゼロスはニタリと笑う。そして明らかに狙って、耳に息を吹きかけた。

「!」
「アンタ、耳弱いんだ」

 意外な弱点があった。まさかこの人に弱い部分があっただなんて。いつも流されてしまうゼロスは鬼の首を取った気分だ。

「ゼロス、やめろよ」
「その命令はきけないな」

 普段やりたいようにやられているから、ゼロスは今が楽しくて仕方が無い。耳に息をふきかけ、耳たぶに吸い付き、舌を這わせる。その度にクラウルはビクッと体を震わせた。心なしか息も乱れてきている。その変化がまた楽しいのだ。

 そうしてしばらく楽しんでいたゼロスだが、突然と体を持ち上げられてバランスを崩した。驚いている間にピタリと、後孔にクラウルの熱い楔が当たった。

「あ……」
「煽ったのはお前だからな。しっかり受け止めろよ」

 ズズッと、わりと早いスピードで後孔が開かれ熱い楔が埋まっていく。圧迫に苦しくて息を吐いたゼロスは、いつもよりそれが熱く太い事に戸惑ってしまう。

「あっ……つい……はぁ…………あぁぁ!」
「っ! こっちも気持ち良くてたまらない。お前の中も熱いぞ」

 濡れた目でそんな事を言われて、下から深くキスをされて、頭の中が蕩けていく。キスの間にもドンドン楔は埋まっていくのに抵抗できない。やがて根元までそれが埋まり、行き止まりまでしっかりと到達した。

「あぐっ、あ…………っ、深くて、苦しい……」
「お前が育てたんだろ? しっかり味わうといい」
「んぁ! あっ、はぁぁ!」

 今でも十分に深くまで入っているのに、尻を掴まれ割り開かれて更に入ってくる。ぐりぐりと行き止まりを押し上げられて苦しいのに、同時に目眩がするほど気持ちいい。ほんの少し、クラウルが腰を回す。擦りつけるようにされた瞬間、駆け上がった波が頭の中を蕩けさせた。

「イッ! はぁぁ!」

 中イキで腰が動いて、それが更に刺激になって大きな波を呼んでくる。もう目の前を星が飛んでいるのに、更に追い込まれてしまう。なのに腰は自然と跳ねる様に動いて、抑えられない。

「っ、気持ちいいぞ、ゼロス」
「あっ、やっ、背中撫でるなっ」

 腰骨の辺りを硬い手が撫でる。ただこれだけでも腹の中からぞくぞくした感覚がせり上がってくる。内壁が絞るようにクラウルを包んでいる感じがわかる。欲しいと催促しているようで、いたたまれない。
 その状態で下からリズムよく突かれると、ゼロスには何が起っているのか分からなくなってくる。今イッているのか、そうではないのか。向かい合ったまま抱き合って、クラウルの腹筋に自分の昂ぶりが擦れてドロドロに汚している。それがまたいい具合に潤滑油になって、ゼロスは何度も達していた。

「何回イッた?」
「わ……かんな、っ!」
「っ、また中でイッたか。ドロドロだ」

 大きな手が頬に触れて、甘やかすように撫でる。それだけでもぞくぞくと気持ち良くて小さく喘いでしまう。唇が触れて、優しくついばんでいく。遊びみたいなキスが心地よかった。

「ぅあ! あっ、もう嫌、もうイッ! イキたくない!」

 ぞくぞくではなく、びりびりと痺れてくる。力が入らなくて、揺さぶられるまま受け入れて、突き上げられるだけで脳みそまで痺れていく。時々頭の中が真っ白で、昂ぶりが熱くなった。
 軽いお漏らしくらい下肢が気持ち悪い。揺すられ、突かれると昂ぶりからは少量の白濁が押し上げられるように零れた。

「あぁ、俺もそろそろだ」

 妙に色っぽい低い声がして、ドサリと仰向けに転がされる。膝裏を抱えたクラウルが音がしそうなくらい強く奥を抉ると、目の前がチカチカと点滅して、どうしようもない高い声があふれ出た。

「やっ! あっ! ぅあぁぁぁ! イッ…………!!」
「俺もイク」
「――――――っ!!」

 抜けてしまいそうなくらいしっかりと中を抉った、そこから熱が広がっていく。脈をうつ楔が体を染めるようにマーキングをしている。
 ゼロスもまた、自らの腹を汚した。散々に吐き出していたから量こそ多くはないが、自分の腹もクラウルの腹も白濁と先走りでヌルヌルに汚れてしまっていた。
 腹の中のクラウルは全てをゼロスの中に吐き出した。それでもまだ、収まりはついていない。太いままのそれはまだ欲しそうに芯を持っている。

 だがクラウルは腰を引いて抜きだしてしまった。首を傾げると、彼は申し訳なさそうに目尻を下げた。

「明日、お前の実家に挨拶に行くだろ? 今日はこのくらいにしないと、明日に響く」

 いや、今更だろ?

 ぼんやりと、まだどこかを彷徨っているのかってくらい頭は働かないが、それでもこのくらいは思った。

 それにしても、たっぷりと吐き出したくせにまだまだ萎えていない。
 クラウルは温かな湯に浸したタオルでゼロスの体を拭き、中を綺麗にしている。本当にこれで終わるらしい。
 自分のほうも体を綺麗にしようとしている手を、ゼロスは止めた。

「ゼロス?」
「尻を使わないなら、こっち使えばいいだろ」

 空気に流される。今だけはそれでいい。
 ゼロスは大きく口を開け、綺麗に拭われたクラウルの肉棒を口腔へと含んだ。大きく張るカリが喉にひっかかる。裏の筋がまだ、ビクビクしている。そこを舌で刺激するだけで、クラウルは気持ち良さそうな声を上げた。

「っ、今日は随分とやってくれるな、ゼロス」
「ほうれふは?」
「咥えたまま話すな。まったく、俺の気遣いを無駄にするっ」

 そんなの今更だからいらない。遠慮とか、気遣いとか、自分との間にはいらない。なによりこの人は散々ゼロスを貪ったのだ。立派な男が乳首で完勃ちするくらい調教し、中イキで頭の中が飛ぶくらい教え込んだのだ。今更気遣われたって遅い。

 口をすぼめ、吸い上げて、奥へと入れて刺激すると口腔の中で育っていく。見上げると、余裕のない顔のクラウルがいる。男前が上がっている。
 クラウルが手を伸ばして、後頭部へと触れる。力なんて加わっていないが、もっと深くという意味だと簡単に分かる。だからお望み通り、苦しいが根元までねじ込んだ。

「んっ、あっ、出るっ」
「っ!!」

 苦しさと臭いにむせそうになるが、その前に流し込まれてしまった。苦しさに思わず顔を離すと、僅かに頬にも熱い残滓が掛かる。そういえば、顔にかけられた事は無かった気がする。

「大丈夫か!」
「まぁ」

 頬に掛かった飛沫を指で払い、それを舐めてみる。相変わらず美味しくはないが、嫌いでもない。男同士なのだからこれでも上々だろう。

「お前……そういうのはちょっと」
「今更? 今度顔にかけるか?」
「いや、いい……」

 顔に掛かるくらいこれまでのプレイを考えるとぬるいのだが、クラウルは妙に恥ずかしそうな顔をする。主に耳が赤い。

「変な人」

 案外可愛い部分がまだあるものだ。ゼロスはおかしくなって笑って、クラウルは顔を赤くしたまま恨めしそうに見てくる。
 恋人の意外と可愛い一面が見られた。そんな新年のお話。
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