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18章:お嬢様の恋愛事情
6話:チャートン家の呪い
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ウルバスの自殺未遂は幸い、一般隊員が昼の就業のためにそれぞれの場所に移動した後に発生した。師団長達だけが様子の違うウルバスを案じて部屋の前を通ったというのだ。
一般隊員には事件は伝えず、過剰防衛に対する上の処分が決まるまで謹慎。医療府にいるのは過労の気があるからとした。
それでもキアランが怪我をしたことでトレヴァーにだけはファウストが他言無用と念押しして簡単な経緯を話した。
夜、風呂も食事も早々に切り上げたランバートは書庫へと向かった。ウルバスをこんなにも蝕むチャートン家の呪いについて、何か分かればと思ったのだ。
夜の書庫はとてもひっそりとして空気も冷たく、出来れば近寄りたくない場所でもある。扉を開けた途端に感じる古い紙の匂い。その奥にある司書の座る場所に、一人の青年が座っていた。
「マーロウ先輩?」
「あぁ、ランバートか」
興味なさげにチラリとランバートを見たマーロウはランプの明かりに照らされてほんのりと明るく見える。
宰相府の双璧の一人、マーロウは図書館の亡霊と揶揄される人物でもある。ジェームダルの戦いで戦地から綺麗なお嫁さんをもらった彼は日増しに健康になっていく。相変わらず細いし体力はないのだが、お化けかと言わんばかりの青白い肌や血色の悪い唇、目の下の死にそうな隈、艶の無い髪は改善されている。
「こんな時間まで書庫なんて、久しぶりではありませんか? 奥さん、そろそろ臨月ですよね?」
「だね。一ヶ月切ってお腹が重そうなのに頑張るから、うちの両親がヒヤヒヤしてるよ」
「チュウェンさん、ですよね? 元気そうですが、側にいなくてもいいんですか?」
「俺の実家にいるし、両親つきっきりだから大丈夫。むしろ仕事しろって追い出されるよ。まぁ、出産の立ち会いとかしないからいいけれど」
「しないんですか?」
「沢山血が出るんでしょ? 俺、倒れる自信ある」
「あ、はは……」
なんて言っていいのか分からないが、多分倒れるのだろうとランバートは頷いた。
内縁の妻となっているチュウェンに子供が出来たのが昨年の末。今は十月だから、本当にいつ生まれてもおかしくはない。
「ところでランバート、調べ物?」
「はい」
「チャートン家が関わりそうな文献とか、そこにある。あとシウス様にお願いして城の戸籍課とかの資料も集めたから好きに見ていいよ。まぁ、推論しか立てられないと思うけれどね」
マーロウが指さした先には十数冊の本が山になっている。見ればどれも地方の逸話や伝承、事件を集めた書籍だった。
「調べましたか?」
「ちょっとだけね。ただ、俺も推論しか立てられないから、誰かと答え合わせがしてみたくてここにいたんだ。ランバートが来てくれてよかった、有意義になりそう」
「それは良かったです」
苦笑したランバートは書籍の前に座り、一番発行年の古い物を手にした。
ウルバスの自殺未遂はランバートにも衝撃だった。そして、けしかけるような事をした自分を責めた。
思えば思い悩んでいる素振りが見えた時点で何かおかしかったのかもしれない。そこまで考えられなかったランバートの落ち度でもある。
容疑者は幸い二人とも一命を取り留めたが、裁判がどのように転ぶかは分からないままだ。
手にした書籍は民俗学者が自分の足でその地方の伝承などを集めたもので、そこに『ハイデ領のヴァンパイア』という項目を見つけた。
◇◆◇
時代は建国期。建国の王が即位してから間もない頃の東端の領地、ハイデ。
そこにはヴァンパイアの王が住み、領民は皆が怯えていた。
そこに若い旅の騎士、ドウェイン・チャートンという青年が一夜の宿を求めてきた。
村の世話役だった豪農が彼をもてなし、城に住むヴァンパイアの話をするとドウェインはそれほどまでに領民が困っているならばとヴァンパイア退治を引き受けた。
見事ヴァンパイアを打ち倒したドウェインはこの地の領主となり、長くこの地を平和に治めたという。
◇◆◇
思ったよりも話が短い。もっと物語的な書き方をしているのかと思えば。おそらく口伝をそのまま書き付けたのだろう。
それよりも驚きの事実がここには書かれていた。
「ドウェイン・チャートンって、建国の王に仕えた騎士ロードリック・シュトライザーの従者ですか?」
「だよ。実は古くてご立派な血筋だ」
建国の物語には現在の四大公爵家の祖先の他に、様々な人物が登場する。その中で、シュトライザー家の祖先に従った若い少年騎士が出てくる。その人物の名がドウェイン・チャートンなのだ。
「建国後の彼の話は伝わっていないけれど、これが答えじゃないかな」
「だとしたら名門ですが」
「その名門というのが消えるくらい、その後の家がボロボロだよ」
そう言いながら、マーロウは別山にしてある資料を顎で示す。
それは古いものから最近までの戸籍課の資料だった。
一番古い資料には当時の領主家の家系図がある。作られた年数を見ると、少なくとも八百年前のものだった。戸籍調査の為に役人が赴き、保管してある家系図を写したのがそのくらいなのだろう。
最初の領主はドウェイン。彼の妻はセシリー・サリスとある。ドウェインを世話した豪農の娘のようだ。
そこには一男二女が生まれ、長男が家督を継いでいる。その長男の妻の名が、グレタ・サリス。
「……え? ちょっと待って下さい。自分の妻の妹の娘を、息子の嫁に当てているんですか?」
姪に当たるだろうか。何にしても血が近い。だがこの家系図の異常はこれにとどまらなかった。
三代目当主の嫁はやはりサリス家から。四代目の嫁は初代の娘の家系から。その初代の娘もサリス家に嫁いでいて、そこから入っているのだ。
「なんですか、これ……血が濃くなりすぎます」
「そ。多分それが呪いの正体。見てみなよ五代目の辺り。ちょっとゾッとするから」
言われた通り五代目を見ると、出生した子は多い。三男四女に恵まれているが、その後成人したのは男児が一人、女児が一人。残りは夭折していた。
この頃になると地方でも鬼籍がちゃんと作られ、それの写しも取り寄せられている。税の関係上、中央管理が始まった時代だからだ。
どの子も成人前に亡くなっている。早ければ一歳くらいだ。他にも奇形という特記事項がある子もいる。血が濃くなりすぎている証拠だ。
そしてこの五代目辺りから、チャートン家の呪いが始まっていた。
六代目は多くの女性を妻としているが、子が出来ずにいた。そこで先祖の墓に領地で生まれた赤ん坊の生き肝を捧げたのだという。その結果、ようやく跡取りとなる子供が産まれた。
「出生率が低下し始めている。それに七代目の記述……言動や行動が幼稚で、幼い子供のような悪戯をしていたと地方の口伝に残っていますね」
「奇形、発達障害、精神的な異常、虚弱、出生率の低下。大昔、血の純血を尊んだ王族や貴族に多く見られる。けれどチャートン家の恐ろしさは、これらが血の濃さからくる異常だと王侯貴族が気づき、他の血を入れるようになった時代でもまだ、近い家の血しか入れなかった事。積極的な外部との婚姻が行われたのは百年前くらいからだよ」
「呪われた家系として数々の逸話が残されているのもその頃が特に多いですね。病気平癒の為にメイドを殺して生き血を飲んでいた。夜な夜な墓を掘り返しては奇声を発した……妻の母親と関係を持って子を産ませた人もいるんですか!」
「ほーんと、闇だよここ」
信じられない記述が数多く出てくる。こんなにも血が濃くなってはたかが百年でどれだけ薄まったのか。
そうして見続けていって、近年。それは事件の資料として残っていた。
◇◆◇
ハイデ領主、ハーマン・チャートンは六人の妻を殺した。
成人して間もなく娶った妻との間に男児がいたが、事故で他界。その後最初の妻は行方不明になり、長男死亡から二年後、二人目の妻を娶っている。
だが二人目の妻も三年後に死亡。一年後に三人目……死亡。四人目は行方不明。五人目も行方不明。
そうして六人目の妻との間に生まれたのが、ウルバスだった。
事件はこの六人目の妻の転落事故と、ハーマンの自殺。更にハーマンの父にあたるジョナサン・チャートン死去によって発覚した。
ウルバスが五歳の頃、六人目の妻が塔の一室から転落死した。おそらく自殺だろう。そしてその日のうちにハーマンも同じ現場から飛び降りている。こちらも自殺という見立てだが、詳細は不明。
幼いウルバスが残され、一時は当主を退いた彼の祖父ジョナサンが間を繋いでいたが、その後二年で病没している。
家はウルバスを除いて適当な当主がなく、祖父ジョナサンの弟の子が領地を引き継ぐ事となった。
そこで、改築する事になり基礎工事を始めたところで、おぞましいものが見つかってしまう。
ハーマンの妻のうち、行方不明とされていた三人の遺体がハーマンの寝室に隣接する隠し部屋から見つかった。遺体は壁に飾るように吊され、ミイラ……もしくは白骨化していた。綺麗な花で遺体は飾られ、黒魔術の類かと疑われた。
この三人には出産した形跡が見られるが、一人目の妻以外二人の妻の子がどうなったのか、未だに謎である。
更に地下室にも隠し部屋があり、こちらからは女性の白骨化した遺体が見つかった。部屋からは日記が見つかり、身元が判明した。
遺体はジョナサンの妹、ヘレン・チャートンだった。戸籍上は十五歳の時に病死し、葬儀も行われた事になっていたが、彼女は十五歳でジョナサンによりこの地下室に監禁。以後亡くなるまでの間、ここで生活していた。
部屋のクローゼットからは美しいドレスが何着も見つかっているし、趣向品も多く見受けられることから大切にはされていたようだが、壁の下の方にいくつもの「出して」「殺して」という殴り書きを見るに、過酷なものであったと思われる。
日記には更に恐ろしい事も書かれていた。ジョナサンは夜な夜なヘレンを犯し、生涯に四人の子を産ませている。そのうち男児が一人あり、それがハーマンだった。なお、女児三人の行方は分からない。
ジョナサンは生涯独身で、ハーマンは血縁の者から養子として引き取った事になっているが、実際は実の妹との間に出来た子であったのだ。
一連の事件により領地を引き継いだウルバスの親族は元々の居城を廃城とし、町中の屋敷に転居。そして幼いウルバスはその親族の元で成人するまでの十年を過ごす事となった。
◇◆◇
想像以上に過酷な生い立ちにランバートは声も出なかった。思わず口元を手で覆ってしまう。
その様子を見ていたマーロウもまた、静かに目を閉じた。
「これを見るにさ、むしろ今まであの穏やかさを装っていた事が凄いと思うよ。色んな闇を抱えて幼少期を過ごしたはずだし、父親は母親に異常とも言える執心を持っていたみたい。当時の老いたメイドの証言が残ってるけれど、父親は塔の一室に母親を閉じ込めて、自分以外との接触を極力絶ったみたい」
「ウルバス様も、会えなかったんですか?」
「みたいだよ。証言では乳母に育てられてる」
「信じられない……」
普段接するウルバスはニコニコしていて柔和で、部下を大事にしている。訓練では甘くなくても終わればフォローしたり、一緒にお酒を飲んだり。同期からも信頼される相談役。そんな人が……こんな過酷な過去を持っていたなんて。
「俺が思うに、ウルバスにかかっている呪いは彼自身がかけていると思う」
「ウルバス様が?」
「抑圧している部分があると言うなら、根本は父親や祖父と同じ。執着心と強い独占欲を持っていてもおかしくない。それが肯定される環境に置かれていたんだし」
「ですが、あの方からそんな素振りは微塵も見えませんでしたが」
「条件が揃わなかったんじゃないかと思う」
マーロウは腕を組んでランバートの側に来て、紙を広げてそこに何かしらを書き付ける。
執着心。独占欲。それを押さえつける理性と常識力。
「俺が思うに、この独占欲はあくまで恋人や妻、愛しいと思う相手に発揮されるんじゃないかと思う。理由は父親と祖父がそういう傾向にあるから」
「なるほど」
それはそうかもしれない。そしてウルバスには今までそういう対象はいないように思う。皆と付き合いがいいが、仲間や友人の関係を出ない感じだ。
「ウルバスは聞き役が多く、自分の事は多く語っていない。穏やかにやんわりと、踏み込む事を拒んできたように思う」
「そういえば俺も、ウルバス様が休みの日をどう過ごしているとか知りません」
「フィールドワークが趣味ではあるけれど、仕事と紙一重だからな。実際、彼が何を好むのかとか、そういうプライベートな部分を知る人はいない」
言われてみればその通りだ。ランバートの仲間内では休日をどう過ごしたかとか、どこの店が美味しかったとか、そういう話題に自然となる。
だがウルバスとはそういう話をあまりしたことがない。普通に会話する間柄なのに、話すのはランバートが圧倒的に多い気がした。
「ウルバスの深層心理にある欲望を知らずこじ開けたのが、アリア・シュトライザーだったんだろ」
とても静かに言うマーロウの言葉は、重い響きがあった。
「難儀な男だよね。好きだと自覚した所から葛藤が始まる。欲望に負ければ父や祖父のように相手を縛り付けたくなり、そうなりたくないと抑圧すれば苦しむ」
「…………」
そうなのだろうか。その葛藤の末に、自殺を考えた? これが、彼なりの守り方だった? 狂っていく自分からアリアを守ろうとした?
「これに拍車をかけたのが、アントニーの持っていた薬。それでなくてもアリアに危害を加えられて理性が切れそうになっていたのに、薬の成分で本質の部分を引きずり出された。あの薬は酒と違って効果がある間の記憶を消さない。冷静になるにつれて、理性と本質との葛藤は強まって恐怖になる。結果、自分自身を排除することでアリアを守ろうとした」
「それが、マーロウ先輩の推測ですか」
「そう」
マーロウの推測に大きな穴はないように思う。思うからこそ、苦しく思う。何か……ウルバスを救う方法もあるんじゃないかと探している。
だが結局これは推論でしかない。実際の所、何がどうなっているのかを分かっているのはウルバス本人しかいない。いや、これにいたっては本人すらも理解していないのではないか。
「救いがない推論です」
「かもしれない。これは気持ちの問題だから、当人とそれに近しい人間しか関われないし、解決できない」
「……ですが、サポートとかはできますよね?」
ランバートは考えていた。もしもこの件にウルバス以外で関われるとしたら、アリアだ。もしもアリアがウルバスに気持ちがあって、今もまだ考えてくれるのなら、彼を助けられないかと。
でも、ウルバスはそのアリアから自身を遠ざけようとしているとしたら、引き合わせるのはむしろ危険なのかもしれない。
万が一欲望が勝り、アリアを攫ったり、囲い込むような事になればファウストが黙っていないだろう。妹の苦しみを知ったファウストはウルバスと対峙するのか? 優しいあの人が信頼する部下を手に掛けるのだろうか。
「……出口が見えません」
「まぁ、出たとこ勝負だと思うしね。ただ一つ言える事は、ウルバスから目を離さない事だね。あいつは自分の感情や考えを隠す事に長けている。いつも通りに戻ったと思っても油断しないこと。そう見せかけて油断させる事が目的かもしれないしね」
「嫌な事を言いますね」
「これが俺の仕事だからね。最悪を予測して、それに対する攻撃的な打開策を提示する。まぁ、今回の事は仕事とは違う単なる好奇心とお節介だから君以外にこの推論を披露するつもりはない。有意義な時間だったよ」
そう言うと、マーロウは席を立った。
「……もしも何かしらの影響を与えたいなら、恐れない事だね。アリア・シュトライザーこそが、あいつの問題に直接関われる唯一の人物だ」
「……俺も、そう思います」
もしも何かしらの問題が今後起こるなら、アリアの協力は欠かせなくなる。それだけは確かだと、ランバートも頷くのだった。
一般隊員には事件は伝えず、過剰防衛に対する上の処分が決まるまで謹慎。医療府にいるのは過労の気があるからとした。
それでもキアランが怪我をしたことでトレヴァーにだけはファウストが他言無用と念押しして簡単な経緯を話した。
夜、風呂も食事も早々に切り上げたランバートは書庫へと向かった。ウルバスをこんなにも蝕むチャートン家の呪いについて、何か分かればと思ったのだ。
夜の書庫はとてもひっそりとして空気も冷たく、出来れば近寄りたくない場所でもある。扉を開けた途端に感じる古い紙の匂い。その奥にある司書の座る場所に、一人の青年が座っていた。
「マーロウ先輩?」
「あぁ、ランバートか」
興味なさげにチラリとランバートを見たマーロウはランプの明かりに照らされてほんのりと明るく見える。
宰相府の双璧の一人、マーロウは図書館の亡霊と揶揄される人物でもある。ジェームダルの戦いで戦地から綺麗なお嫁さんをもらった彼は日増しに健康になっていく。相変わらず細いし体力はないのだが、お化けかと言わんばかりの青白い肌や血色の悪い唇、目の下の死にそうな隈、艶の無い髪は改善されている。
「こんな時間まで書庫なんて、久しぶりではありませんか? 奥さん、そろそろ臨月ですよね?」
「だね。一ヶ月切ってお腹が重そうなのに頑張るから、うちの両親がヒヤヒヤしてるよ」
「チュウェンさん、ですよね? 元気そうですが、側にいなくてもいいんですか?」
「俺の実家にいるし、両親つきっきりだから大丈夫。むしろ仕事しろって追い出されるよ。まぁ、出産の立ち会いとかしないからいいけれど」
「しないんですか?」
「沢山血が出るんでしょ? 俺、倒れる自信ある」
「あ、はは……」
なんて言っていいのか分からないが、多分倒れるのだろうとランバートは頷いた。
内縁の妻となっているチュウェンに子供が出来たのが昨年の末。今は十月だから、本当にいつ生まれてもおかしくはない。
「ところでランバート、調べ物?」
「はい」
「チャートン家が関わりそうな文献とか、そこにある。あとシウス様にお願いして城の戸籍課とかの資料も集めたから好きに見ていいよ。まぁ、推論しか立てられないと思うけれどね」
マーロウが指さした先には十数冊の本が山になっている。見ればどれも地方の逸話や伝承、事件を集めた書籍だった。
「調べましたか?」
「ちょっとだけね。ただ、俺も推論しか立てられないから、誰かと答え合わせがしてみたくてここにいたんだ。ランバートが来てくれてよかった、有意義になりそう」
「それは良かったです」
苦笑したランバートは書籍の前に座り、一番発行年の古い物を手にした。
ウルバスの自殺未遂はランバートにも衝撃だった。そして、けしかけるような事をした自分を責めた。
思えば思い悩んでいる素振りが見えた時点で何かおかしかったのかもしれない。そこまで考えられなかったランバートの落ち度でもある。
容疑者は幸い二人とも一命を取り留めたが、裁判がどのように転ぶかは分からないままだ。
手にした書籍は民俗学者が自分の足でその地方の伝承などを集めたもので、そこに『ハイデ領のヴァンパイア』という項目を見つけた。
◇◆◇
時代は建国期。建国の王が即位してから間もない頃の東端の領地、ハイデ。
そこにはヴァンパイアの王が住み、領民は皆が怯えていた。
そこに若い旅の騎士、ドウェイン・チャートンという青年が一夜の宿を求めてきた。
村の世話役だった豪農が彼をもてなし、城に住むヴァンパイアの話をするとドウェインはそれほどまでに領民が困っているならばとヴァンパイア退治を引き受けた。
見事ヴァンパイアを打ち倒したドウェインはこの地の領主となり、長くこの地を平和に治めたという。
◇◆◇
思ったよりも話が短い。もっと物語的な書き方をしているのかと思えば。おそらく口伝をそのまま書き付けたのだろう。
それよりも驚きの事実がここには書かれていた。
「ドウェイン・チャートンって、建国の王に仕えた騎士ロードリック・シュトライザーの従者ですか?」
「だよ。実は古くてご立派な血筋だ」
建国の物語には現在の四大公爵家の祖先の他に、様々な人物が登場する。その中で、シュトライザー家の祖先に従った若い少年騎士が出てくる。その人物の名がドウェイン・チャートンなのだ。
「建国後の彼の話は伝わっていないけれど、これが答えじゃないかな」
「だとしたら名門ですが」
「その名門というのが消えるくらい、その後の家がボロボロだよ」
そう言いながら、マーロウは別山にしてある資料を顎で示す。
それは古いものから最近までの戸籍課の資料だった。
一番古い資料には当時の領主家の家系図がある。作られた年数を見ると、少なくとも八百年前のものだった。戸籍調査の為に役人が赴き、保管してある家系図を写したのがそのくらいなのだろう。
最初の領主はドウェイン。彼の妻はセシリー・サリスとある。ドウェインを世話した豪農の娘のようだ。
そこには一男二女が生まれ、長男が家督を継いでいる。その長男の妻の名が、グレタ・サリス。
「……え? ちょっと待って下さい。自分の妻の妹の娘を、息子の嫁に当てているんですか?」
姪に当たるだろうか。何にしても血が近い。だがこの家系図の異常はこれにとどまらなかった。
三代目当主の嫁はやはりサリス家から。四代目の嫁は初代の娘の家系から。その初代の娘もサリス家に嫁いでいて、そこから入っているのだ。
「なんですか、これ……血が濃くなりすぎます」
「そ。多分それが呪いの正体。見てみなよ五代目の辺り。ちょっとゾッとするから」
言われた通り五代目を見ると、出生した子は多い。三男四女に恵まれているが、その後成人したのは男児が一人、女児が一人。残りは夭折していた。
この頃になると地方でも鬼籍がちゃんと作られ、それの写しも取り寄せられている。税の関係上、中央管理が始まった時代だからだ。
どの子も成人前に亡くなっている。早ければ一歳くらいだ。他にも奇形という特記事項がある子もいる。血が濃くなりすぎている証拠だ。
そしてこの五代目辺りから、チャートン家の呪いが始まっていた。
六代目は多くの女性を妻としているが、子が出来ずにいた。そこで先祖の墓に領地で生まれた赤ん坊の生き肝を捧げたのだという。その結果、ようやく跡取りとなる子供が産まれた。
「出生率が低下し始めている。それに七代目の記述……言動や行動が幼稚で、幼い子供のような悪戯をしていたと地方の口伝に残っていますね」
「奇形、発達障害、精神的な異常、虚弱、出生率の低下。大昔、血の純血を尊んだ王族や貴族に多く見られる。けれどチャートン家の恐ろしさは、これらが血の濃さからくる異常だと王侯貴族が気づき、他の血を入れるようになった時代でもまだ、近い家の血しか入れなかった事。積極的な外部との婚姻が行われたのは百年前くらいからだよ」
「呪われた家系として数々の逸話が残されているのもその頃が特に多いですね。病気平癒の為にメイドを殺して生き血を飲んでいた。夜な夜な墓を掘り返しては奇声を発した……妻の母親と関係を持って子を産ませた人もいるんですか!」
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信じられない記述が数多く出てくる。こんなにも血が濃くなってはたかが百年でどれだけ薄まったのか。
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そこで、改築する事になり基礎工事を始めたところで、おぞましいものが見つかってしまう。
ハーマンの妻のうち、行方不明とされていた三人の遺体がハーマンの寝室に隣接する隠し部屋から見つかった。遺体は壁に飾るように吊され、ミイラ……もしくは白骨化していた。綺麗な花で遺体は飾られ、黒魔術の類かと疑われた。
この三人には出産した形跡が見られるが、一人目の妻以外二人の妻の子がどうなったのか、未だに謎である。
更に地下室にも隠し部屋があり、こちらからは女性の白骨化した遺体が見つかった。部屋からは日記が見つかり、身元が判明した。
遺体はジョナサンの妹、ヘレン・チャートンだった。戸籍上は十五歳の時に病死し、葬儀も行われた事になっていたが、彼女は十五歳でジョナサンによりこの地下室に監禁。以後亡くなるまでの間、ここで生活していた。
部屋のクローゼットからは美しいドレスが何着も見つかっているし、趣向品も多く見受けられることから大切にはされていたようだが、壁の下の方にいくつもの「出して」「殺して」という殴り書きを見るに、過酷なものであったと思われる。
日記には更に恐ろしい事も書かれていた。ジョナサンは夜な夜なヘレンを犯し、生涯に四人の子を産ませている。そのうち男児が一人あり、それがハーマンだった。なお、女児三人の行方は分からない。
ジョナサンは生涯独身で、ハーマンは血縁の者から養子として引き取った事になっているが、実際は実の妹との間に出来た子であったのだ。
一連の事件により領地を引き継いだウルバスの親族は元々の居城を廃城とし、町中の屋敷に転居。そして幼いウルバスはその親族の元で成人するまでの十年を過ごす事となった。
◇◆◇
想像以上に過酷な生い立ちにランバートは声も出なかった。思わず口元を手で覆ってしまう。
その様子を見ていたマーロウもまた、静かに目を閉じた。
「これを見るにさ、むしろ今まであの穏やかさを装っていた事が凄いと思うよ。色んな闇を抱えて幼少期を過ごしたはずだし、父親は母親に異常とも言える執心を持っていたみたい。当時の老いたメイドの証言が残ってるけれど、父親は塔の一室に母親を閉じ込めて、自分以外との接触を極力絶ったみたい」
「ウルバス様も、会えなかったんですか?」
「みたいだよ。証言では乳母に育てられてる」
「信じられない……」
普段接するウルバスはニコニコしていて柔和で、部下を大事にしている。訓練では甘くなくても終わればフォローしたり、一緒にお酒を飲んだり。同期からも信頼される相談役。そんな人が……こんな過酷な過去を持っていたなんて。
「俺が思うに、ウルバスにかかっている呪いは彼自身がかけていると思う」
「ウルバス様が?」
「抑圧している部分があると言うなら、根本は父親や祖父と同じ。執着心と強い独占欲を持っていてもおかしくない。それが肯定される環境に置かれていたんだし」
「ですが、あの方からそんな素振りは微塵も見えませんでしたが」
「条件が揃わなかったんじゃないかと思う」
マーロウは腕を組んでランバートの側に来て、紙を広げてそこに何かしらを書き付ける。
執着心。独占欲。それを押さえつける理性と常識力。
「俺が思うに、この独占欲はあくまで恋人や妻、愛しいと思う相手に発揮されるんじゃないかと思う。理由は父親と祖父がそういう傾向にあるから」
「なるほど」
それはそうかもしれない。そしてウルバスには今までそういう対象はいないように思う。皆と付き合いがいいが、仲間や友人の関係を出ない感じだ。
「ウルバスは聞き役が多く、自分の事は多く語っていない。穏やかにやんわりと、踏み込む事を拒んできたように思う」
「そういえば俺も、ウルバス様が休みの日をどう過ごしているとか知りません」
「フィールドワークが趣味ではあるけれど、仕事と紙一重だからな。実際、彼が何を好むのかとか、そういうプライベートな部分を知る人はいない」
言われてみればその通りだ。ランバートの仲間内では休日をどう過ごしたかとか、どこの店が美味しかったとか、そういう話題に自然となる。
だがウルバスとはそういう話をあまりしたことがない。普通に会話する間柄なのに、話すのはランバートが圧倒的に多い気がした。
「ウルバスの深層心理にある欲望を知らずこじ開けたのが、アリア・シュトライザーだったんだろ」
とても静かに言うマーロウの言葉は、重い響きがあった。
「難儀な男だよね。好きだと自覚した所から葛藤が始まる。欲望に負ければ父や祖父のように相手を縛り付けたくなり、そうなりたくないと抑圧すれば苦しむ」
「…………」
そうなのだろうか。その葛藤の末に、自殺を考えた? これが、彼なりの守り方だった? 狂っていく自分からアリアを守ろうとした?
「これに拍車をかけたのが、アントニーの持っていた薬。それでなくてもアリアに危害を加えられて理性が切れそうになっていたのに、薬の成分で本質の部分を引きずり出された。あの薬は酒と違って効果がある間の記憶を消さない。冷静になるにつれて、理性と本質との葛藤は強まって恐怖になる。結果、自分自身を排除することでアリアを守ろうとした」
「それが、マーロウ先輩の推測ですか」
「そう」
マーロウの推測に大きな穴はないように思う。思うからこそ、苦しく思う。何か……ウルバスを救う方法もあるんじゃないかと探している。
だが結局これは推論でしかない。実際の所、何がどうなっているのかを分かっているのはウルバス本人しかいない。いや、これにいたっては本人すらも理解していないのではないか。
「救いがない推論です」
「かもしれない。これは気持ちの問題だから、当人とそれに近しい人間しか関われないし、解決できない」
「……ですが、サポートとかはできますよね?」
ランバートは考えていた。もしもこの件にウルバス以外で関われるとしたら、アリアだ。もしもアリアがウルバスに気持ちがあって、今もまだ考えてくれるのなら、彼を助けられないかと。
でも、ウルバスはそのアリアから自身を遠ざけようとしているとしたら、引き合わせるのはむしろ危険なのかもしれない。
万が一欲望が勝り、アリアを攫ったり、囲い込むような事になればファウストが黙っていないだろう。妹の苦しみを知ったファウストはウルバスと対峙するのか? 優しいあの人が信頼する部下を手に掛けるのだろうか。
「……出口が見えません」
「まぁ、出たとこ勝負だと思うしね。ただ一つ言える事は、ウルバスから目を離さない事だね。あいつは自分の感情や考えを隠す事に長けている。いつも通りに戻ったと思っても油断しないこと。そう見せかけて油断させる事が目的かもしれないしね」
「嫌な事を言いますね」
「これが俺の仕事だからね。最悪を予測して、それに対する攻撃的な打開策を提示する。まぁ、今回の事は仕事とは違う単なる好奇心とお節介だから君以外にこの推論を披露するつもりはない。有意義な時間だったよ」
そう言うと、マーロウは席を立った。
「……もしも何かしらの影響を与えたいなら、恐れない事だね。アリア・シュトライザーこそが、あいつの問題に直接関われる唯一の人物だ」
「……俺も、そう思います」
もしも何かしらの問題が今後起こるなら、アリアの協力は欠かせなくなる。それだけは確かだと、ランバートも頷くのだった。
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そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
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