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11章:暗府団長刺傷事件

おまけ1:ゼロスの葛藤

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 クラウルが怪我をしてから少し、現在被疑者を追跡中だが、確証が得られるまでは動かない事にした。幸い各方面の砦へは連絡が行き渡り、ノアからの情報で人相書きも出来上がっている。今は待機状態だ。

 そうなると考える事がある。自分の中にあるこの壁をどうやってカミングアウトするかだ。
 部屋で考えても集中できず、結局主不在のクラウルの部屋に行く。彼はここに仕事は持ち込まないから、不在時でも出入り自由だ。

 慣れたソファーに座り、膝に肘をついて前屈みに俯く。そうして色々シミュレーションしてみた。


 まず、真剣に話しをしてみよう。二人向き合って……深刻な雰囲気にクラウルがオロオロするだろうな。
 そして伝えるんだ。「貴方と別れる時の傷を浅くしたいが為に一線を引いていた。敬語や敬称もそうなんです。すみませんでした」と。

「…………」

 許される気がしない! っていうか、自分が言われたら「はぁ?」という気分になる。クラウルにこれを言われたら多分喧嘩になる。

 やばい、今更だがかなり身勝手じゃないか? いや、分かっているんだが……

 そもそも、これをシラフで言えるのか? 少しくらい理性を緩くしたほうが口が軽くなるんじゃないのか?

 ……ダメだ。こんな重要かつ身勝手な事をなに酒飲んでへべれけになって言ってんだ。ヘラヘラすんな!!

 いや、そもそも酔える気がしない。元々が酒に強いのにこんな事をこの後言わなければならないんだと思いながら飲んだら、どれだけ飲んでも酔える気がしない。

「いっそ、土下座……」

 させてもらえる気がしない。

 それに一つ思ったんだが、別れる事を前提にしていたと聞いたらあの人、どんな行動に出るんだ?

『俺と別れるつもりだった? そんなバカな事思えないよう、しっかり刻んでおかないとな』
 手に縄を持って冷たい笑みを浮かべるクラウルが見える気がする。

 隠れ家に監禁? 目隠しに縛られて散々に犯される? むしろ狂わんばかりに……いや、狂っても抱かれてもうあの人なしに満足できないくらい理性を蝕まれ下半身のみで生きていくように調教される?

 思わず想像して、ブルッと寒気が走った。

 やばい、こっちの理性の問題じゃなくまず、あの人の理性を飛ばさなければ危ない気がしてきた。

 そうしてふと思った。これが双方理性がふやけていいんじゃないかという方法だ。

 よし、動けないのだから襲ってしまおう!

つづく(本日16時更新予約済み)→
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