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3章:温泉ラブラブ大作戦

8話:温泉ラブラブ大作戦・メイン

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 風呂は内風呂を提案した。こっちも源泉から引いているので常に温かい湯が満たされている。
 そこに今日は白い花びらが適度に浮いていて、雰囲気を盛り上げていた。

「案外花の匂いはしないよな」

 やや薄暗く雰囲気を作っている感じがあって照れはするが、たまにはいいのだろう。なにせ普段は大浴場に二〇人近くがごちゃ混ぜに入るのだから色気もくそもない。
 互いにまずは体を綺麗にしてから。久しぶりに背中の洗い合いなんかをして、少し悪戯をされて。でもまだ、わーわーと騒いでいられる。

「ランバート」

 先に浴槽に入ったファウストが手を差し伸べて誘ってくる。楽しげな目は良からぬ事を考えている感じだが、逆らう事もできない。意を決して手を取り、当然のように彼の足の間に座った。

 手が髪を一房すくい、何やら楽しんでいる。ランバートも湯にゆったりと浮かぶ黒髪を指に絡めた。

「相変わらず、綺麗な色だな」
「ファウストだって」
「夜と月か。懐かしいな」

 くすくすと笑うファウストが髪に口づけ、そんな事を言う。
 ランバートは最初、ファウストを夜の精霊王のようだと思った。整った顔立ちに長い黒髪と静かな黒い瞳が、静寂と威厳を感じさせたのだ。
 そしてファウストはランバートを月に例えた。綺麗な髪だと、褒めてくれた。

「切ったの、気にした?」

 不意に気になって問いかける。切ってしまった当初は気遣ってくれたのか、似合うと言ってくれた。それでも彼がランバートの髪を気に入ってくれているのは知っているし、どことなく気にかかってはいたのだ。

 ほんの少し寂しげに笑ったファウストは、今日は隠さず小さく頷いた。これに傷付きはしないが、やっぱりかとは思ってしまう。

「最初は驚いた。それに、似合うのも本心だ。髪だってまた伸びるのだから、たまにはいいんだろうと思っている。それでも最初はとても悔しく思ったよ」
「ごめん」
「髪よりも傷が気にかかった。もうすっかり綺麗だな」
「ひぅ! ふぅ、はぁ……」

 突然首筋に唇が当たり、その後背へと流れていく。湯の中で悪戯をする手と唇が、艶めかしく感じた。

「残らないって、言ったじゃないか」
「それでもだ」
「ファウストだって沢山傷残ってるくせに」
「古い傷だからな。実際、お前に会うよりも前の傷が大半だ」
「胸の新しい傷と、腕の傷は違うだろ」

 ルースがつけた傷は残っている。それだけ深かったのだ。
 だがファウストはランバートの腹部を撫でて知らしめてくる。それは、レーティスがつけた傷だった。

「お前もだろ」
「もう、しないよ」
「俺も気をつける。それでもやはり見ているのは辛いな」

 大切そうに触れられると、切なさとモゾモゾした感じが混ざっていって徐々に耐えられなくなってくる。気持ち良くなる前だと分かるから。

「ランバート」

 柔らかく名を呼ばれ、振り向かされてキスをする。しっとりと柔らかく、性急さはないけれど確実に煽るようなそれが、ランバートの意識を蕩けさせていく。

「ん……ファウスト」

 至近距離にある濡れた瞳が穏やかに雄々しく見つめている。求めていることを意識させられる。

 逞しい腕が前に回って、徐に胸を弄りだして乳首を摘まむ。強い刺激にビクリと体は震え、素直に高い声が出た。浴室だから自分の声が響いてしまう。それが余計に煽ってくる。

「んぅ、ふっ、あっ、まって……っ」

 摘ままれ、クリクリと捻られると甘い痺れが広がっていく。ほんの少し体が前に倒れそうだが、逞しい腕がそうはさせてくれない。逆にファウストの股間に尻を擦りつけるような形になった。
 そしてその股座で、ファウストは欲望を滾らせている。

「あっ、大きい……」

 ここに至る前に散々我慢させてしまったのだ、当然と言えば当然。一度では絶対に収まりがつかないだろう。

「ファウスト……」
「まずはお前を蕩けさせてからだ」
「そん、なっ……んぅ!!」

 既に疼いて仕方がないのに、ここでトロトロにされたら彼を受け入れる頃にはとんでもない状況になっているのでは?
 それでもファウストはやめてはくれない。媚薬のような強烈な快楽はないが、ジワジワと深く入り込み根を張るような快楽は抜けていかない。
 乳首から発せられる快楽はあまりに深くゆっくりと浸透して、ランバートを追い詰めていく。

「もっ、やめて……あっ、おかしくなる……っ」

 指先が絶妙な力加減で胸を揉み、押し潰し刺激していくのに耐えられない。硬く尖った部分がジンジンしている。

 そうして胸元ばかりを弄っていた手が不意に悪戯に脇を掠め、臍を撫でるとまた違う刺激があってビクッと腰が浮き上がってしまう。
 唇は耳の辺りを舐めて、それもジワジワときているのだ。

「もうイキそうな顔をしているな」
「それ、冗談じゃないか……んぁあ!!」

 とても不意打ちに下肢に触れられたランバートは突然の快楽に全身を震わせた。まだ完全に立ち上がっていなかったから吐き出しはしなかったが、腹の奥の方がキュッと締まって切なく脈打っている。

「中でイッたか」
「も、許して……お願い、ちゃんと触ってくれ……」

 とろ火で炙られ続けるような快楽はしんどい。息が乱れて頭の中は混濁していく。フワフワと浮いたように気持ちいいが、もっとちゃんと覚えていたいんだ。

 訴えたランバートに、ファウストは頷いてふやけた体を抱き上げる。お姫様抱っこのまま浴槽を出たランバートは、そのまま彼に体を拭かれ、ローブも着ないままに同じように抱き上げられた。
 そうしてベッドに降ろされると、当然のようにファウストは上にきて、今度は正面から体中にキスを降らせていく。それこそ、されていない場所がないんじゃないかというように。

「あぅん、ふっ、そこくすぐったいっ」

 脇腹はくすぐったい。けれど今日は止める気がないらしい。体に力が入らないのを幸いと、小さくリップ音を立てて吸い付き、舌で愛撫していく。
 その度にランバートからは「んぅ」という少しくぐもった声が溢れた。

「今日は素直に感じている」

 嬉しそうに言われると羞恥心が増していく。そしてより執拗に触れられていく。
 湯の中で散々に弄られてぷっくりと尖った乳首を口に含まれ、舌と唇で愛撫されていくと腰が浮いてまた腹の奥がジンジンと痺れる。
 けれど今回は前もしっかり立ち上がっているから、張りつめているのを感じてしまう。

 それとは別にファウストの昂ぶりがとても逞しく熱くなっている。これを受け入れるとなると、尻の心配もしなければならないだろう。

「ランバート、四つん這いになってくれ」
「でも……」

 挿れる時は前からがいい。
 訴えるように見ると優しく笑われ、前髪をクリクリと混ぜられた。

「入れる時は前からにする。その前に一度抜きたい。流石に少し辛いからな」
「え? う、ん」

 確かにとても辛そうな顔をしている。我慢している感じだ。
 それなら解せばいいのにと思うのだが、どうやらそれが待てないくらい切羽詰まっているようだった。

 四つん這いになったランバートは足を締めるように言われ、従う。すると締めた足の間に熱い肉棒が差し込まれ、太股とランバートの昂ぶりとを一緒に擦られていく。いわゆる、素股というやつだ。
 けれどこれが気持ちいい。熱く逞しいファウストの欲望に擦り上げられ、互いに濡れて滑りが良くて。それが強く打ち付けられていくのは、徐々に切迫した気持ちにさせた。

「あっ、あっ……これ、だめっ」
「気持ちいいか?」
「ふぅ、気持ちいぃ」

 トロトロに体が蕩けてしまい力が抜けそうだ。既に上半身は崩れて、尻を高く上げて突き出している淫らな格好だ。

「俺も気持ちいい」

 甘く低く囁かれ、背に重みがかかり首筋や耳を唇で愛撫されていく。ピチャリという濡れた音が耳にも響いて、それだけでビクビクと震えた。
 腰が揺れて物欲しげにしてしまう。ファウストの動きも徐々に速くなって、重みと熱を背に強く感じている。背に、項に、耳元にキスをされ、痕が残るほどに吸われて甘い声が溢れた。

「くっ、いいか?」

 そのいいかが何に対してなのかは分からない。けれど肯定する様に首を振った。とっくに精神的に焼き切れそうなんだ。熱くて、二つ重なる鼓動ばかりを追っている。

「あっ! んぁ! だっ、イクッ!!」

 二人分の熱源を軽く握られ、密着して、そんな状態で叩きつけるように腰を入れられたらもう達するしかない。
 あっという間に二つ分の昂ぶりから白濁が吐き出されて止まらない。ビクビク震えながら扱く動きに合わせて吐き出されていく。

 ズルズルと力が入らないままうつ伏せに倒れそうなランバートの腰を持ち上げたファウストは、そのまま二人分の白濁で汚れた指を揃えて後孔へと伸ばす。そして様子を確かめ、一気に二本を差し入れた。

「っ! まって、今ダメ!」

 前でイッた直後に後ろを暴かれて引きつったようになる。蕩けて力が入らない後孔は簡単に指二本を受け入れてヒクついている。欲しくてたまらないと、キュウキュウ指に吸い付いている。

「柔らかくなっているな。これなら少し慣らせば繋がれる」
「だ……めぇ、イッ」
「中がヒクヒクと動いているな。もう、止まらないか?」
「んっ!」

 グリッと内側から押し込まれ、直接的な快楽が脳天まで突き抜けていく。キュッと中が締まると同時に息が苦しいくらいに言う事をきかない。心臓がバクバクと音を立てている。

「もっ、いれ、てっ」

 怖い、狂いそう、気持ち良くて分からなくなる。
 ずっとイッたまま止まらなくなっている気がする。早く欲しいと熱くなっている。気持ちいいけれど満たされていない。

 指が増えて入口を広げられて、その間に何度も波を乗り越えた。
 そうしてようやく仰向けにされ、安堵と共に手を伸ばした。
 色っぽい黒い瞳が見下ろして、獲物を仕留めるような満足げな顔をしている。怖かった気持ちが薄れて、早く貪られたい気持ちが溢れてくる。

「息吐けよ」
「んっ……ふっ、んぅぅ!」

 あてがわれた熱がゆっくりと入り込んでくる。苦しくも痛くもないくらい柔らかくされているけれど、その分快楽が凄い。ゆっくりと中を擦り上げられ、寂しい部分を埋めていく。

「痛むか?」

 否定するように首を振る。痛いなんて事はない。むしろ満たされて、これだけでイキそう。

 鋭い笑みが見下ろして、半分くらいが一気に埋まる。圧迫感と一緒にいい部分が抉られて真っ白になった。

「大丈夫か?」
「っ!」

 首を横に振った。だめだこれ、壊れたみたいに止まらない。全身が敏感になって、何をされてもどこを触られても全部が気持ち良くなってしまう。
 それでもファウストに容赦はない。奥を探られて、突き上げられて散々に鳴いた。膝を抱え上げられた事で深くまで届いてしまう。
 けれどこれを望んでいたんだと思う。腹の深くまで埋め尽くされて、感じすぎて辛いけれど幸せも感じている。

 求めて抱きつき、キスをして。上も下も繋がっている。酔うようにクラクラしたままランバートは笑っていた。
 出来るならこのまま、溶け合うように一つでいられたらいい。絶対に離さないまま、全てがこの人で一杯にしていたい。

「ファウスト」

 愛してる。どれだけ時間がたっても、どんな障害があっても、きっとこの気持ちは消えないから。
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