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1章:ラブ・シンドローム?

10話:不安ごと抱きしめて

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 そこは戦場だった。建物は崩れ、あちこちから煙が上がる。そして、色んなものが焼ける臭いがする。
 既に戦闘は終わっていて、瓦礫の中をランバートは走っていた。息が切れて、心臓は嫌な感じで鳴り響いて、不安に黙っていられない。
 行き過ぎる人々、騎士団の仲間、そして倒れている人々。それらを全て無視して、ランバートはただ一人の元へと急いでいた。

 やがて、人の集まる場所が見えた。エリオットが、シウスが、クラウルが側にいて悲愴な顔をしている。エリオットとシウスは涙を流し、クラウルは悔しげに硬く手を握っている。

「あ……」

 人が割れて、横たわる人を見て、ランバートの心臓は止まりそうな程に締め上げられた。
 その人は綺麗な顔をしていた。白い肌は余計に白く見えて、静寂の黒に口元の赤だけが鮮烈に見える。そしてその胸には剣が一本、深く突き立っていた。

 ヨロヨロと近づいていって、すぐ脇に崩れ落ちた。静かに目を閉じた人の冷たい頬を、愛しげに撫でた。

「ファウ……スト……」

 そんなはずはない。こんな日はこない。この人は化け物みたいに強くて、殺したって死なないくらいで、こんな簡単に消えてしまうような、そんな……
 では、今目の前にあるのはなんだ。この冷たい体はなんだ。口元から滴る赤はなんだ。胸に突き立ったこれはなんなんだ!

「あ……うわぁぁぁぁぁ!!」

 喉が裂けるような痛みがあっても叫ぶ事をやめられない。心が死んで、時が止まるのを感じる。最愛を失う瞬間ランバートも死ぬのだと思い知り、止まっていく時に思考が間延びしていった。


 バッと目が覚めて飛び起きて、痛む喉を押さえて何度も咳き込んだ。びっしょりと汗をかいて、鳴るような頭痛に呻いた。
 酷い夢だった。あんな恐ろしい夢を見るなんて、思ってもみなかった。まだ心臓が嫌な感じで鳴っていて苦しく、体は震えていた。

 急な不安はどうしてだろう。戦場にいた興奮が抜けて、敵地という不安は消えたのに。

 何にしても喉が痛くて苦しい。ランバートは這うようにサイドボードの水差しに手を伸ばして、自身を支えられず倒れた。

「!」

 なんだかおかしい。そう思うには遅すぎた。震えていたのは夢のせいばかりじゃない。体に力が入らない。関節は軋むように痛くて、頭痛は脈を打つのに合わせて響いてくる。寒気は這うように全身を包み、心臓が不意に苦しく感じた。

「ぁ……」

 今回は大丈夫だと思っていた。本当に前日まで何でもなかったのに、突然だった。

 とにかく喉が痛くて辛い。水を飲もうと手を伸ばしても、思うように体が動かなくて諦めた。
 空は薄らと明るくなっている。夜明けが近いが、まだ人が動く時間かわからない。とにかくこれは助けを呼ぶべきだと思って、でもベッドから下りる事もままならない。
 朝、起きてこなければファウストが来てくれるだろう。けれどその時間までこの状態は、大丈夫だろうか。
 不安になる。このまま長く放置されてしまったら、どうなるのだろう。胸が苦しくて、頭が割れるように痛くて動けない。喉が痛くて、呻く以上の声が出てこない。

 助けてと、心に浮かんだ人に縋りながら小さくなっていると不意にドアがノックされた。

「ランバート、起きてるか?」

 一番会いたい人の声に安堵して、ポロポロと涙がこぼれた。でもこのままじゃ何も伝わらない。気付いて欲しいけれど、声が出ない。

「ランバート?」

 ダメ、行かないで。必死に手を伸ばしたランバートの指先が、水差しの側にあるコップに触れて床に落ち、鋭い音を立てて割れた。

「ランバート!」

 ガチャッと音がして、寝間着姿のファウストが入ってきてすぐにランバートを抱き起こした。夢とは真逆の景色に、安堵と一緒に笑った。

「おい、しっかりしろ!」

 青い顔をしたファウストがランバートの体を毛布で包んで抱き上げる。抱きついて体を安定させる事もできない。そのまま運ばれている間に、ランバートは気を失った。


▼ファウスト

 夢の浅い時、ランバートが呼んでいる気がして目が覚めた。だいぶ早い時間で気も引けたが、胸の不安は消えてくれない。嫌な予感がして部屋を訪ねたらこれだ。

 医務室には当直医のリカルドがいて、すぐに処置用のベッドに寝かせ点滴を打った。それでも、ランバートの熱は下がっているのか分からない。

「一番の重病ですね。隊の風邪も落ち着いてきたころに」
「すまない」
「貴方が担ぎ込まなければ余計に症状は重篤だったでしょう。脈は落ち着きましたね。熱はまだ高い。以前のカルテを見ても、彼は熱が上がりやすい体質のようです」

 以前騎士団で倒れた時の情報を読んでいたリカルドが触れる。そして、困ったように眉を寄せた。

「熱が思うように下がりませんね。扁桃腺の腫れも酷いし、喉が真っ赤です。声が出なかったのはこれですね」
「どうしたらいいか……」
「暫く入院させます。その方が貴方も安心でしょう。日中は貴方も仕事がありますから」
「そうしてくれ」

 出来るだけ早く仕事を片付け、時々様子を見に来よう。
 本当なら起きるまで側にいたかったが、ランバートの意識はなかなか戻らないまま。結局リカルドに任せて仕事に行く事になった。


 予定通りに仕事を始めたが、すぐにシウスやクラウル、オスカルにランバートの体調を伝えた。

「あの子、以前も悪化したよね? 前日までは本当に何でもなかったの?」
「あぁ、平気だった。顔色にも変化はなかったんだが」
「暫く何でもなかったのだがね。エリオットもまだ部屋で休養じゃ」
「もう熱も下がったから、安息日明けには復帰する予定だけれどね」

 エリオットも熱が高かったらしいが、今は平気らしい。遠征の疲れもあるからと少し長めに休みを取っているだけだ。

「それにしても、心配だな。そんなに熱が高いのか」
「動けなくなっていたし、声も出なかった。脈も乱れているとかで」
「そんなにか。ゼロスも酷かったが、そこまでではなかったからな」

 クラウルも深刻そうな顔をする。それを見ながら、ファウストも不安が募った。
 ランバートは基本的に病気に強い。普段はまったくと言っていいほど健康だ。だが一旦崩れると重病になっている。入って一年目の時も辛そうにしていた。

「では、暫くお前も自室で仕事をしてはどうだ?」
「え?」
「幸い訓練などは師団長に任せていい。書類仕事はランバートが頑張ったおかげで溜まっておらぬだろ? 自室での仕事で十分だろ」
「いいのか?」
「構わぬよ」

 それは助かる。ランバートの事がきにかかり、正直仕事が手に付かなかったのだ。

 その時、控えめなノックがあって声をかけた。そうして現れた医療府のスタッフが、とても遠慮がちにファウストに声をかけた。

「あの、来て頂けると……」
「え?」
「ランバート、起きたんですけれど様子が違って。なんだか、混乱してるみたいで」

 心臓がギュッと痛くなって立ち上がり、呼びに来た医療府のスタッフを置き去りにしてファウストはランバートのいる部屋へと走っていった。


 部屋につくと、ランバートは辛いだろうに震えながらばたついていた。ただ力は入らないから、リカルドに簡単に押さえられている。ポロポロと泣いて、出ないだろう声を上げているように思えた。
 何があったのか分からない。ただ、あまりに辛そうな姿に走り寄って、ファウストは正面からランバートを抱きしめた。

「あっ、う……」
「大丈夫だ、ここにいる。ランバート、落ち着け」

 震えながら、力の入らない手で胸元を握るランバートは子供のように泣きじゃくったのだろう。グチャグチャになっている。それでもファウストを見たらゆっくり呼吸が整って、次には力の抜けた重みがかかった。眠っている。

「助かりました。鎮静剤を打とうか迷っていました」
「どうしたんだ?」
「詳しくは分かりませんが、おそらく夢を見たんだと思います。起きてすぐあのようなパニック状態になり、立ち上がろうとしていて」
「熱は?」
「解熱剤を飲ませてようやくです。ただ一時的な対症療法なので、喉の腫れが引かないと発熱も落ち着かないでしょう。それに睡眠を十分に取れないと回復も難しくなりますので」

 あんなに暴れてパニックになるほど、どんな怖い夢を見ているのだろう。あんな子供のような泣き顔を初めて見て、胸が締め付けられる。よほど苦しいのだろう。

「ファウスト様、側にいることは可能ですか?」
「え?」
「どうやら貴方を探しているようです。貴方が側にいれば落ち着いてくるのではと思います」
「シウス達に話しをしてくる。移してくれるか?」
「分かりました」

 テキパキと動くリカルドに感謝しつつ、ファウストはすぐにシウス達に部屋での仕事に切り替える事を伝えた。


 夕刻、ランバートが小さく身じろいだのを感じて側にいった。寝苦しそうな様子で喘ぐ姿が痛々しくて、心に刺さる。

「ランバート」

 声をかけ、強く体を揺すると涙の浮いた目で見上げてくる。ぼんやりと。

「ランバート、ここにいる。だから大丈夫だ」

 不安を悟らせたくなくて柔らかく微笑むと、泣きそうな顔のまま腕を伸ばしてきた。痛むのだろうに、必死だ。受け入れて抱き寄せればようやく、甘える様に体を擦り寄せてきた。

「怖い夢を見るのか?」

 問えばランバートは少し怯えた後で、小さく頷いた。

「大丈夫だ、側にいる。不安に思わなくてもいいから」

 コクッコクッと小さく頷き震えたまま、ランバートはファウストの肩に身を預けていた。

 少しして落ち着いたのだろう。ゆっくりと顔があがり、辺りを見ている。そして何かに気付いて、途端にアタフタした。

「どうした?」
「あ、んっ!」

 何かを言おうとして激しく咳き込んで。側の水差しから水を移して飲ませると少し落ち着いた。

「俺の部屋だ、安心しろ」
「(ブンブン)」

 首を横に振って申し訳ない顔をするから、言いたい事が伝わった。この状態でまだ、迷惑をかけたとか思っているのだろう。

「仕事はお前がほとんど片付けてくれているから、何も問題ないんだ。それに、俺がお前の側にいたかったんだよ」

 言えばまた、申し訳無い顔をする。そしてファウストの手を取り、その手の平に『ごめん』と書いてくる。

「どうして謝る。お前が苦しい時には側にいたいと思うのは、いけないのか?」

 また、ブンブンと首を横に振り、『違う』『迷惑じゃない?』と書き添えてくる。

「何が迷惑なんだ。お前の事で俺は一度だって、迷惑だなんて思った事はない」

 伝えたら、瞳が弱く潤みだして胸元に擦り寄ってくる。弱い姿は普段見ないからか、愛しさと庇護欲、そして苦しさが募ってくる。
 大怪我をした時もこんなにはならなかったから、戸惑う。だが、だからこそ側にいようと思う。そして可能なら、不安を拭い去ってやりたい。こいつの見る夢の全てを否定してやりたい。

 ほんの少しと言ってスープを飲ませ、薬を飲ませて隣に潜り込む。抱き寄せて眠ると、すぐに腕の中で寝息を立て始めた。
 体が熱い、まだ辛そうだ。身を寄せているそれが、僅かに身じろいだりしている。汗を拭って、そっと額にキスをした。

「俺が側にいる。だから、大丈夫だ」

 小さな声で呟いてみれば、眠っているのに無邪気な顔をする。今は怖い夢を見ていないのだと分かった。
 だからこそ、ファウストも休む事ができる。腕に抱いたまま、互いの体温を感じているのは安心できた。体を繋げる事も、言葉を紡ぐ訳でもない夜。静かな時間は染み入るような穏やかさをファウストにもくれた。


 側にいるようになって、眠れるようになったランバートは少しずつ回復していった。
 一週間後、まだ辛そうな様子ではあるものの喉の腫れも引いて話が出来るようになった。

「はぁ? 俺が死ぬ夢?」

 ランバートは申し訳なさそうに温かな蜂蜜レモンを飲みながら頷く。熱はだいぶ下がり、関節の痛みはなくなって今はファウストの部屋で大人しく療養している。

「どうしてそんな夢……」
「俺も分からないよ。けれど突然で……怖くなるんだ」

 それであの乱れようだったわけか。妙な納得はしたが、そんな未来は出来ればきてほしくない。絶対と言えないのが辛いが。
 ランバートはしょんぼりと俯いている。その頭を抱き寄せて、ファウストはこめかみにキスをした。

「そんな未来が来ないように、俺も努力する。だから安心しろ、ランバート」
「んっ」

 少し擽ったそうにしたランバートは素直に身を寄せて、甘える様にしている。そんな彼を腕に抱いて、ファウストは改めて気持ちを引き締めるのだった。
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