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2章:王の胎動
6話:北の異民族
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とりあえず事態は落ち着き、今はファルハードとアルクースの二人だけがユリエルの傍にいる。今後の話をするためだった。
しっかりとドレスを着直したユリエルはどこから見ても女性にしか見えず、ファルハードはしきりに「詐欺だ」と繰り返している。
「それで? ユーナ姐さんは彼らにどんな酷い事をしたのかな? 正直、戦わなきゃいけないかとハラハラしたよ」
何の気なしに話を振ったレヴィンは手に愛用のリュートを持って言う。遊ぶように弦を弾く音を聞きながら、ユリエルは苦笑した。
「お前、五年前の反乱を知らないのですか?」
「その頃俺、まだ軍に入ってないからね」
それでも国を揺るがすような大騒動だったのだから知っていておかしくはないだろうに。興味がなかったのか、レヴィンは本当に知らないようだった。
「五年前、北の平原地帯には彼等シャスタ族が暮らしていました。放牧などを主とする一族で、これまで一度も争いがなく、穏やかな関係でした。それが突然、反乱を起こしたのです」
その当時、城は大騒動となった。戦わなかったというだけでシャスタ族は勇猛な部族。その者達が攻めてくるとなり、王も臣も過剰に反応したのだ。
「時間をかけて攻略となれば双方の被害は大きくなりかねない。討伐を言いつかった私とグリフィスは短期戦を目指しました」
「んで、俺達はたった四時間で鎮圧。族長だった親父や、戦った戦士は皆死んだ」
黙って聞いていたファルハードが、悔しそうに口を挟む。だが、そこにはもう怒りはない。あるのは悲しさだけに見えた。
「あの年、作物が不作で食べるに困ったんだよ。家畜も痩せて死んで、これじゃあ飢えて死んでしまう。だから、族長たちは攻め込むことを決めたんだ」
アルクースもまた、静かに沈んだ声で言った。
これはユリエルも戦いが終わった後で知った。何故もう少し平和的に解決しようとしなかったのか問うと、族長は笑って答えなかった。ただ一言「これが誇りだ」と。
「戦えない者と若い戦士は事前にその場を離れていた。だから俺達は混乱に紛れてこの国に入れた。おかげで生き延びたが、楽じゃないさ」
これが、正直なところなのだろう。ファルハードも頭の血が下がれば冷静に判断ができる。そして、頼りない目をユリエルへ向けた。
「親父の最後は、立派だったか?」
「捕えられても堂々としていましたよ。そして、真っ先に処刑されることを望み、叶えました。それが族長としての誇りだと言うので」
「仲間を差し置いて長は生きるべからず。誰よりも先に戦い、誰よりも多くの敵を倒し、仲間を守って死ぬが良し。そういう一族だ」
ユリエルは頷いた。
「ユリエル様、一つ聞いてもいいかな?」
黙って聞いていたアルクースが、頼りない表情で問いかける。それに視線を向けたユリエルは静かに頷いた。
「予言者のじっちゃんがいたと思うけれど、その人はどうなった?」
ひどく頼りないアルクースは、聞く事を恐れてすらいる様子だった。握った手が僅かに震えている。ユリエルは静かに微笑み、口を開いた。
「貴方は、あの人の後継者ですね」
「なんで?」
「額に、白い太陽の印がありますから。予言者がその力を認めた後継者にのみ刻む刺青だと聞いています。ファルハードは鷹の加護を受けているのですね」
「どうしてそれを!」
「予言者の老人との時間は、私にとって有意義な時間でした」
ユリエルの穏やかな語り口だけで、アルクースは安堵したようだった。少なくとも酷い扱いを受けたのではないと分かったのだろう。
「あの、じっちゃんは?」
「残念ですが、二年前に亡くなりました。穏やかな最後でしたよ」
その言葉に、一気にアルクースは沈み込んだ。
「私はあの老人から、沢山の事を学びました。精霊や森のこと、魂について。そうした話を楽しみに休みの度に私が通うものだから随分と笑われてしまいました」
「じっちゃんは優しいんだ。孤児の俺を、引き取って育ててくれたんだ」
昔を懐かしむような瞳でアルクースは言う。そしてしばらく、無言となった。
「死後は、どうしたのですか?」
「教えられたとおりにしました。香油と綺麗な水で体を清め、花と木の実を添えて焼き、残った骨は北の森に散骨しました」
「そっか……」
安堵したような表情を浮かべるアルクースの目から、一筋だけ涙が落ちた。
「珍しい葬儀の仕方なんだね」
「そうか? 身を清めて罪を洗い、花と木の実を捧げて飢えを癒し、森に戻す事で大地と空へ帰るんだぜ」
「儀式には意味があるものですよ、レヴィン」
僅かに笑って言うと、レヴィンは嫌な顔をした。まぁ、ユリエルも気持ちはわからないではない。国の儀式となると必要以上に華美で、時間もかかるし堅苦しい。嫌に思う者は少なくない。
「さて、これからの話をしましょうか」
ある程度場が馴染み、ユリエルは気を引き締めた。それに、残っている全員が厳しい顔に戻ったのである。
場が引き締まる。その中で真っ先に口を開いたのは、意外にもファルハードだった。
「けどよ、こっから先となると港だろ? 何があるってんだ?」
相変わらず胡坐をかいてどっかりと座っているファルハードが、行儀悪く肘をついて言う。それに、ユリエルは笑みを浮かべて頷いた。
「その港に用があるのですよ」
「ってーと?」
「そこに居る海賊に用事があるのです」
「もしかして、俺達にしたのと同じことをするつもりじゃないよね、殿下?」
目を丸くして問うアルクースに、ユリエルは妖艶な笑みで「えぇ」とだけ答えた。だが、返ってきたアルクースの瞳はとても厳しいものだった。
「まさか、戦力これだけなんて言わないよね?」
「これだけですよ」
「無謀すぎる! あちらは武装中型船だよ! しかも、船団だって噂だ!」
声を荒げて無謀さを訴えるアルクースに、ユリエルの方が目を丸くする。意外なところから情報が出てきたからだ。
「何か知っているのですか?」
「……襲う相手は大抵商人だからね、話は聞いてる。相手は二隻からなる武装中型船団。最初に先鋒が接舷して、船を占拠。その後から来る船は荷を積みこむ用っぽい。大型船を襲う時は先に砲撃戦を仕掛ける事もあるみたいだよ」
「これはまた、いい情報を貰いました」
「まさか本当にこれだけの人数で挑むつもりなの? 無謀もいいところだよ」
「少数精鋭ってやつかな? 俺も姐さんも強いよ」
「数の優位はそう簡単に覆らないよ」
落胆したようにがっくりと肩を落とすアルクースは、次にキッとファルハードを睨む。その視線にビクッとなったファルハードにビシッと指を突きつけて、アルクースは厳しい声を上げた。
「お頭はここに残って。この人達には俺がついていく」
「え、だってお前……」
「冷静に状況判断できる人間じゃないと邪魔。その点、お頭は無理。短気で短慮なんだから、絶対に迷惑かける」
「お前、そんな言い方」
「だって、本当じゃないか」
そこまで言われると反論の余地がないらしい。ファルハードは数回口をパクパクさせたが、次には諦めたように項垂れた。
「誰が頭か分からない二人だね」
「ファルハードの人柄が大事なのですよ。どんなに欠点のある人間でも、妙に人を引き付ける者はいるものです。そういう者が上に立つほうが、組織はまとまるのかもしれません」
笑いながら話す二人はそれが円満な組織図だと妙に納得した。
「アルクース、ついてきてくれますか?」
「いいよ。でも、お頭はここに置いていってもらう」
「そのつもりです。こちらからも一人ファルハードに同行させます。誰か……」
ついてきた仲間を見回すと、一番若い給仕をしていた兵が手を上げる。少し恥ずかしそうだが、手を上げた事には躊躇いがない様子だった。
「僕が残ります。この中では一番実力が足りませんし、足手まといになりたくはありません」
「足手まといだとは思っていませんよ」
「いいえ、僕はまだ力不足です。だから今は、ここに残ります」
そこは揺らぎがないらしい。ユリエルはしばし考えて頷いた。
「それでは、貴方には違う仕事をお願いします。シャスタ族の所に行って、人数と現状を調べておいてください。彼らの求めるものも、現状の問題なども感じたままに伝えてください。お願いします」
「はい、お任せください」
「んじゃ、俺はこれで帰ってよさそうだな。無事終わったら寄りな。場所はアルクースが知ってる」
しっかりと礼をした若い兵を率いて、ファルハードは立ち上がる。そして、自分の拳で左の胸をドンと叩き、それをユリエルに差し出す。ユリエルも立ち上がり、同じようにして拳を合わせた。
「天と地と精霊の加護が、御身にあるように」
「有難うございます」
ニッと野性的な笑みを見せ、ファルハードはそのまま去っていく。その背を見送ってユリエルは笑った。随分と気持ちのいい者を得たことに満足していた。
「うちのお頭、魅力的でしょ?」
「まったく、気持ちのいい奴ですね。私が実に卑小に思えます」
「度量の大きさだけで人を束ねているんだろうね、彼」
「否定はしないかな。正直頭は弱いし、勢いと感情が先行する脳筋な人だけどさ。それでも絶対に仲間を裏切らないし、筋は通す。感情のままに泣いたり笑ったり怒ったり。でも、だからこそ放っておけないし、ついて行こうと思えるんだよ」
とても誇らしげにアルクースは言う。その表情からは、本当にファルハードに対する信頼が見えた。
それに対してユリエルは苦笑する。正直、ファルハードのような人心の集め方はユリエルにはできない。感情のままに振る舞う事も。それほど直情的な人間にはなれない。
人間性のみで人を引き付けることはできないが、それを羨んではいない。ユリエルにはユリエルの方法がある。そしてその方法を、ユリエルは熟知していた。
「さて、随分夜更かしをしてしまいました。今日はもう休みましょう。明日からまた、忙しくなりますよ」
ユリエルの言葉で、その場は落ち着きを取り戻していく。だがその心は皆、沢山の思いで複雑だった。
しっかりとドレスを着直したユリエルはどこから見ても女性にしか見えず、ファルハードはしきりに「詐欺だ」と繰り返している。
「それで? ユーナ姐さんは彼らにどんな酷い事をしたのかな? 正直、戦わなきゃいけないかとハラハラしたよ」
何の気なしに話を振ったレヴィンは手に愛用のリュートを持って言う。遊ぶように弦を弾く音を聞きながら、ユリエルは苦笑した。
「お前、五年前の反乱を知らないのですか?」
「その頃俺、まだ軍に入ってないからね」
それでも国を揺るがすような大騒動だったのだから知っていておかしくはないだろうに。興味がなかったのか、レヴィンは本当に知らないようだった。
「五年前、北の平原地帯には彼等シャスタ族が暮らしていました。放牧などを主とする一族で、これまで一度も争いがなく、穏やかな関係でした。それが突然、反乱を起こしたのです」
その当時、城は大騒動となった。戦わなかったというだけでシャスタ族は勇猛な部族。その者達が攻めてくるとなり、王も臣も過剰に反応したのだ。
「時間をかけて攻略となれば双方の被害は大きくなりかねない。討伐を言いつかった私とグリフィスは短期戦を目指しました」
「んで、俺達はたった四時間で鎮圧。族長だった親父や、戦った戦士は皆死んだ」
黙って聞いていたファルハードが、悔しそうに口を挟む。だが、そこにはもう怒りはない。あるのは悲しさだけに見えた。
「あの年、作物が不作で食べるに困ったんだよ。家畜も痩せて死んで、これじゃあ飢えて死んでしまう。だから、族長たちは攻め込むことを決めたんだ」
アルクースもまた、静かに沈んだ声で言った。
これはユリエルも戦いが終わった後で知った。何故もう少し平和的に解決しようとしなかったのか問うと、族長は笑って答えなかった。ただ一言「これが誇りだ」と。
「戦えない者と若い戦士は事前にその場を離れていた。だから俺達は混乱に紛れてこの国に入れた。おかげで生き延びたが、楽じゃないさ」
これが、正直なところなのだろう。ファルハードも頭の血が下がれば冷静に判断ができる。そして、頼りない目をユリエルへ向けた。
「親父の最後は、立派だったか?」
「捕えられても堂々としていましたよ。そして、真っ先に処刑されることを望み、叶えました。それが族長としての誇りだと言うので」
「仲間を差し置いて長は生きるべからず。誰よりも先に戦い、誰よりも多くの敵を倒し、仲間を守って死ぬが良し。そういう一族だ」
ユリエルは頷いた。
「ユリエル様、一つ聞いてもいいかな?」
黙って聞いていたアルクースが、頼りない表情で問いかける。それに視線を向けたユリエルは静かに頷いた。
「予言者のじっちゃんがいたと思うけれど、その人はどうなった?」
ひどく頼りないアルクースは、聞く事を恐れてすらいる様子だった。握った手が僅かに震えている。ユリエルは静かに微笑み、口を開いた。
「貴方は、あの人の後継者ですね」
「なんで?」
「額に、白い太陽の印がありますから。予言者がその力を認めた後継者にのみ刻む刺青だと聞いています。ファルハードは鷹の加護を受けているのですね」
「どうしてそれを!」
「予言者の老人との時間は、私にとって有意義な時間でした」
ユリエルの穏やかな語り口だけで、アルクースは安堵したようだった。少なくとも酷い扱いを受けたのではないと分かったのだろう。
「あの、じっちゃんは?」
「残念ですが、二年前に亡くなりました。穏やかな最後でしたよ」
その言葉に、一気にアルクースは沈み込んだ。
「私はあの老人から、沢山の事を学びました。精霊や森のこと、魂について。そうした話を楽しみに休みの度に私が通うものだから随分と笑われてしまいました」
「じっちゃんは優しいんだ。孤児の俺を、引き取って育ててくれたんだ」
昔を懐かしむような瞳でアルクースは言う。そしてしばらく、無言となった。
「死後は、どうしたのですか?」
「教えられたとおりにしました。香油と綺麗な水で体を清め、花と木の実を添えて焼き、残った骨は北の森に散骨しました」
「そっか……」
安堵したような表情を浮かべるアルクースの目から、一筋だけ涙が落ちた。
「珍しい葬儀の仕方なんだね」
「そうか? 身を清めて罪を洗い、花と木の実を捧げて飢えを癒し、森に戻す事で大地と空へ帰るんだぜ」
「儀式には意味があるものですよ、レヴィン」
僅かに笑って言うと、レヴィンは嫌な顔をした。まぁ、ユリエルも気持ちはわからないではない。国の儀式となると必要以上に華美で、時間もかかるし堅苦しい。嫌に思う者は少なくない。
「さて、これからの話をしましょうか」
ある程度場が馴染み、ユリエルは気を引き締めた。それに、残っている全員が厳しい顔に戻ったのである。
場が引き締まる。その中で真っ先に口を開いたのは、意外にもファルハードだった。
「けどよ、こっから先となると港だろ? 何があるってんだ?」
相変わらず胡坐をかいてどっかりと座っているファルハードが、行儀悪く肘をついて言う。それに、ユリエルは笑みを浮かべて頷いた。
「その港に用があるのですよ」
「ってーと?」
「そこに居る海賊に用事があるのです」
「もしかして、俺達にしたのと同じことをするつもりじゃないよね、殿下?」
目を丸くして問うアルクースに、ユリエルは妖艶な笑みで「えぇ」とだけ答えた。だが、返ってきたアルクースの瞳はとても厳しいものだった。
「まさか、戦力これだけなんて言わないよね?」
「これだけですよ」
「無謀すぎる! あちらは武装中型船だよ! しかも、船団だって噂だ!」
声を荒げて無謀さを訴えるアルクースに、ユリエルの方が目を丸くする。意外なところから情報が出てきたからだ。
「何か知っているのですか?」
「……襲う相手は大抵商人だからね、話は聞いてる。相手は二隻からなる武装中型船団。最初に先鋒が接舷して、船を占拠。その後から来る船は荷を積みこむ用っぽい。大型船を襲う時は先に砲撃戦を仕掛ける事もあるみたいだよ」
「これはまた、いい情報を貰いました」
「まさか本当にこれだけの人数で挑むつもりなの? 無謀もいいところだよ」
「少数精鋭ってやつかな? 俺も姐さんも強いよ」
「数の優位はそう簡単に覆らないよ」
落胆したようにがっくりと肩を落とすアルクースは、次にキッとファルハードを睨む。その視線にビクッとなったファルハードにビシッと指を突きつけて、アルクースは厳しい声を上げた。
「お頭はここに残って。この人達には俺がついていく」
「え、だってお前……」
「冷静に状況判断できる人間じゃないと邪魔。その点、お頭は無理。短気で短慮なんだから、絶対に迷惑かける」
「お前、そんな言い方」
「だって、本当じゃないか」
そこまで言われると反論の余地がないらしい。ファルハードは数回口をパクパクさせたが、次には諦めたように項垂れた。
「誰が頭か分からない二人だね」
「ファルハードの人柄が大事なのですよ。どんなに欠点のある人間でも、妙に人を引き付ける者はいるものです。そういう者が上に立つほうが、組織はまとまるのかもしれません」
笑いながら話す二人はそれが円満な組織図だと妙に納得した。
「アルクース、ついてきてくれますか?」
「いいよ。でも、お頭はここに置いていってもらう」
「そのつもりです。こちらからも一人ファルハードに同行させます。誰か……」
ついてきた仲間を見回すと、一番若い給仕をしていた兵が手を上げる。少し恥ずかしそうだが、手を上げた事には躊躇いがない様子だった。
「僕が残ります。この中では一番実力が足りませんし、足手まといになりたくはありません」
「足手まといだとは思っていませんよ」
「いいえ、僕はまだ力不足です。だから今は、ここに残ります」
そこは揺らぎがないらしい。ユリエルはしばし考えて頷いた。
「それでは、貴方には違う仕事をお願いします。シャスタ族の所に行って、人数と現状を調べておいてください。彼らの求めるものも、現状の問題なども感じたままに伝えてください。お願いします」
「はい、お任せください」
「んじゃ、俺はこれで帰ってよさそうだな。無事終わったら寄りな。場所はアルクースが知ってる」
しっかりと礼をした若い兵を率いて、ファルハードは立ち上がる。そして、自分の拳で左の胸をドンと叩き、それをユリエルに差し出す。ユリエルも立ち上がり、同じようにして拳を合わせた。
「天と地と精霊の加護が、御身にあるように」
「有難うございます」
ニッと野性的な笑みを見せ、ファルハードはそのまま去っていく。その背を見送ってユリエルは笑った。随分と気持ちのいい者を得たことに満足していた。
「うちのお頭、魅力的でしょ?」
「まったく、気持ちのいい奴ですね。私が実に卑小に思えます」
「度量の大きさだけで人を束ねているんだろうね、彼」
「否定はしないかな。正直頭は弱いし、勢いと感情が先行する脳筋な人だけどさ。それでも絶対に仲間を裏切らないし、筋は通す。感情のままに泣いたり笑ったり怒ったり。でも、だからこそ放っておけないし、ついて行こうと思えるんだよ」
とても誇らしげにアルクースは言う。その表情からは、本当にファルハードに対する信頼が見えた。
それに対してユリエルは苦笑する。正直、ファルハードのような人心の集め方はユリエルにはできない。感情のままに振る舞う事も。それほど直情的な人間にはなれない。
人間性のみで人を引き付けることはできないが、それを羨んではいない。ユリエルにはユリエルの方法がある。そしてその方法を、ユリエルは熟知していた。
「さて、随分夜更かしをしてしまいました。今日はもう休みましょう。明日からまた、忙しくなりますよ」
ユリエルの言葉で、その場は落ち着きを取り戻していく。だがその心は皆、沢山の思いで複雑だった。
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