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失墜の瞬間 (サディアス王子視点)
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この物語には豪雨による被害の描写が含まれています。
ご了承の上、ご覧いただけますようお願いいたします。
また、7月の豪雨によって被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災された方々が一日も早く元の生活に戻れますよう、心からお祈りいたします。
-----------------------------------------------------------------------------------
そんな矢先、ヴェリアスタ王国の東部地方で大規模な土砂崩れが発生した。
連日の豪雨によって山肌が崩れ、周辺の村々が甚大な被害を受けたのだった。家屋が埋まり、多くの住民が避難を余儀なくされているとの報告が次々と宮廷に届き、国王と大臣たちが対応に追われていた。
「サディアス。これはどういうことだ。今回の被害の原因を説明せよ」
静かではあるが怒りを含ませた国王の声に、サディアス王子は一瞬怯んだが、すぐに冷静さを装って答えた。
「陛下、今回の土砂崩れは自然の力によるものであり、予測することは困難でした。しかし、速やかに対応し、被災者への救援を行います」
国王の表情は変わらず厳しいままだったが、更に大臣の一人が詰め寄った。
「殿下、その地区では貴方の指揮の下、半年以内に土砂崩れの対策工事が行われていたはずです。にも関わらず、このような状況になったのは何故ですか?」
サディアス王子は焦りながらも、表情にそれを出さないように努めた。頭の中で必死に言い訳を考えたが、思うような答えが見つからない。その時、別の大臣が口を開いた。
「殿下、三年前にも殿下の主導で同じ地域において工事が行われておりますね」
その言葉に、サディアス王子は一瞬顔を明るくし、すぐに応じた。
「三年前の工事は、実はアイヴァン・ソーンヒルが取り仕切っていたのだ」
悪評高いアイヴァンの名が出て、周囲はざわめいた。
アイヴァンが鬼燈国に旅立ってから、もうすぐ一年。半年前の政務には携わることはできないが、三年前ならば全てあの男に責任を押し付けることができると、サディアス王子はほくそ笑んだ。
「三年前の工事が原因だと仰るのですか?そして、実際の責任者はアイヴァン・ソーンヒルだったと?」
「汚名を返上したいと願ってきたのだ。まさかこのようなことになるなんて……」
けれども、サディアス王子の言葉を聞いた大臣は、冷ややかな声で言い返したのだった。
「殿下、三年前に工事が行われた西地区は今回の豪雨に対して無事でした。しかし、半年以内に行われた東地区が甚大な被害を受けているのです」
サディアス王子は絶句した。全ての絡繰りが見えた者たちは王子を軽蔑した目を向け、その他の者たちは驚きと失望の表情を浮かべていた。
「確認しましたところ、三年前の工事は非常に計画もしっかりしており、書類も完璧に整っていました。失礼ですが、半年前の工事とは雲泥の差です」
自身の失策を認めたくはなかったが、状況はそれを許さない。
実際、サディアス王子の周囲を固める人間で変わったのはアイヴァンとフリーダの二人だけである。無能と評判のアイヴァンと女のフリーダがいないだけで、サディアス王子の評判が覆ることは普通ならば有り得ない。けれども、彼の陣営を支えていたのは他でもない二人であったのだ。
「何か言い訳はあるか、サディアス」
国王の冷たい声が再び響き渡る。普段は温和で、どちらかと言えば煮え切らない姿勢の国王だったが、民の生活を脅かすような真似をした息子のことは許し難いようだった。
「追って沙汰を出す。ひとまず下がれ」
その言葉はサディアス王子にとって、死刑宣告に等しかった。
竦んで動けなくなった彼を騎士たちが会議室から引きずるように連れ出した。
ご了承の上、ご覧いただけますようお願いいたします。
また、7月の豪雨によって被害を受けられた皆様に心よりお見舞い申し上げます。被災された方々が一日も早く元の生活に戻れますよう、心からお祈りいたします。
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そんな矢先、ヴェリアスタ王国の東部地方で大規模な土砂崩れが発生した。
連日の豪雨によって山肌が崩れ、周辺の村々が甚大な被害を受けたのだった。家屋が埋まり、多くの住民が避難を余儀なくされているとの報告が次々と宮廷に届き、国王と大臣たちが対応に追われていた。
「サディアス。これはどういうことだ。今回の被害の原因を説明せよ」
静かではあるが怒りを含ませた国王の声に、サディアス王子は一瞬怯んだが、すぐに冷静さを装って答えた。
「陛下、今回の土砂崩れは自然の力によるものであり、予測することは困難でした。しかし、速やかに対応し、被災者への救援を行います」
国王の表情は変わらず厳しいままだったが、更に大臣の一人が詰め寄った。
「殿下、その地区では貴方の指揮の下、半年以内に土砂崩れの対策工事が行われていたはずです。にも関わらず、このような状況になったのは何故ですか?」
サディアス王子は焦りながらも、表情にそれを出さないように努めた。頭の中で必死に言い訳を考えたが、思うような答えが見つからない。その時、別の大臣が口を開いた。
「殿下、三年前にも殿下の主導で同じ地域において工事が行われておりますね」
その言葉に、サディアス王子は一瞬顔を明るくし、すぐに応じた。
「三年前の工事は、実はアイヴァン・ソーンヒルが取り仕切っていたのだ」
悪評高いアイヴァンの名が出て、周囲はざわめいた。
アイヴァンが鬼燈国に旅立ってから、もうすぐ一年。半年前の政務には携わることはできないが、三年前ならば全てあの男に責任を押し付けることができると、サディアス王子はほくそ笑んだ。
「三年前の工事が原因だと仰るのですか?そして、実際の責任者はアイヴァン・ソーンヒルだったと?」
「汚名を返上したいと願ってきたのだ。まさかこのようなことになるなんて……」
けれども、サディアス王子の言葉を聞いた大臣は、冷ややかな声で言い返したのだった。
「殿下、三年前に工事が行われた西地区は今回の豪雨に対して無事でした。しかし、半年以内に行われた東地区が甚大な被害を受けているのです」
サディアス王子は絶句した。全ての絡繰りが見えた者たちは王子を軽蔑した目を向け、その他の者たちは驚きと失望の表情を浮かべていた。
「確認しましたところ、三年前の工事は非常に計画もしっかりしており、書類も完璧に整っていました。失礼ですが、半年前の工事とは雲泥の差です」
自身の失策を認めたくはなかったが、状況はそれを許さない。
実際、サディアス王子の周囲を固める人間で変わったのはアイヴァンとフリーダの二人だけである。無能と評判のアイヴァンと女のフリーダがいないだけで、サディアス王子の評判が覆ることは普通ならば有り得ない。けれども、彼の陣営を支えていたのは他でもない二人であったのだ。
「何か言い訳はあるか、サディアス」
国王の冷たい声が再び響き渡る。普段は温和で、どちらかと言えば煮え切らない姿勢の国王だったが、民の生活を脅かすような真似をした息子のことは許し難いようだった。
「追って沙汰を出す。ひとまず下がれ」
その言葉はサディアス王子にとって、死刑宣告に等しかった。
竦んで動けなくなった彼を騎士たちが会議室から引きずるように連れ出した。
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