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新たなる道

【迷宮】途中

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 ナウ、迷宮90層手前。89層と90層の間にあるボス部屋。

 「ソ、ソラ君! あ、あれは大丈夫なのですか!?」

 ボスを目の前にアローラの余裕が消える。つい今さっきまでは鼻歌を歌いながら、のんびり歩いていたのに……すごい変わりようだ。

 ボスは身長8メートル程で赤茶色に体を染めているミノタウロス。2本の剣を持ち、目を肉食獣の様に尖らせている。

 「ミノタウロスって普通斧じゃね?」

 固定観念。ふとそんな言葉が脳裏を横切る。

 迷宮のボス部屋は他の階層とはまるで作りが違う。道もなければ、今にも迫って来そうな間が狭い壁もない。学校の体育館の様に広い空間だ。

 「今日はこの先にある休憩所で1泊だな」

 現在の時刻は分からない。だけど俺の体内時計では午後6時を指している。

 因にこの先に休憩所があるのは、アローラが教えてくれた。

 「目の前にボスがいるのに、ずいぶんと余裕ですね」

 ボス部屋の入り口で隠れる様に小さくなっているアローラが言う。

 「ああ、そうだったな~」

 ボスを見ても何も感じない。威圧感とか恐怖とか……。

 2本の剣を持っているが……別にそれは警戒するレベルではない。

 「当たらなければどうということはない」

 ホントに全くその通りだ。武器を持った敵を相手にする時、1番安全な場所は近くである。遠くでも中距離でない。敵の直ぐ傍が安心で安全だ。がっ、それは相互が対等であるから成り立つ関係だ。どちから片方が圧倒的な力を持っていたらそれはまるで意味がない。たとえば―――

 アイスソードを右手に1歩踏み込む。足に魔力を集中させ、全身全霊でその首を取りに行く。

 ―――こんな風に。

 一瞬の出来事だった。ミノタウロスが反応する間もないくらいに。

 まるで通過地点の様にサラリと通りすぎる。そしてその数秒後だった。ミノタウロスの首が胴体から離れたのは。

 そして白い靄となって消えた。魔石だけがポツリと残り……その空間には似合わない程の静寂が訪れる。

 その静寂の中でアローラは口をあんぐり開けて驚きを露にしている。

 「90層のモンスターがこのレベルか……剣聖もあのレベル……俺が魔王になったら絶対に倒せる奴いねぇだろうな」

 全盛期は今の2倍以上。今の俺すら余裕で倒せない奴が倒せる訳がない。

 「さて、休憩ルームに行って一晩休もう」

 固まってるアローラの名を呼ぶ。アローラはハッと正気に戻り慌てて駆け寄って来たのだった。
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