~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭

文字の大きさ
上 下
44 / 59
新たなる道

現実

しおりを挟む
 森の中、俺の足元には剣聖がいる。腹の傷を押さえながら、必死に耐えている。

 仲間は敵がいて欲しくない奴のための虚言だ。仲間なんて存在しない。

 「もうヤベテクダザイ…… ワタジが……ワルカッタデズ……」

 さっきから剣聖をずっと踏みつけている。仲間、仲間なんてずっとしょうもない事を言っているからつい、イライラしてしまった。

 「強者が勝つのは絶対なんだ。弱者は素直に弱者を演じてればいい」

 いつだってそうだった。

 「もし、強者になりたければ甘さを捨てろ。集団でいる事を捨てろ」

 仲間は判断を鈍らせる。

 「独りでいれば、全部自己責任だ」

 そして鈍った結果、自分が死ぬ事になる。

 「他人の責任を押し付けられる事も」

 そして後悔する。

 「自分の責任を押し付けて罪悪感を感じる事もない」

 戦場での判断ミスは死を意味する。こいつらは戦闘経験が少なすぎてそれを理解していない。

 俺は握りしめる様に言った。自分が経験者で、何度も、何度も死んで、その度に後悔して、それを何十回も続けて、いつしか本当に理解出来る日がきた。もう、それが揺るぐ日は来ない。

 ふと寒気がした。それは尋常じゃないものだった。全身に鳥肌が立ち、お思わず両手で二の腕を使うんでしまう程。

 これは決まって何か起こる前兆だ。俺には対処しきれない何か。

 巨大な影が自分を覆う。

 「……魔力も残りすくねぇのに、面倒なのがきたな」

 「ライジングドラゴン!?」

 足元ではさっきまで泣きじゃくってた剣聖が、驚きの声を出している。この剣聖のタフさは少し怖い。まるで俺の攻撃が効いていない様に思える。

 黒色が混じった黄色の体に包まれて体調は50メートル程だろうか? まあ、高層ビルが空を飛んでいる様に見える。

 手足両方とも3本指でその先には、鉄を豆腐の様に切断しそうな鋭い爪がついている。

 「しゃぁねぇなぁ、いっちょ狩るか」

 剣聖を放置し、俺は戦闘準備をする。多分、あれに対して身体能力強化だけで勝つのは難しい。いや、何を行使しても勝てない。それが直感で分かる。

 ライジングドラゴンはこちらを睨む。

 「ちょ、ちょっとあんた何する気!? 相手は天災と言われてて、その中でもトップに入るモンスターよ!!」

 剣聖が俺の腕を掴んで引き留める。まだ、腹痛の痛みに耐えてるらしく、顔がひきつっている。

 「一緒に逃げるわよ!! 私の転移魔法で!」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は剣聖の首を片手で締め上げる。

逃げる? ざけんじゃねぇ!

 「俺は魔王になる男だ」

静かに言う。こんな状況ではありえない程、冷静に静かに。

 「ちょっ!! 離しなさい!! 」

 ジタバタ暴れるがそれは全くの無意味であった。

 「魔王はどんなに、姑息な手を使っても、残虐な事をしても、許される」

 それは俺が尊敬していた魔王の言葉だった。

 「しかし、敵の情けを掛けて貰う事はいかなる理由があろうが、許されない」

 「ちょっ! あんた何を言って――」

 剣聖を投げる。

 きっとあいつには理解出来ないだろう。理解出来なくて良いんだ。

 「……なぜなら俺は魔王だから」

 そう言い放って剣聖を転移させる。これも俺の長き転生生活で手にいれた能力。

 自分をとばす事は出来ないが、それ以外は何でもとばす事が出来る。目の前でホバリングしているドラゴンをとばす選択肢もあったが、それにはどう考えても魔力が足りなかった。

 そして直後、ライジンドラゴンの口から雷の咆哮が飛んでくる。光の速さの物を今の俺では避ける事は出来ない。

 雷は俺を貫いたのであった。
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

母を訪ねて十万里

サクラ近衛将監
ファンタジー
 エルフ族の母と人族の父の第二子であるハーフとして生まれたマルコは、三歳の折に誘拐され、数奇な運命を辿りつつ遠く離れた異大陸にまで流れてきたが、6歳の折に自分が転生者であることと六つもの前世を思い出し、同時にその経験・知識・技量を全て引き継ぐことになる。  この物語は、故郷を遠く離れた主人公が故郷に帰還するために辿った道のりの冒険譚です。  概ね週一(木曜日22時予定)で投稿予定です。

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

解雇されたけど実は優秀だったという、よくあるお話。

シグマ
ファンタジー
 突如、所属している冒険者パーティー[ゴバスト]を解雇されたサポーターのマルコ。しかし普通のサポート職以上の働きをしていたマルコが離脱した後のパーティーは凋落の一途を辿る。そしてその影響はギルドにまでおよび……  いわゆる追放物の短編作品です。  起承転結にまとめることを意識しましたが、上手く『ざまぁ』出来たか分かりません。どちらかと言えば、『覆水盆に返らず』の方がしっくりくるかも……  サクッと読んで頂ければ幸いです。 ※思っていた以上の方に読んで頂けたので、感謝を込めて当初の予定を越える文量で後日談を追記しました。ただ大団円で終わってますので、『ざまぁ』を求めている人は見ない方が良いかもしれません。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!

あるちゃいる
ファンタジー
 山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。  気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。  不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。  どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。  その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。  『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。  が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。  そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。  そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。   ⚠️超絶不定期更新⚠️

処理中です...