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新たなる道

現実

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 森の中、俺の足元には剣聖がいる。腹の傷を押さえながら、必死に耐えている。

 仲間は敵がいて欲しくない奴のための虚言だ。仲間なんて存在しない。

 「もうヤベテクダザイ…… ワタジが……ワルカッタデズ……」

 さっきから剣聖をずっと踏みつけている。仲間、仲間なんてずっとしょうもない事を言っているからつい、イライラしてしまった。

 「強者が勝つのは絶対なんだ。弱者は素直に弱者を演じてればいい」

 いつだってそうだった。

 「もし、強者になりたければ甘さを捨てろ。集団でいる事を捨てろ」

 仲間は判断を鈍らせる。

 「独りでいれば、全部自己責任だ」

 そして鈍った結果、自分が死ぬ事になる。

 「他人の責任を押し付けられる事も」

 そして後悔する。

 「自分の責任を押し付けて罪悪感を感じる事もない」

 戦場での判断ミスは死を意味する。こいつらは戦闘経験が少なすぎてそれを理解していない。

 俺は握りしめる様に言った。自分が経験者で、何度も、何度も死んで、その度に後悔して、それを何十回も続けて、いつしか本当に理解出来る日がきた。もう、それが揺るぐ日は来ない。

 ふと寒気がした。それは尋常じゃないものだった。全身に鳥肌が立ち、お思わず両手で二の腕を使うんでしまう程。

 これは決まって何か起こる前兆だ。俺には対処しきれない何か。

 巨大な影が自分を覆う。

 「……魔力も残りすくねぇのに、面倒なのがきたな」

 「ライジングドラゴン!?」

 足元ではさっきまで泣きじゃくってた剣聖が、驚きの声を出している。この剣聖のタフさは少し怖い。まるで俺の攻撃が効いていない様に思える。

 黒色が混じった黄色の体に包まれて体調は50メートル程だろうか? まあ、高層ビルが空を飛んでいる様に見える。

 手足両方とも3本指でその先には、鉄を豆腐の様に切断しそうな鋭い爪がついている。

 「しゃぁねぇなぁ、いっちょ狩るか」

 剣聖を放置し、俺は戦闘準備をする。多分、あれに対して身体能力強化だけで勝つのは難しい。いや、何を行使しても勝てない。それが直感で分かる。

 ライジングドラゴンはこちらを睨む。

 「ちょ、ちょっとあんた何する気!? 相手は天災と言われてて、その中でもトップに入るモンスターよ!!」

 剣聖が俺の腕を掴んで引き留める。まだ、腹痛の痛みに耐えてるらしく、顔がひきつっている。

 「一緒に逃げるわよ!! 私の転移魔法で!」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は剣聖の首を片手で締め上げる。

逃げる? ざけんじゃねぇ!

 「俺は魔王になる男だ」

静かに言う。こんな状況ではありえない程、冷静に静かに。

 「ちょっ!! 離しなさい!! 」

 ジタバタ暴れるがそれは全くの無意味であった。

 「魔王はどんなに、姑息な手を使っても、残虐な事をしても、許される」

 それは俺が尊敬していた魔王の言葉だった。

 「しかし、敵の情けを掛けて貰う事はいかなる理由があろうが、許されない」

 「ちょっ! あんた何を言って――」

 剣聖を投げる。

 きっとあいつには理解出来ないだろう。理解出来なくて良いんだ。

 「……なぜなら俺は魔王だから」

 そう言い放って剣聖を転移させる。これも俺の長き転生生活で手にいれた能力。

 自分をとばす事は出来ないが、それ以外は何でもとばす事が出来る。目の前でホバリングしているドラゴンをとばす選択肢もあったが、それにはどう考えても魔力が足りなかった。

 そして直後、ライジンドラゴンの口から雷の咆哮が飛んでくる。光の速さの物を今の俺では避ける事は出来ない。

 雷は俺を貫いたのであった。
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