上 下
39 / 59
新たなる道

危機一髪

しおりを挟む

 ニールが爆発する刹那、長き転生生活で手に入れた能力が発動した。
 
 【英雄】
 
 この能力は本当に死の手前にならないと発動しない能力で、その能力はあらゆる身体能力を極限の越えたその先まで活性化させる……だ。
 
 これが自動発動したのは久しぶりだ。大体は発動する前に殺されていた。それだけ聞くここの能力かかなりの不良品なのだが、発動した時が凄いのだ。


 
 ニールの自爆が物凄くゆっくりに見える。出来れば今すぐ逃げ出したいが、この能力は唐突にプチンッと切れるから距離をとるという行動はあまり良い案ではない。それにこのニールの魔力量を考えれば爆発範囲は凄まじく、とても逃げ切れる物ではない。
 
 だから魔防壁を作った。魔防壁とは読んでごとくの通りに魔力で作った防壁だ。これは自分の自由な形にでき、密度や厚さもを自由自在に出切るのだ。
 
 ニールが掴んでいる手首を境に自分を覆う様な魔壁 を作る。厚さは氷の腕とほぼ同じ。密度は極限まで詰め込んだ超高密度。それ以外の何物も入る事は出来ない。その代わり俺も1ミリたりとも動く事が出来ない。
 
 魔壁が完成した直後に俺はふと思い付いたのであった。
 
 「こいつの腕を凍らして爆発を防いだ方が―――」
 
 良かった。そう言おうとした直後にプツンと能力は切れた。
 
 絶大な爆発音が響く。暴風が吹き、魔壁にその衝撃が振動する。パキパキっと不吉な音がするが、俺の所までそれは届かない。
 
 この爆発を考えると規模は10キロ程度あるんじゃないかと思ってしまう。
 
 爆発は一瞬で終わった。衝撃が収まってからゆっくりと魔壁を消す。
 
 「……流石は命を使った攻撃。魔壁が半分まで持ってかれてるとは」
 
 正面にあった魔壁の、その半分が吹っ飛んでいた。しかし、不思議な事が1つあった。それは―――
 
 「爆発の威力が、あんなにあれだったのに、どうして…………」
 
 どう考えてもそれはおかしかった。爆発の影響を受けているのが俺の後方わずか数メートル程だけまでなのだ。俺の魔壁を半分も削った事から考えても最低でも半径1キロは爆発の影響を受けててもおかしくない。
 
 「目の前には普通の森がある。爆発の影響は数メートルで綺麗さっぱり……」
 
 なくなっている。どうみても不可解過ぎる現象だ。そんな時、ふと俺は本来の目的を思い出した。
 
 「ファフニールは……」
 
 首を回し辺りを見てみるがその姿はどこにもなかった。ただ、氷の箱に穴が1つ空いていた。
 
 「まあ、あれだけ時間があれば逃げるよな」
 
 自分でもそう納得してしまうほど戦ってた気がした。
 
 「このあとは……とりあえず宿をとって疲れたし寝るか」
 
 あの魔壁でかなりの魔力を消費した。たぶん、あと2、3回戦闘でもすれば魔欠でぶっ倒れるだろう。
 
 そう足を動かした直後だった。
 
 「ちょっと、あんたどこ行くき?」
 
 後ろから聞き覚えのある声だった。振り向いて見るとやっぱりそうだった。
 
 「剣聖……」
 
 そこにはミュセルがいた。
 
 剣を抜いてはいないが、既に手を柄に添えている。それもさっきと違う剣。おそらく聖剣エクスカリバーとでも言うのだろう。
 
 正直、今戦ったら確実に俺が負ける。それは、本当に! 本当に! 心の底から認めたくない事実だ。
しおりを挟む
感想 159

あなたにおすすめの小説

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?

サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。 *この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。 **週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**

ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果

安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。 そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。 煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。 学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。 ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。 ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は…… 基本的には、ほのぼのです。 設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。

加護とスキルでチートな異世界生活

どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!? 目を覚ますと真っ白い世界にいた! そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する! そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる 初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです ノベルバ様にも公開しております。 ※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった… それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく… ※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

処理中です...