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新たなる道
危機一髪
しおりを挟むニールが爆発する刹那、長き転生生活で手に入れた能力が発動した。
【英雄】
この能力は本当に死の手前にならないと発動しない能力で、その能力はあらゆる身体能力を極限の越えたその先まで活性化させる……だ。
これが自動発動したのは久しぶりだ。大体は発動する前に殺されていた。それだけ聞くここの能力かかなりの不良品なのだが、発動した時が凄いのだ。
ニールの自爆が物凄くゆっくりに見える。出来れば今すぐ逃げ出したいが、この能力は唐突にプチンッと切れるから距離をとるという行動はあまり良い案ではない。それにこのニールの魔力量を考えれば爆発範囲は凄まじく、とても逃げ切れる物ではない。
だから魔防壁を作った。魔防壁とは読んでごとくの通りに魔力で作った防壁だ。これは自分の自由な形にでき、密度や厚さもを自由自在に出切るのだ。
ニールが掴んでいる手首を境に自分を覆う様な魔壁 を作る。厚さは氷の腕とほぼ同じ。密度は極限まで詰め込んだ超高密度。それ以外の何物も入る事は出来ない。その代わり俺も1ミリたりとも動く事が出来ない。
魔壁が完成した直後に俺はふと思い付いたのであった。
「こいつの腕を凍らして爆発を防いだ方が―――」
良かった。そう言おうとした直後にプツンと能力は切れた。
絶大な爆発音が響く。暴風が吹き、魔壁にその衝撃が振動する。パキパキっと不吉な音がするが、俺の所までそれは届かない。
この爆発を考えると規模は10キロ程度あるんじゃないかと思ってしまう。
爆発は一瞬で終わった。衝撃が収まってからゆっくりと魔壁を消す。
「……流石は命を使った攻撃。魔壁が半分まで持ってかれてるとは」
正面にあった魔壁の、その半分が吹っ飛んでいた。しかし、不思議な事が1つあった。それは―――
「爆発の威力が、あんなにあれだったのに、どうして…………」
どう考えてもそれはおかしかった。爆発の影響を受けているのが俺の後方わずか数メートル程だけまでなのだ。俺の魔壁を半分も削った事から考えても最低でも半径1キロは爆発の影響を受けててもおかしくない。
「目の前には普通の森がある。爆発の影響は数メートルで綺麗さっぱり……」
なくなっている。どうみても不可解過ぎる現象だ。そんな時、ふと俺は本来の目的を思い出した。
「ファフニールは……」
首を回し辺りを見てみるがその姿はどこにもなかった。ただ、氷の箱に穴が1つ空いていた。
「まあ、あれだけ時間があれば逃げるよな」
自分でもそう納得してしまうほど戦ってた気がした。
「このあとは……とりあえず宿をとって疲れたし寝るか」
あの魔壁でかなりの魔力を消費した。たぶん、あと2、3回戦闘でもすれば魔欠でぶっ倒れるだろう。
そう足を動かした直後だった。
「ちょっと、あんたどこ行くき?」
後ろから聞き覚えのある声だった。振り向いて見るとやっぱりそうだった。
「剣聖……」
そこにはミュセルがいた。
剣を抜いてはいないが、既に手を柄に添えている。それもさっきと違う剣。おそらく聖剣エクスカリバーとでも言うのだろう。
正直、今戦ったら確実に俺が負ける。それは、本当に! 本当に! 心の底から認めたくない事実だ。
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