25 / 59
新たなる道
一狩り行こうぜ
しおりを挟む
「さて、どう攻めるものか」
木の上で平穏な集落を眺めながら呟く。
「奇襲だと……失敗したらダサいし……やっぱり正面から堂々と…………そうだ!! 良いことを思い付いた!!」
俺は木からおり、ゴブリン亜種の集落の門の近くまで行く。門番が2匹いるが、まだ俺に気づいていない。俺は木の影に潜んでいる。
「さて行こうかな」
そう歩きだそうとした直後、ある事に気づいた。
「これは流石にださいわ~」
服装がずっと制服のままなのだ。
「そういえば、前の世界での服を少し確か詰めて……」
俺はサックバックを取りだし、手を突っ込む。そしてある物を掴む。それは――
「これだ、これ」
黒色のフードがくっついている服。シンプルで特に柄はなく、秋と冬の間に着る用の服である。薄い長袖で、手触りが凄く良い。つまりジャージだ。
ズボンも制服だと動き難いから変えた。これもまたサックバックから出した。紺色のズボンである。これは上の下だ。下は上と違ってなんか軽い柄がある。
「他人から見たらきっとこっちの方がダサいだろうけど、俺は気にしない。自分が良ければそれで良いのだ。それに制服だと動きにくし」
俺は着ていた制服をそこら辺に捨てた。おそらくもう制服を着る機会はこないだろう。
「さてと、今度こそ行きますか」
フードを被り俺は門に向けて足を動かした。木影から出て数歩歩いてゴブリン亜種に気づかれる。
「誰だお前!」
2匹のゴブリンは棒の先に尖った石をつけた物をこちらに向ける。きっとあれは槍だろう。
俺は足に魔力を送り一気にゴブリンの元まで踏み込む。そして――
「うがっ!!」
1匹のゴブリンの顔を掴み上げる。それを見てもう片方のゴブリンは恐怖する。
因みにゴブリン亜種の身長は160センチ程で、俺より低い。俺は多分168か9だろう。最後に計った時がそうだった。まあ、大して差はない。だから普通の筋力では持ち上げられない。つまり腕にも魔力を送っているのだ。
「おい、テメェこいつを殺されたくなかったらこの村で1番強い奴を呼んでこい」
俺の行動に何も出来ないゴブリンにそう言い放った。
「わ、分かりました!!」
そう言われるとゴブリンは持っていた槍を捨て走って村の中に戻って行った。
「さて、お前はどうする?」
悪に満ちた顔で俺は聞く。
―――
その頃、村では……1匹のゴブリンが村長の家まで叫びながら走っていた。
「た、大変だぁ!! 人間が来たぁぁ!!」
その言葉を聞き一斉に他のゴブリンがそいつの元へ集まる。
「そ、それは本当かいイン!?」
「だ、だとしたら早く逃げないと!!」
「逃げるってどこへ!?」
「そんなの私が知るわけないでしょ!!」
人間の襲来でゴブリン亜種たちは激しく戸惑う。彼らがこんなに戸惑うのも無理もない。彼らにとって人間というのは酷く恐ろしい者だから。
「村長は!? 村長はどこにいるの!?」
「村長はどこだ!?」
自分ではどうすれば良いか判断が出来ないゴブリンたちはまとめ役を求める。しかし、そんな中1匹のゴブリンが冷静に、ある事に気づく。それは――
「イン君、ヨウは? ヨウはどこにいるの?」
ヨウとはもう1匹の門番の事だ。そしてヨウの事を聞いているのは彼の母親であった。誰もがその事に気づかない中、母親である彼女だけは気づいたのであった。
インはその言葉に下を向く。
すると―――
パァァンと甲高い音が響く。そしてヨウの母親は続けて強く言った。
「ヨウはどこ!!」
その怒鳴り声に騒いでた村人が一斉に静かになる。
「人間が!! 人間が人質に……ドジマダ!!」
インは泣きながら言う。
インとヨウは幼い頃からの知り合いで今は親友という中まで発展している。インはそんなヨウが捕まった事に何1つ抗う事が出来なかった。ただ、親友が殺されないために人間の言う事を聞く事しか出来なかった。
「村で……イヂバンツヨイヤツヲォォ!! 」
インはそこまで言って地面に倒れ込むように泣く。泣きじゃくる。
そんな姿のインをヨウの母はそれ以上攻める事が出来なかった。
インが泣きじゃくる姿を見て1人の老ゴブリンが背中を優しく撫でる。その姿を目にして周りのゴブリンたちは次々とその名を呼ぶ。
――村長
村長は落ち着いた様子で言った。
「こうなる事は分かっていた事じゃ。それに無宣言で殺されるよりはましじゃ。なあ、インよ」
村長が優しく話しかける。
「人間は1番強い奴を連れてこいと言ったのじゃろう?」
その質問にインはただ頷く。
「ならワシが行こう」
村長のその言葉に誰もが驚いた。
「こんな老骨に何が出来るか、という顔をしておるな。ホッホホ。そう思われても仕方ない歳じゃな。安心せい。こう見えても若い頃は何度も人間を返り討ちにしてたわい」
「しかし村長!!」
1匹の若いゴブリンが口を開くが村長はそれを聞かないで言葉を続けた。
「ワシは賊を追い返す。皆は好きにせい。逃げるも良し、留まるのも良し、よう自分で考えるのじゃ」
村長のその言葉の後、そこから足を動かす者はいなかった。
誰もが村長が勝つ事を信じている訳ではない。ただ、ここで逃げても意味がない事だと分かっているのだ。
木の上で平穏な集落を眺めながら呟く。
「奇襲だと……失敗したらダサいし……やっぱり正面から堂々と…………そうだ!! 良いことを思い付いた!!」
俺は木からおり、ゴブリン亜種の集落の門の近くまで行く。門番が2匹いるが、まだ俺に気づいていない。俺は木の影に潜んでいる。
「さて行こうかな」
そう歩きだそうとした直後、ある事に気づいた。
「これは流石にださいわ~」
服装がずっと制服のままなのだ。
「そういえば、前の世界での服を少し確か詰めて……」
俺はサックバックを取りだし、手を突っ込む。そしてある物を掴む。それは――
「これだ、これ」
黒色のフードがくっついている服。シンプルで特に柄はなく、秋と冬の間に着る用の服である。薄い長袖で、手触りが凄く良い。つまりジャージだ。
ズボンも制服だと動き難いから変えた。これもまたサックバックから出した。紺色のズボンである。これは上の下だ。下は上と違ってなんか軽い柄がある。
「他人から見たらきっとこっちの方がダサいだろうけど、俺は気にしない。自分が良ければそれで良いのだ。それに制服だと動きにくし」
俺は着ていた制服をそこら辺に捨てた。おそらくもう制服を着る機会はこないだろう。
「さてと、今度こそ行きますか」
フードを被り俺は門に向けて足を動かした。木影から出て数歩歩いてゴブリン亜種に気づかれる。
「誰だお前!」
2匹のゴブリンは棒の先に尖った石をつけた物をこちらに向ける。きっとあれは槍だろう。
俺は足に魔力を送り一気にゴブリンの元まで踏み込む。そして――
「うがっ!!」
1匹のゴブリンの顔を掴み上げる。それを見てもう片方のゴブリンは恐怖する。
因みにゴブリン亜種の身長は160センチ程で、俺より低い。俺は多分168か9だろう。最後に計った時がそうだった。まあ、大して差はない。だから普通の筋力では持ち上げられない。つまり腕にも魔力を送っているのだ。
「おい、テメェこいつを殺されたくなかったらこの村で1番強い奴を呼んでこい」
俺の行動に何も出来ないゴブリンにそう言い放った。
「わ、分かりました!!」
そう言われるとゴブリンは持っていた槍を捨て走って村の中に戻って行った。
「さて、お前はどうする?」
悪に満ちた顔で俺は聞く。
―――
その頃、村では……1匹のゴブリンが村長の家まで叫びながら走っていた。
「た、大変だぁ!! 人間が来たぁぁ!!」
その言葉を聞き一斉に他のゴブリンがそいつの元へ集まる。
「そ、それは本当かいイン!?」
「だ、だとしたら早く逃げないと!!」
「逃げるってどこへ!?」
「そんなの私が知るわけないでしょ!!」
人間の襲来でゴブリン亜種たちは激しく戸惑う。彼らがこんなに戸惑うのも無理もない。彼らにとって人間というのは酷く恐ろしい者だから。
「村長は!? 村長はどこにいるの!?」
「村長はどこだ!?」
自分ではどうすれば良いか判断が出来ないゴブリンたちはまとめ役を求める。しかし、そんな中1匹のゴブリンが冷静に、ある事に気づく。それは――
「イン君、ヨウは? ヨウはどこにいるの?」
ヨウとはもう1匹の門番の事だ。そしてヨウの事を聞いているのは彼の母親であった。誰もがその事に気づかない中、母親である彼女だけは気づいたのであった。
インはその言葉に下を向く。
すると―――
パァァンと甲高い音が響く。そしてヨウの母親は続けて強く言った。
「ヨウはどこ!!」
その怒鳴り声に騒いでた村人が一斉に静かになる。
「人間が!! 人間が人質に……ドジマダ!!」
インは泣きながら言う。
インとヨウは幼い頃からの知り合いで今は親友という中まで発展している。インはそんなヨウが捕まった事に何1つ抗う事が出来なかった。ただ、親友が殺されないために人間の言う事を聞く事しか出来なかった。
「村で……イヂバンツヨイヤツヲォォ!! 」
インはそこまで言って地面に倒れ込むように泣く。泣きじゃくる。
そんな姿のインをヨウの母はそれ以上攻める事が出来なかった。
インが泣きじゃくる姿を見て1人の老ゴブリンが背中を優しく撫でる。その姿を目にして周りのゴブリンたちは次々とその名を呼ぶ。
――村長
村長は落ち着いた様子で言った。
「こうなる事は分かっていた事じゃ。それに無宣言で殺されるよりはましじゃ。なあ、インよ」
村長が優しく話しかける。
「人間は1番強い奴を連れてこいと言ったのじゃろう?」
その質問にインはただ頷く。
「ならワシが行こう」
村長のその言葉に誰もが驚いた。
「こんな老骨に何が出来るか、という顔をしておるな。ホッホホ。そう思われても仕方ない歳じゃな。安心せい。こう見えても若い頃は何度も人間を返り討ちにしてたわい」
「しかし村長!!」
1匹の若いゴブリンが口を開くが村長はそれを聞かないで言葉を続けた。
「ワシは賊を追い返す。皆は好きにせい。逃げるも良し、留まるのも良し、よう自分で考えるのじゃ」
村長のその言葉の後、そこから足を動かす者はいなかった。
誰もが村長が勝つ事を信じている訳ではない。ただ、ここで逃げても意味がない事だと分かっているのだ。
22
お気に入りに追加
1,918
あなたにおすすめの小説
魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡
サクラ近衛将監
ファンタジー
女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。
シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。
シルヴィの将来や如何に?
毎週木曜日午後10時に投稿予定です。
巻き込まれ召喚・途中下車~幼女神の加護でチート?
サクラ近衛将監
ファンタジー
商社勤務の社会人一年生リューマが、偶然、勇者候補のヤンキーな連中の近くに居たことから、一緒に巻き込まれて異世界へ強制的に召喚された。万が一そのまま召喚されれば勇者候補ではないために何の力も与えられず悲惨な結末を迎える恐れが多分にあったのだが、その召喚に気づいた被召喚側世界(地球)の神様と召喚側世界(異世界)の神様である幼女神のお陰で助けられて、一旦狭間の世界に留め置かれ、改めて幼女神の加護等を貰ってから、異世界ではあるものの召喚場所とは異なる場所に無事に転移を果たすことができた。リューマは、幼女神の加護と付与された能力のおかげでチートな成長が促され、紆余曲折はありながらも異世界生活を満喫するために生きて行くことになる。
*この作品は「カクヨム」様にも投稿しています。
**週1(土曜日午後9時)の投稿を予定しています。**
ボッチになった僕がうっかり寄り道してダンジョンに入った結果
安佐ゆう
ファンタジー
第一の人生で心残りがあった者は、異世界に転生して未練を解消する。
そこは「第二の人生」と呼ばれる世界。
煩わしい人間関係から遠ざかり、のんびり過ごしたいと願う少年コイル。
学校を卒業したのち、とりあえず幼馴染たちとパーティーを組んで冒険者になる。だが、コイルのもつギフトが原因で、幼馴染たちのパーティーから追い出されてしまう。
ボッチになったコイルだったが、これ幸いと本来の目的「のんびり自給自足」を果たすため、町を出るのだった。
ロバのポックルとのんびり二人旅。ゴールと決めた森の傍まで来て、何気なくフラっとダンジョンに立ち寄った。そこでコイルを待つ運命は……
基本的には、ほのぼのです。
設定を間違えなければ、毎日12時、18時、22時に更新の予定です。
加護とスキルでチートな異世界生活
どど
ファンタジー
高校1年生の新崎 玲緒(にいざき れお)が学校からの帰宅中にトラックに跳ねられる!?
目を覚ますと真っ白い世界にいた!
そこにやってきた神様に転生か消滅するかの2択に迫られ転生する!
そんな玲緒のチートな異世界生活が始まる
初めての作品なので誤字脱字、ストーリーぐだぐだが多々あると思いますが気に入って頂けると幸いです
ノベルバ様にも公開しております。
※キャラの名前や街の名前は基本的に私が思いついたやつなので特に意味はありません
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる