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新たなる道

一狩り行こうぜ

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 「さて、どう攻めるものか」
 
 木の上で平穏な集落を眺めながら呟く。
 
 「奇襲だと……失敗したらダサいし……やっぱり正面から堂々と…………そうだ!! 良いことを思い付いた!!」
 
 俺は木からおり、ゴブリン亜種の集落の門の近くまで行く。門番が2匹いるが、まだ俺に気づいていない。俺は木の影に潜んでいる。
 
 「さて行こうかな」
 
 そう歩きだそうとした直後、ある事に気づいた。
 
 「これは流石にださいわ~」
 
 服装がずっと制服のままなのだ。
 
 「そういえば、前の世界での服を少し確か詰めて……」
 
 俺はサックバックを取りだし、手を突っ込む。そしてある物を掴む。それは――
 
 「これだ、これ」
 
 黒色のフードがくっついている服。シンプルで特に柄はなく、秋と冬の間に着る用の服である。薄い長袖で、手触りが凄く良い。つまりジャージだ。
 
 ズボンも制服だと動き難いから変えた。これもまたサックバックから出した。紺色のズボンである。これは上の下だ。下は上と違ってなんか軽い柄がある。
 
 「他人から見たらきっとこっちの方がダサいだろうけど、俺は気にしない。自分が良ければそれで良いのだ。それに制服だと動きにくし」
 
 俺は着ていた制服をそこら辺に捨てた。おそらくもう制服を着る機会はこないだろう。
 
 「さてと、今度こそ行きますか」
 
 フードを被り俺は門に向けて足を動かした。木影から出て数歩歩いてゴブリン亜種に気づかれる。
 
 「誰だお前!」
 
 2匹のゴブリンは棒の先に尖った石をつけた物をこちらに向ける。きっとあれは槍だろう。
 
 俺は足に魔力を送り一気にゴブリンの元まで踏み込む。そして――
 
 「うがっ!!」 
 
 1匹のゴブリンの顔を掴み上げる。それを見てもう片方のゴブリンは恐怖する。
 
 因みにゴブリン亜種の身長は160センチ程で、俺より低い。俺は多分168か9だろう。最後に計った時がそうだった。まあ、大して差はない。だから普通の筋力では持ち上げられない。つまり腕にも魔力を送っているのだ。
 
 「おい、テメェこいつを殺されたくなかったらこの村で1番強い奴を呼んでこい」
 
 俺の行動に何も出来ないゴブリンにそう言い放った。
 
 「わ、分かりました!!」
 
 そう言われるとゴブリンは持っていた槍を捨て走って村の中に戻って行った。
 
 「さて、お前はどうする?」 
 
 悪に満ちた顔で俺は聞く。
 
 ―――
 
 その頃、村では……1匹のゴブリンが村長の家まで叫びながら走っていた。
 
 「た、大変だぁ!! 人間が来たぁぁ!!」
 
 その言葉を聞き一斉に他のゴブリンがそいつの元へ集まる。
 
 「そ、それは本当かいイン!?」
 「だ、だとしたら早く逃げないと!!」
 「逃げるってどこへ!?」
 「そんなの私が知るわけないでしょ!!」

 人間の襲来でゴブリン亜種たちは激しく戸惑う。彼らがこんなに戸惑うのも無理もない。彼らにとって人間というのは酷く恐ろしい者だから。
 
 「村長は!? 村長はどこにいるの!?」
 「村長はどこだ!?」
 
 自分ではどうすれば良いか判断が出来ないゴブリンたちはまとめ役を求める。しかし、そんな中1匹のゴブリンが冷静に、ある事に気づく。それは――
 
 「イン君、ヨウは? ヨウはどこにいるの?」
 
 ヨウとはもう1匹の門番の事だ。そしてヨウの事を聞いているのは彼の母親であった。誰もがその事に気づかない中、母親である彼女だけは気づいたのであった。
 
 インはその言葉に下を向く。
 すると―――
 
 パァァンと甲高い音が響く。そしてヨウの母親は続けて強く言った。
 
 「ヨウはどこ!!」
 
 その怒鳴り声に騒いでた村人が一斉に静かになる。
 
 「人間が!! 人間が人質に……ドジマダ!!」
 
 インは泣きながら言う。
 
 インとヨウは幼い頃からの知り合いで今は親友という中まで発展している。インはそんなヨウが捕まった事に何1つ抗う事が出来なかった。ただ、親友が殺されないために人間の言う事を聞く事しか出来なかった。
 
 「村で……イヂバンツヨイヤツヲォォ!!  」
 
 インはそこまで言って地面に倒れ込むように泣く。泣きじゃくる。
 
 そんな姿のインをヨウの母はそれ以上攻める事が出来なかった。
 
 インが泣きじゃくる姿を見て1人の老ゴブリンが背中を優しく撫でる。その姿を目にして周りのゴブリンたちは次々とその名を呼ぶ。
 
 ――村長
 
 村長は落ち着いた様子で言った。
 
 「こうなる事は分かっていた事じゃ。それに無宣言で殺されるよりはましじゃ。なあ、インよ」
 
 村長が優しく話しかける。
 
 「人間は1番強い奴を連れてこいと言ったのじゃろう?」
 
 その質問にインはただ頷く。
 
 「ならワシが行こう」
 
 村長のその言葉に誰もが驚いた。
 
 「こんな老骨に何が出来るか、という顔をしておるな。ホッホホ。そう思われても仕方ない歳じゃな。安心せい。こう見えても若い頃は何度も人間を返り討ちにしてたわい」
 
 「しかし村長!!」
 
 1匹の若いゴブリンが口を開くが村長はそれを聞かないで言葉を続けた。
 
 「ワシは賊を追い返す。皆は好きにせい。逃げるも良し、留まるのも良し、よう自分で考えるのじゃ」
 
 村長のその言葉の後、そこから足を動かす者はいなかった。
    誰もが村長が勝つ事を信じている訳ではない。ただ、ここで逃げても意味がない事だと分かっているのだ。
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