~クラス召喚~ 経験豊富な俺は1人で歩みます

無味無臭

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異世界転生

狂気

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 モンスターを殺すには体の心臓である魔石という石を取り出すか、壊さなければいけない。そしてクエスト報告をする時、この魔石がクエスト達成の明かしにもなっている。だから魔石は必須なのだ。しかし、そんな事はどうでもいい。問題なのは魔石さえあればモンスターは生きてられるのか、という事だ。これは今後の戦闘に大きく関わる事だ。
     魔力量が全盛期の半分以下となると、大魔法を撃って相手を微塵も残さず殺すっていう事が出来なくなる。そうなると戦闘で必要な知識は相手の弱点だ。この場合は魔石だ。しかし、魔石は体内のどこに有るかを割り出してそこを的確に狙うという事をしなければいけない。

    非常に難しい。

    今回みたいなザコモンスターならいいけど、フェンリルみたいなヤベェのが出てきた時それが出来ないと、かなり手こずる。
 
 だから俺は今、それを試してる。オーガ亜種の手足を引きちぎって芋虫みたいにして、観察したり、他にも首を取ったり、骨を全部粉砕したり、溶かしたり、凍らせたり……っと。そして色々試した結果、分かった事があった。
 モンスターは首を切断されたら死ぬ。それ以外の所を切断しても数十分程度で再生する。つまり、モンスターを殺すには首チョンパか、魔石を破壊するかの2択だ。体を切断されたら、どんだけそれが小さかろうと、魔石がある方から再生する。
 
 このモンスターの仕組みは初めてで分かるまで“楽しく”研究させてもらった。
 
 そんな俺をタナトスがどんな目で見てたか俺は知らない。きっと酷い顔をしていたと思う。だけどそれは俺が知らないままで良い。知らぬが仏という言葉まであるくらいだから。
 
 研究を終えたあとは魔石を回収して街に戻った。その街までの間、タナトスに特に変化はなかった。いつも通りのテンションで話をしながら帰った。
 
 「お疲れ様でしたー」
 
 受け付けで完了の報告をすると、いかにも事務用な挨拶が“俺”を見送った。まあ、事務員に感情を込めた挨拶を求める事態が間違っているが。

    タナトスは冒険者ギルドに入るなり、用事を思い出したと言ってどっか消えてしまった。
 
 「オーガ亜種5体の討伐で50万。まあまあかな。冒険者ランクも☆2になったし、今日はこれでいっか」
 
 そう布袋に入った札を眺めながらギルドを出ようとすると、ドンッと何かに当たった。
 
 「あ、わりぃ」
 
 そう一言言って立ち去ろうとしたのだが、腕を掴まれた。
 
 「テメェ、見ない顔だな。新入りか?」
 
 札束から目を離し声のする方向を見る。そこには見た目、凄腕冒険者がいた。背中に大剣と大きな布袋を持ち、ずっしりとした鎧を身に付けてる。顔は兜で見えない。だけど、これからおそらくオッサンだろう。
 
   「ん? ああ、そうだよ。今日登録したばっか。そういう、あんたは熟練者かな?」
 
 「ああ、そうだ。俺は★1だ」
 
 男は少し自慢げに言う。
 
 「へぇ~。それで、何かよう? 俺、今日はもう帰りたいんだけど。あ、トイレなら右側の奥にあるよ」
 
 男がさっきから落ち着かない様子でいるから俺は察して言ってあげた。まあ、年をとるとトイレが近くなるって聞くし。
 
 「……テメェ礼儀って言葉知ってるか?」
 
 なにその唐突過ぎる質問。言葉の意味を聞いてるのか?
 
 「…………あんた、その年でその言葉を知らないのは不味いぞ。俺が教えてやるよ」
 
 「俺が貴様に教えてやる!」
 
 男が背中の大剣に手を伸ばしたその時だった。
 
 「少年、屋台で旨そうな串焼きを見つけたぞ!!   一緒に食べないかって……何してるんだ?」
 
 後ろの入り口からタナトスが大量の串焼きを持って入ってきた。その時、目の前の男が小さく「2刀流の悪魔」と叫んだのであった。
 
 2刀流の悪魔? タナトスが? まあ、向こうの世界だとこれ、ギリシャ神話か何かの死神の名前だしな。……関係ないか。
 
 「いや、何かこいつが礼儀って言葉の意味を教えてくれって言うから」
 
 俺は悪の笑みをわざと男にそれを見せた。兜で顔は見えないが、大体どんな顔をしてるか予想が付く。
 
 今もそうだが俺は演技してる。理由はその男が今朝、人気がない路上で恐喝してたからだ。つまり、こいつは今、金を持っているのだ。恐喝した金はあの背中にある大きな布袋に入ってる。……つまり、あの布袋の中は全て金なのだ。俺は今日偶然それを見た。……恐喝するって事は恐喝される覚悟があるってことだろ? なら俺はする以外、選択肢がないじゃないか。
    あの大金グヘヘ
 
 俺のこの後の予定では男に呼び出されてボコられる所を返り討ちにして持ち金を全て頂く予定だったのだが……まあ、仕方ない。てっきりタナトスは帰ったものばかりだと思っていたから、そこは俺の確認不足だ。
 
 ちなみに出るタイミングを男と合わせた方法は透視能力。この能力は物体が半透明に見えるのだ。ただ、これは目から入る映像だけではなく、360度、すべての物が見える様になる。だから長時間使ってると、脳の処理速度が間に合わなくなって頭が痛くなる。もちろんこの能力は俺の長き転生生活で手に入れた能力の1つだ。原理はよく分からないが、最初貰った時の説明だと、体内の魔力を外に放出する事でレーダーのような役割を果たしているらしい。魔力が物体に当たって跳ね返って来たのを脳が自動的に判断して想像図を作るらしい。これは使ってる間、常に多くの魔力を消費する。なんたって壁の向こうまで見るには魔力の量を変えなければいけないからな。魔力は空気中に出ると散っていく。だからより遠くまで知りたい時は、そこにある障害物に跳ね返って戻ってくるまでの魔力を費やさなければいけない。
    まあ、今回はそんな遠くないから魔力の消費量は少なかったけど。
 
 「そんな事も知らないのか? このデカブツは? アッハハハハ!! 冒険者やめて、学園にでも行けばどうだ?」
 
 そのタナトスの一言でギルド内は笑いに包まれた。なんと良いことだろう。なぁ、デカブツ君。
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