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第五章 「暗躍」 ー第二地区防衛編ー
第七十二話「一難去ってまた一難」
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「ほ、本当に勝っちゃった・・・・」
ぐちゃぐちゃになった山々を前にして
思わずゼノは声を漏らした。
「アンタ、あんな人どうやって味方にしたの?」
「・・・・・普通に声かけただけだ。
困ってんなら手を貸すから
俺のことも手伝ってくれないかって」
そうこうしていると
ルーカスが道に迷いながらも
その怪物じみた姿を二人の前へ露にする。
「よお、流石だな」
「ハハハ、逃げられたがな」
テオに声をかけられながら
二人の方へ歩いていくルーカス。
彼らに近づくたびに
背中の触手が溶け、
手が人のものへと戻っていった。
「十分さ、道は開いた。
まあ、道らしいものは何にも残ってないが」
「ああ」
テオが見ている方を、
ルーカスは、自分の後ろを振り返り、
初めてその光景と向き合う。
明るく、ドロドロに爛れた大地。
木々へ炎が広がり、
残った台地は黒く焦げ、
辺りにバラバラになった木や岩の破片が
散らばっている。
地面は大きなナイフで
切れ込みを入れたかのような断層が起こり、
地面は浮いたり、沈ずんだり、陥没したり、
「悪い」
「気にすんな」
そこに大きな線路があったことなど
もう誰にもわからないだろう。
「列車は使えなくなったが
代わりに言い移動手段が見つかったし」
「何だそれ」
テオの視線がルーカスに集中する。
その数分後、
三人は上空にいた。
「本当にいけるとは思わなかったな」
横幅三メートルほどの
黒い翼の上にルーカスとゼノが乗っている。
凄まじい向かい風が起こるはずの
その場所にはそよ風の一つも吹いておらず、
迫りくる風は横へ横へと、
彼らと周辺を区切る仕切りがあるかのように
避けられ続けていた。
「・・・・・・」
テオが胡坐をかいて座る一方、
ゼノはばつが悪そうに足先で立っている。
気まずそうに目線をあちらこちらにやり、
『ルーカス、さん
ほ、本当に、これで良いのかい?』
二人の下にいるルーカスへ彼女は
そう言った。
実際口は開いていないが
脳に直接、声が響き渡る。
『ああ』
それに彼はぶっきらぼうに返した。
どこか不満げに聞こえるその返事に
ゼノはより一層居心地を悪そうにしてしまう。
『わ、私は飛ぼうかな・・・・』
『大丈夫ダ』
『そ、そうかい?
じゃあ、頼むね・・・・』
仕方なくゼノはそのまま立ち尽くした。
自分の足が乗っているところは
恐らく人の背中なのだろうと考えながら。
こうなる少し前、
ルーカスがザーゲアとの戦いで見せた
あの姿に目を付けたテオはこう提案した。
「さっきのアレで二人を乗せて飛べないか」と。
ルーカスは
「やってみる」と二つ返事で変身を始めた。
触手のうち、二本を黒い飛行機のような翼に変え、
四本からはジェットの要領で火を放つ。
どうにか二人が翼に乗れるように
彼が腰を折り曲げたり、一度飛んでから乗ろうとしてみたりと
試行錯誤をした後、ルーカスは飛行機のようではなく、
実質、本当の飛行機として機能することとなった。
(なんか・・・・悪いなあ)
何かと色々気にしてしまうゼノだったが、
ルーカスとテオは特に何も気にしていないようだ。
テオはこれ以外手段がないと開き直り、
ルーカスは飛ぶことに集中している。
それだけだった。
『こっちで合ってるノカ?』
『ああ』
火の音と風の騒音は
気流と共にゼノによって操作され、
三人の会話はテオによるテレパシーで成り立っている。
『この調子なら
後、数分でつけるな』
当機の速度は
音の速度を超えており、
雲が凄まじい速さで
後ろへ通り過ぎていく。
『いや、にしても速いし、
持続距離も長いとは
どうなってんだ?』
『オマエラも飛べるだろ』
『飛べはするが
こんな速くは無理だ。
しかも、ここまでアホみたいに魔力を使っといて
無事なのはお前ぐらいだよ』
『そんな使ってるか?』
『ああ、ここまで来たので、
大体クラス3が四人は死んだな』
『へえ』
『そんな返事ができってことは
本当に何ともないんだな』
『ああ、今のトコロは
疲れも感じてない』
『すげえなあ』
そんな風に二人が話していると
緑ばかりだった下界の景色が
少しずつ色を変えていた。
彼らの先に灰色の壁とそこから伸び出る
レンガや灰色のビルが見え始めたのだ。
『見えたぞ』
カミラが巣くう都市、スルイ。
第二地区の南端であり、
中央都市に対する防衛線として
重要な場所だ。
もし、ここが今、彼女の手に落ちていると
政府側に知れてしまえば
第二地区は敵方に落ちたも同然かもしれない。
『さすがだ。
もうちょっと頼むぜ。』
そんなことを頭に置きながらも
冷静に事を進めようとテオは心がけていた。
ただ、そんなに簡単に
近づくことはできないらしい。
『!』
十数キロ先に近づいた瞬間、
ルーカスの片翼が爆破された。
彼の翼に飛んで来たのは火の玉。
それもとてつもなく大きな火の玉が
彼の翼に着弾した。
(魔導銃?!)
彼もよく見た魔導銃から発射されるタイプの火の玉が
彼の翼へ当たり、銃からとは思えないほどの爆発を起こす。
翼は折れ、体が焦げ、
ルーカスはバランスを失ってしまう。
ゼノやテオはまだ背中に乗ってはいられたが
一気に傾く彼の背で、
どうにかしがみついているという状態だ。
(見えなかった・・・
触手は脆いとは言え、
威力も段違いに高い)
普通の魔導銃を見切って
動くことなど今のルーカスには造作もない。
が、今の攻撃は彼の目でも
捉えることがやっとだったらしい。
『おい!降りれるか!?』
『待ってろ。今、翼を』
壊れたなら治せばいいと
彼が翼を修復しようとした瞬間、
次弾が来た。
そして、その次も、その次も
何発も何発も。
次々とやって来る火弾が
彼の体を正確に爆破していく。
ルーカスの顔や腕が焦げ、焼けていき、
上がる煙で前が見えない。
翼はボロボロでもう何の役にも立たなくなっていく。
そんな彼が辿る結末は
落下であった。
『視界が!』
初めての飛行で
バランスを失い、
次々と視界を煙で覆われる彼は
何もできないまま落ちていくことしかできない。
『私に任せて!』
そこでゼノは自身の翼を展開して、
二人を救おうとする。
まずは、一番近くにいたテオを掴んで抱き寄せ
次に、片翼となったルーカスに手を伸ばす。
そんな彼女へ火の玉が迫った。
「うっ」
大きな音と共に
ゼノが爆炎と煙に包まれる。
何発も発射される火の玉は
黒い塊に何度も当たり、
それは地上へと落下していく。
そして、そのまま地面を砕き、
大穴をあけ、その中へ入ってしまった。
だが、それが良かったらしい。
「・・・・・・」
撃ち落とした犯人はそれ以上
狙撃することはできないようで
攻撃が止んだのだ。
「痛った~」
翼を小さくしながら
ゼノがそう声を漏らす。
翼からは煙が噴き出しており、
少しずつ傷はふさがっているものの
見ているだけで痛々しく、
その治りも遅い。
「もう当分飛べなそう・・・・」
苦痛を漏らしながら
翼を折りたたんでいく彼女、
翼で覆われていた場所には
テオとルーカスがいた。
「ありがとう」
テオは感謝を伝えながら
むくりと起き上がり、
「一応、もっと深く掘っとくか」
そう言って彼が地面に手を置く。
すると、土が彼らを迎え入れるように変形し、
深い穴が出来上がった。
上の穴から顔を乗り出して覗かなければ
彼らを視認することすら出来ないだろう。
更に
「もうちょい」
彼がさらに出来上がった穴の
壁に触れた。
すると、そこから無数の道が出来上がっていく。
アリの巣のような経路が形成されると、
テオは中央の大穴に戻ってきた。
「相手は?」
ルーカスにそう問う。
寝ころんだまま、傷を治しながら
彼は答えた。
一瞬のことだったが、
ルーカスの目には相手が的確に見えていたのだ。
敵は
「サラだ。」
十数キロ先の点にしか見えない飛翔物。
それを赤い目をしたサラは壁の上から設置された
自身よりも遥かに大きな銃で持って撃ち落としてきた。
「しかも、見たことないぐらいに
でかい銃を使ってた
何だあれ」
「・・・・ああ、多分、それは
うちの対巨大魔獣用魔導銃だ。
本来はフェーニスみたいな的のデカい奴を
倒せるように作ったんだが
まさか俺たちを狙って来るとはな」
「ここからどうするんだい?」
「穴を掘って進む。
サラが相手となると、
多分数キロ先まで近づいたら地中でも構わず
的確に狙って来るだろうが
そこまでは確実に進める。」
テオが指さしたのは
さっき彼が掘ったアリの穴だ。
「行けそうか?」
ゼノは
「多分、大丈夫
あと、数分は飛べないだろうけど」
そう言って、
少し翼を気にしながら立ち上がる。
ルーカスは
「問題ない」
体の修復を終えて、
両手も使わず、
足だけの力だ立ち上がると
体を適当に動かして
自身の調子を確かめ始めた。
変身の解けた体を見つめると
そこには何もせずとも太く黒い管が浮かび上がっている。
「・・・・・・」
しかし、
それを対して気にするそぶりも見せず、
彼は手を開き、閉じ、握りこみ、
体に力を籠め、緩める。
一通り確かめ終わると、
「いつでもいける」
そう言い切ってみせる。
「本当に頼もしい奴らだ。
じゃあ、行くぞ」
そして、三人だけの行進が始まった。
地下を行く、誰にも誇るべくもない行進が。
ぐちゃぐちゃになった山々を前にして
思わずゼノは声を漏らした。
「アンタ、あんな人どうやって味方にしたの?」
「・・・・・普通に声かけただけだ。
困ってんなら手を貸すから
俺のことも手伝ってくれないかって」
そうこうしていると
ルーカスが道に迷いながらも
その怪物じみた姿を二人の前へ露にする。
「よお、流石だな」
「ハハハ、逃げられたがな」
テオに声をかけられながら
二人の方へ歩いていくルーカス。
彼らに近づくたびに
背中の触手が溶け、
手が人のものへと戻っていった。
「十分さ、道は開いた。
まあ、道らしいものは何にも残ってないが」
「ああ」
テオが見ている方を、
ルーカスは、自分の後ろを振り返り、
初めてその光景と向き合う。
明るく、ドロドロに爛れた大地。
木々へ炎が広がり、
残った台地は黒く焦げ、
辺りにバラバラになった木や岩の破片が
散らばっている。
地面は大きなナイフで
切れ込みを入れたかのような断層が起こり、
地面は浮いたり、沈ずんだり、陥没したり、
「悪い」
「気にすんな」
そこに大きな線路があったことなど
もう誰にもわからないだろう。
「列車は使えなくなったが
代わりに言い移動手段が見つかったし」
「何だそれ」
テオの視線がルーカスに集中する。
その数分後、
三人は上空にいた。
「本当にいけるとは思わなかったな」
横幅三メートルほどの
黒い翼の上にルーカスとゼノが乗っている。
凄まじい向かい風が起こるはずの
その場所にはそよ風の一つも吹いておらず、
迫りくる風は横へ横へと、
彼らと周辺を区切る仕切りがあるかのように
避けられ続けていた。
「・・・・・・」
テオが胡坐をかいて座る一方、
ゼノはばつが悪そうに足先で立っている。
気まずそうに目線をあちらこちらにやり、
『ルーカス、さん
ほ、本当に、これで良いのかい?』
二人の下にいるルーカスへ彼女は
そう言った。
実際口は開いていないが
脳に直接、声が響き渡る。
『ああ』
それに彼はぶっきらぼうに返した。
どこか不満げに聞こえるその返事に
ゼノはより一層居心地を悪そうにしてしまう。
『わ、私は飛ぼうかな・・・・』
『大丈夫ダ』
『そ、そうかい?
じゃあ、頼むね・・・・』
仕方なくゼノはそのまま立ち尽くした。
自分の足が乗っているところは
恐らく人の背中なのだろうと考えながら。
こうなる少し前、
ルーカスがザーゲアとの戦いで見せた
あの姿に目を付けたテオはこう提案した。
「さっきのアレで二人を乗せて飛べないか」と。
ルーカスは
「やってみる」と二つ返事で変身を始めた。
触手のうち、二本を黒い飛行機のような翼に変え、
四本からはジェットの要領で火を放つ。
どうにか二人が翼に乗れるように
彼が腰を折り曲げたり、一度飛んでから乗ろうとしてみたりと
試行錯誤をした後、ルーカスは飛行機のようではなく、
実質、本当の飛行機として機能することとなった。
(なんか・・・・悪いなあ)
何かと色々気にしてしまうゼノだったが、
ルーカスとテオは特に何も気にしていないようだ。
テオはこれ以外手段がないと開き直り、
ルーカスは飛ぶことに集中している。
それだけだった。
『こっちで合ってるノカ?』
『ああ』
火の音と風の騒音は
気流と共にゼノによって操作され、
三人の会話はテオによるテレパシーで成り立っている。
『この調子なら
後、数分でつけるな』
当機の速度は
音の速度を超えており、
雲が凄まじい速さで
後ろへ通り過ぎていく。
『いや、にしても速いし、
持続距離も長いとは
どうなってんだ?』
『オマエラも飛べるだろ』
『飛べはするが
こんな速くは無理だ。
しかも、ここまでアホみたいに魔力を使っといて
無事なのはお前ぐらいだよ』
『そんな使ってるか?』
『ああ、ここまで来たので、
大体クラス3が四人は死んだな』
『へえ』
『そんな返事ができってことは
本当に何ともないんだな』
『ああ、今のトコロは
疲れも感じてない』
『すげえなあ』
そんな風に二人が話していると
緑ばかりだった下界の景色が
少しずつ色を変えていた。
彼らの先に灰色の壁とそこから伸び出る
レンガや灰色のビルが見え始めたのだ。
『見えたぞ』
カミラが巣くう都市、スルイ。
第二地区の南端であり、
中央都市に対する防衛線として
重要な場所だ。
もし、ここが今、彼女の手に落ちていると
政府側に知れてしまえば
第二地区は敵方に落ちたも同然かもしれない。
『さすがだ。
もうちょっと頼むぜ。』
そんなことを頭に置きながらも
冷静に事を進めようとテオは心がけていた。
ただ、そんなに簡単に
近づくことはできないらしい。
『!』
十数キロ先に近づいた瞬間、
ルーカスの片翼が爆破された。
彼の翼に飛んで来たのは火の玉。
それもとてつもなく大きな火の玉が
彼の翼に着弾した。
(魔導銃?!)
彼もよく見た魔導銃から発射されるタイプの火の玉が
彼の翼へ当たり、銃からとは思えないほどの爆発を起こす。
翼は折れ、体が焦げ、
ルーカスはバランスを失ってしまう。
ゼノやテオはまだ背中に乗ってはいられたが
一気に傾く彼の背で、
どうにかしがみついているという状態だ。
(見えなかった・・・
触手は脆いとは言え、
威力も段違いに高い)
普通の魔導銃を見切って
動くことなど今のルーカスには造作もない。
が、今の攻撃は彼の目でも
捉えることがやっとだったらしい。
『おい!降りれるか!?』
『待ってろ。今、翼を』
壊れたなら治せばいいと
彼が翼を修復しようとした瞬間、
次弾が来た。
そして、その次も、その次も
何発も何発も。
次々とやって来る火弾が
彼の体を正確に爆破していく。
ルーカスの顔や腕が焦げ、焼けていき、
上がる煙で前が見えない。
翼はボロボロでもう何の役にも立たなくなっていく。
そんな彼が辿る結末は
落下であった。
『視界が!』
初めての飛行で
バランスを失い、
次々と視界を煙で覆われる彼は
何もできないまま落ちていくことしかできない。
『私に任せて!』
そこでゼノは自身の翼を展開して、
二人を救おうとする。
まずは、一番近くにいたテオを掴んで抱き寄せ
次に、片翼となったルーカスに手を伸ばす。
そんな彼女へ火の玉が迫った。
「うっ」
大きな音と共に
ゼノが爆炎と煙に包まれる。
何発も発射される火の玉は
黒い塊に何度も当たり、
それは地上へと落下していく。
そして、そのまま地面を砕き、
大穴をあけ、その中へ入ってしまった。
だが、それが良かったらしい。
「・・・・・・」
撃ち落とした犯人はそれ以上
狙撃することはできないようで
攻撃が止んだのだ。
「痛った~」
翼を小さくしながら
ゼノがそう声を漏らす。
翼からは煙が噴き出しており、
少しずつ傷はふさがっているものの
見ているだけで痛々しく、
その治りも遅い。
「もう当分飛べなそう・・・・」
苦痛を漏らしながら
翼を折りたたんでいく彼女、
翼で覆われていた場所には
テオとルーカスがいた。
「ありがとう」
テオは感謝を伝えながら
むくりと起き上がり、
「一応、もっと深く掘っとくか」
そう言って彼が地面に手を置く。
すると、土が彼らを迎え入れるように変形し、
深い穴が出来上がった。
上の穴から顔を乗り出して覗かなければ
彼らを視認することすら出来ないだろう。
更に
「もうちょい」
彼がさらに出来上がった穴の
壁に触れた。
すると、そこから無数の道が出来上がっていく。
アリの巣のような経路が形成されると、
テオは中央の大穴に戻ってきた。
「相手は?」
ルーカスにそう問う。
寝ころんだまま、傷を治しながら
彼は答えた。
一瞬のことだったが、
ルーカスの目には相手が的確に見えていたのだ。
敵は
「サラだ。」
十数キロ先の点にしか見えない飛翔物。
それを赤い目をしたサラは壁の上から設置された
自身よりも遥かに大きな銃で持って撃ち落としてきた。
「しかも、見たことないぐらいに
でかい銃を使ってた
何だあれ」
「・・・・ああ、多分、それは
うちの対巨大魔獣用魔導銃だ。
本来はフェーニスみたいな的のデカい奴を
倒せるように作ったんだが
まさか俺たちを狙って来るとはな」
「ここからどうするんだい?」
「穴を掘って進む。
サラが相手となると、
多分数キロ先まで近づいたら地中でも構わず
的確に狙って来るだろうが
そこまでは確実に進める。」
テオが指さしたのは
さっき彼が掘ったアリの穴だ。
「行けそうか?」
ゼノは
「多分、大丈夫
あと、数分は飛べないだろうけど」
そう言って、
少し翼を気にしながら立ち上がる。
ルーカスは
「問題ない」
体の修復を終えて、
両手も使わず、
足だけの力だ立ち上がると
体を適当に動かして
自身の調子を確かめ始めた。
変身の解けた体を見つめると
そこには何もせずとも太く黒い管が浮かび上がっている。
「・・・・・・」
しかし、
それを対して気にするそぶりも見せず、
彼は手を開き、閉じ、握りこみ、
体に力を籠め、緩める。
一通り確かめ終わると、
「いつでもいける」
そう言い切ってみせる。
「本当に頼もしい奴らだ。
じゃあ、行くぞ」
そして、三人だけの行進が始まった。
地下を行く、誰にも誇るべくもない行進が。
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