異世界英雄の学園生活～英雄に休息なんてありません～

4章 衝突する勢力

14話 衝突 2

「いやぁ……まさかこの近くにこんな良い店があるなんてね。過ごしやすいカフェだよ」

 　カップを片手にコーヒーを飲む姿が妙に様になっている鶴壁つるかべを横目に京雅きょうがはメニュー表を眺めていた。

「それで急になんの用で来たんだ？」

 　注文を店員に伝えてひと段落した後、京雅は普段よりも言葉にトゲのある口調とともに目の前に座る鶴壁を睨んだ。

 　それでも鶴壁は優雅にコーヒーを啜ってる窓の外を眺めている。

「明日だって。ついに異超会がこの街に来て君を殺しにくるよ」

「そうか。早かったな」

 　京雅は空腹を抑えるために水を口に流し込みながらそう呟いた。一見普段通りに見える京雅だが、その表情には微かながらも緊張の色が見える。

「そこで提案があるんだよ」

「提案だと？」

「君には苦労をかけるが、他の人たちを巻き込まなくて済む作戦だよ」

「……………」

「失礼します。こちら、ご注文のパンケーキとアイスコーヒーになります。ではごゆっくりどうぞ」

 　京雅は無言のままフォークを手にパンケーキを頬張り始めた。

 　鶴壁は特に口を開くことなくその様子を眺めるばかり。二人の間には異様な空気が流れている。

「………相手の人数と異能力と超能力はわかるか？」

 　パンケーキを半分ほど食し、アイスコーヒーを飲む。それを皮切りに京雅の瞳には鋭さが生まれた。

 　その眼光を真正面から受けた鶴壁はその威圧から身の毛のよだつような肌のざわつきを覚えていた。

「……詳しくは分からないけど、異能力者が五人、超能力者が七人。そのうち異能力者と超能力者に二人ずつ別格が居る」

「なるほど。そこに黎れいは居ないんだな？」

「聞いた限りではね。彼の実力は既にアルセーヌ異超会の中でも五本の指には入るだろうから」
 　
「……………」

 　京雅は再びパンケーキに手をつける。無言でパンケーキを食べ進める京雅に姿を見て、鶴壁も腹が減ったのか、定員を呼んで京雅と同じパンケーキを注文していた。

　そこから少しして京雅はパンケーキを完食した。

「…………強さはどの程度だ？」

「強さかい？そうだね………私たちの基準で良いなら、A級が五人、B級が三人、C級が四人かな。と言っても確証はないけど」

「さっぱりだな。その基準がまず分からないな」

 　京雅はアイスコーヒーを一気に飲み干し、空になったカップを見下ろしながら冷たくそう告げる。

「C級の異能力者や超能力者はそこまで大袈裟なことは出来ないから大丈夫。B級はシンプルな能力だけど、使い手次第で充分に戦闘力が変わるもの。ちなみにえいと君の超スピードはここだね」

 　震えを必死に抑えながら鶴壁は平然とした様子で言葉を紡ぐ。しかし、カップを包むようにして持つ両手は微かに震えている。それほど京雅から放たれる殺気に似た威圧感は鶴壁を追い詰めていた。

「失礼します。こちら、ご注文のパンケーキになります。ごゆっくりどうぞ」

 　そこから二人の間に沈黙が流れる。何かを言い出すのを戸惑う様子の鶴壁と普段通りの無表情で鶴壁を見つめる京雅。

 　鶴壁は震える手を必死に抑えながらフォークでパンケーキを切って口に運んだ。

「うん、美味しい………さて、問題は五人のA級だね」

 　鶴壁はパンケーキを食べながら話を進める。パンケーキという緩和剤によって体の震えも若干の治まりをみせていた。

「A級に認定された人間は基本的にそもそもの能力と本人自体が強力で、能力の応用も多岐に渡るから相手にするならば高い対応力が必要になる。それが五人となると厳しいだろうね」

「そうか。で、お前の作戦は？」

「明日、私と君でどこかに行こう。公欠扱いになるし、街から離れられれば被害も減るだろう？」

「…………分かった。明日のことはお前に任せる」