上 下
21 / 84
1章 超能力者の存在

20話 救出

しおりを挟む
しょう、立てるか?」

「ぼ、僕は……それよりもあの人たちは?」

  手足を縛っていたロープを解いて京雅きょうがは蒋へ手を差し伸べる。

  蒋は京雅の手を取り疑問をぶつける。京雅は少し考えるような仕草をしてから口を開いた。

「俺が殺したボコったよ。結構危なかったけど何とか無事だった」

「えっ、スゴすぎる!さすが京雅だよ!」

  何の疑う様子を見せることなく蒋は京雅を称賛する。

  京雅はその称賛を素直に受け取れず顔に影を作る。

「それよりも、れいは大丈夫かな?」

「あ………」

  瑛翔えいとの事で頭がいっぱいだったが、黎の様子もおかしかった。もしかしたら黎も超能力者に目を付けられる可能性がある、と思った京雅は蒋の手を取って駆け出した。

「え、ちょ、ちょっと!どこに向かうの?」

「黎の家!黎のことも心配だ」

「そうだね。少し前から様子がおかしかったよね」

  京雅は蒋が付いてこれるスピードで走っていた。早く黎の家に着きたいが、蒋の事も心配で置いて行くという選択ができず、もどかしさを感じていた。

「………キョーガ。僕は大丈夫だよ」

「えっ?急にどうした?」

  京雅は走るのを止めて蒋の方に振り向いた。

「僕の事気遣って走ってくれてるでしょ?僕は一人で学校に向かうからキョーガは黎の家に向かって」

  その言葉に京雅は絶句した。蒋は今までもその容姿故に色々な面倒事に巻き込まれていた。だとしても、今回の出来事はその範疇を大きく超えてるのはまず間違いない。

  一歩間違えていたら死んでいたかもしれない。そうでなくとも相当怖い思いをしたであろうに、蒋は真っ直ぐと京雅を見てそう言ったのだ。

「俺は蒋のことも心配で──」

「僕も黎のことが心配なんだ。僕はもう大丈夫さ。だって、京雅がまた助けてくれたろ?」

  ニヒッといたずらっ子ぽく笑うと蒋はトンっと京雅の背中を押した。

「行ってあげて。僕はもう救われたから。あとは黎だけだよ」

「………ありがとな、蒋」

「なに、この程度どうってことは無いさ!」

  そう言ってはにかむと蒋は京雅に手を振って学校の方へと走っていく。

  その姿を見て決心したのか、京雅の顔付きも変わる。

「何も無いことを祈る……」

  幸いにも蒋の家から黎の家まではそんなに遠くない。京雅がある程度の速さで走っていれば既に着いているような距離だ。

~~~~

「京、雅……」

「黎!」

  黎の家の前まで来た京雅は一切迷う事なくドアを開ける。そこにはパジャマ姿で、目にはクマを作って、不健康そうなナリをした黎の姿があった。

「何があったんだよ!」

「………実はさ……」

  黎は下を向きながらポツポツと言葉を紡いでいった。

  黎の言った事を要約すると、ある日突然自分のスマホに脅しのような迷惑メールが届くようになって、その事が怖くて夜も眠れずに居て、ついに今日休んでしまったということだった。

「なるほど……辛かったよな」

「いや、俺のメンタルが強けりゃこんな風になってなかっただろうなって分かってんだよ」

  黎は乾いた笑みをして居た。その笑みは自嘲してるように見えて京雅はそんな黎に苛立ちのようなものを感じた。

「そんなの……関係ねぇよ。黎が辛かったんだからツレぇんだよ。俺が必ずソイツを殺す見付けるから──」

「いや、大丈夫だよ。ありがとな京雅。元気出たよ」

  無理をしてるようには見えるが、先程よりは幾分もマシになって笑みでそう答えた。

「てか、なんでこの時間にここに居るんだ?今日、学校……だよな?」

「………まぁ、これから行くさ。黎は……まぁ今日は休めよ?じゃあな」

「あぁ、またな」

  京雅は黎の家を出て学校のある方へ視線を向けた。

  その方角を見つめた京雅は一瞬顔を顰めた。そして、微かに殺気を放ち出す。

「………居るな、超能力者クズが」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

最強パーティーのリーダーは一般人の僕

薄明
ファンタジー
ダンジョン配信者。 それは、世界に突如現れたダンジョンの中にいる凶悪なモンスターと戦う様子や攻略する様子などを生配信する探索者達のことだ。 死と隣り合わせで、危険が危ないダンジョンだが、モンスターを倒すことで手に入る品々は、難しいダンジョンに潜れば潜るほど珍しいものが手に入る。 そんな配信者に憧れを持った、三神《みかみ》詩音《しおん》は、幼なじみと共に、世界に名を轟かせることが夢だった。 だが、自分だけは戦闘能力において足でまとい……いや、そもそも探索者に向いていなかった。 はっきりと自分と幼なじみ達との実力差が現れていた。 「僕は向いてないみたいだから、ダンジョン配信は辞めて、個人で好きに演奏配信とかするよ。僕の代わりに頑張って……」 そうみんなに告げるが、みんなは笑った。 「シオンが弱いからって、なんで仲間はずれにしないといけないんだ?」 「そうですよ!私たちがシオンさんの分まで頑張ればいいだけじゃないですか!」 「シオンがいないと僕達も寂しいよ」 「しっかりしなさいシオン。みんなの夢なんだから、諦めるなんて言わないで」 「みんな………ありがとう!!」 泣きながら何度も感謝の言葉を伝える。 「よしっ、じゃあお前リーダーな」 「はっ?」 感動からつかの間、パーティーのリーダーになった詩音。 あれよあれよという間に、強すぎる幼なじみ達の手により、高校生にして世界トップクラスの探索者パーティーと呼ばれるようになったのだった。 初めまして。薄明です。 読み専でしたが、書くことに挑戦してみようと思いました。 よろしくお願いします🙏

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

2回目の異世界召喚~世界を滅ぼせる男女は旅をする~

初雪空
ファンタジー
西坂一司は、中学時代に異世界へ迷い込む。 半年後に戻ってきた彼は地元を離れ、都心にある東羽高校に通っていた。 衣川イリナという、芸名みたいな女子と共に。 何の変哲もない日常は、クラスごとの異世界召喚で終わりを告げた。 圧倒的なスキルを与えられつつ、勇者として使い倒される生徒。 召喚したイングリットが告げる。 「ノースキルの人は出て行ってください! もしくは――」 「ああ、分かった」 一司は、提示された再就職先も断り、1人で王城を出た。 その異世界を滅ぼしかねない存在であることを、本人とイリナだけが知っている状態で……。 この物語はフィクションであり、実在する人物、団体等とは一切関係ないことをご承知おきください。 また、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。 ※ カクヨム、小説家になろう、ハーメルンにも連載中

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

処理中です...