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1章 超能力者の存在

17話 戦闘 1

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  京雅きょうがは魔法や言霊が使えないことにもどかしさを覚えながらも住宅街を走り抜けていく。

  しょうの家は学校から徒歩二十分ほどの場所にある。だが、京雅にかかればものの三分程度である。

「蒋!」

  京雅は蒋の家の前まで来ると、後先考えずにドアを勢いよく開けながら名前を呼ぶ。だが、返事は帰って来ず、人の気配はあるのに人が居ないのでは無いかと錯覚するほど静かだった。

  京雅は一切躊躇することなく玄関から真っ直ぐに伸びる廊下を進み、すりガラスのドアの前まで来た。

  ゆっくりとドアノブを回してドアを開けていく。ちょっとした隙間から顔を出して中の様子を確認する。

「………どうなってんだ?」

  リビングはなぜな薄暗く、夜のような雰囲気だ。人気は全くなく、人が居た形跡すらない。

  京雅は警戒心を解くことなくゆっくりとリビングへと入っていく。周りをキョロキョロと見渡しながら全体を確認していく。

「どこ見てるんだい?」

「っ……!」

  不意に後ろから声がした。聞き覚えのある不快感すら感じる声。

  京雅が振り返ると、さっきまでは居なかった五人の男と、口と両手足を縛られている蒋の姿があった。蒋は既に泣き目であり微かに震えているため、怯えているのが一目で分かる。

「蒋は関係ないだろ。放せよ」

  京雅の目の色が変わり、目から光が消えていく。目からハイライトが完全に消えて茶色から漆黒へと移り変わっていく瞳。

  戦闘時や興味を失った時に出る無機質な目だ。

「良いだろう。こいつはただのエサだからもう用はない」

  五人の男の内の一人が蒋を突き飛ばすようにして廊下へと追いやる。

  それを確認した京雅は相手に聞こえないぐらい小さい声で呟いた。

「『遮音結界』」

  蒋や周りの人達に戦闘時の音が聞こえないように魔法を発動させる。次いで、京雅は男たちの方へ視線を向けた。

「全員……超能力者だな?」

  その質問に勝司はうすら笑みを浮かべて答える。

「御明答。でも、それがわかったところで、だよ」

  京雅は勝司しょうじから嘲笑うかのような肯定を受けて、たまらず失笑した。

「………プハッ!アハハハッ!アハッ!フハハハッ!」

  目尻に涙を浮かべながら腹を抱えて笑っている京雅。

  勝司や周りの男たちはその京雅の様子に不快感や怒り等々を感じてか顔を歪める。

  京雅が目尻に浮かんだ涙を人差し指で拭き取っていると、前方から凄まじい殺気を放っている人物がいる。

「ブッ……殺す!」

  五人いる男の内の……京雅に凄まじい殺気を向けていた人物がそう叫んで京雅に接近する。

「ふむ……名前は輝也てるや。超能力はで……一瞬だけ身体能力を上昇させるものか。まぁまぁだな」

  京雅の顔面を狙った鋭いストレートを首を横に曲げて軽く避ける。そのまま解説のように相手の情報を言い出した。

「…………期待無しだな」

  男は体をビクつかせて京雅から距離を取って勝司の方へと戻る。

「やはり、オレの見立ては間違ってなかったようだ」

「…………見立てだと?」

  嬉々とした様子で勝司はそう言い放った。

「君は今でも充分に強い。能力の使い方を熟知してるのだろうな。──だからこそ今潰すべきだ」

  勝司から穏やかな雰囲気が消えた。明確な敵意をあらわにして戦闘態勢に入る勝司。その姿を見た他の四人も各々構え始めた。

  勝司たちのその様子に京雅は余裕の笑みを浮かべたまま煽るかのように手招きをする。

「こんやろがッ!」

  再び輝也が飛び出してきた。京雅は飛び出してきたのが輝也だと分かるや否や顔から笑みが消える。

  そして、笑みの代わりに面倒臭そうな顔を浮かていた。

「テメェはもういいんだよ」

  予備動作のない強烈な蹴りが輝也の腹部……みぞおち付近に直撃した。

「カハッ!」

  肺の空気を全て吐き出して過呼吸のように状態になりながら、その場で心臓部付近を押さえて苦しみ悶える輝也を横目に勝司たちに近づく。

  その様子を見て後退りをして警戒の色をより一層強める勝司たち。

「次は誰だ?誰でも良いぜ」

  ニヒリと、凶悪で狂ったよう笑みを零す京雅の表情を見た勝司たちは、冷や汗と悪寒が止まらずにいた。
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