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69話 プール 2
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「やっぱ、プールと言えばウォータースライダーだと俺は思う!」
「えぇ……俺は流れるプールが良いなぁ。ウォータースライダーはもうちょっとあとの方が……」
亮がウォータースライダーを乗るとしたら十中八九冬華と乗るだろう。ここまで来て二人別とは考えにくいし。でも、亮は言わずもがなだが、冬華も恋愛が絡むと急に奥手になるきらいがあるから、最初からと言うのはハードルが高いだろう。だから、ここで海斗と意見が割れたのはかなり良い。これならば二分割すればどうとでもなる。
「じゃあ、俺と海斗の二人でウォータースライダー行くよ。陽斗達は流れるプールに行っててくれないか?後で合流しよう」
「おぉ、さすがは蓮!俺のために大好きな流れるプールを断念してくれるなんて!」
「そういう訳じゃないが……まぁ、そっちはそっちで、な」
冬華の方に視線をやると、頬を微かに赤らめて小さく頷いた。亮も何となく察したのかソワソワしている。
次に陽斗の方へと視線をやると、カタイ笑みを浮かべて頷く。
陽斗の事だし緊張しながらも上手くやるだろう。陽斗に必要だったのは歩み寄るためのチャンス、それだけだしな。
「じゃあ行くぞ。凄い列なんだから」
「流れるプールから見ててくれよな!」
ついでにこの無駄に高いテンションの真意を聞いておこうかな。
~~~~
「知ってたけど、やっぱ長いな……」
「二十分か。田舎民には厳しいな」
さっきとは打って変わって海斗の調子は普段通り。テンションもだいぶ落ち着いてきている。やっぱり、無理してたんだろう。
ここで理由を聞くこともできるけど……やっぱりそう言うのは野暮というものかもしれない。
海斗から話さないなら触れられたくない可能性もある。なら、そこは海斗の意思を尊重しよう。
「アイツら、大丈夫かな」
「アイツら?亮達のことか?」
「まぁ、どっちかと言うと陽斗の方かな」
やっぱり、と言うべきか。海斗も何やかんや言って友達想いだからな。回りくどいとは言え、二人も少なからず海斗のおかげで調子が戻った部分もあるだろう。
「蓮、もう止めにしないか?」
「止める?何を?」
あまりの文脈のなさに俺の頭の中に疑問符が浮かぶ。海斗は海斗らしからぬ真面目な顔付きだった。
「水面下で暗躍してたのは楽しかったか?」
「…………」
なるほど。やっぱり海斗は気づいてたのか。まぁ、露骨な部分も今までにあったし、焦りのせいで雑になったところもある。気付ける人は気づけるだろう。
「もう、止めようぜ。それで助けられる人がいれば……傷つく人も居る。何より、蓮が楽しめないだろ?」
「心配には及ばないさ。今回のが成功すれば、もうこんな事はしないよ……必要がなければ」
もとより決めていたこと。でも、その決意が自分だけで完結していたら、きっとまた似たようなことをするかもしれない。今回海斗にこれを打ち明けられたのは良かったのかもしれない。
もし、俺がまたやりそうになったら止めてもらえる。………もしかしたら、俺はこの行動があんまり好きじゃなかったのかもしれない。
「そっか、なら良いんだ。じゃあ、今日だけは大目に見るぞ」
完全には納得していなさそうだな。でも、分かってはくれてるようだ。海斗のためにも今回は必ず成功……いや、大成功を収めないとな。
「ありがとな。お、あと十分みたいだぞ、楽しみだな」
「………あぁ、そうだな!」
シリアスは終わりだ。結局俺に出来るのはチャンスを作るだけ。なら、あとはなるようになるだけ。せっかく来たプールだ、俺も楽しまないとな!
「えぇ……俺は流れるプールが良いなぁ。ウォータースライダーはもうちょっとあとの方が……」
亮がウォータースライダーを乗るとしたら十中八九冬華と乗るだろう。ここまで来て二人別とは考えにくいし。でも、亮は言わずもがなだが、冬華も恋愛が絡むと急に奥手になるきらいがあるから、最初からと言うのはハードルが高いだろう。だから、ここで海斗と意見が割れたのはかなり良い。これならば二分割すればどうとでもなる。
「じゃあ、俺と海斗の二人でウォータースライダー行くよ。陽斗達は流れるプールに行っててくれないか?後で合流しよう」
「おぉ、さすがは蓮!俺のために大好きな流れるプールを断念してくれるなんて!」
「そういう訳じゃないが……まぁ、そっちはそっちで、な」
冬華の方に視線をやると、頬を微かに赤らめて小さく頷いた。亮も何となく察したのかソワソワしている。
次に陽斗の方へと視線をやると、カタイ笑みを浮かべて頷く。
陽斗の事だし緊張しながらも上手くやるだろう。陽斗に必要だったのは歩み寄るためのチャンス、それだけだしな。
「じゃあ行くぞ。凄い列なんだから」
「流れるプールから見ててくれよな!」
ついでにこの無駄に高いテンションの真意を聞いておこうかな。
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「知ってたけど、やっぱ長いな……」
「二十分か。田舎民には厳しいな」
さっきとは打って変わって海斗の調子は普段通り。テンションもだいぶ落ち着いてきている。やっぱり、無理してたんだろう。
ここで理由を聞くこともできるけど……やっぱりそう言うのは野暮というものかもしれない。
海斗から話さないなら触れられたくない可能性もある。なら、そこは海斗の意思を尊重しよう。
「アイツら、大丈夫かな」
「アイツら?亮達のことか?」
「まぁ、どっちかと言うと陽斗の方かな」
やっぱり、と言うべきか。海斗も何やかんや言って友達想いだからな。回りくどいとは言え、二人も少なからず海斗のおかげで調子が戻った部分もあるだろう。
「蓮、もう止めにしないか?」
「止める?何を?」
あまりの文脈のなさに俺の頭の中に疑問符が浮かぶ。海斗は海斗らしからぬ真面目な顔付きだった。
「水面下で暗躍してたのは楽しかったか?」
「…………」
なるほど。やっぱり海斗は気づいてたのか。まぁ、露骨な部分も今までにあったし、焦りのせいで雑になったところもある。気付ける人は気づけるだろう。
「もう、止めようぜ。それで助けられる人がいれば……傷つく人も居る。何より、蓮が楽しめないだろ?」
「心配には及ばないさ。今回のが成功すれば、もうこんな事はしないよ……必要がなければ」
もとより決めていたこと。でも、その決意が自分だけで完結していたら、きっとまた似たようなことをするかもしれない。今回海斗にこれを打ち明けられたのは良かったのかもしれない。
もし、俺がまたやりそうになったら止めてもらえる。………もしかしたら、俺はこの行動があんまり好きじゃなかったのかもしれない。
「そっか、なら良いんだ。じゃあ、今日だけは大目に見るぞ」
完全には納得していなさそうだな。でも、分かってはくれてるようだ。海斗のためにも今回は必ず成功……いや、大成功を収めないとな。
「ありがとな。お、あと十分みたいだぞ、楽しみだな」
「………あぁ、そうだな!」
シリアスは終わりだ。結局俺に出来るのはチャンスを作るだけ。なら、あとはなるようになるだけ。せっかく来たプールだ、俺も楽しまないとな!
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