余命1年の君に恋をした

パチ朗斗

文字の大きさ
上 下
32 / 91

31話 話し合い 1

しおりを挟む
「えぇ、そのためこの問題の答えは……」

  今は六校時目の数学だ。いつもは寝てる生徒が必ず居る時間だが、今回はみんな起きて授業を受けている。

  この授業が終わるまであと二十分ほどあるが、クラスの雰囲気は次の時間……ロングホームルームへの期待やワクワク感でいっぱいだった。

  みんなの意識は既にこの授業にはなくロングホームルームへと向いている。先生も生徒の集中力が散漫してる事とその原因を知ってるので特に気に止める様子もなく、いつも通りの授業が行われていく。

  ここで本題に入るが、次のロングホームルームでやる事と言うのは七月の……夏休み前の三日間を使って行われる毎年恒例の球技大会についての話し合いだ。

  種目決めが主だが、他にも諸々とやることがあるのだ。なんて言ったって三日間もあるのだからな。

  去年の球技大会はかなりの盛り上がりだったと担任の先生が言っていた。なんでも俺らの代は球技に強い人が多かったらしく、所謂いわゆる下克上だな。異例の一年優勝に学校中が湧いてた。

  まぁ、何となく気付くだろうが俺は風邪で休んでて球技大会はやってないから、これらは全て人伝ひとづてで聞いたものだ。なので俺は休みとともにに夏休みに入ったってワケだ。

  宿題とかは三者面談の時に渡されて若干絶望してた。

「まぁ、ちょっと早いが進めすぎるのも良くないし、今日はこの辺で終わるぞ。号令」

起立きりぃつ。ありがとうございました」

  ホームルーム長の少しげだるげな声で早めに授業が終わった。

  教室内では早速仲の良い友達と集まって球技大会の話をしている様子が伺える。

  俺もさすがにボッチで過ごしたくは無いので、海斗友達の元へ向かうとするか。

  そう思った矢先に横から声がした。

「お前は何にするんだ?」

「海斗か」

  どうやら海斗の方から俺のところへ来てくれたようだ。基本的に海斗が俺の席に来てくれるのだが、それが少し申し訳ない気もする。

  これだとまるで俺が海斗のことをあまり好いてないような奴だと思われるかもしれない。

  最近、色々とあって今まで考えたことの無いような事まで考えてるようになった。特に人間関係については敏感になってしまっている。

「俺は去年と同じくバレーだな。唯一出来るスポーツだからな」

  海斗はドヤ顔でそんなことを言った。俺からすれば海斗がバレーで活躍したというのはおとぎ話みたいなものだ。

  あの運動神経が壊滅的な海斗が率先して出たい競技があるとは、正直言って驚きが隠せない。

「じゃあ俺もバレーで良いかな」

  どうせやるなら楽しみたいしな。友達がやるというのならそれに合わせた方が楽しいだろう。もとより俺は別段出来ない競技はないから海斗に合わせる予定だったから海斗が率先してやりたい競技があったのは良かった。

「俺のスパイクを見たらきっと度肝抜かすぜ」

「そりゃ楽しみだ」

  そこで話に一区切りついた。そのタイミングを伺ってか分からないが、身知った女性陣が俺らの方へ向かってきた。

「二人ともバレー出るの?」

「俺は特にないからな。で、姫乃たちは?」

  俺らの方に来たのは姫乃、冬華、瑠魅の三人だ。この三人は基本的にずっと一緒に居る。俺からすれば瑠魅が特定の誰かと仲良くなれてるのは嬉しいと感じる。まるで瑠魅の父親になったような気分だ。

「私と瑠魅はバスケだよ」

  そう言って瑠魅と肩組みをする冬華。瑠魅がやると言ったのだから俺に止める権利はないが、どうか怪我だけはして欲しくない。

  でも、瑠魅は今までまともな運動をしてない気がするんだが……。強いて言えば体育で女子がやったソフトボールぐらいじゃないか?なんか急に不安になってきたぞ。

「それで、姫乃は何にするんだ?」

  海斗が姫乃に話しかけた。そういえば姫乃はバスケに出ないのか。去年はバスケで凄い活躍をしたって海斗から聞いたんだが……。

「わ、私も……その、バレーやろっかなって」

「お、マジ?一緒に頑張ろうぜ」

  バレーはほとんど人との接触がないから男女混合で行われる。つまり、人数オーバーさえしなければ姫乃と海斗と一緒にバレーになるって訳だ。

  ぶっちゃけ言って六人制のバレーで、そのうちの二人が海斗と姫乃なら案外楽勝じゃないかと思う。

  海斗はなんでか得意らしいし姫乃は球技だけは昔から得意だったし。何よりも気心の知れた二人が一緒なら勝てる気がする。

「う、うん。頑張ろっ!」

  俺は笑顔でハイタッチを求めた。姫乃もはにかみ笑いをしながらハイタッチに応えてくれた。

  出来れば冬華と瑠魅にも参戦して欲しいけど、やっぱり楽しむのが一番だからな。

  俺も性に合わず、今から球技大会が楽しみになってきてるし。

「私も……バレーやってみたい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

騎士団寮のシングルマザー

古森きり
恋愛
夫と離婚し、実家へ帰る駅への道。 突然突っ込んできた車に死を覚悟した歩美。 しかし、目を覚ますとそこは森の中。 異世界に聖女として召喚された幼い娘、真美の為に、歩美の奮闘が今、始まる! ……と、意気込んだものの全く家事が出来ない歩美の明日はどっちだ!? ※ノベルアップ+様(読み直し改稿ナッシング先行公開)にも掲載しましたが、カクヨムさん(は改稿・完結済みです)、小説家になろうさん、アルファポリスさんは改稿したものを掲載しています。 ※割と鬱展開多いのでご注意ください。作者はあんまり鬱展開だと思ってませんけども。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...