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前編
16 ドレスヲ纏ッタナニカ ※性描写注意
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テオとクラスが離れた第4学年。
教室では誰とも話さずに、静かな毎日だ。
騎士科のクラスは校舎自体も別になるけど、昼食だけは同じ食堂を利用するから、1日1回はテオの顔を見る機会はある。
べ、別にそれが嬉しいだなんて思ってはいない。
浮ついているようだけど、それは私だけじゃない。
16歳になるこの年。
皆が一様に気にしていることがある。
社交界デビュー。
国王夫妻の前で行われる舞踏会。
これが終われば、夜会にも出ることが出来るようになるから、ローザが夜に出かけることがこれから増えるのだろうな。
家にあいつらがいないのなら、私にとっては良いことだ。
もちろん、社交会は私には関係のない事だ。
あの男とあの女は、私を国王の前に出すなど、絶対にしないだろう。
「お姉様、見てみて!」
ローザがわざわざドレスを見せびらかすために私を呼びつけた。
「これを着て、リュシアン様にエスコートしてもらうの。素敵でしょ?」
さらに見せつけるように、クルクル回ってみせる。
別に、何とも思わなかった。
煩いから、早く終わらせてほしい。
それだけだ。
「とてもお似合いです。ローザ様」
さっさと私を解放しろ。
そう思って感情のこもらない声で告げた。
何が可笑しいのか、ローザはクスクスと笑っている。
「こんなに宝石も散りばめてあって、お姉様はこんなドレス着たことないでしょ?」
ふわっと、裾を広げて見せた。
その時、ドレスの裾が私に触れた時に見えたもの。
ローザの顔とあの男の顔が目の前に見えて、吐き気を催していた。
ベッドの上で一つになって絡み合うローザと、あの男。
「やだぁ。お姉様、そんな感動するほど、私のドレスは似合っています?」
気持ち悪い 気持ち悪い 気持ち悪い
まだ幼さの残る体つきで、よがり狂う女の嬌声が頭の中に響き渡る。
その淫らな痴態を晒す女と同じ顔をしたローザの手が伸びてきて、反射的に払っていた。
一度や二度の事じゃない。
この二人はもうすでに、数えきれないほどの行為に及んでいる。
なんで。
なんで、こんな事になっているんだ?
ローザは、キョトンとした顔で私の顔を見ている。
「やだー。お姉様、もしかして、私が羨ましくて怒っていらっしゃるの?」
ローザの精巧に作られた人形のような笑顔が、酷く、おぞましいものに見えた。
「このドレスは、お父様の愛の証なの。ギフトを持った、未来の王妃である私に相応しいものをって、お父様が、誰よりもいい子である私の為に作ってくださったのよ。お姉様にはドレスがないからお可哀想ね」
“ああ、お前の中は最高だ。お前はいい子だ。こんないい具合の子はいない”
閨の中であの男がローザに欲望を突き立てながら吐き出している言葉と同調して、背筋が凍りついた。
私を見てニタァァと笑うローザの赤い唇が、ますます人のものと思えなくて、込み上げてくる吐き気を我慢できなくて、そこから裏庭に走り出ていた。
庭の隅の茂みに、胃からせり上がってきたものが吐き出される。
血の繋がりがないにしても、親子として接してきた二人が、ベッドの上で房事を繰り返す光景がずっと頭の中に流れ続けて、気が狂いそうだった。
そこから部屋に駆け込んで、意味があるのか分からないけど、あの嫌悪感しか生まないおぞましい光景を消し去りたくて、テオから貰った栞を握りしめる。
不意に今度は、学園に入る少し前くらいのテオとリュシアンが仲良く机に向き合って、課題らしきレポートを書いている姿が見えた。
初めて、視たいと思ったものを見せてくれた瞬間だった。
切磋している、仲の良い二人の顔が清々しいほどに穏やかで、見ているこっちが心安らかになる、そんな綺麗で幸福な光景だった。
初めて、リュシアンにあの子を近付けさせたくないと思っていた。
テオが大切に想うリュシアンに、あの醜悪で汚い女を近付けさせたくない。
でも、私にはどうする事も出来ない。
国を捨てる自分には関係のない事だ。
そう言い聞かせることしか、私にはできなかった。
教室では誰とも話さずに、静かな毎日だ。
騎士科のクラスは校舎自体も別になるけど、昼食だけは同じ食堂を利用するから、1日1回はテオの顔を見る機会はある。
べ、別にそれが嬉しいだなんて思ってはいない。
浮ついているようだけど、それは私だけじゃない。
16歳になるこの年。
皆が一様に気にしていることがある。
社交界デビュー。
国王夫妻の前で行われる舞踏会。
これが終われば、夜会にも出ることが出来るようになるから、ローザが夜に出かけることがこれから増えるのだろうな。
家にあいつらがいないのなら、私にとっては良いことだ。
もちろん、社交会は私には関係のない事だ。
あの男とあの女は、私を国王の前に出すなど、絶対にしないだろう。
「お姉様、見てみて!」
ローザがわざわざドレスを見せびらかすために私を呼びつけた。
「これを着て、リュシアン様にエスコートしてもらうの。素敵でしょ?」
さらに見せつけるように、クルクル回ってみせる。
別に、何とも思わなかった。
煩いから、早く終わらせてほしい。
それだけだ。
「とてもお似合いです。ローザ様」
さっさと私を解放しろ。
そう思って感情のこもらない声で告げた。
何が可笑しいのか、ローザはクスクスと笑っている。
「こんなに宝石も散りばめてあって、お姉様はこんなドレス着たことないでしょ?」
ふわっと、裾を広げて見せた。
その時、ドレスの裾が私に触れた時に見えたもの。
ローザの顔とあの男の顔が目の前に見えて、吐き気を催していた。
ベッドの上で一つになって絡み合うローザと、あの男。
「やだぁ。お姉様、そんな感動するほど、私のドレスは似合っています?」
気持ち悪い 気持ち悪い 気持ち悪い
まだ幼さの残る体つきで、よがり狂う女の嬌声が頭の中に響き渡る。
その淫らな痴態を晒す女と同じ顔をしたローザの手が伸びてきて、反射的に払っていた。
一度や二度の事じゃない。
この二人はもうすでに、数えきれないほどの行為に及んでいる。
なんで。
なんで、こんな事になっているんだ?
ローザは、キョトンとした顔で私の顔を見ている。
「やだー。お姉様、もしかして、私が羨ましくて怒っていらっしゃるの?」
ローザの精巧に作られた人形のような笑顔が、酷く、おぞましいものに見えた。
「このドレスは、お父様の愛の証なの。ギフトを持った、未来の王妃である私に相応しいものをって、お父様が、誰よりもいい子である私の為に作ってくださったのよ。お姉様にはドレスがないからお可哀想ね」
“ああ、お前の中は最高だ。お前はいい子だ。こんないい具合の子はいない”
閨の中であの男がローザに欲望を突き立てながら吐き出している言葉と同調して、背筋が凍りついた。
私を見てニタァァと笑うローザの赤い唇が、ますます人のものと思えなくて、込み上げてくる吐き気を我慢できなくて、そこから裏庭に走り出ていた。
庭の隅の茂みに、胃からせり上がってきたものが吐き出される。
血の繋がりがないにしても、親子として接してきた二人が、ベッドの上で房事を繰り返す光景がずっと頭の中に流れ続けて、気が狂いそうだった。
そこから部屋に駆け込んで、意味があるのか分からないけど、あの嫌悪感しか生まないおぞましい光景を消し去りたくて、テオから貰った栞を握りしめる。
不意に今度は、学園に入る少し前くらいのテオとリュシアンが仲良く机に向き合って、課題らしきレポートを書いている姿が見えた。
初めて、視たいと思ったものを見せてくれた瞬間だった。
切磋している、仲の良い二人の顔が清々しいほどに穏やかで、見ているこっちが心安らかになる、そんな綺麗で幸福な光景だった。
初めて、リュシアンにあの子を近付けさせたくないと思っていた。
テオが大切に想うリュシアンに、あの醜悪で汚い女を近付けさせたくない。
でも、私にはどうする事も出来ない。
国を捨てる自分には関係のない事だ。
そう言い聞かせることしか、私にはできなかった。
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