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なち

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第一章

来たりし者 1

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「「「「「「「「「「お帰りなさいませ!」」」」」」」」」」
 たくさんの使用人が出迎えています。男女比は概ね同じくらいでしょうか。
 家の規模も相当な大きさで、迷子になってしまうのではないかと思うほどです。

「うむ、今日からの新人メイドとして住み込みで雇うことにしたジューリーだ。みんな仲良くしてあげてほしい」

 どう見ても優秀そうな使用人達に囲まれ、私は緊張してしまいました。
 とてもじゃないですが、私のような新人のペーペーが一緒にできるとは思えません。
 ですが、やるからにはしっかりと覚えて少しでも役立てるようにしたいです。

「旦那様、私をお招きくださりありがとうございます」
 主従関係になりますので、これからはザーレムさんとは呼ばずにこのように読んだのですが……笑われてしまいましたね。

「はっはっは……ジューリー。今まで通りで良いのだよ。ここでの決まりごととして、主従関係はあるが仲良くするのが第一条件なのだから。先程までのようにザーレムと呼んでくれれば良い。とは言え、何も言わずともそのように呼べるとは……ジューリーには期待せずにはいられないな」

 すぐにたくさんの使用人から紹介をいただきましたが、そこまで記憶力が良いわけではないので、こんなにたくさんの名前をいっぺんに覚えられるかどうか……。
 早速働くつもりでしたが、この日は客人扱いで丁重にもてなされてしまったのです。

 お湯が出る水浴びをさせていただけたのがとても幸せでした。
 更に、食事もザーレムさんと一緒にできるとは……。

 普通ならば主人様が食事の際にメイドや使用人が一緒に食べるなど許されないことだと思っていましたが……。

「さて、こうして同じ卓で食事をする前に息子と妻を紹介しようか」

「ルーシア=ハイマーネです」
「ロイス=ハイマーネだ。よろしく頼むぞ」

 ルーシアさんは家でも綺麗なドレス姿です。わずかに出ている胸元からは隠し切れないほどの大きな物が出ています。
 
 対してロイスさんは随分とラフなスタイルで、言動から察するに活発な男性のようだと感じました。
 かなりの筋肉質のようで、スタイルも良く、顔も相当整っています。
 さすがザーレムさんとルーシアさんの子供というのがよくわかりますね。

「お初にお目にかかります。ジューリーと申します。此度はザーレムさんに命を救われ、更にこちらに仕えさせていただけることになりました。よろしくお願い致します」

「ほう、親父がスカウトしてきただけのことはあるな。礼儀正しいしおまけに可愛い」
「ロイスちゃんも少しは見習いましょうね……」
「大丈夫だ。しっかりと公の場では言葉を選んでいるから。ジューリーと言ったな。食事の後俺の部屋へ来てくれ。なぁに、変なことはしないから安心しろ」

 何かの危険なフラグでしょうか。こういうことを事前に言われると余計に心配になってきてしまいます。
 ですが、ザーレムさんの息子ならば大丈夫でしょう……多分。

「ロイス、ジューリーに手を出したら勿論勘当だぞ?」
「心配するなって、息子を信用してくれよ……」

 食事はとても美味しかったのですが、ロイスさんの発言が恐くなってしまって集中できませんでした。

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