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なち

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第一章

愚者の挽回 5

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 平和に進むと思われていた自然戦士任命式は、今や大混乱に陥っていた。
 ローマンド帝国皇帝にして太陽王、ユリウス・オクタヴィアヌスが暗殺されかかったのである。
 新太陽戦士、ユース・Aアルペジオ・ルーヴェの咄嗟の判断によって皇帝は助かったが、皇帝を狙撃した黒いマントの男が、こちらに向かっている!
 男が口を開いた。「ほう、私の狙撃に気づくとは、流石自然戦士。だが、やはり皇帝の命は頂くぞ!」
 男は皇帝に銃を向けた。咄嗟にユースが止めようとしたその時だった。


 「……甘く見るなよ、若造。」
 一瞬にして男の体に斬撃が刻まれた!それも三度も!
 皇帝のほうを見ると、燃え盛る炎を型どった鎧を纏っていた。
 片手には炎を纏った剣が。
 一瞬のうちに変身して、さらに間合いの外の相手を三度も斬るなんて!流石世界最強の太陽戦士だ、とユースは太陽王を尊敬し始めた。
 一瞬にして大ダメージを負った男は、苦痛に顔を歪ませながら言った。
 「ぐおおおおおおお!おのれ太陽王……こうなったら、そこの生意気な小僧を殺してやる!」
 男は黒い玉を投げると、一瞬にして身を隠した。
黒い玉から黒い煙が拡散すると……それらが三体の怪物の形になった!
 「な、なんだこいつらは!?」「子ギートじゃよ。」皇帝が静かに言った。「ギートの中の下っ端じゃ。こんな雑魚三体でユースを殺そうとは、おろかなやつじゃ。」
 皇帝は地面に散乱している道具を拾って、ユースに押し付けた。
 「ユース!初陣じゃ!あの怪物を倒してみせい!」
 ユースは道具を手に取った。しかし……
 「どうやって使えば良いのか分かりません!」
 「しかたないのう……まずはその『接続バングル』を左腕に装着し、バングルに『コマンドレシーバー』をセットせよ!」
 ユースは言われるがままにその接続バングルを腕に付け、コマンドレシーバーを接続バングルに近付けた。
 すると、レシーバーが磁石にくっつくように、バングルにセットされた。
 さらに、ユースの腰には一瞬でベルトが装着された。ベルトの右側には小物入れが、左側には剣があった。
 「そして『変身~太陽~』のICカードをバングルに挿し、『太陽変身!』と叫ぶのじゃ!」
 言うとおりにした。バングルの差し込み口に、ICカードを挿入!

 「太陽変身!」

 ユースの体からエネルギーがほとばしる!
 コマンドレシーバーの画面から炎を象った鎧がバラバラの状態で飛び出した。
 その鎧はユースの周りを円を描いて飛び、それからジグソーパズルのピースがはまっていくようにユースの体に納まった。
 「……ちなみに『太陽変身!』て叫ぶ意味は?」
 「無い!!」


 さて、三体の子ギートは律儀なことに変身するまで待っていてくれたのだが、準備万端となれば待つ理由はない。子ギートの一体がユースに襲いかかった。
 しかし、ユースは変身することで、身体能力が何倍にも膨れ上がっていた。ユースはそれを軽くかわした。
 そして剣を抜くと、単身襲いかかってきた子ギートを一太刀で切り捨てた。
 怪物は煙になって天へと上っていった。
 しかし、その隙にあと二体の子ギートがユースを挟み撃ちにする。
 ユースはバク転してそれをかわしたため、子ギート達は互いにダメージを与える形となってしまった。
 (チャンス!)ユースは手のひらを怪物に向けて叫んだ。
 「燃えろ!」
 突然、ユースの手のひらから炎が噴き出した!
 二体の子ギートは火だるまとなり、黒い煙となって消えた。
 それを間近で見ていた皇帝は、ユースのセンスの高さに驚いていた。
 (なんと言う想像力! これなら、もうを任せられるかもしれん!)
 ユースはと言うと、一瞬で三体の敵を倒した自分にビックリしていた。
 ただし、自分がすごいと思っているのではなく、自然戦士の力がすごいと思っていた。
 ユースが自分の才能を自覚するときは、これから一生ないだろう。


 ユースは、任命0日目にして皇帝の命を救い、さらにコロセウムを襲った三体の子ギートを倒した功績として、褒賞金百万エウローと、私兵小隊長の資格を与えられた。
 ユースは、早くも自分の兵士を持つことになったのである。
 それだけでなく、皇帝はユースに個人的にアドバイスもした。
 「自然戦士の戦いは、自分がしたいと思う技を、頭のなかでイメージすることが基本じゃ。だから実力が伴えばいくらでも技を作り出せる。全く同じような技でも、自然戦士は一人一人イメージが違うから、皆違う技なのじゃよ。子ギートを焼き払ったあの技も、自分で命名するが良いぞ。」
 「なるほど。」ユースはちょっと考えて、
 「じゃあ『炎波えんぱ』で。」「えらくシンプルじゃな。」


第五話 ブリデラント王国第一王女 に続く


 あとがき:「自然戦士」専門用語其の三

「私兵小隊長」
 大きな手柄を立てた自然戦士は、その国の元首から直接に兵を貸し与えられる。
 小隊長の場合は三十人、中隊長は百人……となっている。これは国際的な取り決めで数を決定している。
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