37 / 64
第一章
帰城 2
しおりを挟む「おはよぉ…………」
「おはよ、涙。」
最近涙が俺の名前を呼ぼうとしない。
それも、明らかに不自然な形でだ。
今まで、『君』なんて使わなかったのにそう呼び始めてしまった。
「なぁ、今日もまだ飲まなきゃいけないのか?」
「だ~め、これで最後だから
きちんと飲みなさい。」
「オカンみたい…。
わかったよ……んっ……ゴク…うぇっ……」
「しょっぱい?」
俺は静かに頷く。
「………………んっ、ちゅっ…」
「……ちょっ、しょっぱいよ~」
「ねぇ…………名前。
呼んでくんないの…なんで?」
「…………。
じゃあ、呼んだげる。」
耳元にかかる息。
息を吸うお音が聞こえる。
「………………水葵。」
「……んっ…………やっと、呼んだ。」
「ふふ、呼んで欲しかったのかぁ……
やっぱりデレさせるには、押してばかりじゃダメだね~」
「っ……計算してやがったのかぁ……」
「おぉ怒んないでよっ…」
いつものように、頬を掴んで伸ばしてやろうと思った俺の手を涙は制した。
制した手のひらには、マジックペンで落書き(?)のようなものがしてあった。
あんまり見えなかったため、何が書かれていたのかは全くわからなかった。
「ちょっと、涙。手のひらなんて書いてあるんだ?」
「えっ、ちょっ……ちょっと」
「…………俺の名前…しかも平仮名で……なんでこんな書いてあるんだ?キモイな」
「ひどぉ~い!僕は昨日水葵の名前を読み間違えたことがショックだったんだ…」
「そうかそうかぁ…手を洗ってこような?」
「…………。」
「洗ってこような!?」
「…………はい。」
何故そんなに俺の名前を手のひらから消したくないのか。
理由はよく分からんが、なんか…愛されてる感はするからいいや。
「あぁ、手を洗うついでに、これさっきのコップ洗面所に頼む。」
「………………はい。」
なにか、すごい気を落としている気がする
ガシャン。
(!?)
大きな音を立て涙が下に落としたコップは割れてしまった。
「涙!! 大丈夫か?破片とかで……怪我…とか…」
「…………………………。」
涙はキョロキョロと部屋を見回す。
破片を探しているのだろうか。
いや、違う。
何か…おかしい。
「………………ここは、一体…」
「え?」
「おはよ、涙。」
最近涙が俺の名前を呼ぼうとしない。
それも、明らかに不自然な形でだ。
今まで、『君』なんて使わなかったのにそう呼び始めてしまった。
「なぁ、今日もまだ飲まなきゃいけないのか?」
「だ~め、これで最後だから
きちんと飲みなさい。」
「オカンみたい…。
わかったよ……んっ……ゴク…うぇっ……」
「しょっぱい?」
俺は静かに頷く。
「………………んっ、ちゅっ…」
「……ちょっ、しょっぱいよ~」
「ねぇ…………名前。
呼んでくんないの…なんで?」
「…………。
じゃあ、呼んだげる。」
耳元にかかる息。
息を吸うお音が聞こえる。
「………………水葵。」
「……んっ…………やっと、呼んだ。」
「ふふ、呼んで欲しかったのかぁ……
やっぱりデレさせるには、押してばかりじゃダメだね~」
「っ……計算してやがったのかぁ……」
「おぉ怒んないでよっ…」
いつものように、頬を掴んで伸ばしてやろうと思った俺の手を涙は制した。
制した手のひらには、マジックペンで落書き(?)のようなものがしてあった。
あんまり見えなかったため、何が書かれていたのかは全くわからなかった。
「ちょっと、涙。手のひらなんて書いてあるんだ?」
「えっ、ちょっ……ちょっと」
「…………俺の名前…しかも平仮名で……なんでこんな書いてあるんだ?キモイな」
「ひどぉ~い!僕は昨日水葵の名前を読み間違えたことがショックだったんだ…」
「そうかそうかぁ…手を洗ってこような?」
「…………。」
「洗ってこような!?」
「…………はい。」
何故そんなに俺の名前を手のひらから消したくないのか。
理由はよく分からんが、なんか…愛されてる感はするからいいや。
「あぁ、手を洗うついでに、これさっきのコップ洗面所に頼む。」
「………………はい。」
なにか、すごい気を落としている気がする
ガシャン。
(!?)
大きな音を立て涙が下に落としたコップは割れてしまった。
「涙!! 大丈夫か?破片とかで……怪我…とか…」
「…………………………。」
涙はキョロキョロと部屋を見回す。
破片を探しているのだろうか。
いや、違う。
何か…おかしい。
「………………ここは、一体…」
「え?」
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
王命って何ですか?
まるまる⭐️
恋愛
その日、貴族裁判所前には多くの貴族達が傍聴券を求め、所狭しと行列を作っていた。
貴族達にとって注目すべき裁判が開かれるからだ。
現国王の妹王女の嫁ぎ先である建国以来の名門侯爵家が、新興貴族である伯爵家から訴えを起こされたこの裁判。
人々の関心を集めないはずがない。
裁判の冒頭、証言台に立った伯爵家長女は涙ながらに訴えた。
「私には婚約者がいました…。
彼を愛していました。でも、私とその方の婚約は破棄され、私は意に沿わぬ男性の元へと嫁ぎ、侯爵夫人となったのです。
そう…。誰も覆す事の出来ない王命と言う理不尽な制度によって…。
ですが、理不尽な制度には理不尽な扱いが待っていました…」
裁判開始早々、王命を理不尽だと公衆の面前で公言した彼女。裁判での証言でなければ不敬罪に問われても可笑しくはない発言だ。
だが、彼女はそんな事は全て承知の上であえてこの言葉を発した。
彼女はこれより少し前、嫁ぎ先の侯爵家から彼女の有責で離縁されている。原因は彼女の不貞行為だ。彼女はそれを否定し、この裁判に於いて自身の無実を証明しようとしているのだ。
次々に積み重ねられていく証言に次第追い込まれていく侯爵家。明らかになっていく真実に、傍聴席で見守る貴族達は息を飲む。
裁判の最後、彼女は傍聴席に向かって訴えかけた。
「王命って何ですか?」と。
✳︎不定期更新、設定ゆるゆるです。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~
椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」
私を脅して、別れを決断させた彼の両親。
彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。
私とは住む世界が違った……
別れを命じられ、私の恋が終わった。
叶わない身分差の恋だったはずが――
※R-15くらいなので※マークはありません。
※視点切り替えあり。
※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる