上 下
43 / 50

39

しおりを挟む
 竹細工が並んでいる。竹といえば緑か茶色と思っていたが、並ぶとそれぞれ色合いが異なるのが見てわかる。
 紅霞は小型の杯を一つ、手にとった。
 編んだものではなく、竹を横に切って内部の空洞と節をそのまま利用した杯だ。表面には花と小鳥の浮き彫り。その小鳥がいかにも丸っこい愛らしい形で(これは透子が気に入りそうだな)と思ったのだ。
 幸い、価格はたいしたものではない。夕蓮なら輸入品としてもう少し値がはっただろうが、涼竹国と国境を接するこの街ではありふれた品らしく、一般家庭でも購入できる価格に設定されている。

「買うのか?」

「どうするかな…………この大きさなら持ち歩きにも差支えないし、一つあれば道中でも重宝しそうだが、ここで決めていいのか迷う」

 他の店にもっといいのがあるかもしれない、と紅霞は唸る。
 紅霞の手の中をのぞいた雲翔は首をかしげた。

「えらく可愛らしい絵柄だな。こういう趣味だったか?」

「いや。俺じゃない、透子にだ」

 さらに彼女が気に入りそうな絵柄を見つけてしまい、紅霞の迷いは深まる。
 実は、杯はちょっとしたご機嫌とりだった。
 昨夜、悪気はなかったとはいえ、紅霞は透子を怒らせてしまった。
 女神の分身を自称するすずさんから「紅霞を女も愛せるように変えられる」と言われた時。
 透子は「翠柳さんを愛しているのも、紅霞さんの大事な一部だから」「それがなくなったら、紅霞さんではなくなるかも」と却下してくれた。ああいう時、透子は本当に自分をあるがままに受け容れようとしてくれているのだと、紅霞はつくづく感じる。

(なのに「透子が男になったら、好みになりそうでいい」は、ちょっとまずかった…………)

「今の紅霞でいい」と透子は言ってくれたのに、自分は「別の透子がいい」と言ってしまったのだ。大げさな言い方をするなら、そういうことだ。透子が機嫌を損ねるのも当然だと思う。
 今朝起きた時にはもう普段どおりだったし、朝食の時も特に変わった様子はなかった。執筆のため、いつもの喫茶店まで送っていった時も「雲翔さんと喧嘩しないでくださいね」と、いつものように姉か母親のような台詞が出てきて、紅霞は胸をなでおろした。
 怒ってはいない、と思う。が、それはそれとして、なにか機嫌をとっておきたいというか、贈っておきたい。考えてみれば、紅霞は今までいろいろ透子に助けられているのに、礼の品一つ贈っていなかった。
 旅の途中なので荷物になるような大きな物、失くして困るような高価な物は贈れない。そこで普段使いできる小物類はどうだろう、と店をまわっていたのだが。

(透子が故郷に帰る時、土産の一つもあれば、戻っても思い出してもらえるかもしれないしな。…………だったら、もっと上等な品物を探せって話だが)

 眉間にしわを寄せて二つの杯を比較する友人の横顔に、雲翔はかねてからの疑問をぶつける。

「ずいぶん熱心だな。…………透子は、お前のなんなんだ?」

「ん?」

「えらく気を遣っている。とうてい『良い家の令嬢だから』だけとは思えん。お前、相手の家柄で気を遣うような男じゃないのは、《四姫神》の件ではっきりしているし。最近、知り合っただけなのに、懐きすぎだ」

「…………別にいいだろ」

「良くない。なんで、そんなに透子を大事にする」

お前雲翔には関係ない」

「ある。昔から翠柳一筋で、女は大嫌いだって言うから、それを信じてきたのに、今になって『女も好きだ』なんて、話が違うにもほどがある」

「…………っ」

 紅霞は隣に立つ雲翔を見た。
 雲翔は商品の棚に顔を向けているが、耳と意識は紅霞の返事に集中している。耳の端がほんのり赤い。
 うっとおしい友人だが、今は真剣に話しているのが伝わり、紅霞もまったく相手にしないのは罪悪感を覚えて、口を開いた。

「…………大事な――――家族みたいな存在だ。少なくとも、俺はそう思っている。透子は透子で故郷に家族がいるが、俺は透子をそういう風に感じている」

「家族」

「俺の、長年の悩みを解決してくれた。世間の考えがどうあれ、透子は俺を肯定してくれた。俺も翠柳も、そのままでいい、と言ってくれたんだ。…………そういうことを言ってくれた女は、覚えている限り透子が初めてだ。他の女は『間違っている』とか『女の良さを教えてあげる』くらいしか言わなかったのに」

 ある意味、母親以上に紅霞を受け容れてくれた存在。
 紅霞は透子をそういう風に認識しているし、だからこそ彼女を失いたくない。
 艶梅国を出ても涼竹国へ逃げても、男女比がかたより、世界がゆるやかに滅亡にむかっている現実はどの国も変わらない以上、涼竹国でも同性間の恋愛や結婚は天や法に認められないままだろう。
 そういう時、透子一人がいてくれれば、それだけで紅霞はとても安心できる。

(いっそ、どこか遠くで透子と二人、暮らしていければ…………)

 わずらわしくてつらいことの多い世間を離れ、二人だけでいられる場所で静かに暮らしていけたら。
 都合のいい願望とは思うが、伴侶を失い、強力な後ろ盾はないのに並外れた美貌ばかり持つ紅霞にとって、俗世間は生きやすい場所ではない。
 雲翔が大げさにため息をついて、その場にしゃがみ込んだ。
 長年の付き合いで、紅霞は彼が拗ねていると察する。

「なに怒ってんだ」

「怒りもするわ。俺だって、昔からお前の好みを丸ごと受け容れてきたつもりだし、なんなら好都合とまで思っていたのに、最近会ったばかりのやつが『初めてだ』なんて言われたら」

 むすっとした顔でぶーたれる。

「それは…………」

 幼なじみ二人の間に、しばし気まずい緊張感が流れた。
 紅霞は雲翔の言いたいことというか、本心を察する。
 ただそれは紅霞がずっと見ないふりをしてきたものだったし、雲翔もあえて触れないようにしてきたものではあった。

「…………」

 口を開こうとしたのは、どちらが先だったろう。

「ぢゅ゛ぅ゛う゛う゛ぅ゛――――ん゛ん゛っっ!!」

 スズメとは思えぬ切羽詰った声をあげ、すずさんが店に飛び込んできた。

「うぐっ!!」

 紅霞は肩に小さなくちばしの鋭い一撃をくらう。

「どうした!?」

「すずさん!? いてぇな、なんだいきなり!!」

「ぢゅ゛ん゛ん゛っっ!!」

 紅霞の怒声にまったくとりあわず、すずさんは、ばたばた激しく翼をはばたかせる。小さな羽毛がはらはら落ちて「散らかさないでください」「騒がないでください」と店員に怒られた。
 紅霞はすずさんをつかんで店を出、雲翔もそれにつづく。

「こ、紅霞…………っ」

 息を切らせて露月がやってきた。

「と、透子さんが…………」

「透子が!?」

 嫌な予感が紅霞の胸をよぎる。





 少し前。
 透子は最近、常連となった喫茶店で原稿用紙をひろげ、万年筆を動かしていた。
 昼前に露月が昼食に誘いに来たので、書き上げた分の原稿用紙を渡して読んでもらう。

「うん、いいですね。先が気になってきました」

「本当ですか?」

「最初に構想だけうかがった時は、ぴんとこなかったんですが。実際に原稿を読んでイメージがつかめてくると、楽しいです。女体化した『北方の黒梅』も魅力的ですね」

「良かった! そこが一番心配だったんです」

 透子は一気にやる気が増す。
 が、まずは昼食だ。
 うきうきと原稿用紙を片付け、代金を払って喫茶店を出る。店外にいたすずさんが、透子の肩へと飛んでくる。

「涼竹国からきた料理人がやっている店で、あちらの郷土料理と酒を楽しめるんです」

 露月が話す、これから行く店の紹介を透子は楽しく聞くが、一つ懸念がある。

「あの、露月さん。お店を紹介してくれるのは助かりますが、露月さんは大丈夫ですか? 毎日のように昼食や夕食をご一緒させていただいているけれど、ご家族とか、お仕事の都合に差し障りはありませんか?」

「気にしないでください。仕事はきちんと片づけていますし、貴重な息抜きとして、私も楽しんでいます」

 にっこり笑った露月はいかにも優等生っぽく、真相はどうあれ、傍目にはサボりとは無縁に見える。
 とはいえ、この街に着いてからそろそろ一週間。その間、毎日顔を合わせるのはさすがにどうかと思われた。

(でも私のほうから「もう来ないでください」というのも変だし。紅霞さんに相談して、それとなく伝えてもらったほうがいいかな?)

 顔に出さないよう悩んでいると、露月のほうから訊きかえされる。

「ひょっとして、ご迷惑でしたか? 紅霞と二人きりのほうが良かったとか?」

「え? いえ、そんな」

「小説を書く手伝いははじめてだし、私としては、とても楽しく過ごしているのですが。やはり邪魔者でしたかね?」

「そんな、とんでもない。露月さんのお話はいろいろ参考になって、楽しいです」

「良かった」

 互いに顔を見て笑い合うが、透子は内心で一気に緊張がせりあがる。

(紅霞さんの友達だし、この街に長居するつもりはなかったから気にしないでいたけれど…………ひょっとして露月さん…………)

 毎日顔を合わせる、その彼の行為が好意からきているものである可能性に、ようやく気づいて、透子は一気に気が重くなった。

(そうか…………女性が圧倒的に少ない世界だと、多少身元不明でも「チャンスだ」って思ってしまうのかも。それにこちらは一妻多夫が常識だから、親しげな男性がいても遠慮する理由にはならないんだ。なんなら既婚女性でも問題ないわけで)

 まして、その親しげな男性――――紅霞は女性に興味のない男性である。

(困った…………)

 今さらながら、露月と二人きりになってしまったことを、透子は悔いた(正確には肩にすずさんが乗っているが)。思い返せば、今日以外にも露月とは何度も喫茶店で二人きりで話したり、店まで案内されたりして、話もはずんでいた。
 彼が「悪くない手応え」と判断していても、当然なのかもしれない。
 だが透子は紅霞に惹かれていて、なにより一年半後には日本に帰る身である。

「あの。立ち入ったことをうかがいますが、透子さんはやはり紅霞が――――」

「あ!」

 半分わざと、透子は大きな声を出した。

「あれって、写真屋ですか?」

 透子が指さす先には小さ目の小屋があり、日本語でいうところの『写真』という看板が下げられている。

「あ、はい、そうですね。写真を撮影できる店です」

「ちょっとすみません」

 断り、透子はその店に駆け寄った。
 壁に白黒の写真がいくつも飾られ、道行く人が見られるようになっている。大半が家族写真だが、中には結婚記念や、子供の成長を祝った一葉と思しきものもある。
「わあ」と透子は声を明るくした。

「写真に興味があるんですか?」

「はい。一度、撮影したいんです」

 紅霞と二人、並んで撮りたい。それを二枚ほしい。
 それを一枚ずつ持てば、透子が日本に帰っても紅霞を思い出せるし、紅霞も透子を忘れずにいてくれるかもしれない。

「撮影って、一枚おいくらですか?」

「料金表がこっちにありますよ」

 露月が指した表を見ると、いくつかの金額が並んでいる。

「けっこう、いいお値段ですね…………」

「まあ、最新技術ですから」

 ためらう透子に、露月も苦笑いを見せる。

「でも、これでもずいぶん安くなりましたよ。私が子供の頃は、この倍はした記憶がありますから。その頃は写真なんて、大臣や豪商の娯楽でしたからね」

「うーん…………」

 透子は料金表をにらむ。
 安くはない。正直、日本の写真館のほうがずっと安価だ。
 だが、出せない金額ではない。今の透子は小説の印税があるし、焼き増し分はぐんと安い。無駄遣いは厳禁だが、この程度なら事情を話せば紅霞も承知してくれるのではないだろうか。

(いつ国境の封鎖が終わるか、わからないし。今夜にでも紅霞さんにお願いして、明日にでも一緒に撮影してもらえないかな。あ、でも服はどうしよう…………)

 せっかくの一生ものの記念撮影なのに、男装のままというのは味気ない。

「あ」

 透子が悩んでいると、今度は露月が声をあげた。

「そう言えば、予備がなくなっていたんだ。すみません、ちょっと待っていてもらえますか?」

 露月はそう断って、二軒先の店に足早に入って行った。文具店だろうか。
 透子はなおも写真屋の前に立ち、あれこれ思案していたのだが。

「あっ!!」

 突然、どん!! と腰のあたりへ大きな物に強くぶつかられ、声をあげた。あやうく店の壁に激突しかける。

「なに…………?」

 ふりかえると、透子の胸の下に小さな頭がある。子供だ。

「え…………」

 ひきとめる間もなく、子供は離れて走り去ってしまう。

「なんなの…………?」

 なんだか、わざとぶつかってきたような印象だったのだが。
 目をぱちくりさせる透子に、肩の上のすずさんが淡々と伝えた。

『盗まれたぞ』

「え?」

『財布だ。帯に下げていた物を、袋ごと奪われた』

「ええっ!?」

 透子は腰を見下ろした。
 帯に下げていた小さな布袋が消え、ぶら下げるための紐だけが残っている。
 その紐も途中からぷっつり切られて、ゆれていた。

『わざとぶつかってお前の注意をそらし、その隙に紐を切って、袋を盗んだ。手慣れている。常習だ』

「そんな…………!」

 あんな子供がそんな犯罪行為を、と驚いている場合ではない。
 あの財布には有り金の一部――――日本円換算で百万円以上を保管していた。それを丸ごと失っては、この先の道程に差し障りが生じる。

「待って!」

 道の先に、走り去る子供の背中が小さく見えた。
 透子はとっさに追いかけてしまう。
 彼女が写真屋の前を離れて十秒後に、露月が二軒先の店から戻ってきた。

「? 透子さん?」

 きょろきょろと周囲を見渡す。
 が、男装した小柄な姿は見当たらない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

◆完結◆修学旅行……からの異世界転移!不易流行少年少女長編ファンタジー『3年2組 ボクらのクエスト』《全7章》

カワカツ
ファンタジー
修学旅行中のバスが異世界に転落!? 単身目覚めた少年は「友との再会・元世界へ帰る道」をさがす旅に歩み出すが…… 構想8年・執筆3年超の長編ファンタジー! ※1話5分程度。 ※各章トップに表紙イラストを挿入しています(自作低クオリティ笑)。 〜以下、あらすじ〜  市立南町中学校3年生は卒業前の『思い出作り』を楽しみにしつつ修学旅行出発の日を迎えた。  しかし、賀川篤樹(かがわあつき)が乗る3年2組の観光バスが交通事故に遭い数十mの崖から転落してしまう。  車外に投げ出された篤樹は事故現場の崖下ではなく見たことも無い森に囲まれた草原で意識を取り戻した。  助けを求めて叫ぶ篤樹の前に現れたのは『腐れトロル』と呼ばれる怪物。明らかな殺意をもって追いかけて来る腐れトロルから逃れるために森の中へと駆け込んだ篤樹……しかしついに追い詰められ絶対絶命のピンチを迎えた時、エシャーと名乗る少女に助けられる。  特徴的な尖った耳を持つエシャーは『ルエルフ』と呼ばれるエルフ亜種族の少女であり、彼女達の村は外界と隔絶された別空間に存在する事を教えられる。  『ルー』と呼ばれる古代魔法と『カギジュ』と呼ばれる人造魔法、そして『サーガ』と呼ばれる魔物が存在する異世界に迷い込んだことを知った篤樹は、エシャーと共にルエルフ村を出ることに。  外界で出会った『王室文化法暦省』のエリート職員エルグレド、エルフ族の女性レイラという心強い協力者に助けられ、篤樹は元の世界に戻るための道を探す旅を始める。  中学3年生の自分が持っている知識や常識・情報では理解出来ない異世界の旅の中、ここに『飛ばされて来た』のは自分一人だけではない事を知った篤樹は、他の同級生達との再会に期待を寄せるが……  不易流行の本格長編王道ファンタジー作品!    筆者推奨の作品イメージ歌<乃木坂46『夜明けまで強がらなくていい』2019>を聴きながら映像化イメージを膨らませつつお読み下さい! ※本作品は「小説家になろう」「エブリスタ」「カクヨム」にも投稿しています。各サイト読者様の励ましを糧についに完結です。 ※少年少女文庫・児童文学を念頭に置いた年齢制限不要な表現・描写の異世界転移ファンタジー作品です。

転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛
恋愛
食事のあまりの不味さに前世を思い出した私。 水洗トイレにシステムキッチン。テレビもラジオもスマホある日本。異世界転生じゃなかったわ。 と、思っていたらなんか可笑しいぞ? なんか視線の先には、男性ばかり。 そう、ここは男女比8:2の滅び間近な世界だったのです。 人口減少によって様々なことが効率化された世界。その一環による食事の効率化。 料理とは非効率的な家事であり、非効率的な栄養摂取方法になっていた…。 お、美味しいご飯が食べたい…! え、そんなことより、恋でもして子ども産め? うるせぇ!そんなことより美味しいご飯だ!!!

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

夫に離婚を切り出したら、物語の主人公の継母になりました

魚谷
恋愛
「ギュスターブ様、離婚しましょう!」 8歳の頃に、15歳の夫、伯爵のギュスターブの元に嫁いだ、侯爵家出身のフリーデ。 その結婚生活は悲惨なもの。一度も寝室を同じくしたことがなく、戦争狂と言われる夫は夫婦生活を持とうとせず、戦場を渡り歩いてばかり。 堪忍袋の緒が切れたフリーデはついに離婚を切り出すも、夫は金髪碧眼の美しい少年、ユーリを紹介する。 理解が追いつかず、卒倒するフリーデ。 その瞬間、自分が生きるこの世界が、前世大好きだった『凍月の刃』という物語の世界だということを思い出す。 紹介された少年は隠し子ではなく、物語の主人公。 夫のことはどうでもいいが、ユーリが歩むことになる茨の道を考えれば、見捨てることなんてできない。 フリーデはユーリが成人するまでは彼を育てるために婚姻を継続するが、成人したあかつきには離婚を認めるよう迫り、認めさせることに成功する。 ユーリの悲劇的な未来を、原作知識回避しつつ、離婚後の明るい未来のため、フリーデは邁進する。

悪魔だと呼ばれる強面騎士団長様に勢いで結婚を申し込んでしまった私の結婚生活

束原ミヤコ
恋愛
ラーチェル・クリスタニアは、男運がない。 初恋の幼馴染みは、もう一人の幼馴染みと結婚をしてしまい、傷心のまま婚約をした相手は、結婚間近に浮気が発覚して破談になってしまった。 ある日の舞踏会で、ラーチェルは幼馴染みのナターシャに小馬鹿にされて、酒を飲み、ふらついてぶつかった相手に、勢いで結婚を申し込んだ。 それは悪魔の騎士団長と呼ばれる、オルフェレウス・レノクスだった。

夫に顧みられない王妃は、人間をやめることにしました~もふもふ自由なセカンドライフを謳歌するつもりだったのに、何故かペットにされています!~

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
もう耐えられない! 隣国から嫁いで五年。一度も国王である夫から関心を示されず白い結婚を続けていた王妃フィリエルはついに決断した。 わたし、もう王妃やめる! 政略結婚だから、ある程度の覚悟はしていた。けれども幼い日に淡い恋心を抱いて以来、ずっと片思いをしていた相手から冷たくされる日々に、フィリエルの心はもう限界に達していた。政略結婚である以上、王妃の意思で離婚はできない。しかしもうこれ以上、好きな人に無視される日々は送りたくないのだ。 離婚できないなら人間をやめるわ! 王妃で、そして隣国の王女であるフィリエルは、この先生きていてもきっと幸せにはなれないだろう。生まれた時から政治の駒。それがフィリエルの人生だ。ならばそんな「人生」を捨てて、人間以外として生きたほうがましだと、フィリエルは思った。 これからは自由気ままな「猫生」を送るのよ! フィリエルは少し前に知り合いになった、「廃墟の塔の魔女」に頼み込み、猫の姿に変えてもらう。 よし!楽しいセカンドラウフのはじまりよ!――のはずが、何故か夫(国王)に拾われ、ペットにされてしまって……。 「ふふ、君はふわふわで可愛いなぁ」 やめてえ!そんなところ撫でないで~! 夫(人間)妻(猫)の奇妙な共同生活がはじまる――

W職業持ちの異世界スローライフ

Nowel
ファンタジー
仕事の帰り道、トラックに轢かれた鈴木健一。 目が覚めるとそこは魂の世界だった。 橋の神様に異世界に転生か転移することを選ばせてもらい、転移することに。 転移先は森の中、神様に貰った力を使いこの森の中でスローライフを目指す。

処理中です...