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 そこからは明らかに会話が盛りあがった。
 アレクシア姫は饒舌になり、ジークフリートも熱心に聞きながら、質問にも積極的に答えていく。
 魚を食べていたため、湖の話になった。美しさと美味な魚で有名な白の湖はシュネーゼ人の自慢である。

「訓練で、白の湖には何度も参りました。秋は川を遡って湖に戻ってくる鮭が美味で。ですが産卵を終えてからでは、魚が力を使い果たして味が落ちているので、美味しいのは、鮭には申し訳ないですが、川を遡っている途中の産卵前です。訓練のあと、その鮭を…………」

「釣るのか?」

「釣る人もいますけれど。滝で待てば、鮭が跳んで水面から姿を現しますから。訓練も兼ねて、滝の横で待機して、先ほどのように弦で捕まえていました。今は七匹同時に捕まえることができます」

 異国の令嬢はなんだか誇らしげだ。王子も、うんうんと楽しげにうなずく。

「単純に、丸ごと焼いても美味ですが。雌なら、卵を先に採って切り身にして。石を積んだ簡易の竈で鉄板を熱し、油を引いてソテーにしても、小麦粉をふるってバターでムニエルにしてもお勧めです。その上に、卵を少量のせていろどりにして。鮭には迷惑この上ないでしょうが、人間にとっては大変美味で、これがあるから訓練に耐えられると思うほどです」

 美姫は胸の前で両手を組み、彫像めいた美貌には活き活きした輝きが宿る。

「鮭はフリューリングフルスでも獲れるが、白の湖の鮭は特に質がいい。獲れたてを氷と一緒に箱詰めしたものがトゥルペ城にも届くが、本当の獲れたてが食べたくなって、ラッヘに乗って白の湖に直接、買いに行ったことが何度かある。それくらい美味だ」

 仮にも一国の王子が許可なく国境を越えて、他国に入国するのはどうなのか。政局次第では戦争ものである。
 しかしアレクシアは帰国したら忘れることに決めて、話題を変える。

「トゥルペ城に来て二日ですが。王城の料理人の腕前と、フリューリングフルスで手に入る食材の多彩さには感嘆するばかりです。なにを食べても美味です」

「シュネーゼは、そんなに食材が少ないのか?」

「なにぶん、寒くて。夏でも野菜や果物の数は限られます。レモンやオレンジは根付きません。林檎が限界です。いえ、林檎も美味ですが、基本はキャベツの酢漬けザワークラウトやソーセージなどの保存食ばかりで飽きる…………いえ、我が家は仮にも貴族ですから、恵まれているほうだと承知していますが…………」

 本心だった。
 美姫は本気で苦悩していた。まるで、この世の終わりを知って絶望する預言者のごとく。

「お気の毒に。苦労されたのだな」

 ジークフリートの言葉に、アレクシアはこの姫には珍しく、心苦しそうに語る。

「…………有り体に申して、公子殿下と婚約できたのは、僥倖でした。殿下ご自身もすばらしい人柄でしたが、城で出される料理はさすがに、料理人の腕前も食材の豊富さも一般家庭とは比較にならなくて…………」

「そこ?」とウィンフィールド。

「我が家は、私と殿下の婚約が決定したために伯爵位を賜った、新興の家です。それまでは一介の将軍家で、公都に館を賜った際に、料理人も新しく雇ったのですが。その男がすぐに馘首となり。しかたなく以前の料理人に戻したため、我が家の献立は下級貴族と同等なのです」

「なんで、馘首にしたんだ?」とウィンフィールド。

「私の部屋に忍び込んだのです」

「は?」

「三十代の男だったのですが、給仕の際に十歳の私を見て、本人いわく『運命の恋に落ちた』そうです。ですが、私はすでに公子の婚約者で主家の令嬢。『身分をわきまえ、告白などは考えていなかった』『ただ、よすがとなる何かが欲しかった』と私の部屋に忍び込み、下着をあさっているところを発見されて即日、馘首。激怒した父に盗人として投獄されました。おかけでこちらは下着をすべて処分して、新しく注文。将軍家時代の料理人を呼び戻しました。前の料理人は四十半ばの女性で、私に懸想することはありませんでしたから」

「…………」

 ウィンフィールドは絶句する。なるほど、「世の中は生きているだけで危険が存在する」と言い出す『佳人薄命の体現』っぷりである。

「身中に虫を抱えすぎだな。警備はどうなっているんだ? 伯爵家なら、私兵を雇っているだろ? もしや、そいつらも…………」

「似たようなことをしでかしましたので。最終的に全員馘首にして、現在は、父が伝手を頼って集めた女騎士を雇っています。みな、父の友人の令嬢で、武術の心得がある方ばかりです」

「そうなるか」

 将軍の友人なら武官が多そうだ。その娘なら、武術を習っている者もいるだろう。他ならぬアレクシア姫がそうだったように。

「そうか。貴女も本当に大変だな」

 ジークフリートはこの青年には珍しく、深刻そうに共感する。
 これまで明るい表情ばかり見てきただけに、その反応はアレクシアの胸に響いた。平静をよそおいながら、いそいで別の話題をさがす。気にかかっていた事柄を思い出した。

「そういえば。トゥルペ城の鍛練場で、聖遺物を使ってしまいました。物や壁を破損しないよう気をつけてはいましたが、被害はありましたか?
もし、あれば弁償いたします。他国の王城で大変無礼な行為でした」

(今頃?)とウィンフィールドは思ったが、アレクシアは真剣だ。

(お父様、お母様、申し訳ありません。シュネーゼとの外交問題に発展するでしょうか)

 そう悩んだが、ジークフリートは反論する。

「貴女が気に病む必要はない。修繕費その他、すべて俺が持つ」

「実力を見せてほしいと、頼んだのは私です。私が修繕費や慰謝料を払うのが筋です」

「いや、俺が」

 責任を引っぱりあう二人に、不毛な会話になりそうな気配を察してウィンフィールドが手をあげて割り込む。

「無礼を承知で、質問。仮に、なんらかの金銭的な請求が生じたとして。プファンクーヘン嬢は支払い能力があるのか?」

 本当に無礼な質問だった。ウィンフィールドも、普段なら令嬢相手にこんな質問はしない。
 ただ、相手は普通から逸脱した姫君。ならば弁償の方法も逸脱しているのではないか、と純然たる好奇心から問うたのだ。しかし。

「私の手持ちの宝石でお支払いします。足りなければ、ドレスや小物も」

 普通の提案だった。ウィンフィールドは拍子抜けする。

「そんなことはしなくていい。俺が出す」

「宝石は興味ないんだろう? プファンクーヘン嬢のお気に入りの装飾品か?」

「気に入っているのは、父や母から贈られた物と、自分で気に入って購入した物、数点です。それから…………公子殿下からいただいた、この髪飾りくらいでしょうか」

 アレクシアは今日も銀髪に挿している蛍石の髪飾りに、そっと触れる。

「公爵家や侯爵家の令息や、商会長ギルドの子息からいただいた贈り物に、何点かそれなりの価格の品がありますので、そちらをお譲りします」

「ちなみに、一番高価な贈り物はなんだった?」

「ウィン」

「まあまあ。愛しの姫君がどんな贈り物をされてきたのか、知っておいて損はないぞ?」

 にらみつけてくるジークフリートに、ウィンフィールドはかるく反論する。
 この姫ほどの美女なら、男からの高級な贈り物は日常茶飯事のはず。訊いておけば今後の参考になるかもしれない。その程度の気持ちだったのだが。

「館です」

「んん?」とウィンフィールドは聞き損ねたかと思った。

「なにかの折に、白の湖の話になりまして。一度、公爵家所有の別荘をいただきました。『あなたがここに滞在してくれれば、自分がいつでも会いに行けるから』と。度の過ぎた贈り物でしたし、なにより当時すでに公子殿下と婚約しておりましたので。そのような理由の贈り物は受け取れない、と父からお断りしていただきました。ですので所有は今も公爵家です」

「あー…………ずいぶん豪快な子息ですな。ちなみに、他に別荘をいただいたことは?」

「いえ。建物をいただいたのは、それきりです」

 おかげで件の公爵令息は「シュネーゼ広しといえど、私以上に雪薔薇姫に高価な贈り物をした男はいない」と触れ回り、父親からは散々叱責されたらしい。
「それきり」と聞き(さすがにそうか)と納得しかけたウィンフィールドだったが。

「不動産、という意味でしたら、山をいただいたことがあります」

「山?」

「小さな山でしたが、銀が採れるので。『雪月夜に舞う精霊のようなあなたには、銀の山がふさわしい』と、ある侯爵令息からいただきました」

「…………いただいたのですか?」

「いいえ」

アレクシアは即、否定した。

「令息の父君が烈火のごとくお怒りになられて。勘当を言い渡された、と聞きました。父から権利書一式を侯爵閣下にお返しし、最終的に『山に私の名前をつける』という条件で折り合いました」

「もったいない」

 つい、商人としての本音がもれる。

「他に不動産をいただいたことは?」

「不動産はその二つくらいです。あとは動産です。それこそ宝石類や香水、ブラシや化粧品、小物入れ、レースや絹や宝石付きの釦、革、銀や白磁の食器類に花器、絹張りの一人掛けの椅子とか大理石の長椅子とか、鏡台や書き物机、毛織物の敷物や壁掛けタペストリー。花やお菓子は毎日届きますが、これはもうありません。金の湯船や絹の下着を贈ってくださった方もいましたが、湯船は父に譲り、下着は結婚で退職した侍女達に持たせました」

「なんというか…………贈り物だけで生活できそうだな」

 新興貴族と聞くが、財産はなかなかのものと察せられる。
 アレクシアも「そうですね。可能だと思います」と、なんてことないように応じた。
 なるほど。桁違いの美女ともなれば、ドレスや宝石とは次元が違うのである。

(話のいいネタだな。帰ったら親父に教えてやろ)

 葡萄酒で喉を湿らせながら、ウィンフィールドは頭の中に記録する。
 当のアレクシア姫はただただ淡々として、高価な贈り物を誇る様子もない。

「他に面白かった物とか、心に残った贈り物は?」

 さらなるネタを求めてウィンフィールドが訊ねると、アレクシアは視線を宙にさ迷わせた。

「印象が強かったもの、といえば絵と彫像でしょうか。私をモデルにした像や絵画を何十体もいただきました」

「絵画」

「正直、自分の絵や像など置き場所に困るだけで、軽々しく譲ることもできないので、物置に保管しております。いずれ顔を修正させれば飾る機会もあるだろう、と父が申しておりました」

「そんなにひどい出来だったのか?」

 口をはさんだのはジークフリート。
 たしかにこれだけの美女となると、画家も彫刻家達も一苦労だろう。第四王子の肖像画の件で、画家の苦労を知っていたウィンフィールドは芸術家達に同情したが。

「自分の顔の裸体像や、裸体の女神の絵をあちこちに飾られるのは、私も不本意ですので。かといって、石は砕くとただのゴミで使い道もありませんし。私とわからないくらい修正させる、と父が怒っておりました」

「そういうこと…………」

 ウィンフィールドは脱力する。

(意中の姫に、本人の裸体像や裸体画を贈るか? 普通。…………いや、いるな。何人かいた。芸術家達への注文を預かったことがあった)

「あとは…………鳥でしょうか。異国からとりよせた、珍しい美しい鳥を何度かいただいたのですが。我が家で飼うのは危険だ、と友人達に譲りました。あれは今でも残念です」

 アレクシアは、お腹いっぱいになって彼女の膝で喉を鳴らす愛猫をなでる。
「うにゃ?」と、ねこさんは顔をあげ「食べないよ?」とでもいうように首をふったが、「でも去年、ねこさんは庭のリスを追いかけていたでしょう?」と飼い主に指摘されると「忘れた」と言う風に頭を膝の上に戻した。
 薪がなくなり、焚火が燃え尽きる。

「そろそろ移動するか」

 ジークフリートのその一言で片付けがはじまった。
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