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12話
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12話
それは少女…というにはいささか語弊のある女性だった。顔はたしかに幼い。16か17歳くらいに見える。
艶のあるピンクの髪は少しくせっ毛で長く腰まで伸びている。大きな紅い瞳はぱっちりした二重。潤んだ唇と薄紅色の頬は涙で濡れている。どうやらさっきまで泣いていたようだ。
問題なのはその少女の…身体だ。大きく開いた胸元からのぞく豊満な胸。細い腰と驚くほど短いスカートから伸びるスラリとした足。10代というにはあまりにも妖艶な身体つきをしている。
「コイツはサキュバスだ。名はミミ。あの夜、魔王城に許可なく立ち入ったことが分かっている。」
サキュバス…。なるほどそう言われると納得してしまう。異性の夢に入り込み、その精気を吸い取ると言われる魔族。実際に見るのは初めてだ。
「あの夜に何があったのか。聞き出そうとしても一向に口を割らない。拷問にかけてもよかったが…。」
「まぁ!ハデスなんてこと仰るの?拷問なんて酷いことなさるおつもり?」
その女はメリンダの恋敵だろうに…。どこまで彼女は優しいのか。
「していない!拷問などしていないからな!コイツはメリンダになら全てを話すと言うんだ!だから連れてきた!」
いやいや、自分と一夜を共にした女性を婚約者に会わせては駄目だろう。どう考えても修羅場にしかならないじゃないか。
「…おい…。たとえメリンダの子孫であっても、身の程をわきまえろよ?」
その鋭い眼に睨まれ、僕は魔王が心を読めることを思い出した。
「ハデス様なら彼女の心も読めるのではないのですか?」
「サキュバスは精神系の魔法が得意だ。コイツはどうやら精神結界を張っている。無理矢理心を覗けば、コイツの心が壊れるだろう。」
その言葉にミミと呼ばれた女性の肩がビクリと震えた。顔は青ざめている。
「メリンダ様。魔王陛下と浮気していたのはこの女性で間違いないのですか?」
「おい!俺は浮気などしていない!いい加減その手を離せ!」
メリンダはオスカーの手を離し、ミミに近づく。そしてその露わになった左の太ももを確認した。
「間違いないですわ。この足のほくろを確かに見ました。」
ミミの左の太ももの外側。そこには確かに大きなほくろがある。
「こんなに足を露わにした女性と眠っていて、浮気していないなどと言うのですか…陛下の品位を疑います。」
「貴様、?さっきから言わせておけば…。お前こそ、俺の婚約者であるメリンダを口説いておいて品位などと言うのかぁ?」
あぁまた殺伐とした雰囲気に…。これ以上屋敷を壊さないでくれぇ。
「ふぇ…ふぇぇん。うぅ…。うぇーん。」
突然大声をあげ、ミミが泣き出した。妖艶な見た目とは裏腹に泣き方はひどく子供っぽい。
「うぅ…好きだったんだもん。」
ゴシゴシと手の甲で涙を拭いながら、ミミは駄々っ子のように話し出した。
「ずっと好きだったんだもん。」
彼女の言葉にメリンダの表情が暗くなった。
「大好きなんだもん…。結婚して、他の人のものになっちゃうなんて…嫌だったのぉ!」
ハデスが青い顔になる。
「お、俺は何もしてない!」
狼狽えるハデスを皆冷たい目で見つめている。メリンダはもう涙目だ。
「酒に酔ったあげく、記憶を無くし不貞をはたらくとは…。魔王が聞いて呆れますね。」
「してない!」
「ハデス様、そろそろ観念したほうがいいんじゃないですか?」
「だから!してないと言っているだろう!」
わあわあと騒ぐ男たちの横でメリンダがミミに近づいていく。床に座り込んで泣きわめくミミの前に膝をついた。
「ミミさん…ハデスは本当に浮気をしたのですか?」
涙を堪え、ミミに問いかけるメリンダの姿は聖女ではなく一人の女性のものだった。
「メリンダ!俺は…!」
「「陛下は黙ってて下さい!」」
切実なメリンダの前で、ミミは俯いたまま答えない。メリンダはじっと彼女の反応を待っていた。
「…、なわけ、ないじゃない…。」
「えっ…?」
ミミが何かボソッと言ったのが聞こえた。
「いま…なんとおっしゃいまして?」
「…するわけないじゃないですか…。」
メリンダも僕も、ハデスもオスカーも皆耳をすました。
「浮気…?そんなことするわけないじゃない!」
突然顔をあげたミミの顔は何故か赤く染まっていた。
「男性アレルギーだもん!男の人に触られただけでじんましん出ちゃうんだもん!ハデス様になんて絶対に触りたくない!」
呆気に取られる僕たちの前で、ミミの告白は続く。
「ずっと憧れてたの!大好きなの!なのに、なんで結婚なんてするの?ハデス様なんて全然釣り合わないもん!私が一番好きだもん。」
「私が好きなのはメリンダ様だもん!」
………え?
「わたくし…ですか?」
それは少女…というにはいささか語弊のある女性だった。顔はたしかに幼い。16か17歳くらいに見える。
艶のあるピンクの髪は少しくせっ毛で長く腰まで伸びている。大きな紅い瞳はぱっちりした二重。潤んだ唇と薄紅色の頬は涙で濡れている。どうやらさっきまで泣いていたようだ。
問題なのはその少女の…身体だ。大きく開いた胸元からのぞく豊満な胸。細い腰と驚くほど短いスカートから伸びるスラリとした足。10代というにはあまりにも妖艶な身体つきをしている。
「コイツはサキュバスだ。名はミミ。あの夜、魔王城に許可なく立ち入ったことが分かっている。」
サキュバス…。なるほどそう言われると納得してしまう。異性の夢に入り込み、その精気を吸い取ると言われる魔族。実際に見るのは初めてだ。
「あの夜に何があったのか。聞き出そうとしても一向に口を割らない。拷問にかけてもよかったが…。」
「まぁ!ハデスなんてこと仰るの?拷問なんて酷いことなさるおつもり?」
その女はメリンダの恋敵だろうに…。どこまで彼女は優しいのか。
「していない!拷問などしていないからな!コイツはメリンダになら全てを話すと言うんだ!だから連れてきた!」
いやいや、自分と一夜を共にした女性を婚約者に会わせては駄目だろう。どう考えても修羅場にしかならないじゃないか。
「…おい…。たとえメリンダの子孫であっても、身の程をわきまえろよ?」
その鋭い眼に睨まれ、僕は魔王が心を読めることを思い出した。
「ハデス様なら彼女の心も読めるのではないのですか?」
「サキュバスは精神系の魔法が得意だ。コイツはどうやら精神結界を張っている。無理矢理心を覗けば、コイツの心が壊れるだろう。」
その言葉にミミと呼ばれた女性の肩がビクリと震えた。顔は青ざめている。
「メリンダ様。魔王陛下と浮気していたのはこの女性で間違いないのですか?」
「おい!俺は浮気などしていない!いい加減その手を離せ!」
メリンダはオスカーの手を離し、ミミに近づく。そしてその露わになった左の太ももを確認した。
「間違いないですわ。この足のほくろを確かに見ました。」
ミミの左の太ももの外側。そこには確かに大きなほくろがある。
「こんなに足を露わにした女性と眠っていて、浮気していないなどと言うのですか…陛下の品位を疑います。」
「貴様、?さっきから言わせておけば…。お前こそ、俺の婚約者であるメリンダを口説いておいて品位などと言うのかぁ?」
あぁまた殺伐とした雰囲気に…。これ以上屋敷を壊さないでくれぇ。
「ふぇ…ふぇぇん。うぅ…。うぇーん。」
突然大声をあげ、ミミが泣き出した。妖艶な見た目とは裏腹に泣き方はひどく子供っぽい。
「うぅ…好きだったんだもん。」
ゴシゴシと手の甲で涙を拭いながら、ミミは駄々っ子のように話し出した。
「ずっと好きだったんだもん。」
彼女の言葉にメリンダの表情が暗くなった。
「大好きなんだもん…。結婚して、他の人のものになっちゃうなんて…嫌だったのぉ!」
ハデスが青い顔になる。
「お、俺は何もしてない!」
狼狽えるハデスを皆冷たい目で見つめている。メリンダはもう涙目だ。
「酒に酔ったあげく、記憶を無くし不貞をはたらくとは…。魔王が聞いて呆れますね。」
「してない!」
「ハデス様、そろそろ観念したほうがいいんじゃないですか?」
「だから!してないと言っているだろう!」
わあわあと騒ぐ男たちの横でメリンダがミミに近づいていく。床に座り込んで泣きわめくミミの前に膝をついた。
「ミミさん…ハデスは本当に浮気をしたのですか?」
涙を堪え、ミミに問いかけるメリンダの姿は聖女ではなく一人の女性のものだった。
「メリンダ!俺は…!」
「「陛下は黙ってて下さい!」」
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「…、なわけ、ないじゃない…。」
「えっ…?」
ミミが何かボソッと言ったのが聞こえた。
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「…するわけないじゃないですか…。」
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突然顔をあげたミミの顔は何故か赤く染まっていた。
「男性アレルギーだもん!男の人に触られただけでじんましん出ちゃうんだもん!ハデス様になんて絶対に触りたくない!」
呆気に取られる僕たちの前で、ミミの告白は続く。
「ずっと憧れてたの!大好きなの!なのに、なんで結婚なんてするの?ハデス様なんて全然釣り合わないもん!私が一番好きだもん。」
「私が好きなのはメリンダ様だもん!」
………え?
「わたくし…ですか?」
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