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9話〜ユニフェ〜
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9話~ユニフェ~
僕はユニフェ。3歳のユニコーンだ。3歳っていうのは魔界での年齢だから、人間界ではだいたい300歳くらいかな。
僕が生まれる時お母さんはすごく難産だった。死の淵を彷徨っていた僕と母さんを助けてくれたのが魔界にやったきたばかりのメリンダだったんだ。
そのときからメリンダは僕の一番の友達。ずっとずっとそれは変わらない。
メリンダが魔界に来たとき、魔族の皆は半信半疑だった。
ながーーい間、僕たち魔族と人間は戦争をしてきた。たくさんの者が死んで、たくさんの者を殺した。それが突然今日から戦争は終わり!人間と仲良くしましょう!なんてびっくりするよね。
でもそんな魔族たちの中でもメリンダはメリンダだったんだ。傷ついた者に分け隔てなく接し、その治癒の力を使って沢山の魔族を救った。いつのまにか皆メリンダのことが大好きになっていた。
だから、ハデス様がメリンダと結婚することになって皆大喜びしたんだ。
僕も嬉しかったよ。メリンダは今までで一番幸せそうだったし、本当に綺麗なんだもの。
まぁ正直複雑な気持ちはあるけどね。なんてったって僕はユニコーンだから。
ユニコーンが背中に乗せられるのは純潔の乙女だけ。メリンダがハデス様のお嫁さんになっちゃったら、もう僕と一緒に空を走ることはできなくなる。
寂しい気持ちと嬉しい気持ち。それでもやっぱりメリンダが嬉しそうなのは僕も嬉しいから。
それにメリンダが僕に乗れなくなっても、いつかメリンダの子どもが乗ってくれるかもしれないじゃない。ハデス様には頑張ってもらって、たくさん子どもができたらいいなぁ。メリンダに似た可愛い女の子ならもっと最高だよね。
そんなことを思っていた結婚式前日の夜。いやもう日付けが変わってたから、結婚式当日になるのかな。メリンダは目を真っ赤に腫らして、僕の所にやってきた。
「メリンダ!どうしたの?瞼が真っ赤じゃないか!?」
「ユニフェ…。ユニフェは私の友達よね?私を乗せて飛んでくれる?」
まだ外は真っ暗。日の出まではまだまだ時間がある。そんな暗闇の中を僕はメリンダを乗せて飛び立った。
「一体どうしたの?」
僕の問いかけにもメリンダは何の反応もしない。仕方なく僕は夜空をのぼっていった。
遠くまで星が見える。結婚式の天気が良さそうでよかった。
「ハデスが…、」
夜空を眺めながら、メリンダはようやく口を開いたんだ。
「ハデス様がどうかしたの?」
「ハデスが…他の女の子と寝ていたの…裸で。すごく気持ち良さそうに。」
………?ハデス様が、寝てた。裸で…メリンダ以外の女の子と…?
「それじゃあ…まるで浮気してるみたいだね?」
「みたいじゃないわ!浮気してるのよ!結婚式の前日に!」
メリンダはわぁっと声をあげて泣き出した。メリンダは本当に綺麗なのに、泣き方だけはなんか子どもみたいで面白いんだよ。
「本当に?ハデス様が?見間違えたんじゃない?」
「しっかり見たの!見たのは私だけじゃないもの!」
だからメリンダはこんなに瞼を腫らしているのか。メリンダが見たというならそうなんだろう。メリンダは絶対に嘘をつかないからね。
「でも今日は結婚式だよ?」
「結婚なんてしませんわ!ユニフェ、このまま人間界まで飛んでください!」
「えーーー?!本気なの?」
僕の説得もむなしく、メリンダの意思は固かった。そのまま誰にも告げず、僕は人間界に向けて駆け出した。
* * *
こうして僕たちは人間界にやってきた。僕はメリンダといられる時間が少し伸びて嬉しかったんだ。結婚しちゃったら絶対に一緒にいる時間は減っちゃうし、ハデス様がメリンダを独占しちゃうからね。
あのハデス様が浮気なんてやっぱり信じられないよ。恥ずかしくなるくらい、メリンダにメロメロなんだもの。
僕にはずっと疑問に思ってることがあるんだ。ハデス様がその浮気相手の横で熟睡してたって話。
ハデス様が人前で寝るなんてあり得ないよ。
ハデス様は魔王として魔界を治める素晴らしい王様。でも敵が多いこともたしかなんだ。
人間との戦争が無くなって喜ぶやつばかりじゃない。ハデス様はずっと危険と隣り合わせだった。
だからハデス様は絶対にスキを見せない。人前で寝るなんて絶対にしないよ。
その唯一の例外がメリンダなんだ。
半年ほど前、ハデス様とメリンダが恋人になって一年の記念日。メリンダはハデス様に膝枕してあげたんだ。
もうキスくらいしちゃえばいいのに。周りのみんなはそう思ってたけど、メリンダはそういうことに本当に疎いしハデス様はメリンダが嫌がることは絶対にしないしね。
メリンダに膝枕されながら、ハデス様はすやすやと寝息を立てていた。見守っていた部下は皆びっくりしてたよ。あのハデス様が無防備な姿を見せるなんて、本当にメリンダ様が好きなんだって。
そんなハデス様が浮気ってだけでもあり得ないのに、その浮気相手の横で熟睡?メリンダが部屋を訪ねてきたのも分からないくらいに?
いくらお酒を飲んでたからってそんなこと本当にあるのかな?
僕はユニフェ。3歳のユニコーンだ。3歳っていうのは魔界での年齢だから、人間界ではだいたい300歳くらいかな。
僕が生まれる時お母さんはすごく難産だった。死の淵を彷徨っていた僕と母さんを助けてくれたのが魔界にやったきたばかりのメリンダだったんだ。
そのときからメリンダは僕の一番の友達。ずっとずっとそれは変わらない。
メリンダが魔界に来たとき、魔族の皆は半信半疑だった。
ながーーい間、僕たち魔族と人間は戦争をしてきた。たくさんの者が死んで、たくさんの者を殺した。それが突然今日から戦争は終わり!人間と仲良くしましょう!なんてびっくりするよね。
でもそんな魔族たちの中でもメリンダはメリンダだったんだ。傷ついた者に分け隔てなく接し、その治癒の力を使って沢山の魔族を救った。いつのまにか皆メリンダのことが大好きになっていた。
だから、ハデス様がメリンダと結婚することになって皆大喜びしたんだ。
僕も嬉しかったよ。メリンダは今までで一番幸せそうだったし、本当に綺麗なんだもの。
まぁ正直複雑な気持ちはあるけどね。なんてったって僕はユニコーンだから。
ユニコーンが背中に乗せられるのは純潔の乙女だけ。メリンダがハデス様のお嫁さんになっちゃったら、もう僕と一緒に空を走ることはできなくなる。
寂しい気持ちと嬉しい気持ち。それでもやっぱりメリンダが嬉しそうなのは僕も嬉しいから。
それにメリンダが僕に乗れなくなっても、いつかメリンダの子どもが乗ってくれるかもしれないじゃない。ハデス様には頑張ってもらって、たくさん子どもができたらいいなぁ。メリンダに似た可愛い女の子ならもっと最高だよね。
そんなことを思っていた結婚式前日の夜。いやもう日付けが変わってたから、結婚式当日になるのかな。メリンダは目を真っ赤に腫らして、僕の所にやってきた。
「メリンダ!どうしたの?瞼が真っ赤じゃないか!?」
「ユニフェ…。ユニフェは私の友達よね?私を乗せて飛んでくれる?」
まだ外は真っ暗。日の出まではまだまだ時間がある。そんな暗闇の中を僕はメリンダを乗せて飛び立った。
「一体どうしたの?」
僕の問いかけにもメリンダは何の反応もしない。仕方なく僕は夜空をのぼっていった。
遠くまで星が見える。結婚式の天気が良さそうでよかった。
「ハデスが…、」
夜空を眺めながら、メリンダはようやく口を開いたんだ。
「ハデス様がどうかしたの?」
「ハデスが…他の女の子と寝ていたの…裸で。すごく気持ち良さそうに。」
………?ハデス様が、寝てた。裸で…メリンダ以外の女の子と…?
「それじゃあ…まるで浮気してるみたいだね?」
「みたいじゃないわ!浮気してるのよ!結婚式の前日に!」
メリンダはわぁっと声をあげて泣き出した。メリンダは本当に綺麗なのに、泣き方だけはなんか子どもみたいで面白いんだよ。
「本当に?ハデス様が?見間違えたんじゃない?」
「しっかり見たの!見たのは私だけじゃないもの!」
だからメリンダはこんなに瞼を腫らしているのか。メリンダが見たというならそうなんだろう。メリンダは絶対に嘘をつかないからね。
「でも今日は結婚式だよ?」
「結婚なんてしませんわ!ユニフェ、このまま人間界まで飛んでください!」
「えーーー?!本気なの?」
僕の説得もむなしく、メリンダの意思は固かった。そのまま誰にも告げず、僕は人間界に向けて駆け出した。
* * *
こうして僕たちは人間界にやってきた。僕はメリンダといられる時間が少し伸びて嬉しかったんだ。結婚しちゃったら絶対に一緒にいる時間は減っちゃうし、ハデス様がメリンダを独占しちゃうからね。
あのハデス様が浮気なんてやっぱり信じられないよ。恥ずかしくなるくらい、メリンダにメロメロなんだもの。
僕にはずっと疑問に思ってることがあるんだ。ハデス様がその浮気相手の横で熟睡してたって話。
ハデス様が人前で寝るなんてあり得ないよ。
ハデス様は魔王として魔界を治める素晴らしい王様。でも敵が多いこともたしかなんだ。
人間との戦争が無くなって喜ぶやつばかりじゃない。ハデス様はずっと危険と隣り合わせだった。
だからハデス様は絶対にスキを見せない。人前で寝るなんて絶対にしないよ。
その唯一の例外がメリンダなんだ。
半年ほど前、ハデス様とメリンダが恋人になって一年の記念日。メリンダはハデス様に膝枕してあげたんだ。
もうキスくらいしちゃえばいいのに。周りのみんなはそう思ってたけど、メリンダはそういうことに本当に疎いしハデス様はメリンダが嫌がることは絶対にしないしね。
メリンダに膝枕されながら、ハデス様はすやすやと寝息を立てていた。見守っていた部下は皆びっくりしてたよ。あのハデス様が無防備な姿を見せるなんて、本当にメリンダ様が好きなんだって。
そんなハデス様が浮気ってだけでもあり得ないのに、その浮気相手の横で熟睡?メリンダが部屋を訪ねてきたのも分からないくらいに?
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