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エピローグ
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「本当にメルリアはぁ、渚さんに似て良かったねぇ。」
ザワザワと騒がしい夜会の会場で、その場所は注目を集めていた。国王と皇后。王国一の実力者である公爵と公爵夫人。そしてデビュータントを迎えた公爵の愛娘。
「クローディアスに似てたらぁ、こんな怖い顔になってたよぉ。」
「メルリアは可愛い。渚に似ていることは認めよう。しかし私にも似ている!髪とか鼻とか!」
クロードの愛娘への溺愛はこの16年間ずーっと続いている。あまりにも甘やかすので、逆にメルリア本人から怒られる始末だ。
「来年はうちの子どもたちも社交デビューですからね。メルリアちゃんも絶対参加してね。」
メルリアが生まれた翌年、カイン様とシトリン様の間に双子が生まれた。女の子がシアン、男の子がトアン。二人はメルリアのことを本当の姉のように慕ってくれている。
「そうそう、そのままメルリアはトアンのお嫁さんになってもいいよぉ。」
「カイン…?それは何度も断っているだろう。」
カイン様は、息子のトアン様とメルリアを結婚させたいらしい。どこまで本気でどこからが冗談なのかはよく分からないけれど。
その時、来客を知らせる声が掛かる。タリシアン共和国からの使節団一行が到着したようだ。
「トアンには強力なライバルがいるからなぁ。」
「私はどちらも絶対に認めない!」
共和国の外交官、騎士団長、そして騎士たちが次々と入場する。私の横でメルリアはその一団を見つめていた。
「国王陛下、皇后様。本日お招きいただいたこと心より感謝致します。王国の繁栄とますますの発展を………。」
「ありがとう。堅苦しいのはもういいよ。今日は祭だからね。皆さんにもどうか楽しんでもらいたい。」
深々と頭を下げる一団の中に、一際若い騎士を見つけた。
真っ黒な髪と黄金色の瞳。朝黒い肌は南部に暮らす民特有のもの。幼さの残る顔立ちとは裏腹に鍛えられた体は正装の礼服が少し苦しそうだ。
いま北部都市に派遣されているトラヴィス様が言っていた。タリシアン共和国最強の剣士はアーサーだと。その強さはいつか俺を超えるだろうと。
「ご挨拶申し上げます。フェルナンド公爵様、渚様、メルリア様。ずっとお会いできるのを楽しみにしてまいりました。アーサー・ガーランドです。」
メルリアが歩み出た。怖い顔になったクロードをカイン様が必死に宥めている。
「メルリア・フェルナンドです。いつもたくさんの贈り物、本当にありがとうございます。ずっとお会いしたかったです。」
メルリアの頬が赤く染まった。小さな頃から人の目にさらされ、あまり人前で緊張したり照れたりしない子が珍しい。
「本日はどうかメルリア様のダンスのお相手をさせていただければ、これ以上の名誉はございません。」
「ちょっと待て!メルリアの初めてのダンスは私とだ!君はその後だからな!」
「もぉクローディアス!空気読みなよぉ!」
耳まで真っ赤になったメルリアは私から見ても可愛らしい。これが親バカというやつだろうか。
「お父様とのダンスの後で良ければ、喜んでお受け致します。」
「もちろんです。いつまでもお待ち致します。」
アーサーの視線が私に移った。あぁ、ずっとずっと私はこの人に守られていたのだ。その感謝をこれからたくさん伝えていこう。
「許可をいただけますでしょうか?」
「もちろんです。どうかメルリアをよろしくお願い致します。」
嬉しそうに笑うアーサーは年相応の少年の顔をしていた。
~終わり~
「本当にメルリアはぁ、渚さんに似て良かったねぇ。」
ザワザワと騒がしい夜会の会場で、その場所は注目を集めていた。国王と皇后。王国一の実力者である公爵と公爵夫人。そしてデビュータントを迎えた公爵の愛娘。
「クローディアスに似てたらぁ、こんな怖い顔になってたよぉ。」
「メルリアは可愛い。渚に似ていることは認めよう。しかし私にも似ている!髪とか鼻とか!」
クロードの愛娘への溺愛はこの16年間ずーっと続いている。あまりにも甘やかすので、逆にメルリア本人から怒られる始末だ。
「来年はうちの子どもたちも社交デビューですからね。メルリアちゃんも絶対参加してね。」
メルリアが生まれた翌年、カイン様とシトリン様の間に双子が生まれた。女の子がシアン、男の子がトアン。二人はメルリアのことを本当の姉のように慕ってくれている。
「そうそう、そのままメルリアはトアンのお嫁さんになってもいいよぉ。」
「カイン…?それは何度も断っているだろう。」
カイン様は、息子のトアン様とメルリアを結婚させたいらしい。どこまで本気でどこからが冗談なのかはよく分からないけれど。
その時、来客を知らせる声が掛かる。タリシアン共和国からの使節団一行が到着したようだ。
「トアンには強力なライバルがいるからなぁ。」
「私はどちらも絶対に認めない!」
共和国の外交官、騎士団長、そして騎士たちが次々と入場する。私の横でメルリアはその一団を見つめていた。
「国王陛下、皇后様。本日お招きいただいたこと心より感謝致します。王国の繁栄とますますの発展を………。」
「ありがとう。堅苦しいのはもういいよ。今日は祭だからね。皆さんにもどうか楽しんでもらいたい。」
深々と頭を下げる一団の中に、一際若い騎士を見つけた。
真っ黒な髪と黄金色の瞳。朝黒い肌は南部に暮らす民特有のもの。幼さの残る顔立ちとは裏腹に鍛えられた体は正装の礼服が少し苦しそうだ。
いま北部都市に派遣されているトラヴィス様が言っていた。タリシアン共和国最強の剣士はアーサーだと。その強さはいつか俺を超えるだろうと。
「ご挨拶申し上げます。フェルナンド公爵様、渚様、メルリア様。ずっとお会いできるのを楽しみにしてまいりました。アーサー・ガーランドです。」
メルリアが歩み出た。怖い顔になったクロードをカイン様が必死に宥めている。
「メルリア・フェルナンドです。いつもたくさんの贈り物、本当にありがとうございます。ずっとお会いしたかったです。」
メルリアの頬が赤く染まった。小さな頃から人の目にさらされ、あまり人前で緊張したり照れたりしない子が珍しい。
「本日はどうかメルリア様のダンスのお相手をさせていただければ、これ以上の名誉はございません。」
「ちょっと待て!メルリアの初めてのダンスは私とだ!君はその後だからな!」
「もぉクローディアス!空気読みなよぉ!」
耳まで真っ赤になったメルリアは私から見ても可愛らしい。これが親バカというやつだろうか。
「お父様とのダンスの後で良ければ、喜んでお受け致します。」
「もちろんです。いつまでもお待ち致します。」
アーサーの視線が私に移った。あぁ、ずっとずっと私はこの人に守られていたのだ。その感謝をこれからたくさん伝えていこう。
「許可をいただけますでしょうか?」
「もちろんです。どうかメルリアをよろしくお願い致します。」
嬉しそうに笑うアーサーは年相応の少年の顔をしていた。
~終わり~
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とても優しいお話でした。
読ませて頂いて有難うございました。
感想ありがとうございます(◍•ᴗ•◍)
優しいと言ってもらえて、本当に嬉しいです。
完結ありがとうございます♪
(*´ω`*)アーサーいっぱい頑張らないとだね!
メルリアちゃんのお父さんに認められるのは大変そう(笑)
まぁ、渚ちゃんが味方だから大丈夫だろうけど!
ハッピーエンドで良かった♪
最後まで感想をいただき本当にありがとうございます( ꈍᴗꈍ)
親バカクロードを頑張って攻略してほしいですね。なぜか仲良しな渚とアーサーにヤキモチ妬いてほしいと思って書きましたw
最後まで読んでいただき感謝感謝です(◍•ᴗ•◍)
(◍•ᴗ•◍)メルリアちゃんとアーサーはまだ会ったことないんですね。アーサーは神様の力とか少しは持ってたりするんですかね?
なんにしても家族に恵まれなかった二人が幸せになれて良かった
(*´ω`*)クロードさんは親バカになられてそう(笑)このさい二人目を頑張れば、メルリアちゃんがお嫁にいっても大丈夫じゃないかな(笑)
いつも感想ありがとうございます( ꈍᴗꈍ)アーサーは神様の頃の記憶だけ持ってる感じですかね。1000年分ですから、色々先読みができそうです。そろそろ完結になります。最後まで読んで頂けたら嬉しいです(◍•ᴗ•◍)