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第35話 贈り物
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第35話 贈り物
「渚?大丈夫か?」
ベッド脇でクロードが心配そうにこちらを見つめている。あのお茶会の日からそろそろ半年が経とうとしていた。
あれから思っていたよりもずっと悪阻がひどくなった私はベッドで過ごすことが増えた。しかし、それもそろそろ終わりそう。少しずつ気持ち悪くなる日が減り、代わりにお腹が大きくなってくる。
「もう大丈夫。心配しないで仕事に行って?」
クロードの過保護は日に日にひどくなり、今では私を一人にしてくれなくなっている。クロードが家にいる間、絶対に同じ部屋にいないと駄目みたいだ。
自分が仕事に行っている間も私の側には必ず誰かいる。ちょっとでも一人になろうとすると、ジェロームさんかジゼルさんか、また他の使用人さんが全速力で走ってくる。さすがにやり過ぎだと思うんだけど…。
「今日も早く帰ってくる。絶対に無理しないでくれ。」
いってらっしゃいと手を振ると、やっと彼は仕事に出発した。
「今日もすごい数…。」
私の懐妊がわかってから、毎日屋敷にはたくさんの贈り物が贈られてくる。赤ちゃんの服なんて何年先まで買わなくていいんだろう。おもちゃに絵本も一部屋埋まるほどある。
カイン様が王太子となり、シトリン様という婚約者も決まった。王国の基盤がしっかりとしてきた今、貴族たちは自分たちの地位固めに忙しいらしい。
カイン様が国王になれば、クロードの地位は盤石なものになる。今のうちにフェルナンド家と親密になりたいと思う貴族が多いのだ。
「あれ?これは?」
たくさんの贈り物のなかに王国の紋章の入った箱がある。美しい青色のリボンが目を引いた。
「カイン様からの贈り物のようです。ルイボスティーですね。」
箱を開いたジェロームさんが見せてくれたのは美しい紅茶の缶だった。
「すごく綺麗。さっそく今日のお茶の時間にいれてください。」
* * *
「ただいま!渚?具合は大丈夫か?」
「クロード?!もう帰ってきたの?」
まだ午後の3時。ちょうど午後のお茶をしようとしていたところだった。
「あとは書類仕事だけだからな。城にいる必要はない。」
「旦那様!?もうお帰りになられたのですか?」
ジェロームさんがお茶の準備をしてやって来た。結婚式が終わってから、クロードは旦那様、私は奥様と呼ばれるようになった。これもまだ慣れなくて、とてもこそばゆい。
「旦那様…奥様が心配なのは分かりますが、仕事を疎かにしてはなりません。」
「おろそかになどしていないだろう!」
席につき二人のやり取りを聞きながら、私はテーブルに置かれたティーカップを手に取った。ルイボスティー特有の甘い香りがする。
「これは?」
「本日カイン様より届いたものでございます。」
箱に入っていたメッセージカードを広げたクロードは首を傾げた。
「カインがこれを…?」
「………!渚!飲んではいけない!」
「……、え?」
ごぽっ……一口飲み込んだ瞬間、喉が焼けるような痛みとともになにかが口から溢れた。
「…あれ?」
ポタポタと滴る雫を手のひらで受け止める。するとあっという間に手が赤く染まった。
「渚!!!」
そのまま倒れ込むように、私は意識を失った。
「渚?大丈夫か?」
ベッド脇でクロードが心配そうにこちらを見つめている。あのお茶会の日からそろそろ半年が経とうとしていた。
あれから思っていたよりもずっと悪阻がひどくなった私はベッドで過ごすことが増えた。しかし、それもそろそろ終わりそう。少しずつ気持ち悪くなる日が減り、代わりにお腹が大きくなってくる。
「もう大丈夫。心配しないで仕事に行って?」
クロードの過保護は日に日にひどくなり、今では私を一人にしてくれなくなっている。クロードが家にいる間、絶対に同じ部屋にいないと駄目みたいだ。
自分が仕事に行っている間も私の側には必ず誰かいる。ちょっとでも一人になろうとすると、ジェロームさんかジゼルさんか、また他の使用人さんが全速力で走ってくる。さすがにやり過ぎだと思うんだけど…。
「今日も早く帰ってくる。絶対に無理しないでくれ。」
いってらっしゃいと手を振ると、やっと彼は仕事に出発した。
「今日もすごい数…。」
私の懐妊がわかってから、毎日屋敷にはたくさんの贈り物が贈られてくる。赤ちゃんの服なんて何年先まで買わなくていいんだろう。おもちゃに絵本も一部屋埋まるほどある。
カイン様が王太子となり、シトリン様という婚約者も決まった。王国の基盤がしっかりとしてきた今、貴族たちは自分たちの地位固めに忙しいらしい。
カイン様が国王になれば、クロードの地位は盤石なものになる。今のうちにフェルナンド家と親密になりたいと思う貴族が多いのだ。
「あれ?これは?」
たくさんの贈り物のなかに王国の紋章の入った箱がある。美しい青色のリボンが目を引いた。
「カイン様からの贈り物のようです。ルイボスティーですね。」
箱を開いたジェロームさんが見せてくれたのは美しい紅茶の缶だった。
「すごく綺麗。さっそく今日のお茶の時間にいれてください。」
* * *
「ただいま!渚?具合は大丈夫か?」
「クロード?!もう帰ってきたの?」
まだ午後の3時。ちょうど午後のお茶をしようとしていたところだった。
「あとは書類仕事だけだからな。城にいる必要はない。」
「旦那様!?もうお帰りになられたのですか?」
ジェロームさんがお茶の準備をしてやって来た。結婚式が終わってから、クロードは旦那様、私は奥様と呼ばれるようになった。これもまだ慣れなくて、とてもこそばゆい。
「旦那様…奥様が心配なのは分かりますが、仕事を疎かにしてはなりません。」
「おろそかになどしていないだろう!」
席につき二人のやり取りを聞きながら、私はテーブルに置かれたティーカップを手に取った。ルイボスティー特有の甘い香りがする。
「これは?」
「本日カイン様より届いたものでございます。」
箱に入っていたメッセージカードを広げたクロードは首を傾げた。
「カインがこれを…?」
「………!渚!飲んではいけない!」
「……、え?」
ごぽっ……一口飲み込んだ瞬間、喉が焼けるような痛みとともになにかが口から溢れた。
「…あれ?」
ポタポタと滴る雫を手のひらで受け止める。するとあっという間に手が赤く染まった。
「渚!!!」
そのまま倒れ込むように、私は意識を失った。
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