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オスカー×ユージィン編
00.はじまりの物語
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――後に、世界から神と呼ばれる存在がいた。
神と呼ばれる存在は無限に続く己の時間に飽いていた。
何もせず、ただ悠久の時を、漂っていることに、飽いていた。
ある時、神は大きな大きな箱庭を作った。
その時から、箱庭が、神の世界の全てとなった。
箱庭には、広大な草原があった。
草原を中心に、北には切り立った山脈が、西には空に浮かぶ島々が数多あり、南には穏やかな砂浜と所により荒れ狂う海が、東にはどこまでも続く砂漠と少しの緑と水があった。
箱庭を眺めているだけで満足をしていた神と呼ばれる存在は、眺め続けているうち再び、無限に続く時間に飽いてきた。
神は、全てを見通す力を持った金色の生き物を、箱庭の真ん中に置いた。
はじまり、全てを見通す力を持った金色の生き物は、箱庭の真ん中で目を覚ます。目を覚まし、最初に目に入ったものは、広大な草原がどこまでも続く世界。
しかし、全てを見通す力を持った金色の生き物は、どこまでも続く草原を見ているばかりで動かない。
動かない金色の生き物に焦れた神は、なぜ動かないかと聞いた。
金色の生き物は、なぜだか寂しいのだ寂しくて寂しくて動くことができない、と言って涙を流す。
金色の生き物の流したその涙から、大地をしっかり踏みしめて歩く人間が生まれた。
人間が生を営む様子が興味深く、神は今度は永遠の命を持つ銀色の生き物を、同じく箱庭の海の中に置いた。
銀色の生き物は酷く寂しがりで、大きな海の中に入れた途端に寂しい寂しいと泣きながら暮らす。
銀色の生き物の涙から、また別の生き物が生まれた。
それらは海の中を自在に動く魚となった。
しかし、小さな魚が数多にいた所で銀色の心の寂しさは変わらない。
銀色は、海を抜けて、陸に上がった。
陸には、草原で生を営む人間たちを眺める金色の生き物がいた。
銀色は歓喜した。
初めて出会う、自分と同じ生き物。
その日から銀色は、金色の側を離れなくなった。
悠久の時を仲睦まじく暮らす金色と銀色の生き物。
しかし、金色の生き物の命には限りがある。
金色の生き物は己の死期を悟ると、無限の命を持つ銀色の生き物に言った。
自分の命は間も無く消える。
消えたら身体を4つに分けて、この草原と、切り立った山脈と、空に浮かぶ島、それから砂漠の砂に埋めて欲しい。
そうすれば、また、銀色と出会えるから。
命が消えると言われて驚いた銀色の生き物だったが、また出会えるなら、と快諾した。
そしていよいよ、金色の命が消えた。
「あなたの命がある限り、あなたを想っている」
そう、言い残してこの世を去った。
銀色の生き物は、言われた通り、身体を分けて草原と山脈と浮島と砂漠に埋めた。金色が戻るのを今か今かと待つ銀色。
山脈の土からは、金色によく似た、土色の生き物が出てきた。
しかし、金色に似ているだけで、それは別の生き物だ。
銀色は、泣いた。涙から、たくさんの獣が生まれた。
次に、砂漠の砂からは、金色によく似た砂色の生き物が出てきた。
しかし、これもまた、金色に似ているだけで、全く別の生き物だ。
銀色は、泣いた。涙から、たくさんのトカゲが生まれた。
次に、浮島からは、空色の生き物が出てきたが、やはり、金色に似ているだけで金色とは別の生き物だった。
銀色はまた泣いた。涙からは、たくさんの鳥が飛び立っていった。
最後に、草原からは、金色によく似た白色の生き物が出てきた。
流す涙も枯れた銀色は、とうとう悟った。
金色は、自分に嘘をついたのだ。
もう2度と会える事などないのだ。
銀色が生きてる限り想うと言っていたが、想ってくれているはずの金色がいない。
そんな事があるのか。こんなに悲しく寂しく辛い事が、この先無限に続くのか。
絶望した銀色は、己が生まれた海に潜った。
銀色は2度と浮き上がることはなく、神は、静かに、その後の無限の時を見続けている。
神と呼ばれる存在は無限に続く己の時間に飽いていた。
何もせず、ただ悠久の時を、漂っていることに、飽いていた。
ある時、神は大きな大きな箱庭を作った。
その時から、箱庭が、神の世界の全てとなった。
箱庭には、広大な草原があった。
草原を中心に、北には切り立った山脈が、西には空に浮かぶ島々が数多あり、南には穏やかな砂浜と所により荒れ狂う海が、東にはどこまでも続く砂漠と少しの緑と水があった。
箱庭を眺めているだけで満足をしていた神と呼ばれる存在は、眺め続けているうち再び、無限に続く時間に飽いてきた。
神は、全てを見通す力を持った金色の生き物を、箱庭の真ん中に置いた。
はじまり、全てを見通す力を持った金色の生き物は、箱庭の真ん中で目を覚ます。目を覚まし、最初に目に入ったものは、広大な草原がどこまでも続く世界。
しかし、全てを見通す力を持った金色の生き物は、どこまでも続く草原を見ているばかりで動かない。
動かない金色の生き物に焦れた神は、なぜ動かないかと聞いた。
金色の生き物は、なぜだか寂しいのだ寂しくて寂しくて動くことができない、と言って涙を流す。
金色の生き物の流したその涙から、大地をしっかり踏みしめて歩く人間が生まれた。
人間が生を営む様子が興味深く、神は今度は永遠の命を持つ銀色の生き物を、同じく箱庭の海の中に置いた。
銀色の生き物は酷く寂しがりで、大きな海の中に入れた途端に寂しい寂しいと泣きながら暮らす。
銀色の生き物の涙から、また別の生き物が生まれた。
それらは海の中を自在に動く魚となった。
しかし、小さな魚が数多にいた所で銀色の心の寂しさは変わらない。
銀色は、海を抜けて、陸に上がった。
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銀色は歓喜した。
初めて出会う、自分と同じ生き物。
その日から銀色は、金色の側を離れなくなった。
悠久の時を仲睦まじく暮らす金色と銀色の生き物。
しかし、金色の生き物の命には限りがある。
金色の生き物は己の死期を悟ると、無限の命を持つ銀色の生き物に言った。
自分の命は間も無く消える。
消えたら身体を4つに分けて、この草原と、切り立った山脈と、空に浮かぶ島、それから砂漠の砂に埋めて欲しい。
そうすれば、また、銀色と出会えるから。
命が消えると言われて驚いた銀色の生き物だったが、また出会えるなら、と快諾した。
そしていよいよ、金色の命が消えた。
「あなたの命がある限り、あなたを想っている」
そう、言い残してこの世を去った。
銀色の生き物は、言われた通り、身体を分けて草原と山脈と浮島と砂漠に埋めた。金色が戻るのを今か今かと待つ銀色。
山脈の土からは、金色によく似た、土色の生き物が出てきた。
しかし、金色に似ているだけで、それは別の生き物だ。
銀色は、泣いた。涙から、たくさんの獣が生まれた。
次に、砂漠の砂からは、金色によく似た砂色の生き物が出てきた。
しかし、これもまた、金色に似ているだけで、全く別の生き物だ。
銀色は、泣いた。涙から、たくさんのトカゲが生まれた。
次に、浮島からは、空色の生き物が出てきたが、やはり、金色に似ているだけで金色とは別の生き物だった。
銀色はまた泣いた。涙からは、たくさんの鳥が飛び立っていった。
最後に、草原からは、金色によく似た白色の生き物が出てきた。
流す涙も枯れた銀色は、とうとう悟った。
金色は、自分に嘘をついたのだ。
もう2度と会える事などないのだ。
銀色が生きてる限り想うと言っていたが、想ってくれているはずの金色がいない。
そんな事があるのか。こんなに悲しく寂しく辛い事が、この先無限に続くのか。
絶望した銀色は、己が生まれた海に潜った。
銀色は2度と浮き上がることはなく、神は、静かに、その後の無限の時を見続けている。
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