上 下
231 / 234

第230話:君は運が良い...

しおりを挟む
皇居の地下へと続く重々しい鋼鉄製の観音開きの扉の前で「この巨大城砦に地下なんてあったのか...」と独り言ちり(ここが対外交渉室の威力武装偵察総局か...)と恐る恐る中へと入っていく...

婚約の現場に居合わせたセルゲイ近衛騎士団長から「ほ、ほう~♪ これはめでたい・・・第一皇女殿下は修道院で一生を過ごすとばかり思っていたが...(※この世界では婚約の決まらない王族や皇族は修道院に入り一生を祈りに捧げるのが社会常識とされている為...)いや、しかし・・・第一皇女殿下を娶るのであれば今よりも更に強くならねばなぁ~♪」と肩を叩かれ受理された転属届けの書類を渡されたからである

中を見渡すと下へと続く階段が続いていたので進もうと両開きの扉の中へと入ると――突如、バタン!と鋼鉄製の両開きのドアが勢いよく閉まり後戻り出来なくなった!

仕方ないので階段を降り始める...
すると今度は...

背後からドン!と何かが落ちる音がしたので驚いて勢いよく振り返ると、そこにはっ?!

/
/
/

巨大な岩の砲丸が転がり落ちてきているではないかっ?!!
いやっ、いやっ?!これは!アカンやろうっ?!死ぬって!!マジでっ!(泣)

一方・・・泣き叫びながら全力で逃げるアユムの姿を――これから上司になる二人と同僚となるは映像を写し出すマジックアイテムで見ていた...

***

「新しい新人がレーンに入ります・・・期待の新人ですよ」

アユムの直接の上司となる実行部隊のまとめ役であるブリスクが威力偵察局総局長であるディミホル・クズミンに、そう述べるとアユムと同い年くらいの少女がマジックアイテムの映像を見て笑いこけている声が本拠地としている本部に響く...

ルビーと言う名の――このユガン人少女の可憐な容姿に騙されてはいけない・・・彼女は幼少の頃はスラム街が住んでおり、たまたま発現したのが暗殺者向きのスキルでスラムのギャングやマフィアの元締め相手に何件か殺しをして当時――生活を営んでいた孤児だったが...

ある一件で運悪く暗殺任務中に偶然その場に居合わせた威力偵察総局の局員達に遭遇・・・偶然にも暗殺目標が、かち合っていたのだ・・・お互いに正体を隠すため口封じで殺し合った結果――決して弱くない局員達を何人か殺害・・・返り討ちにした腕を買われ入局に至った凄腕だ

そんな幼少の頃から武装偵察局のエースを務めているルビーが期待のホープである真井歩に期待を示すのも無理はない。

運良く上級貴族に――いきなり取り立てられただけと皆が思っていただけの新人が武装偵察局入りを運悪く命じられ生き残った局員にしか知られていない

武装偵察局の名物である『死の入局』として知られている試練を本人が泣きわめいているとは言え初見殺しとも言える全部のトラップ全てに引っかかっているにも関わらず今のところ無傷で走り抜けて来ているのだ!

才能を隠した策士か、単なる強運の持ち主か――いずれにせよ・・・局員である以上運が味方するに超したことはないのは間違いない...

この異様な光景には総局長であるディミホルも古傷が疼いたのか?まだ彼が新人の頃・・・最初の任務で油断した際に抹殺対象から受けた不名誉な古傷に無意識に触れる・・・セルゲイ近衛騎士団長と同じく中央軍事アカデミーの頃から堅物である彼が――ここまで一個人に興味を持つのも大変珍しい事である

一方アユムはと言うと――あの後・・・
「ちょっぉぉおおお!!!」「し、死ぬっ・・・(震え声)」
「どわっぁぁあああ!!!」「ひぎゃっあ"あ"あ"あ!」
「お"っ、お"助けぇぇえええ"え"え"!!」

と悲鳴を挙げながら床や壁から鉄槍が飛び出してきたり火が噴き出したり何トンもあるであろう鉄の重りでペシャンコになりそうになりながらも武装偵察局の名物である『死の入局』を完走した!

しかも驚くべく事に何回も落とし穴に落ちたり仕掛けれているトラップをワザワザ全て踏み抜いているにも関わらず運良く串刺しの落とし穴や壁や床から飛び出してくる仕掛け槍の杭と杭、槍と槍の間隙に運良く身体が挟まって無事だったり偶然、杭のない場所に身体が落ちる、既に白骨化した遺骸の上に身体が重なるなどして本人は掠り傷、程度しか負っていない!

転属初日から疲れたアユムにブリスクとディミホルが歩み寄る...

***

「やあ新人...無事に入局に必要な試練を通過したな?まずは、おめでとう。どうやら君には資質があるようだ。入局を認めよう。ようこそ我が組織へ...」

とんでもねぇ試練を受けさせられた後ユガン人らしき・・・がたいの良い男に――そう告げられた...
自己紹介によれば――どうやら大柄の男はブリスクと言うらしい...
威力武装偵察総局実行部隊のリーダーとの事だったが・・・そんな事は今は、どうでも良い!早速「なんて試練を受けさせるですかっ?!死ぬかと思いましたよ!」と抗議したが...

本部が薄暗かったので気づかなかったがブリスクの後ろにいた黒いフード付きの外套を着込んだ、これまた大柄の男に「この程度で死ぬような奴なんぞ必要ない...むしろ死んでもらった方が間引く手間も必要なくなる...」と言われた。

その男の顔面を良く見ると右目に縦の刀傷を負っており、その片目は白く白濁している悪逆非道の恐ろしい顔つきも相俟あいまって異質な様相だ

(ひっえっ・・・なんて恐ろしい形相だ...)とアユムは、ひるむ...

「・・・と言うか...死ぬ可能性もあったのかっ?!!」

当然『自分が死ぬとアーレ皇太子の命も危ないんですよ?!』と突っかかったが黒尽めの大男は『他者に自分の命を握らせて運が尽きるのであれば殿下も――それまでの命だったのだ・・・あの小僧が死んだで死んだなら――それでもいい...運も尽きたような皇帝に國を統べる権利なんぞない。』と言い放つ!

自国の次期皇帝候補に――ここまで言えるとは肝が据わっている所ではない!この危険な黒尽めの大男は覚悟が極まっていると感じたアユムが「あっ・・・はい...」と青ざめながら呟き(ヤバっ!怖っ?!これ以上は逆らわんとこ...)と思うのも無理はない...

自国の皇太子に――このように軽く扱う男に自分が、どう言う扱いを受けるのか途端に不安になり涙目で(転属願い・・・また書こうかな...)と思ったが後日――

ロナフェミア皇女から「あら♪サナイ、セルゲイから聞いたわっ♪危険な部署に配属されたんでしょう?私に逆らうから――そのような事態になるのよ♪まあ♪わたくしに一生尽くすと言うのであれば私からセルゲイに一言言ってあげなくもないわ♪」と煽られ...

ムカついたアユムは(やっぱりꐦ すぐに危険な目に遭う訳でもないし――しばらく配属された所で頑張ろう)と考えたのは誰も知らない所なのである...

なおセルゲイ近衛騎士団長からは、どこぞの馬の骨とも分からない奴が第一皇女を娶るとかワンチャン死んでくれねぇーかなー期待されている事も本人は知らない!なお辞めたいと言っていたら――(この国の暗部を知られたからには・・・)と事故死した事は言うまでもない事であろう!真井歩・・・本当に悪運の強い奴である!続く!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語

ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ…… リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。 ⭐︎2023.4.24完結⭐︎ ※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。  →2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)

【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。

夜乃トバリ
恋愛
 シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。    優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。  今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。      ※他の作品と書き方が違います※  『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

婚約者の浮気相手が子を授かったので

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ファンヌはリヴァス王国王太子クラウスの婚約者である。 ある日、クラウスが想いを寄せている女性――アデラが子を授かったと言う。 アデラと一緒になりたいクラウスは、ファンヌに婚約解消を迫る。 ファンヌはそれを受け入れ、さっさと手続きを済ませてしまった。 自由になった彼女は学校へと戻り、大好きな薬草や茶葉の『研究』に没頭する予定だった。 しかし、師であるエルランドが学校を辞めて自国へ戻ると言い出す。 彼は自然豊かな国ベロテニア王国の出身であった。 ベロテニア王国は、薬草や茶葉の生育に力を入れているし、何よりも獣人の血を引く者も数多くいるという魅力的な国である。 まだまだエルランドと共に茶葉や薬草の『研究』を続けたいファンヌは、エルランドと共にベロテニア王国へと向かうのだが――。 ※表紙イラストはタイトルから「お絵描きばりぐっどくん」に作成してもらいました。 ※完結しました

前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです

珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。 老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。 そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

グーダラ王子の勘違い救国記~好き勝手にやっていたら世界を救っていたそうです~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、ティルナグ王国の自堕落王子として有名なエルクは国王である父から辺境へ追放を言い渡される。 その後、準備もせずに木の上で昼寝をしていると、あやまって木から落ちてしまう。 そして目を覚ますと……前世の記憶を蘇らせていた。 これは自堕落に過ごしていた第二王子が、記憶を甦らせたことによって、様々な勘違いをされていく物語である。 その勘違いは種族間の蟠りを消していき、人々を幸せにしていくのだった。

完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた

まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。 その上、 「お前がフリーダをいじめているのは分かっている! お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ! お前のような非道な女との婚約は破棄する!」 私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。 両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。 それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。 私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、 「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」 「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」 と言って復縁を迫ってきた。 この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら? ※ざまぁ有り ※ハッピーエンド ※他サイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。 小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

処理中です...