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第122話:こんな事もあろうかと...

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宮廷医や宮廷術士との口論に負けて逃げるように去ったその後・・・アーレ皇太子を診察してビックリ!

意識はハッキリしているが体温の浮き沈みの激しさや息苦しいのか呼吸回数や心拍数の増加・・・全身への炎症症状から察するに多分だが彼は軽い敗血症に罹患している!!

あの宮廷医や宮廷術士の残した殿下の容態の記録経過に目を通して実際に面会して症状を見たので間違いない!

(ちゃんと注射針などは熱湯消毒して熱消毒できない所はアルコールで消毒するように指示書で書き留めして置いたはずなのに!!えええ?!!なんで?!)と一瞬思ったが原因の追求は後にしなければ!!

敗血症は時間が経つごとに敗血症性ショックなどの意識障害や臓器不全などの臓器障害が起こる命に関わる感染症だ!助かった場合でも後遺症が残ることが多いと聞く!

治療は本来なら生物由来である抗生物質が望ましいが、だが無論そんなシロモノは手元にある訳ない!幸いこんな時の為にヴァレンドで暇を見てナノサイズの官能基を薬品や熱を使用して有機合成しておいたサルファ剤の一種である合成抗菌剤スルファニルアミドなら手元にある。・・・えっ?どうやって手に入れたかだって?

こちらの世界にもステンドグラスはあるので機材には事欠かなかったというのものあるが、そもそもスルファニルアミドは研究室で理系学生が学術研究の実習で合成に挑戦できるほど実験の再現性の高い。知識と材料さえあれば他のサルファ剤と比べ比較的容易に合成できるのだ...

ヴァレンドでは石油の精製をしていたのでアニリンを作る事ができるベンゼンも入手できたしユガンから彼らが輸入している貝の食べくさしである貝塚もあって氷酢酸を作る為に必要な生石灰も手にいれやすかったと言うのもある。

加えて、こちらの世界では免許がなくても普通に店で硫酸を売っているので硫酸の入手も容易で鉄鋼業で出た二酸化炭素も沢山とれるしヴァレンド製の強力な稲妻を発射する事ができる雷銃のおかげで強力な工業の発電モーターが作れたので電気と塩水から作る水酸化ナトリウムの電気には困らなかった...

つまり材料には事欠かなかったわけだ...酒や酢もあった・・・しね?アンモニアを探すのは大変だったけど...

困った事と言えば強い腐食性を示す危険なクロロ硫酸や麻薬の原料の一種である無水酢酸が湿気に弱いので取り扱いが難しかった事と、それが原因で少量しか生産出来なかった事くらいだ...

ただスルファニルアミドは決して万能薬ではない...
アーレ皇太子が罹患した敗血症の原因がウイルスや寄生虫ゆらいのモノだったら効果がないのだ!もしスルファニルアミド効いてくれないと俺の命も、ここまでだ!

(頼むから病原菌やカビとかの真菌類であってくれ!)と不謹慎な祈り捧げながら大変に飲みにくく味の良くないスルファニルアミドを嫌がるアーレ皇太子に『ダイジョウブ ダイジョウブ コワクナイよ?アユム嘘ツカナイ...』と言いながら無理矢理飲ませておいた...

これで病原菌は葉酸の合成を阻害されたので病原菌の皮膚に当たる細胞壁を作る事ができない・・・つまり細菌がこれ以上増える事ないハズだ...後は皇太子の白血球が始末してくれることだろう...

ただし副作用として赤血球の寿命が速まり壊れる溶血が少しばかり起きるかもしれないので血液製剤の増産とサルファ剤を製造できる施設をラーイ帝に提案しておかないと...

(一番有機合成が簡単なスルファニルアミドでも製造するには時間が掛かる・・・そうと決まれば早めに行動しなければ...)

俺は早速、サルファ剤に必要な材料と資材の確保と工業設備の原案の構想を練り始め構想案を紙に書き起こしていったのだった...
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