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第69話;廊下の向こうから・・・
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俺が議事堂から抜け『元の世界の戦車でも通行させるのかよ・・・』と呆れるくらい――ただただアホみたいに、だだっ広い宮殿内の廊下を歩いていると
向かいから大量の集団が見えたので廊下の隅へ行くと恭しく腰を曲げ頭を下げた。
なぜ廊下の隅へ避けたかと言うと別に俺が人見知りの陰キャだから・・・という理由だけで避けた訳ではない。お偉いさんらしき人物が道の向こうから沢山のお供を連れて来たからビビったというのも勿論あるが、主な理由は宮殿の書庫で読んだ《この異世界のマナー教本》に書いてあったマナーを思い出したからだった。
「面を上げなさい...」
俺が集団が通り過ぎるまで廊下の隅で頭を下げていようと思っていたら厳かな女性の声が頭上で響いた。集団が途中で止まっていたので(あっ、あれ?!なんか粗相でもしたか?!いや、だって仕方ないじゃん?!俺で異世界人だし!!)と内心、何事かと内心焦りながらも顔を恐る恐る上げてみると...
「貴方が末弟を救って下さったお方ですね。珍しい黒いカラスのように艶やかな黒い髪なので、すぐに判りました。貴方とは、ずっとお話をしたかったの。弟を救ってくれた人は――いったい、どのような方なのだろうと・・・」
顔を上げると美しい金髪を後ろに束ねた青というよりも水色に近い碧眼の双眸を持つ・・・恐らく同年代くらいの気品を感じさせる女性が立っていた。
目の前の女性の服飾は凝っており趣向が凝らされた高級品である事が一目で分かる・・・立ち振る舞いも堂々としている事から高位の人物である事は間違いないだろう...
(だが、それほどの人物が自ら話かけてくる理由が思い当たらない...話かけてきたという事は少なくとも敵意はないハズ...思いきって聞いてみるべきか・・・)
「申し訳ありません、ご婦人。ただ只管に貴女様の愛顧を賜りたく思う、この従僕めに貴女様の事を知る栄誉の機会を授けて下さませんか?ご婦人。」
言い回しは変だが、この世界のマナー教本通りのハズなので問題ないと思う...
女性はポンと手を叩くと「あっ!そうでした。貴方は私の事を知らないのでしたね。」と言うと自己紹介を始めた...
「私は第二皇女のロナフェミア。お父様は皇帝ラーイ。お母さまは皇后サレンドラ。」
この第二皇女...
紹介を聞きアユムは(聞かなきゃよかった...)と青ざめる...
言われて、よく見れば顔立ちがサレンドラ皇后に似た雰囲気があった...
まさか皇女本人が話かけて来るとは思っても見なかったが最初の『末弟を救った』の部分で気づくべきだった...だって――つい最近救った人物なんて、ひとりしかいないのだから...
対応を誤れば物理的に首チョンパ間違いなしの人物なので緊張しながらも震え声で声を振り絞り「これは大変失礼しました...皇女殿下...私めのような身分の低い官人にお声を掛けて頂けるとは大変光栄です!この栄誉は子々孫々と末代まで語り継ぎたく思います...これからも微力ながらアーレ様の治療に邁進させて頂く所存ですので貴女様を含め皇族の皆様が心安らかに過ごせるよう力を尽くさせて頂きます。」とガチガチに緊張しながらも謝辞の言葉を述べた...
第二皇女であるロナフェミアは気品溢れる『うふふ...』と上品に微笑むと「大儀でした。これからも貴方の献身を期待しています。」と笑ってくれたが、余計な気を回したお付きメイドらしき人物がタイミングを見計らったかのように・・・
「恐れながら殿下。お時間が差し迫っております。ご歓談は、またの機会になされては?」と俺を睨みつけながら会話に割り込んできた。
恐らく『皇女が異性として好意を抱いていると勘違いするなよ!』と言いたいいのだろうが俺にそんな勘違いをする余裕はない...
ロナフェミア第二皇女は本当に残念そうに「あら?もう、そんな時間?仕方ありません。また、お話しましょう。」と述べると再びお供を連れ去っていった...
集団が去り顔を上げると安堵感からホッとため息を吐くと
アユムは再び――だだっ広い廊下を歩き歩き出すのだった...
向かいから大量の集団が見えたので廊下の隅へ行くと恭しく腰を曲げ頭を下げた。
なぜ廊下の隅へ避けたかと言うと別に俺が人見知りの陰キャだから・・・という理由だけで避けた訳ではない。お偉いさんらしき人物が道の向こうから沢山のお供を連れて来たからビビったというのも勿論あるが、主な理由は宮殿の書庫で読んだ《この異世界のマナー教本》に書いてあったマナーを思い出したからだった。
「面を上げなさい...」
俺が集団が通り過ぎるまで廊下の隅で頭を下げていようと思っていたら厳かな女性の声が頭上で響いた。集団が途中で止まっていたので(あっ、あれ?!なんか粗相でもしたか?!いや、だって仕方ないじゃん?!俺で異世界人だし!!)と内心、何事かと内心焦りながらも顔を恐る恐る上げてみると...
「貴方が末弟を救って下さったお方ですね。珍しい黒いカラスのように艶やかな黒い髪なので、すぐに判りました。貴方とは、ずっとお話をしたかったの。弟を救ってくれた人は――いったい、どのような方なのだろうと・・・」
顔を上げると美しい金髪を後ろに束ねた青というよりも水色に近い碧眼の双眸を持つ・・・恐らく同年代くらいの気品を感じさせる女性が立っていた。
目の前の女性の服飾は凝っており趣向が凝らされた高級品である事が一目で分かる・・・立ち振る舞いも堂々としている事から高位の人物である事は間違いないだろう...
(だが、それほどの人物が自ら話かけてくる理由が思い当たらない...話かけてきたという事は少なくとも敵意はないハズ...思いきって聞いてみるべきか・・・)
「申し訳ありません、ご婦人。ただ只管に貴女様の愛顧を賜りたく思う、この従僕めに貴女様の事を知る栄誉の機会を授けて下さませんか?ご婦人。」
言い回しは変だが、この世界のマナー教本通りのハズなので問題ないと思う...
女性はポンと手を叩くと「あっ!そうでした。貴方は私の事を知らないのでしたね。」と言うと自己紹介を始めた...
「私は第二皇女のロナフェミア。お父様は皇帝ラーイ。お母さまは皇后サレンドラ。」
この第二皇女...
紹介を聞きアユムは(聞かなきゃよかった...)と青ざめる...
言われて、よく見れば顔立ちがサレンドラ皇后に似た雰囲気があった...
まさか皇女本人が話かけて来るとは思っても見なかったが最初の『末弟を救った』の部分で気づくべきだった...だって――つい最近救った人物なんて、ひとりしかいないのだから...
対応を誤れば物理的に首チョンパ間違いなしの人物なので緊張しながらも震え声で声を振り絞り「これは大変失礼しました...皇女殿下...私めのような身分の低い官人にお声を掛けて頂けるとは大変光栄です!この栄誉は子々孫々と末代まで語り継ぎたく思います...これからも微力ながらアーレ様の治療に邁進させて頂く所存ですので貴女様を含め皇族の皆様が心安らかに過ごせるよう力を尽くさせて頂きます。」とガチガチに緊張しながらも謝辞の言葉を述べた...
第二皇女であるロナフェミアは気品溢れる『うふふ...』と上品に微笑むと「大儀でした。これからも貴方の献身を期待しています。」と笑ってくれたが、余計な気を回したお付きメイドらしき人物がタイミングを見計らったかのように・・・
「恐れながら殿下。お時間が差し迫っております。ご歓談は、またの機会になされては?」と俺を睨みつけながら会話に割り込んできた。
恐らく『皇女が異性として好意を抱いていると勘違いするなよ!』と言いたいいのだろうが俺にそんな勘違いをする余裕はない...
ロナフェミア第二皇女は本当に残念そうに「あら?もう、そんな時間?仕方ありません。また、お話しましょう。」と述べると再びお供を連れ去っていった...
集団が去り顔を上げると安堵感からホッとため息を吐くと
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