上 下
35 / 234

第35話;side:嶺山紗弓

しおりを挟む
「なんてこと・・・いったい何の騒ぎ?...」

宿屋で朝一番に起きて外に出ると立ち寄った街の様子が騒がしいかったので、私は「何かあったんですか?」と街の人を止めて聞く

「まだ詳しい事は分からないだけど、どうやら昨日の真夜中に婦女暴行と殺しが遭ったらしい。可哀想かわいそうに、まだ破瓜はかも迎えていない少女と若い衛兵が犠牲になったんだと...遺族は気の毒に・・・」

「なんですって?!」と思わず声を上げてしまった・・・凶悪犯罪ではないか?正義感の強い私は「犯人は?!犯人は捕まったんですか?!」と詰め寄った!

「ちょ、ちょっと!落ち着きなって、おねえさん!」

気がついたら町人の首元を掴んでいた!

「す、すいません!わたしったら・・・」

町人の首元から手を放すと別の人が話に割り込んできた。

「犯人は、まだ捕まっていないらしいぜ?目撃者がいないんだと、何ともおっかない話しだぜぇ・・・」

それを皮切りに街の人達が次々と話の輪に入って来る・・・

「恐ろしいね~!娘をオチオチ歩かせられないよ!」

「大丈夫だ!きっと衛兵えいへい隊や騎士隊が犯人を捕まえてくれる!」

「そう?...そうよね・・・」

街の人々は、みな口々くちぐちに「大丈夫だ」と自分たちに言い聞かせているが不安を拭いきれない様子だ。本来なら勇者である私が何とかしたいが私達は警察ではない・・・歯がゆいが余計よけいな事をして捜査を混乱させない方が良いだろう

私は感情をグッとこらえて宿屋へ戻ると宿屋の入り口で二階の階段から降りてくる親友とパッタリ出会った

「おはよう。紗弓さゆみちゃん。どうしたの?何かあったの?」とクラスメイトのひとりである結城雪奈ゆいじょうゆきなが話しかけてきる・・・ボーイッシュなボブカットの銀髪で美しい青い目を持つ彼女は東欧とうおう人とのハーフらしいが不思議と入学当初から私とウマがよくあった。私がクラスの副委員長として立候補した時に学校の生徒会・会計委員として後援・サポートしてくれたのも彼女だ。

「雪ちゃん・・・」

私は親友の雪ちゃんに、街で凄惨な事件起きたらしいと言う事を話した。

「それは酷い出来事だね・・・それで紗弓さゆみちゃんはどうしたいの?もし、何とかしたいんなら僕も手伝うよ?」

ユキちゃんは私の心情しんじょうさっしたのだろう。心配そうな顔でどうするのか聞いてきた・・・

「私は...いや、私達は警察じゃない。チームとして動く以上、私は勝手な行動はしないわ!それに私達が動くことで、この街の治安組織の邪魔になったらイケないもの。今回は異世界の人たちの法と正義を信じて見よう思うわ。」

ユキちゃんは少しほほに手を当てて考えたあと・・・

「そう、紗弓さゆみちゃんが、そう決めたなら僕の出る幕じゃないね・・・ありがとう、紗弓ちゃん。紗弓ちゃんが遠慮えんりょせずに一人で抱え込まないで僕に教えてくれたのは僕を信頼してくれているからだよね?素直に嬉しいよ...ぼくは僕たちの事を、そこまで考えてくれている君は本当にリーダーに相応ふさわしいと思ってる、だから君に付いて来てよかったと心から僕は思うよ。でも本当に手助けがいる時は言ってね?僕と君は無二むにの親友だから。」

ユキちゃんはほがらかで人懐ひとなっこい笑顔を浮かべながら私にそう言い残し食堂に消えていった・・・

「ユキちゃん・・・ありがとう。」

私は、とても良い親友を持ったと思う。ユキちゃんだって本当は異世界なんかに来たくなかったハズなのだ・・・実は彼女はサッカー部の岩屋君ときよい交際している事を私は知っている。本来なら唯一ゆいいつ安全で朝の一時いっときしかない、このいこいの時間を恋人とごしたいハズなのに、彼女は私の話に時間をいて真剣に聞いてくれたばかりではなく励ましてくれたのだ...

ユキちゃんが、こんなに良くしてくれるのも元の世界に帰りたい期待の裏返しだと私は思うのだ...
そんな親友の期待に私は答える事が出来るだろうか?無事に元の世界に帰してあげられるだろうか?

そんな事を心の中で自問じもんしながら私はまだ開いていた宿屋の玄関げんかんのノブに手を伸ばしドア閉じた・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

島風
ファンタジー
幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

 女を肉便器にするのに飽きた男、若返って生意気な女達を落とす悦びを求める【R18】

m t
ファンタジー
どんなに良い女でも肉便器にするとオナホと変わらない。 その真実に気付いた俺は若返って、生意気な女達を食い散らす事にする

排泄時に幼児退行しちゃう系便秘彼氏

mm
ファンタジー
便秘の彼氏(瞬)をもつ私(紗歩)が彼氏の排泄を手伝う話。 排泄表現多数あり R15

処理中です...