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推しの恋を応援します!

推しの側

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 その後、私は高名な魔術師の下で魔術を学ぶことになった。

 その上呪いを見られる力は特異すぎて、魔術師にならずとも学びながら聖騎士団のお手伝いをすることに決まったのである。

 推しは見ていると時折頬を赤らめるのだが、今日のお部屋は少し暖かいだろうか。

「ほんのりピンクの頬。ちょっぴり尖ったお耳もほんのりピンク。はあ、可愛い。素敵。今日もごちそうさまです」
「声に出して言うなっ!!」
「はっ、声に出ていましたか!?」
「出てたわよ」
「出ていましたよ」

 アナスタージア様とベルトランに頷かれて、自分の心の声が漏れていたことに気付く。
 リュシアン様は赤面しているが、まあいいか、可愛いから。

「うるさい! 口を閉じろ!!」

 リュシアン様は意外に照れ屋さんで、そんなところもきゅんとする。
 毎日推しに会えて嬉しさが込み上げ、心の声もダダ漏れだが、私は元気だ。

 あれから父親にはお金を使わせないようにして自由にさせているが、今のところ妙な物を買う様子はない。
 エミールはリュシアン様のご紹介を受けて、王宮のお医者様に診てもらえることになった。目下、体力をつけるために少しずつお部屋で歩く練習をしている。

「ねえ、レティシア様。リュシアン様ってモテるけど、余程の用がない限り女性に声を掛けたりしないのよ。勘違いされてしまうでしょう?」
「なるほど、大変ですね。モテモテな男の、贅沢なお悩みですね。さすが推しです」
「ねえ、言っている意味分かってないでしょう?」

 アナスタージア様は微笑みながら眉を吊り上げた。その側でリュシアン様が、「うるさい、黙れ!」と顔を真っ赤にして大声を上げる。

「ま、これから長く一緒にいられるんだから、頑張りましょうね。お互い」
「あ、はい、頑張りましょう!!」

 アナスタージア様はもう両想いだと思うのだけれど。
 ベルトランは聞いているわりに重い空気をまとっているので、二人のすれ違いを合わせるには一肌脱いだ方が良いだろうか。

 リュシアン様は顔が真っ赤なまま、がたりと席を立ち上がる。

「呪いが掛かった物があったらしい、確認に行くぞ」
「はい、お供します!!」

 今日も推しの隣で私は幸せいっぱい。隣でぶつかりそうな、その腕に巻き付いていいだろうか。巻き付きたい。

「だから、声に出して、言うなっ!!」

 そうやって、真っ赤になりながら怒鳴る声さえ、愛しいのです。
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